友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

劇団・新感線『シレンとラギ』

2017年04月19日 18時14分26秒 | Weblog

 名演会館で上演される“ゲキシネ”を月に一度のペースで観ている。名演の会員を辞退したのに、会館にだけは通っているから照れ臭くもある。今日の映画『シレンとラギ』は、主演に藤原竜也と永作博美、脇役を古田新太に高橋克実、そしていつものメンバーが揃っていた。高田聖子さんはいつもながらエログロ路線だが、やっぱり彼女がいない劇団・新感線は考えられない。

 中島かずき作、いのうえひでのり演出は新感線の骨頂で、観る者を飽きさせない。3時間に及ぶ長丁場なのに、いったいこの先はどうなるのかと興味をそそる。「シレン」は北の国のテロリストで、南の国の支配者暗殺の命令を受けた女性。「ラギ」はシレンに暗殺を命じた北の国の重臣の息子。ふたりは一度は暗殺した南の支配者が復活したとの情報を受け、南の国へと向かう。ところが物語はここから一気に複雑になる。

 シレンに恋したラギは、「愛は知らない」と言うシレンに、ラギは「ボクが教え、あなたを守る」と迫り、ふたりは結ばれる。ところが20年前、シレンは支配者を殺すために男と女の関係となり身籠るが、その子は取り上げられた。殺される運命の子は密かに助けられ、北の国の重臣の息子として育てられた。「新しい国」を創るために反乱を起こした重臣は、シレンとラギも殺そうとする。ラギが重臣に刀を向けると南の支配者は、「お前が殺したいのは父親である私だ」と言う。

 そこでようやく気が付いた。父を殺し実の母と交わる、ギリシア悲劇の『オイディプス王』ではないか。ギリシア悲劇は悪人はいないのに、運命のいたずらで人は不幸に陥ってしまう。南の支配者も北の国の重臣も、理想の国を創ろうとしたけれど、どうしてもそこには私欲が存在する。北朝鮮と韓国の関係なのか、いや日本も含めた世界中がどこかで私欲の犠牲となっているのかも知れない。

 「中島かずきが『このラストが書きたかった』と言う願いが結実したシーンは、観客の心を強く揺さぶった」とパンフレットにあったので、思わず身を乗り出して観たけれど、ああ、こういう終わり方しかないかも知れないなあーと思った。シレンとラギは男と女であり母と子であるが、ラストは「人として」人のために尽くすということだった。北の国と南の国がどうなったのかって?それはご想像にお任せしますということのようだ。

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