大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

読んだ本ー「論理的に考え、書く力」(芳沢光雄著、光文社新書)

2013-11-27 18:30:38 | インポート

「論理的に考え、書く力」は、すべての人に求められる「力」ですが、私の現在の立場からすると「土地家屋調査士に特に求められる力」ということになります。

実際の問題としても、私が研修会の講師として呼ばれる時には、「鑑定書、意見書の書き方」というようなテーマを与えられることが多く、土地家屋調査士の世界でこの「力」が求められていることがわかります。

この「書く力」については、すでに多くの本が出版されています。しかし、それらを読んで「書く力がついた」という話はあまり聞きません。このことについて即効性を求めるのは、そもそも無理がある、ということなのでしょう。・・・そうわかってはいるのですが、このての本が出されると、ついつい買ってしまいます。読んでから後悔することはわかっているのに・・・。

本書についても結果はいつも通りでした。・・・が、それは著者が悪い、とか、内容が悪い、ということではありません。多分、編集者が「悪い」のでしょう。

それは、本書の内容と書名(タイトル)が一致していないからです。本書のタイトルは「論理的に考え、読む力」とすべきものではなく、「現代日本数学(算数)教育論」とでもすべきもののように思えました。その上で、サブタイトルとして「論理的に考え、書く力を育てるために」と付くのであれば私も納得できるのですが、いきなり「論理的に考え、書く力」とされてしまうと「看板に偽りあり」という感じがしてしまいます。

さて、その上で本書の内容について言うと、まずは本書のメインテーマである「教育論」について、知らないことが多くあり、勉強になりました。また、教育者として、自分の専門領域に関する事柄について責任を持とうとする著者の姿勢から学ぶべきものが多くありました。最初からそういうつもりで読めば、満足度の高いものであった、ということができるでしょう。

その上で、私の期待した内容(タイトルの示す内容)についても、分量は少ないながら役立つ点もありましたので、以下、少し紹介をします。

第4章で、「論理的に考え、書く力を磨くために意識したいこと」が述べられています。

そこでは、「結論だけ述べてもダメ」、「他者にきちんと説明できる能力」が必要。用語の「定義」を書くこと(明らかにすること)が大事。「論理的に飛躍がないかを疑いながら書く」ことと「時間を置いて読み返す」ことが勧められています。

また、「前提」を明らかにすることの重要性が言われており(これの曖昧なままでの議論というのはしばしば見られるもので、時間ばかりかかってまったく生産的なものになりません)、その具体的な展開としての「場合分け」の重要性が言われています。これは、私たちが書くべき文章の構成を考える上で参考になるものでしょう。

この本を読んであらためて思いましたが、「文章を書く」にあたっての「コツ」というのは、極めてありきたりのことしかないようです。「書く力」は、「読む」ことによって培われるものではなく、あくまでも「書く」ことによってしか得られないのだろう、ということです。


今週の予定ー大分会常任理事会

2013-11-24 20:36:01 | インポート

11.27(水) 大分会常任理事会、顕彰審査会。

今週は、日調連会務の予定が何もない週です。じっくりと来年度の事業計画や、直近の懸案である調測要領、93条調査報告書改定などの検討を行わなければ、と思っています。

なお私事ですが、私のの父が、11月18日午前9時56分、死去しました。90歳と10日の生涯でした。当日、自転車で外出中、心臓の痛みを訴えて倒れ、そのまま死亡したそうです。1日も患うことなく天寿を全うした大往生でした。人生の最期を鮮やかに締め括ったことに感動し、尊敬の念を新たにしました。故人の強い遺志により葬儀は行わず、近親者のみで送りましたので、お気遣いないようお願いいたします。


今週の予定

2013-11-18 08:22:54 | 調査士会

11.18 日調連業務統計委員会   今年の8-10月に実施した「土地家屋調査士事務所形態及び報酬に関する実態調査」の集計・分析のための検討・協議を行います。

11.20-21 日調連常任理事会、正副会長会議  12月の理事会、来年1月の全国会長会議を含めて、来年度の事業計画を詰めていかなければならない時期です。そのための第一弾の会議、ということになります。

先週は、韓国での国際地籍シンポ準備会議(韓国スマート国土エキスポ)、日本でのG空間エキスポと、普段私自身が接することの少ない新しい情報に接する勉強の機会を得られた週でした。

その中(G空間エキスポでの日調連シンポ)で、初めて知ったこと一つを紹介します。

「土砂災害防止法」と言う法律があり、その中で土砂災害の危険性のある地域を「土砂災害警戒区域」「同特別警戒区域」の指定がなされている、ということです。このこと自体は、最近頻発する土砂災害による被害を最小限におさえるために必要なことですが、その中にはいくつかの問題もあるようです。

岐阜大学の沢田准教授が指摘していたのは、この区域の指定自体の「精度」の問題です。この指定は「砂防基盤図」をもとに行われることになっているそうですが、今はそれよりも精度のいい地形データがあり、それを利用すればより精度のいい区域指定が可能なのに、そうなっていない、という現実があるそうです。技術上の問題点です。

土地家屋調査士の今瀬さんが指摘していたのは、この区域指定が「地番」とつながっていないことです。2500分の1の地図上で指定された区域が、「地番」とそれに基づいている「権利」に結び付いていない、ということを指摘していました。区域指定された場合、そこでの再建築が現実的に不可能になる、という利用上の制限があるそうですが、それを前提にした上での土地取引を考えると「地番」で特定することが必要になります。それがなされていない、というところの、制度上の問題です。

この問題は、わが国における「地籍制度」の問題点の一つを端的に示しているのでしょう。韓国・台湾における地籍の一端に触れた後で知ったことにより、一層考えさせられました。


読んだ本ー「金融緩和の罠」(萱野稔人編ー藻谷浩介、河野龍太郎、小野善康。集英社新書)

2013-11-12 08:24:01 | 本と雑誌

萱野稔人氏による藻谷、河野、小野氏の 3人へのインタビューをまとめた本です。

とっても基本的な所からの話になりますが、次の説明はわかりやすいですね。

「・・財政・金融政策は、それ自体で新しい付加価値を生み出すものでは、ありません。財政・金融政策の本質とは「財政政策は所得の前借りであり、金融政策は需要の前倒しである」ということなんです。」(河野)

需要を前倒ししているのだとすると、「その後はどうなる?」ということを考えなければならない、ということになります。このことを考える時には、直接の効果と言うか短期的な予測や政策立案がもちろん問題になるわけですが、それは長期的と言うか本質的な社会の趨勢に関する認識に支えられるべきものです。

「マクロ経済学は、現実には無数にある変数を思いっきり絞り込んでから、「この変数をこう動かせば、ほかの変数はこう動く蓋然性が高い」というセオリーを構築する一種の思考実験です。ですが実際の社会では、セオリーを構築する際に便宜上無視してしまったほかの変数も動いていて、結果に影響を与えます。」(藻谷)

というわけですから、そこでの予測や政策立案においては、直接的な効果や事態だけではなく、大きな流れをしっかりとつかむ、ということが基本の問題として重要になります。これについて、次のように言われていることに私はとっても納得しました。

「ポイントは「お金が究極の欲望の対象になる」ということです。」「このようなお金への欲望は、お金という便利なものをうみだした人間の宿命とでも言うべきもので、発展途上社会でも成熟社会でも同じです。」「発展途上社会では生産力が低くてモノへの欲望が大きいから、お金への欲望が表に現れなかった。ところが、生産力が拡大してモノが大量に生産されるようになると、それ以上のモノへの欲望が減ってきて、お金の欲望が表に現れてくる。これが成熟社会です。そうした成熟社会と発展途上社会とでは、経済政策の効き方もほぼ正反対といっていいくらい異なるんですよ。」(小野)

このようなごく基本的・本質的な社会の趨勢の上で、具体的には、次のように事態が進行しているのだとされます。

「現在行われていることを図式化するとこうなりますよね。まず、年金として配るお金が足りません。だから政府は国債を発行します。それを金融機関が買い、政府はそれで得たお金を高齢者に年金として給付します。すると高齢者はそのお金をつかわず、いざというときのために銀行に預けます。で、銀行はそのお金をおもにして国債を買う。要するに、政府と高齢者と銀行の間で、お金がぐるぐいるまわっているだけです。」

というわけです。この状態の下で、「金融緩和」が(短期的には有効だとしても)どれだけ有効なのか?・・・考えさせられました。

 


今週の予定

2013-11-11 08:49:48 | 調査士会

昨日の「仏の里くにさき・とみくじマラソン」は、結局「出走断念」ということになりました。会務が立て込んで、大分にいる時間がほとんどなくなっている中で、しかたないこととは思いつつ、残念でした。

さて、気を取り直して今週の予定。

10.12-14(火-木) 国際地籍シンポジウムの予備会議が、次回開催地の韓国であります。林会長、戸田研究員(韓国の大学院に留学していたこともあり、韓国の地籍制度をはじめとした地籍制度に詳しい方で、今回もすっかり頼りにしています)とともに、ソウルに行きます。

10.14-15(木・金)日調連研究所会議

10.16(土) G空間EXPO2013 が「日本科学未来館」で開催され、日調連として「UAVと3D地籍制度~水平型社会が創る新たな登記制度を考える~」と題するシンポジウムを開きますので出席します。