「筆界が明確であると判断できる」のはどのようなときか?
まず、「連載2」で引用した大分(九州)の「土地建物実地調査要領」における「筆界の認定」に関する規定をもう一度見ます(注記的記述を一部省略しています)。
これは、ごく当然の当たり前のことを言っている規定です。このような取り扱いは当然に全国的になされて然るべきものであり、もしこれが全国的なものではない、という現状があるのだとすれば、これを全国的に共通なものとして確認するようにする、ということだけでも「筆界認定に関する検討会」の最低限の意義だと言いうるでしょう。もちろん、その上で、これに該当しない場合でも「筆界認定ができる(従って筆界確認情報の作成・提供を求めない)」場合がある、ということまで検討を進めていく必要があるわけですが。
この規定を非常に荒っぽく要約すると、「現地復元性のある筆界資料があれば、それだけで筆界認定しうる」ということになります。ここで「現地復元性のある資料」というのは、「法14条1項地図」であり、「現地復元性のある地積測量図」であるわけですが、それは要するに「各筆界点の座標値」をその情報内容とする資料、ということになります。
つまり、「地図を作成するための測量」は、「「基本三角点等を基礎として」行うこととなっています(不登規則10条3項)し、「電磁的記録に記録する地図にあっては…各筆界点の座標値を記録するものとする」(同13条2項)となっていますので、少なくとも平成17年の不登規則改正以降の法第14条第1項地図地域においては「各筆界点の座標値」が明らかになるものとなっていて、したがって「現地復元性のあるもの」と言えます。また、地積測量図についても、「基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値」(不登規則77条1項8号)ないし「近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値」(不登規則77条2項)が記載されることになっていますので、これもまた少なくとも平成17年の不登規則改正以降のものについては、「現地復元性のあるもの」と言えるわけです。
この場合には、すでに「定められた筆界」が存在し、それを現地においてピンポイントで復元できる資料があるわけですから、それだけで「筆界認定」できる、ということになります。それは、当該筆界について、境界標等の現地地物が存在する場合にはもちろん、それが存在しない場合においてもできることです。単独の資料で「筆界が明確である」と判断できるわけです。
この「単独で」ということの意味をもう一度考えておく必要があります。
そもそも「筆界」という概念は、いつかの時点でそれを「筆界」であると「定める」、ということがあったことを前提にする概念です。分筆登記によって新たに筆界が創設される、区画整理によって筆界が再編成されることによって新たに創設される、というように「創設筆界」については、筆界を「画定する」という形で「定める」ことがなされています。明治の地租改正の過程で定められた一筆の土地の外縁である「原始筆界」については、このような筆界のピンポイントでの具体的画定行為はないわけですが、過去において「筆界確認情報」等を基にして「筆界認定」を行うという形で筆界を「定める」ことがなされています。
この「筆界を定めた」ものについて、その時々に「どのように定めたのか」を記録した資料が作成されてきたわけですが、それが上記のように「座標値」の形で示されるようになったのはそう古いことではなく、全面的になされるようになったのは上記平成17(2005)年、かなり多くのケースでなされるようになったのでも平成5(1993)年からのことです。
このことから、「現地復元性のある資料は極めてまれである」と考えられがちなのですが、この15~30年ほどの間にかなり多くの「現地復元性のある資料」が蓄積されてきている、ということであり、この資料によって(単独で)筆界を認定しうる、ということを改めて確認しておく必要があります。そのように認定しうるものとして「筆界」があること(いちいち所有者同士で「確認」をしなければ前に進めないというわけではないこと)にこそ「筆界」概念の意義があるわけです。
このようなことから、「筆界認定へ向けてのフローチャート」を作るとすると、まず初めの選択肢として、「当該筆界についての現地復元性のある資料があるか?ないか?」という項目が立てられることになり、「ある」であればすぐに「筆界認定できる」に進むことになり、「ない」である場合にさらに次の問いに進むということになる、という形になります。この、その先の選択肢というのは、単独ではなく複数の要素の組み合わせによってさまざまに変わることになり、柔道の「合わせ技一本」のような形での筆界認定になります。
この「合わせ技一本」のための「個々の技」と「その合わせ方」について、以下考えていくようにします。
まず、「連載2」で引用した大分(九州)の「土地建物実地調査要領」における「筆界の認定」に関する規定をもう一度見ます(注記的記述を一部省略しています)。
(2)法第14条第1項地図が整備されている地域に所在する土地の筆界であって、当該地図の現地復元により指示される地点に地図作成当時に設置された筆界点と認められる境界標及び地図作成当時に測量の基礎となった基本三角点等が現存しており、これら複数の境界標及び基本三角点等により当該筆界を現地において復元することができる場合
(3)現地復元性のある地積測量図が提出されており、当該地積測量図の現地復元により指示される地点に地積測量図作成当時に設置された筆界点と認められる境界標、地積測量図作成の測量の基礎となった基本三角点等又は別表第4に掲げる恒久的地物が現存しており、これら複数の境界標及び基本三角点等又は複数の境界標及び恒久的地物により筆界を現地において復元することができる場合
上記の場合には筆界認定ができる(従って筆界確認情報の作成・提供を求める必要はない)ものとしています。(3)現地復元性のある地積測量図が提出されており、当該地積測量図の現地復元により指示される地点に地積測量図作成当時に設置された筆界点と認められる境界標、地積測量図作成の測量の基礎となった基本三角点等又は別表第4に掲げる恒久的地物が現存しており、これら複数の境界標及び基本三角点等又は複数の境界標及び恒久的地物により筆界を現地において復元することができる場合
これは、ごく当然の当たり前のことを言っている規定です。このような取り扱いは当然に全国的になされて然るべきものであり、もしこれが全国的なものではない、という現状があるのだとすれば、これを全国的に共通なものとして確認するようにする、ということだけでも「筆界認定に関する検討会」の最低限の意義だと言いうるでしょう。もちろん、その上で、これに該当しない場合でも「筆界認定ができる(従って筆界確認情報の作成・提供を求めない)」場合がある、ということまで検討を進めていく必要があるわけですが。
この規定を非常に荒っぽく要約すると、「現地復元性のある筆界資料があれば、それだけで筆界認定しうる」ということになります。ここで「現地復元性のある資料」というのは、「法14条1項地図」であり、「現地復元性のある地積測量図」であるわけですが、それは要するに「各筆界点の座標値」をその情報内容とする資料、ということになります。
つまり、「地図を作成するための測量」は、「「基本三角点等を基礎として」行うこととなっています(不登規則10条3項)し、「電磁的記録に記録する地図にあっては…各筆界点の座標値を記録するものとする」(同13条2項)となっていますので、少なくとも平成17年の不登規則改正以降の法第14条第1項地図地域においては「各筆界点の座標値」が明らかになるものとなっていて、したがって「現地復元性のあるもの」と言えます。また、地積測量図についても、「基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値」(不登規則77条1項8号)ないし「近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値」(不登規則77条2項)が記載されることになっていますので、これもまた少なくとも平成17年の不登規則改正以降のものについては、「現地復元性のあるもの」と言えるわけです。
この場合には、すでに「定められた筆界」が存在し、それを現地においてピンポイントで復元できる資料があるわけですから、それだけで「筆界認定」できる、ということになります。それは、当該筆界について、境界標等の現地地物が存在する場合にはもちろん、それが存在しない場合においてもできることです。単独の資料で「筆界が明確である」と判断できるわけです。
この「単独で」ということの意味をもう一度考えておく必要があります。
そもそも「筆界」という概念は、いつかの時点でそれを「筆界」であると「定める」、ということがあったことを前提にする概念です。分筆登記によって新たに筆界が創設される、区画整理によって筆界が再編成されることによって新たに創設される、というように「創設筆界」については、筆界を「画定する」という形で「定める」ことがなされています。明治の地租改正の過程で定められた一筆の土地の外縁である「原始筆界」については、このような筆界のピンポイントでの具体的画定行為はないわけですが、過去において「筆界確認情報」等を基にして「筆界認定」を行うという形で筆界を「定める」ことがなされています。
この「筆界を定めた」ものについて、その時々に「どのように定めたのか」を記録した資料が作成されてきたわけですが、それが上記のように「座標値」の形で示されるようになったのはそう古いことではなく、全面的になされるようになったのは上記平成17(2005)年、かなり多くのケースでなされるようになったのでも平成5(1993)年からのことです。
このことから、「現地復元性のある資料は極めてまれである」と考えられがちなのですが、この15~30年ほどの間にかなり多くの「現地復元性のある資料」が蓄積されてきている、ということであり、この資料によって(単独で)筆界を認定しうる、ということを改めて確認しておく必要があります。そのように認定しうるものとして「筆界」があること(いちいち所有者同士で「確認」をしなければ前に進めないというわけではないこと)にこそ「筆界」概念の意義があるわけです。
このようなことから、「筆界認定へ向けてのフローチャート」を作るとすると、まず初めの選択肢として、「当該筆界についての現地復元性のある資料があるか?ないか?」という項目が立てられることになり、「ある」であればすぐに「筆界認定できる」に進むことになり、「ない」である場合にさらに次の問いに進むということになる、という形になります。この、その先の選択肢というのは、単独ではなく複数の要素の組み合わせによってさまざまに変わることになり、柔道の「合わせ技一本」のような形での筆界認定になります。
この「合わせ技一本」のための「個々の技」と「その合わせ方」について、以下考えていくようにします。