北朝鮮が、長距離ミサイルを「人工衛星」だと言って発射しようとしています。この手の強弁、ごまかしは毎度のことで、「北朝鮮らしい」と思わざるを得ません。
しかし、日本でもそんなに変わらないな、と思わされることがあります。AIJ投資顧問の詐欺師の「だますつもりはなかった」もそうですが、「4年間消費税はあげない」と言って獲得した議席で、「消費税増税法」を成立させようとしている野田総理が、「実際に上がるのは、2014年4月だから公約違反ではない」と言うのは、「人工衛星」の話とたいして変わらないのではないか、と思えます。だって、立法府たる国会議員の選挙だったわけですから、法律をどう作るのか、が問題なのであって、実際に上がる時期、というのは本来関係ない話でしょう。
消費税については、いろいろな問題があるのだと思いますが、どういう視点から政策・方針が決められるのか、という問題において、論点のズレがあるように思えるので、それについて少し書きたいと思います。
何度も同じことを言っているのですが、なんらかの政策・方針を考えるときには、「目的」があります。その目的には、「大目的―中目的―小目的」という階層構造があることを意識することが大事だと私は思っています。具体的な目標として「小目的」に向かうわけですが、その場合には、あくまでも「大目的」を見失わないようにしなければならない、というのが注意すべきことです。そうしないと、「小目的」は達成できたけど「大目的」には、なんら近づかなかった、ということになりかねません。
たとえば、・・・・と言ってあげる例がとってもつまらないもので恐縮ですが・・・・、「フルマラソンを走る」ということを「大目的」にします。そのために、「月間200㎞走ろう」という「中目的」を決め、そのために「1日10㎞走る」という「小目的」を立てます。「今日は風邪気味だからどうしよう」と思った時に、「小目的」の実現を優先して無理して走ったら、風邪が悪化してその後1週間走れなくなってしまった、というようなことがあるとその先の目的が達成できなくなります。あるいは、足が痛くなってきたけど「月間200㎞」を達成するために無理して、足を決定的に痛めてしまう、というようなこともありえます。近い目的を重視して、最終的な目的を達成できなくなってしまう、ということは、もっと複雑な社会的な問題においては、よくありうることなのだと思いますので、注意して考える必要があるのだと思います。
その上で、「目的」としている事柄の性格にも注意する必要があるのだと思います。その性格というのは、「目的」が、「理念的にやらなければならない性格のもの」なのか、「実利的にやった方がお得と言う性格のもの」なのか、ということです。
消費税の話に戻りますと、消費税増税について、あたかも「理念」の問題であるかのように言われている気がするのですが(だから「命を懸けて」とかもでてくるのでしょう)、この問題はあくまでも「実利」の問題として考えるべきだと思うのです。「実利的に消費税を上げた方がお得なのかどうか?」ということを、個別具体的に、そして実証的に考えてみるべきなのでしょう。そういうところから、「そもそも増税が必要なの?」とか、「増税が必要だとしてそれは消費税によるべきなの?」とか、「国民の各層に対する影響はどうなの?」ということが考えられるべきなのだと思います。そういうことを抜きにして、「やらなければならない大義」みたいにして問題が立てられてしまうと、ちょっと違うんじゃないかな、と思わされるわけです。
このような、「政策・方針の考え方」は、ぐっと小さい規模の話になりますが、私たちの会における「政策・方針」を決めるときにも考えなければならない問題です。目先の具体的な問題に取り組んでいると、その問題をクリアすることに神経が集中して、その先の大きな目的を見失う、ということがありがちです。今やろうとしていることは何のためのことなのか?ということをもう一度考え直しながら、次の一歩を踏み出していく、ということが必要なのだと思います。