大分の土地家屋調査士ブログ

「土地家屋調査士の業務と制度」を中心に、それに広い意味で関連する様々なことについて一人の人間として思うところを書きます。

オンライン登記申請における法定外添付書類の原本提示不要の取り扱い

2015-06-03 16:24:57 | 表示に関する登記
すでに各会を通じてお知らせされている「オンライン登記申請における法定外添付書類の原本提示不要の取り扱い」が6月1日から開始されました。

これは、表示に関する登記の申請に当たって何らかの証明情報を添付する必要のある場合がありますが、オンライン申請の方法をとる場合には、「当該書類に記載された情報を電磁的記録に記録したものを添付情報とすることができる」(不動産登記令13条1項)こととされているものの、その場合には「登記官に当該書面を提示」しなければならないものとされていること(同2項)を受けて、法律で定められているわけではないが各法務局の要領等で添付を求めている情報についても同様の取り扱いをしていたことをあらためて、オンライン申請で資格者代理人が「原本に相違ない」旨の証明をした場合には原本の提示を不要とする取扱いにする、というものです。

まず初めに断っておきますが、私は、この新しい措置について、とても意義の大きいものだと思っています。この取り扱いの下で、適正で円滑な登記処理が行われるように努めるべきであり、間違ってもこの措置を悪用する不正・偽造等が行われないよう、適正な実施を図るべきものだと思っています。

その上で、細かい言葉の問題のように思われるかもしれませんが、この措置について私は「原本提示の省略」ではなく、「原本提示を不要とする取扱い」という言い方(用語)を使っています。「省略」というのはもともとしなければならないとされていることをしなくてもいいようにする場合に使うべきものなのであり、「法令で定められているわけではないもの」について使うのが適当でないように思えるからです。
登記事務のような行政事務を行っていくとき、たしかに法令で定められているものしかできないと硬直して回らなくなっていってしまいますから、通達や運用でいろいろなことを決めて実際に動かしていくようになります。これ自体が悪いことであるわけではありません。ただ、そのようにしてやっていく中で、「どれが法令に基づくもので、どれがそうではないのか」ということがゴッチャになってわからなくなってしまう、というのはよろしくないのだと思います。そして、これまで往々にしてそのような傾向があったように思えるので、あえて注意しておくべきだと思うのです。

この「原本提示を不要とする取扱い」というのは、「オンライン手続の利便性向上」を目指して行われるものですが、私は単に「オンライン促進」という意味だけのものではない、と思っています。「オンライン」という新しい技術上の手段を使って行政事務を行っていく中で手段だけの問題ではなく行政事務そのもののあり方も変わっていく、というところに意味があると思うのです。すなわち、これまでは「原本書類を見てその真正性を確認する」というところに「審査」の肝心な部分を置いていた、というところがあるのだと思いますが、そういう部分について「手段」を変える中で変化してくる、ということです。登記手続きにおける「審査」の性格の変化であり、それに対応しての「資格者代理人の役割」の変化です。
特に筆界確認書について、その「原本性」ではなく調査士が認証した内容が重視されるようになる、という質的な転換があるように思えます。
これらの意義を確認しつつ、適正な運用・実施に努めていきたいと思います。
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筆界特定制度の運用―費用の問題

2013-09-27 08:50:08 | 表示に関する登記

某県の知人の調査士から筆界特定手続きのなかにおける「測量費用」の問題についての報告・相談を受けました。

彼が代理人を務めている筆界特定手続きにおいて、十分な調査・測量をおこなったうえでそれらを提供して申請しているにもかかわらず、手続きの中における「測量費用」として「50万円」を予納するように、との話があった、ということです。しかも、「測量内容」は、申請人代理人の提出した測量成果の「点検」だということであり、「手続きの過程で測量費用が必要になるのだから、代理人はあまり測量などしない方がいい」というようなことまで言われているそうです。

もしも、このような運用がおこなわれることが常態となってしまうようなことがあるとすれば、制度そのものがダメになってしまうような、そういう問題を孕むことであるように思えます。

そこで、筆界特定制度とその中における「測量費用」の問題について、少し考えてみることにしたいと思います。

まずは、一時期「はやい、安い、うまい」という牛丼のようなスローガンが筆界特定制度について使われることがあり、これにはあまり私は賛同できないのですが、「安い」=国民の費用負担の軽減については、私たち土地家屋調査士の関与を含めて、従来の手続きに比べて優位性を持っているだろうし、その運用が適切になされるべきなのだと思います。

  この点については、筆界特定制度の創設にあたっての国会付帯決議において、「筆界特定制度において申請人が負担する申請手数料及び手続費用については、筆界の有する公共性にかんがみ、国民に過大な負担を強いることのないよう、公費負担を含め、十分な検討を行うこと」とされていますし、法務局の筆界特定のリーフレット(Q4)でも、筆界特定制度の特色として、筆界特定制度を活用することにより,裁判よりも迅速にトラブルを解決することができ,費用負担も少なくてすむ、とされているのであり、運用にあたっては、このことを踏まえての運用に心掛けるべきだと思われます。<o:p></o:p>

もうすこし具体的に言うと、法務省民二第2760号平成17126日民事局長通達89(1)ウにおいては、「申請人又は関係人その他の者から測量図の提供があった場合において、現地と照合し、現況把握調査における測量結果に代わるものと認められるときその他現況を把握することが可能な図面が存在するときは、ア(現地の測量)を要しないとされています。

その解説(『平成17年 不動産登記法等の改正と筆界特定の実務』登記研究編集室編 テイハン)において、「筆界特定の申請時又はその後において、申請人又は関係人その他の者から測量図その他の図面があった場合において、これを現地と照合し、現況把握調査における測量結果に代わるものと認められるとき、(中略)現況把握調査のための測量を要しないとされている。例えば、土地家屋調査士が代理人となって筆界特定を申請する場合には、申請にあたって代理人があらかじめ対象土地について測量を行い、現況把握調査に代わる図面の作成を行うことが考えられる。とされています。

これらは、筆界特定制度を設けた趣旨から当然にでてくる運用方針であると思えますし、ごくごく常識的なあたりまえのこととさえいえるようなことだと思われます。

 

このようなことから、法務局の筆界特定のリーフレット(Q6)では、手続を迅速に進めるため,お手持ちの資料をできるだけ提出していただけると助かります、として申請人等関係者からの資料提供を促し、それらを有効に利用することによって、迅速で低負担な手続きの実施を求めているのだとおもえます。

要するに、申請人・関係人において必要な資料を提出した場合には、その事項に関して手続過程で別の費用を必要とさせないような運用を行うことが求められている、ということです。<o:p></o:p>

相談のあった件においては、代理人が測量した基準点測量成果、周囲境界標等の座標データ及び測量点の写真の提供がなされている、ということですから、、筆界特定手続の中で別途の費用(測量費用の予納の費用)を発生させないような運用が求められている、と考えるべきでしょう。 

もちろん、申請人から測量成果の提供があったからと言って、筆界調査委員や筆界特定登記官が、それを無前提に正しいものとみなすようなことをするべきだと言っているわけではありません。その点検はしっかりと行うべきです。それは、筆界調査委員なり補助職員なりのところでやればいいことです。測量能力のある筆界調査委員が選任されて事件の調査にあたっているのには、こういうことができるから、ということもあるのでしょう。

また、もしも申請人の提供したデータでは不足がある、というのであり、なおかつそれが筆界調査委員などにおいて測量するのには過大であったりして困難である、というのであれば、まずは申請人代理人に対して追加の資料提供を求めるべきです。それが不能であるところで、はじめて「測量費用」に関する問題が出てくる、と考えるべきなのだと思います。

筆界特定制度は、その創設から7年半余が経過し、これまでは相応の成果を残してきた、と言えると思います。しかし、その上での「馴れ」が「慢心」につながってしまうようでは、制度そのものの意義を疑われるようなことにもなりかねません。一つ一つの手続きの中における適正な実施、ということを、私たち土地家屋調査士も制度を支える者の一人として注意してみていく必要があるのだとあらためて思いました。

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なんでだろう?―登記情報サービス公図の怪

2013-03-01 13:11:23 | 表示に関する登記

登記情報サービスで、隣接する2筆の土地について公図を請求したところ、異なる記載内容のものが出てきた、ということがあった、という話を聞き、その資料をいただきました。

・・・・・うまく説明できないので、現物です。

まず、「564-5」を請求地番にしてとった公図。

2

これでは、そもそも「564-7」という土地自体の記載がありません。しかし、「564-7」を請求地番にして請求すると次のものがでてきます。

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こちらが、正しいもので、先の「564-5」を請求地番にしたときに出てきた公図は、「564-7」「564-9」という土地が存在していることを表示しておらず、したがって当然ながらその筆界線を表示していません。

こういうことは、何故おきるのでしょう?とっても不思議です。どういう仕組でこういうことがおきるのか、私にはさっぱりわかりませんが、是非原因を究明していただきたい、と思います。

公図(不動産登記法14条4項の「地図に準ずる図面」)は、少なくとも土地の配列・隣接関係を判断するための唯一と言ってもいい貴重な資料です。それをインターネットを利用して公示するシステムができているのは、とてもありがたいことなのですが、正確性に欠くようではかえって混乱をもたらしかねません。

私たち調査士からすると、このようなことがあることをも踏まえて、一資料からではなく、複数の資料からのチェックを行うことを、業務上の習慣にしておく必要がある、ということでもあるようです。

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筆界特定手続の現状について・・・弁護士の指摘を受けて考えた

2012-09-07 06:00:29 | 表示に関する登記

先日、筆界特定制度のあり方について、普段あまり話をすることのない弁護士さんと少し話をする機会がありました。

筆界特定制度の現状に対する弁護士さんの感想として「手続の過程が見えない」という不満がある、ということは以前から聞いていたのですが、この弁護士さんも同様のことを言っていました。

これについては、弁護士さんは普段ご自分が関わっている訴訟手続との関係で考えるので、そもそも異なる手続である筆界特定制度にそのまま当てはめて考えるのには酷な部分もあるのではないか、と思えるところもあるのですが、耳を傾けるべき部分もあるように思います。

たとえば、筆界特定の手続の中で、必ず行わなければならないものとされている「意見聴取期日」について、その取り扱いがきわめて形式的すぎるのではないか、という指摘があります。元来、この「意見聴取期日」については、筆界特定制度が、行政機関の筆界に関する認識を示す制度に過ぎない、とされつつ、しかし、「土地の所有権と密接に関わるものである」ということに鑑みて「手続保障」を整えることが必要、というところから設けられているもの、とされています。

このことから、「意見聴取期日」は、単に「意見を聞き置く」というものではなく、筆界の位置に関して対象土地や関係土地の所有者等にどのような考え方があり、そのことについて筆界調査委員や筆界特定登記官がどのような考え方をしているのか、ということが示されるようなものとして持たれる必要があるのだと思います。

具体的には、「意見聴取期日」の持ち方は、「基本的に関係者一堂が会する形」、すなわち筆界確定訴訟等の他の民事訴訟における口頭弁論期日のように相手方も同席して、どのような意見を述べるのかを直接見聞きできるような形で行うべき、というようなことです。これは、筆界特定制度の創設の時期における立法当事者の解説においても「特段の事情がない限り、申請人及び関係人の全員に係る期日をできるだけ同時に開くことが望ましい」と言われています(もっともこれは「手続の迅速かつ効率的な運用」の観点からいわれていることですが)。私が関与した事件でも当初の「期日」の持ち方には、そのような形で行われていたものが多くありました。ところが、最近の実際の運用に当たっては、当事者毎に時間を区切っての「期日」の設定が当たり前のようになってしまっているようです。「手続保障」の観点からも、「手続の迅速かつ効率的な運用」の観点からも見直すべきことのように思えます。

「期日」については、筆界特定登記官が主宰するものですので、直接的にあれこれ言えることでもないのですが、私たちとして直接的に言えることとしては、「筆界調査委員の現地調査」の持ち方、の問題があります。実際の運用にあたっては、この「現地調査」が通常の分筆登記等における「立会」のように捉えられているような向きもあるように思えてしまうところがあります。しかし、法令上は、あくまでも筆界調査委員が現地調査を行う際に、関係者にその旨を通知して、意見を述べたり資料を提出することができる機会を保障する、という構成になっているものです。「立会い日時」を指定して、各関係者と筆界調査委員との「1対1」の「現地調査」を行うかのような運用がなされている例も見受けられるのですが、そのような運用は制度の趣旨から言って誤っている、と言うべきでしょう。冒頭の弁護士さんも、現地で「相手方」がどのような主張をするのかを直接聞きながら、自分の意見を述べる機会はないのか?という疑問を述べていましたが、まったくもっともな疑問だと思います。これは、「手続保障」の観点からも言えることですが、筆界調査委員としての調査を尽くすための手立ての観点からも必要なことです。

また、筆界特定手続の中での資料の取り扱いをめぐる問題もあります。提出された意見・資料等について「閲覧」をすることができることになっています。これについては、立法時のパブリックコメントで「閲覧だけでなく謄写もできるようにするべき」という意見が出され、結果集約では、「実際の運用にあたっては検討する」的な回答がなされていたように記憶するのですが、実際の運用ではなされていません。これで「手続保障」の実質が保てるのか、疑問です。

そもそも、筆界特定手続の中で当事者が意見・資料を提出するときは「3部」を提出することになっています。こういう手続きの中で「3部」という数字が出てくるのは、「筆界特定登記官」「筆界調査委員」用の2部と「相手方」の計3部、というように考えるのが普通だと思いますし、おそらく当初はその設定で「3部」という数がでてきたのだと思いますが、そうは扱われていません。解説では、「通数が3通とされたのは、筆界特定手続記録につづり込むものが1通、筆界調査委員のための控えが1通、その他の予備として1通を使用するためである」などと言われていますが、「その他の予備」なんてものが数をカウントするときに許されていいのかな?と思えます。これについても、「手続保障の実質」という観点から考え直すべきことなのではないか、と思います。

筆界特定制度ができて6年余、15000件を超える手続がなされ、制度の意義が明らかになるとともに、さまざまな問題点も出てきているように思えます。特に、「裁判との関係」ということを意識して進めるべきではないか、と思っています。この6年、多くの土地家屋調査士が筆界特定手続に関与してきたわけですから、経験を共有化して、改善すべき点は改善する、という方向での作業を進めて行ければ、と思います。

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