これは、表示に関する登記の申請に当たって何らかの証明情報を添付する必要のある場合がありますが、オンライン申請の方法をとる場合には、「当該書類に記載された情報を電磁的記録に記録したものを添付情報とすることができる」(不動産登記令13条1項)こととされているものの、その場合には「登記官に当該書面を提示」しなければならないものとされていること(同2項)を受けて、法律で定められているわけではないが各法務局の要領等で添付を求めている情報についても同様の取り扱いをしていたことをあらためて、オンライン申請で資格者代理人が「原本に相違ない」旨の証明をした場合には原本の提示を不要とする取扱いにする、というものです。
まず初めに断っておきますが、私は、この新しい措置について、とても意義の大きいものだと思っています。この取り扱いの下で、適正で円滑な登記処理が行われるように努めるべきであり、間違ってもこの措置を悪用する不正・偽造等が行われないよう、適正な実施を図るべきものだと思っています。
その上で、細かい言葉の問題のように思われるかもしれませんが、この措置について私は「原本提示の省略」ではなく、「原本提示を不要とする取扱い」という言い方(用語)を使っています。「省略」というのはもともとしなければならないとされていることをしなくてもいいようにする場合に使うべきものなのであり、「法令で定められているわけではないもの」について使うのが適当でないように思えるからです。
登記事務のような行政事務を行っていくとき、たしかに法令で定められているものしかできないと硬直して回らなくなっていってしまいますから、通達や運用でいろいろなことを決めて実際に動かしていくようになります。これ自体が悪いことであるわけではありません。ただ、そのようにしてやっていく中で、「どれが法令に基づくもので、どれがそうではないのか」ということがゴッチャになってわからなくなってしまう、というのはよろしくないのだと思います。そして、これまで往々にしてそのような傾向があったように思えるので、あえて注意しておくべきだと思うのです。
この「原本提示を不要とする取扱い」というのは、「オンライン手続の利便性向上」を目指して行われるものですが、私は単に「オンライン促進」という意味だけのものではない、と思っています。「オンライン」という新しい技術上の手段を使って行政事務を行っていく中で手段だけの問題ではなく行政事務そのもののあり方も変わっていく、というところに意味があると思うのです。すなわち、これまでは「原本書類を見てその真正性を確認する」というところに「審査」の肝心な部分を置いていた、というところがあるのだと思いますが、そういう部分について「手段」を変える中で変化してくる、ということです。登記手続きにおける「審査」の性格の変化であり、それに対応しての「資格者代理人の役割」の変化です。
特に筆界確認書について、その「原本性」ではなく調査士が認証した内容が重視されるようになる、という質的な転換があるように思えます。
これらの意義を確認しつつ、適正な運用・実施に努めていきたいと思います。