風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ミュシャ再び

2013-03-15 23:39:21 | たまに文学・歴史・芸術も
 先日、平日の午後をさぼって(なんて言いながら、ちゃんと半日休暇を取りました)六本木ヒルズ52階にある森アーツセンターギャラリーで開催中のミュシャ展を見に行きました。水曜日の午後とあって、サラリーマンの姿はなく、若い女性がほとんどという独特の雰囲気で、しかも混んでいたので、ちょっと戸惑うほどでした。ミュシャは、日本人、とりわけ若い女性には人気があるのでしょう。
 ミュシャは、いつ見てもいい。そこはかとなく惹かれるのは、アールヌーボーという西欧の芸術のムーブメントを代表するデザイナーであり画家でありながら、彼の絵はオリエンタルな神秘に包まれているからでしょう。それでいて日本人にはとてもマネできない色彩感覚と意匠があります。実は彼はオーストリア帝国領モラヴィア(今のチェコ共和国東部)生まれのスラブ人で、今回の展覧会に並行展示されている、彼のコレクションとされる、レースをあしらった女性用の民族衣装を見ていると、なるほど、彼の優しくも妖しい画風の原点はここにあったのかと納得いくほどの、可愛い花柄や華麗な曲線や豊かな色彩に溢れていました。それから、もう一つ、特に彼の絵の形のヒントになっているのは、教会のステンドグラスでしょう。
 そんな彼も、若いときは、舞台女優サラ・ベルナールの芝居のために作成したポスターで名を馳せ、ほかに煙草用巻紙(JOB社)やシャンパン(モエ・シャンドン社)や自転車(ウェイバリー社)などのデザインを請け負って稼ぎまったのですが、後半生では、スラブ民族の歴史や復興・独立といった民族主義的な絵ばかり手掛けるようになります。人の思いは、年齢とともに、その時代背景を映して、移ろい行くものなのですね。
 この展覧会は5月19日まで。是非、今なお新鮮なアールヌーボーの作品の数々を堪能してください。
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