久しぶりに、良質な小説を堪能した。ジャンルは歴史ミステリーのようだが、それに止まらずHistorian(歴史家)三代の人物描写とその関わり、そして時代背景の描写が素晴らしい。それに背景になっている地理(現、トルコ・ルーマニア・ブルガリア)の状況描写も詳細で、行ってみたい気にさせられる。
主題は、いわばお馴染みのドラキュラものといってしまえば実も蓋もないが、一度読んでみるとその素晴らしさに誰しも感嘆すると思う。
不思議なのは私の知る限り、各社で実施している(「このミステリーが凄い2007」、「ミステリーチャンネル」闘うベストテン2006、「週間文春」2006ミストリーベスト10、本格ミストリーベストテン、「本の雑誌」2006年ベスト10等)、2006年のベストテンに一つも入っていないことだ(本書の発行は、2006年2月)。
もしかして、本書がⅠ・Ⅱで1000頁にも亘る大作なので、選者の多くが読んでいなかったのでは?と疑ってしまう。
因みに、コノミス海外編で1位、ミステリチャンネルで8位、文春で1位に選ばれている「あなたに不利な証拠として」(ローリー・リン・ドラモンド)を、偶々読んでいた。私としては、Historianは、これと比較もできないくらい素晴らしい小説だと思っている。
もし機会があって、興味をお持ちなら一読をお薦めしたい。