本当かどうか知りませんが、「ピラミッドの壁に『近頃の若い者はなってない』と書かれていた」という話があります。これが本当だとすると、「近頃の政治家はひどい」というような落書きもどこかにあったのではないか、と思います。それほど言い尽くされていることですので、今更言うのも気が引けるのですが、本当に近頃の政治家はひどい、と思わせられざるをえないような「通常国会」が先日終わりました。
「働き方改革国会」と銘打った国会でしたが、「働き方改革」という言葉が喧伝された(こと自体はいいことだと思いますが)わりには、中身が乏しいというか、大筋としては逆方向であることが明らかになりましたし、そもそも後世には「モリカケ国会」と言われる(わりには成果の乏しい)ものに終わってしまったように思えます。
特にひどかったのは、終盤における「参議院議員定数」「カジノ」の2法です。「国民の代表の選出方法」という基本的問題について、「三権」の他の一つからの指摘をまともに受けない「定数改革」、「成長戦略」の「目玉」として「賭博」を挙げる「カジノ法」、本当に「近頃の政治家はひどい」の一語に尽きるような気がします。
その一語に尽きてしまったのですが、私たちとしてはどのように考えるべきなのか?ということについて、考えるための前提として、隣接業界の動向を紹介しておくことにいたします。
「カジノ法」について、です。
この「カジノ法」について、日司連では「会長声明」を6月5日に出しています。以下引用します。
この「カジノ法」に反対する旨の声明は、日弁連でも出しています。これも引用しておきます。
日弁連の声明の方は、ずいぶんとあっさりしたもので、もう少し踏み込んでほしいな、という印象がありますが、いずれにしてもそれぞれの資格者団体が、資格者としてかかわっている業務・社会的問題との関連において、「カジノ法」というものに向き合って態度をあきらかにしていると言えるでしょう。社会的な問題にかんする専門家団体の「会長声明」として、あるべき姿を示しているものだと言えるでしょう。
特に、日司連は、「登記業務」以外の問題に関しては、非常に積極的なかかわり方をしており、それをきっちりと社会的に表明する姿勢には感心致します。願わくば、その姿勢が自らの「既得権益」的なものにも切り込むような全般的なものであっていただければ、と思うところです。
土地家屋調査士の場合は、業務的に「カジノ」に関わるところがあるわけではないので、特に何かを言わなければならない、ということではない、とは思います。土地家屋調査士が対象としている業務分野というのは、非常に狭いものであるので、何かを言わなければならない、という場面があまりあるわけではないわけです。
しかし、だからこそ、その狭い守備範囲内に入ってきた問題に関しては、しっかりとした対応をすることが必要なのだと思います。そして、その対応というのは、既に国会まで上げられることへの尻押し的なことだとか、行政が既に問題にしていることへの追随ではなく、「現場」をもつ民間の専門家であればこそ示すことのできる先見性を示すものであるべき、だと思いますので、他団体の優れた取り組みには学びつつ、しっかりとした対応をとれるようにしていただければ、と思います。
最後に、「カジノ」に関する私の個人的「経験」とそこからの意見。
私自身はギャンブルというものにまったく向かない性格なので、カジノはおろかパチンコ屋にも行ったことが(少なくともこの10年は)ないのですが、4年前に「国際地籍シンポジウム」が韓国のソウル市江南であったときに「カジノ」を見たことはあります。
シンポの会場は、「COEX(コエックス)」というところでした。「COEX(コエックス)」は、次のような所です。
この江南COEX(コエックス)が、日本において作ろうとしているカジノ(を含むIR)とどのような関係にあるのかわかりませんが、江南のカジノは「自国民入場禁止」であるのに対して、日本で作ろうとしている者は「自国民OK」ですので、おそらくは「それ以上」のものが構想されているのかと思います。
江南のCOEX(コエックス)は「国際会議」も行える会場ですので、この「国際会議」に参加した外国人が、そのあと「カジノ」にも行く、ということが目論まれている、ということなのだと思います。
現に、私自身の見たところでも、「国際地籍シンポ」に参加した日本側参加者の最高責任者は、会議終了後、参加者たちとの意見交換もそこそこに、いそいそとカジノへと向かっていました。国内・国外を問わずせっかくの交流や意見交換の機会である「国際会議」の場も、そこに「カジノ」があることによって、その機会を奪われてしまうのか!?と、虚しく思ったものです。
そのような、わずかな「カジノ」をめぐる経験ではありますが、その程度のことを踏まえても、やっぱり賭博を「成長戦略」にしようとする発想の貧しさを、そこから考えざるを得ないところなのです。
「働き方改革国会」と銘打った国会でしたが、「働き方改革」という言葉が喧伝された(こと自体はいいことだと思いますが)わりには、中身が乏しいというか、大筋としては逆方向であることが明らかになりましたし、そもそも後世には「モリカケ国会」と言われる(わりには成果の乏しい)ものに終わってしまったように思えます。
特にひどかったのは、終盤における「参議院議員定数」「カジノ」の2法です。「国民の代表の選出方法」という基本的問題について、「三権」の他の一つからの指摘をまともに受けない「定数改革」、「成長戦略」の「目玉」として「賭博」を挙げる「カジノ法」、本当に「近頃の政治家はひどい」の一語に尽きるような気がします。
その一語に尽きてしまったのですが、私たちとしてはどのように考えるべきなのか?ということについて、考えるための前提として、隣接業界の動向を紹介しておくことにいたします。
「カジノ法」について、です。
この「カジノ法」について、日司連では「会長声明」を6月5日に出しています。以下引用します。
日本司法書士会連合会 会長 今 川 嘉 典
声明趣旨
特定複合観光施設区域整備法案、いわゆるカジノを含む統合型リゾート実施法案(以下「IR実施法案」という。)に強く反対し、その廃案を求める。
声明の理由
IR実施法案は、本年4月27日に閣議決定され、本年5月22日に衆議院本会議で審議入りした。
その概要は、特定複合観光施設(IR)区域制度、カジノ規制、入場料・納付金等、カジノ管理委員会の設置などであるが、現状でも社会問題となっているギャンブル依存症者数がカジノ解禁により更に増加することが懸念される。その対策として、ギャンブル等依存症対策基本法案が上程(・・・)されており、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」の策定等を軸にギャンブル依存症対策を講じようとしているが、その条文は抽象的で、多くは努力規定であり、具体的依存症対策が十分に講じられているとはいえず、カジノ解禁を急ぐ今回の審議は時期早尚である。
また、IR実施法案第85条「特定資金貸付業務の規制」では、一定の規制はあるものの外国人観光客や日本人がカジノ事業者からの借入れを可能としている。借入れをしてまでカジノで遊興にふけることを法律で認めることは、依存症対策どころか、新たな多重債務者を生み出すことにもなりかねない。
政府与党は、「『IR(統合型リゾート)推進法』に基づき、様々な懸念に万全の対策を講じて、大人も子どもも楽しめる安心で魅力的な日本型IRを創りあげます。」と公約を掲げているが、対策は不十分であるといわざるを得ず、現状では依存症患者や多重債務者を増加させる危険性が極めて高いといえる。
よって、当連合会は、IR実施法案に強く反対し、その廃案を求めるものである。
声明趣旨
特定複合観光施設区域整備法案、いわゆるカジノを含む統合型リゾート実施法案(以下「IR実施法案」という。)に強く反対し、その廃案を求める。
声明の理由
IR実施法案は、本年4月27日に閣議決定され、本年5月22日に衆議院本会議で審議入りした。
その概要は、特定複合観光施設(IR)区域制度、カジノ規制、入場料・納付金等、カジノ管理委員会の設置などであるが、現状でも社会問題となっているギャンブル依存症者数がカジノ解禁により更に増加することが懸念される。その対策として、ギャンブル等依存症対策基本法案が上程(・・・)されており、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」の策定等を軸にギャンブル依存症対策を講じようとしているが、その条文は抽象的で、多くは努力規定であり、具体的依存症対策が十分に講じられているとはいえず、カジノ解禁を急ぐ今回の審議は時期早尚である。
また、IR実施法案第85条「特定資金貸付業務の規制」では、一定の規制はあるものの外国人観光客や日本人がカジノ事業者からの借入れを可能としている。借入れをしてまでカジノで遊興にふけることを法律で認めることは、依存症対策どころか、新たな多重債務者を生み出すことにもなりかねない。
政府与党は、「『IR(統合型リゾート)推進法』に基づき、様々な懸念に万全の対策を講じて、大人も子どもも楽しめる安心で魅力的な日本型IRを創りあげます。」と公約を掲げているが、対策は不十分であるといわざるを得ず、現状では依存症患者や多重債務者を増加させる危険性が極めて高いといえる。
よって、当連合会は、IR実施法案に強く反対し、その廃案を求めるものである。
この「カジノ法」に反対する旨の声明は、日弁連でも出しています。これも引用しておきます。
当連合会は、これまで一貫してカジノの解禁に反対してきた。
我が国の刑法は、賭博行為を犯罪とし、これまで、公営ギャンブルについて、例外的に特別法で違法性を阻却する際には、目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体への公的監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止等を考慮要素として、慎重な検討が行われてきた。そのため、民間賭博が認められることはなかった。
しかし、カジノは、我が国で初めて民間賭博を公認し、民間事業者が、営利の目的でギャンブル事業を営むことを認めるものである。
当連合会は、特定複合観光施設区域整備法案に改めて反対し、廃案を求めるものである。
2018年(平成30年)6月19日 日本弁護士連合会 会長 菊地 裕太郎
我が国の刑法は、賭博行為を犯罪とし、これまで、公営ギャンブルについて、例外的に特別法で違法性を阻却する際には、目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体への公的監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止等を考慮要素として、慎重な検討が行われてきた。そのため、民間賭博が認められることはなかった。
しかし、カジノは、我が国で初めて民間賭博を公認し、民間事業者が、営利の目的でギャンブル事業を営むことを認めるものである。
当連合会は、特定複合観光施設区域整備法案に改めて反対し、廃案を求めるものである。
2018年(平成30年)6月19日 日本弁護士連合会 会長 菊地 裕太郎
日弁連の声明の方は、ずいぶんとあっさりしたもので、もう少し踏み込んでほしいな、という印象がありますが、いずれにしてもそれぞれの資格者団体が、資格者としてかかわっている業務・社会的問題との関連において、「カジノ法」というものに向き合って態度をあきらかにしていると言えるでしょう。社会的な問題にかんする専門家団体の「会長声明」として、あるべき姿を示しているものだと言えるでしょう。
特に、日司連は、「登記業務」以外の問題に関しては、非常に積極的なかかわり方をしており、それをきっちりと社会的に表明する姿勢には感心致します。願わくば、その姿勢が自らの「既得権益」的なものにも切り込むような全般的なものであっていただければ、と思うところです。
土地家屋調査士の場合は、業務的に「カジノ」に関わるところがあるわけではないので、特に何かを言わなければならない、ということではない、とは思います。土地家屋調査士が対象としている業務分野というのは、非常に狭いものであるので、何かを言わなければならない、という場面があまりあるわけではないわけです。
しかし、だからこそ、その狭い守備範囲内に入ってきた問題に関しては、しっかりとした対応をすることが必要なのだと思います。そして、その対応というのは、既に国会まで上げられることへの尻押し的なことだとか、行政が既に問題にしていることへの追随ではなく、「現場」をもつ民間の専門家であればこそ示すことのできる先見性を示すものであるべき、だと思いますので、他団体の優れた取り組みには学びつつ、しっかりとした対応をとれるようにしていただければ、と思います。
最後に、「カジノ」に関する私の個人的「経験」とそこからの意見。
私自身はギャンブルというものにまったく向かない性格なので、カジノはおろかパチンコ屋にも行ったことが(少なくともこの10年は)ないのですが、4年前に「国際地籍シンポジウム」が韓国のソウル市江南であったときに「カジノ」を見たことはあります。
シンポの会場は、「COEX(コエックス)」というところでした。「COEX(コエックス)」は、次のような所です。
ソウル江南(カンナム)エリアの三成(サムソン)にある「COEX(コエックス)」は、国際展示や国際会議、文化・芸術行事などが数多く行われているコンベンションセンターです。地上4階、地下4階、総面積は東京ドーム約9個分(43万平方メートル)。地下には人気のショッピングセンター「スターフィールド COEX MALL」があり、水族館や劇場、映画館などのレジャー関連を兼ね備えた、巨大複合施設となっています。ビジネスに、観光に、平日は14万人、週末は25万人も訪れるスポット。
この江南COEX(コエックス)が、日本において作ろうとしているカジノ(を含むIR)とどのような関係にあるのかわかりませんが、江南のカジノは「自国民入場禁止」であるのに対して、日本で作ろうとしている者は「自国民OK」ですので、おそらくは「それ以上」のものが構想されているのかと思います。
江南のCOEX(コエックス)は「国際会議」も行える会場ですので、この「国際会議」に参加した外国人が、そのあと「カジノ」にも行く、ということが目論まれている、ということなのだと思います。
現に、私自身の見たところでも、「国際地籍シンポ」に参加した日本側参加者の最高責任者は、会議終了後、参加者たちとの意見交換もそこそこに、いそいそとカジノへと向かっていました。国内・国外を問わずせっかくの交流や意見交換の機会である「国際会議」の場も、そこに「カジノ」があることによって、その機会を奪われてしまうのか!?と、虚しく思ったものです。
そのような、わずかな「カジノ」をめぐる経験ではありますが、その程度のことを踏まえても、やっぱり賭博を「成長戦略」にしようとする発想の貧しさを、そこから考えざるを得ないところなのです。