10年前、全世界で八千万部も売り上げたミレニアム三部作(「ドラゴン・タウーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」)も著者(スティーグ・ラーソン)の突然の死で、このシリーズも終わり残念に思っていた。
そこへ昨年末、この第四部が発刊されたのには驚いた。訳者のあとがきによると、版元は10年を期に10部作にするという著者の意思を引き継いで、この第四作の著者に執筆を依頼して完成したものだという。昨年8月に全世界で刊行され、違う著者によることに賛否両論があるが、「第三部までの文体とキャラクターが研究され尽くされている」と言う評価もあり、各国でベストセラーになっているという(上巻P.355)。今後、第五・六部も刊行予定だというので楽しみ。
前三部作に登上する主な人物(ミカエル、エリカ、リスペットなど)は勿論、物語の展開も違和感なく進んでいき、とても楽しめた。
本書は、ドストエフスキーの同名の小説を下敷きにして時代設定を1995年頃(阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件)の日本に置き、実業家の黒木家に起こった父親殺しをミステリー仕立てにしたもので、上下巻で1400ページを超える大作である。
もとの小説は何十年も前に読んだので、すっかり内容を忘れてしまっていた。ミステリー仕立てとはいえ人間の心の闇に迫り、宗教がらみの記述も多いのでなかなか理解しにくい感じはする。読了まで結構時間がかかった。