風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

サッカーW杯の夢

2018-07-05 01:23:23 | スポーツ・芸能好き
 日本代表チームは、開幕前の下馬評をものともせず、決勝トーナメントまで勝ち進み、優勝候補のベルギーを相手に大いに善戦した。誰かが書いていたように、「日本もベルギーも意味もなく倒れたり、ファウルを大袈裟にアピールしたりするような見苦しいプレーをしない、日本人好みのナイスゲーム」で、8強の夢は潰えたけれども、「何が足りないんでしょうね…」と茫然自失の様子で呟いた西野監督の言葉は重いけれども、夢にもう少しで手が届きそうな、前進していることを確実に実感させるような、悔しい敗北だったように思う。
 私は気がつくとONに魅せられた野球少年で(当時は関西でも巨人戦は放映されていた)、今も普段はプロ野球やMLBを追いかけて、サッカーについては日本代表チームの俄かファンに過ぎないから、個々の技術的な側面より、大雑把な印象論になってしまうが、それにしても、ドーハの悲劇をつい昨日のように思い出し、以後、定点観測して来て、あらためて日本サッカーも強くなったものだとつくづく思う。欧州リーグで活躍する選手を中心に、技術面でも俊敏性の点でもこの四半世紀の成長ぶりには目を見張るものがあり、実際に6大会連続となるW杯・本大会出場を果たしたし、決勝トーナメント進出は3度目を数えた。
 そもそもチームプレーは、夏季五輪・陸上男子4×100メートル・リレーや、冬季五輪・パシュート女子チームの活躍を見るまでもなく、日本のお家芸と言われる。ある韓国人は、日本人と韓国人とが1対1で対決すれば、体力に勝る韓国人が強いが、2対2では、チームとして協力し合う日本人が強いだろうと言っていて、確かにそういうものかも知れないと思う。しかし、ことサッカーに限ると、獲物をゴールポストに追い詰める狩猟民族のスポーツであって、ビジネスの世界で言えばさながら自営業者が集まるコンサルタント会社のようなもので、伝統的な日本的経営を支えるような日本の組織力が必ずしも発揮できるわけではなさそうだ。むしろ日本の企業組織や官僚組織は、全体最適を目指す志は尊いものながら、組織として見れば上下の忖度やらヨコの顔を立てるやら相互牽制するやら、さまざまな力学が働いてパワーが減殺され、個の秀でた力を活かせなくて(すなわち単純計算で1+1=2以上にならず2以下になって)、しまいには太平洋戦争末期のように、組織とともに日本国も沈んでしまう・・・といった事態になりかねない。難しい競技だと思う。
 その意味で、グループリーグ第三戦の対ポーランド戦は出色だった。ゲーム終盤、時間稼ぎのパス回しをして1点差負けを能動的に選ぶと言う、日本人以外であればリーグ戦で必ずしも珍しいわけではなさそうな光景が日本人チームで見られたことに、ある種の感慨を覚えた。日本人として正攻法や潔さを求める気持ちはやまやまで、私個人としてはこれらの価値に高いプライオリティを置くけれども、いざ組織になると、それでよいとは限らないことが往々にしてある。とりわけ勝つことを義務づけられた合目的的組織にあってはなおさらである。その善し悪しはいずれにも理があって、状況に応じてとしか言いようがないように思う。
 決勝トーナメント進出を目的とするようでは、目線が低過ぎると非難する声もあった。優勝は野心的過ぎるにしても、決勝トーナメントで勝つことを目的とすれば、心の持ちようも、従って戦いぶりも、変わっていたのではなかったか、と。確かに私も会社では部下に、一つ上の目線を持てとハッパをかける。主任なら課長、課長なら部長、部長なら事業部長の目線で考えるからこそ鍛えられるし、昇進のチャンスは将来そのポストをこなせることに期待して与えられるものではなく、明日からその働きが期待できるからこそ与えられるものだからだ。しかし、何年か手塩にかけて育てたチームであればともかく、ほんの二ヶ月余り前に代表監督を引き受けたばかりの西野監督の思いや如何ばかりだったろうと思う。他力本願(同時進行のセネガル×コンロビア戦で、セネガルが失点して日本と勝ち点で並び、今回から導入されたフェアプレイ・ポイントでは日本がセネガルを上回っていたため、双方の試合が動かなければ、日本に勝ちが転がり込む)というギャンブル性を賞賛する声すらあがったが、実際のところ、ギャンブルと言うよりも、また目線の高さすら慮る余裕もなく、ただ勝ち残りの可能性が高い方を選ぶ現実的な判断に徹したのではなかったかと思う。今となっては、決勝トーナメントの戦いぶりを見た私たちとすれば、グループリーグ第三戦でよくぞ我慢して決勝トーナメントに勝ち進んだものと、見直されることはあっても、もはや弱腰批判は当たらないのかも知れないが・・・。
 そんなこんなで、例年より早く梅雨明けして、早くもヒートアップした夏なのであった。良い夢を見させてもらった。今日より明日、今年より来年、今回より次回の活躍に期待したい。
コメント
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