しをり戸

ささやかな庭の山野草と
散歩・旅で出会った草木。 
季語・拙い俳句、
折々の写真などの記録です。

寒肥 ( かんごえ ) <季> 晩冬

2022-01-20 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 寒ごやし(かんごやし)

寒肥を皆やりにけり梅桜 ・・・・・ 高浜虚子 [虚子全集]
寒肥や花の少き枇杷の木に ・・・・・ 高野素十 [初鴉]
寒肥す反に二俵の麦なれど ・・・・・ 大野林火 [青水輪]

寒中に肥料を施すことをいいます。
田畑にもやりますが、多くは果樹や茶樹、庭木、草花などに施します。
この時期は植物も休眠しているので、施肥のさいに根を痛めてもそれほど影響がでません。
効果はすぐには現われませんが、植物の春先の活動に備えて土に肥料がゆっくり吸収され土になじみ、
春になって植物が活動を始めるころに効果が現れます。
肥料は、豆粕・油かす・糠・堆肥・ほしか、木灰、化学肥料など、遅く効力の現れるものを用います。


2022/01/19 撮影

                   

コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寒葵 ( かんあおい ) <季> 初冬

2021-01-11 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ …

軒下の日に咲きにけり寒葵 ・・・・・ 村上鬼城 [定本鬼城句集]
寒葵胸中ふかく花を秘す ・・・・・ 青柳志解樹 [松は松]
山道や落葉溜に寒葵 ・・・・・ 吉田八重子 (青山)

やや二葉葵に似ている葉は、
濃緑色でしばしば表面に白斑があり、
冬でも青く、雑木林などに自生します。
初冬から早春にかけて、暗褐色の壺状の小花を根のきわに付けます。
落葉や土になかば埋もれて咲いていることが多いので、葉をかき分けて見つけます。
寒さの中ひっそりと咲く花には、ひなびた味わいがあります。
各地に多くの種類が分布していて、
生育する場所も花の色や姿も一定しません。

  [ ウマノスズクサ科カンアオイ属の常緑の多年草 ]
  (多数の類似種の総称、狭義にはカントウカンアオイを指します)

寒葵服喪の人の文やさし ・・・・・ みなみ 

カントウカンアオイ ( 関東寒葵 ) 
日本固有種で、
関東・中部の低山地・丘陵地の林内に自生します。
草丈は、6~10cm。
根は、太く真っ直ぐで、
地下茎は短く横に這い、2~3葉をつけます。
葉は、長い葉柄を持ち、卵形または広卵形、革質で厚く、
先がやや尖り、基部は深い心形です。
濃緑色で白い斑紋があり、紋様の個体変異が著しく、
茎や葉に芳香があり、春に新しい葉を出します。
花期は、12~3月 。
根茎の先に、地表に接して筒状花を付けます。
花は、暗紫色の萼筒で、短い雄しべと花柱があり、
ガクは多肉で基部が完全に合着し、先が3裂します。
古典園芸植物の一つで、愛好家も多く、
江戸時代から栽培されて来ました。
名は、葉が葵に似ていることと、
厳冬期も葉が枯れないで青々としているので付いたそうです。
・絶滅危惧種・

2020/03/05 撮影…花

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

落葉 ( おちば ) <季> 三冬

2021-01-08 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 名の木落葉 (なのきおちば)・落葉の雨 (おちばのあめ)・落葉の時雨 (おちばのしぐれ)・落葉 (らくよう)・落葉時 (おちばどき)・落葉期 (らくようき)・落葉風 (おちばかぜ)・落葉山 (おちばやま)・落葉掃く (おちばはく)・落葉掻く (おちばかく)・落葉籠 (おちばかご)・落葉焚く (おちばたく)・落葉焼く (おちばやく)・桜落葉 (さくらおちば)・朴落葉 (ほおおちば)・槶落葉 (くぬぎおちば)・柿落葉 (かきおちば)・栗落葉 (くりおちば)・榎落葉 (えのきおちば)

皂角子(さいかし)の実は其のままの落葉かな ・・・・・ 芭蕉 [続寒菊]
焚くほどは風がくれたるおち葉哉 ・・・・・ 一茶 [七番日記]
拾得は焚き寒山は掃く落葉 ・・・・・・ 芥川龍之介 [我鬼句抄補遺]

むさしのの空真青なる落葉かな ・・・・・ 水原秋櫻子 [葛飾]
ごうごうと楡の落葉の降るといふ ・・・・・ 高野素十 [野花集]

冬になるとあらゆる落葉樹は葉を落とします。
枝を離れて落ちる葉やすでに落ちた葉を落葉といいます。
桜落葉、柿落葉のように特定の木の名をつけて季語として用います。
音もなく静かにおちる落葉や風に舞いながらおちる落葉、
風に転がる落葉の音や地に散り敷いた落葉の香など、趣のある冬の景色です。
その美しさに哀れを重ねた落葉は詩情をそそります。
落葉を誘う風を「落葉風」、
落葉が雨のようにしきりに降るさまを「落葉雨」「落葉時雨」といいます。
落葉を掻き寄せて落葉籠にいれたり、焚火にしたります。

あたたかき音の立ちくる落葉踏む ・・・・・ みなみ



コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

枇杷の花 ( びわのはな ) <季> 初冬

2020-12-23 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 花枇杷 (はなびわ)・枇杷咲く (びわさく)

枇杷の花大やうにして淋しけれ ・・・・・ 高浜虚子 [虚子全集]
蜂のみが知る香放てり枇杷の花 ・・・・・ 右城暮石 [定本 上下]
硝子戸に月のぬくもり枇杷の花 ・・・・・ 矢島渚男 [采薇]

初冬の頃、深緑色のごわごわした大きな葉の枝先に
褐色の毛を密集した太い花軸をだし、
やや黄色を帯びた白色の5弁の小花を多数咲かせます。
花期が長く翌年の3月中旬頃まで
順次開花します。
地味で目立たない花ですが、
甘い香りで花の咲いていることに気付かされます。
中軸・花柄・萼片ともに淡褐色の綿毛につつまれて、
ひっそりと控えめに咲く寂しげな姿には趣があります。
 
  [ バラ科ビワ属の常緑小高木、中国・日本原産 ]


また別の猫通り過ぐ枇杷の花 ・・・・・ みなみ


ビワ (枇杷)
関東~九州の暖温帯の、
低地~丘陵の林内や石灰岩地帯に野生化または自生しています。
中国原産説と西日本自生説があります。
現在果樹として栽培されているものは、常緑性の高木で高さ10m内外で、
枝は開出し、樹冠は円形になります。
樹高は、5~10m。
幹は灰褐色で、若枝は淡褐色の綿毛を密生します。
葉は、短い葉柄を持ち、大型の長楕円形または倒披針形状長楕円形で長さ15~20㎝、
鈍頭、基部は狭いくさび形、質は厚く硬く、縁に低い波状の鋸歯があって、互生します。
表面は光沢があり、初め有毛、あとに無毛となります。
裏面は淡褐色の綿毛が密生します。
花期は、11~翌年3月。
枝先に、円錐花序を付け、白色または帯黄白色の5弁の小花を多数咲かせ、
よい香りを放ちます。
雄しべは約20本、雌しべは子房下位で2~5心室に分かれます。
萼は5裂し、淡褐色の綿毛につつまれています。

果期は、 5~6月。
果実は、黄橙色の円倒卵形で、表面に短い綿毛があります。
大果で優良な品種が、長崎県・千葉県(房総)・鹿児島県などの
温暖な地方で栽培されています。
現在多く栽培されている田中びわは唐びわの一品種であって、果実は大きく径約4㎝あります。
葉はアミグダリンやクエン酸などを多く含み、
乾燥した葉をビワ茶とする他、
生薬の枇杷葉(びわよう)として咳止め・暑気あたり・胃腸病などに用います。
果実も咳・嘔吐・喉の渇きなどに効果があると言われています。
果肉は生食されるほか、
缶詰やゼリーなどの菓子・ジャム・果実酒などにも加工されます。
材は堅く、木刀・杖・装飾用などに利用されます。
名は、果実(または葉)の形が楽器のビワに似ていることから
付いたそうです。漢名枇杷の音読みです。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八手の花 ( やつでのはな ) <季> 初冬

2016-12-27 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 花八手 (はなやつで)・天狗の羽団扇 (てんぐのはうちわ)

八ツ手散る楽譜の音符散るごとく ・・・・・ 竹下しづの女
立つ人に困りて八ッ手の花もよし ・・・・・ 高浜虚子 [定本虚子全集]
みづからの光りをたのみ八ツ手咲く ・・・・・ 飯田龍太 [山の木]

北風の吹く、花の少ない時期に幹から白い花梗を出し、
白く小さな花を球のようにかたまって付けます。
落ち着いた静かな花が寒気の中に咲いている様子には逞しく凛々さを感じます。
生き生きと咲く花の甘い蜜に、蝿や虻・蜂などが集まってきます。
江戸時代に庭木として植えられるようになりました。

  [ ウコギ科ヤツデ属の常緑低木 ]

禁煙をはじめて四日花八つ手 ・・・・・ みなみ

子供の頃兄たちと、実を竹鉄砲に詰め、
飛ばして遊んだことを思い出します。

ヤツデ (八手)
福島県以南~沖縄にかけて、
沿海地の温暖な山林に自生します。
樹高は、2~3m。
株立ち状になります。
葉は、長い柄をもち、大型で掌状に深く7~9裂し、
質が厚く光沢があって、互生します。
花期は、11~12月。
茎頂から大きな円錐花序を出し、
白い5弁の小花を球状に多数付けます。
同じ花に雄性期と雌性期があって、雄→中性→雌へと性転換します。
果実は液果で球形、翌年の5月頃に黒く熟します。
日陰や大気汚染にも強く、丈夫で、
庭木として親しまれ、斑入りなどの園芸品種もあります。
葉を生薬の八角金盤(はっかくきんばん)として、
煎じて飲んだりうがいをしたり、
去痰・鎮咳の薬に用いました。
また葉などには、ヤツデサポニンが含まれているので
かっては殺虫剤として利用され、
手洗いの近くに植えられたりしました。
大きな葉で福を招くという縁起があり、
疫病や魔物などを追い払うとも言われて、
玄関の脇や裏口の脇に植えられたりしました。
名は、手に似た大きな葉に切れ込みが多数あり、数のよい8をとつて
付いたそうです。
別名 : テングノハウチワ (天狗の羽団扇)

2010/11/21 撮影…つぼみ
2010/12/05 撮影


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

臘梅 ( ろうばい ) <季> 晩冬

2014-02-01 |  冬の草木・その他 の 俳句

                                 ソシンロウバイ       

◉ 蠟梅 (ろうばい)・唐梅 (からうめ)・南京梅 (なんきんうめ)

臘梅や枝まばらなる時雨ぞら ・・・・・ 芥川龍之介
臘梅のつやを映しぬ薄氷 ・・・・・ 増田龍雨
臘梅の花にある日のあるとのみ ・・・・・ 長谷川素逝

厳しい寒さの頃、
日だまりに蝋のような質感で、
淡黄色の可憐な花をうつむき加減に咲かせ、
上品な香をふくいくと漂わせながら
健気に彩りを添えてくれます。
江戸時代初期に中国から渡来し、
初春の花木として珍重されています。
臘梅は、内側の花被片が暗紫色で外側が黄色の花を基本種としますが、
近頃は臘梅というと、素心臘梅のことが多ようです。
素心臘梅は、内側の花被片までも明るい黄色で、香りもより良いことから、
庭木としても好まれ、普及してよく見かけます。
蝋梅は、唐の国から来たことで唐梅とも呼ばれ、
名に梅がついていることからバラ科と思われがちですが、
梅とは別種の植物で、ロウバイ科です。

  [ ロウバイ科ロウバイ属の落葉低木 : 中国原産 ]

臘梅やこれからのこと胸のうち ・・・・・ みなみ

ロウバイ (蝋梅 : 基本種)
後水尾天皇(1611~1629)の時代に朝鮮経由で渡来し,
土壌をあまり選ばず丈夫な花木です。
樹高は、 2~4m。
幹は、叢生して分岐します。
葉は短い柄を持ち、長さ7~15cmの卵形で先が鋭く尖り,
質がやや薄くて硬く、葉面がざらつき、羽状脈があり無毛、
全縁で対生します。
開花は、1~2月。
葉に先立って、前年枝の先に、
よい香りで蝋質を思わせる花を
数個ずつ下向きまたは横向きに付けます。
花は、短い花柄を持ち、径2~2.5cmで花被が多数あります。
外層片は多数の細鱗片となり、
中層片は黄色で薄くやや光沢があり大形、
内層片は暗紫色で小さく、
雄しべは5~6個、雌しべは多数で壺状の花托の中にあります。
果実は、花の後花托が大きくなって長卵形の偽果になります。
実は、若い内は緑色で、上向きになり、木質化し褐色、短毛を密生します。
庭木や切花・盆栽などとして鑑賞されます。
開花前の蕾を日陰で乾燥させ、
生薬の蝋梅花(ろうばいか)として鎮咳・解熱・鎮痛などに用い、
花・蕾から抽出した蠟梅油(ろうばいゆ)を
軟膏などの香料として使います。
主な芳香成分はシネオール・ボルネオール・リナロール・カンファー・ファルネゾール
などの精油成分が含まれていますので、
ストレスを解消したり心身をリラックスさせる効果があるそうです。
全株、とくに種子には強い毒性のアルカロイド(カリカンチン)を含み、
誤って食べると筋肉のけいれん等を起こします。
名は、漢名の蝋梅(らーめい)の音読からロウバイとなり、
唐の国から来たこともあって唐梅とも呼ばれます。
花の色が蜜蝋に似ていて蝋細工のようだから付いたという説と、
臘月(旧暦12月)に梅に似た花を咲かせるところからという説もあります。
別名:カラウメ(唐梅)

 ロウバイ科 
ロウバイ科は東アジアとアメリカ合衆国に4属12種が分布します。
ロウバイ科を4属と区分けする場合は、
・ロウバイ属 ( Chimonanthus )
・クロバナロウバイ属 ( Calycanthus )
・ ? 属 ( Idiospermum )
・ナツロウバイ属 ( Sinocalycanthus )
になります。

ロウバイ属
原産地の中国では薬用として栽培されていましたが、
日本では観賞用庭木として広く栽培され、
素心蝋梅・満月蝋梅・唐蝋梅などの栽培品種があります。
蝋梅は実生生産しているものが多いため花に変化が多く、
満月蝋梅や素心蝋梅などは、見分けが困難です。
花芽は、春から伸びた新梢に6~7月につくられるので、
夏以降の剪定は花芽を切ることになります。
開花は冬です。
繁殖は、実生(みしょう)・株分け・接ぎ木によって行われます。
接ぎ木は、実生2~3年生苗または根を3月中旬に台木に切り接ぎます。

 ロウバイ (臘梅) 
2011/01/29 撮影…長瀞宝登山ロウバイ園
内側の花被片が暗紫色、外側の花被片が黄色で、
花は小さく、香りもやや弱い感じがします。
素心臘梅より少し遅れて開花します。
和蝋梅とも呼ばれています。
上記参照

 ソシンロウバイ (素心臘梅) 
2011/01/29 撮影…長瀞宝登山ロウバイ園
ロウバイの変種といわれ、
江戸時代には渡来していたとも
明治中期に渡来したとも言われています。
樹高は2~4m。
幹は叢生し、よく分岐します。
葉は、長さ10~20cm、卵形~長楕円形で、先が尖り、
質はやや薄く硬く、表面がざらつき、全縁で対生します。
傷をつけると芳香があります。
花期は12中旬~2月。
花は、径2.5~3cmで花弁が多数あり、
甘く清潔感のある芳香を漂わせます。
内側の花被片も、外側の花被片も同じ淡黄色で、
先端が尖っているのが特徴です。
満月臘梅より少し遅れて開花するものもあります。
果実は倒卵状楕円形で、熟すと硬くなります。
茶花として利用されます。
名は、漢名の「素心蝋梅」の音読から和名のソシンロウバイと
付いたそうです。
2014/05/05 撮影…実

マンゲツロウバイ (満月臘梅) 
2011/01/29… 撮影長瀞宝登山ロウバイ園
ソシンロウバイから選抜された園芸品種のひとつです。
樹高は2~4m。花期は12月中旬~2月。 
花は、径2~3cm、芳香があり、
花弁の色が鮮やかな黄色で、先端の丸いのが特徴ですが、
内花被片に淡紫褐色の縁取りが輪のように入るものもあります。
全体に丸みがあり全開することはありません。 

トウロウバイ (唐蝋梅) 
ロウバイの変種。
江戸時代中期から観賞用として、庭園に植えられました。
樹高は2~4m。
枝を対生し、多く分枝します。
葉は短柄を持ち、卵形または卵状楕円形で、先が鋭く尖り、
質は硬く、葉面がざらつき、基部は円形、全縁です。は
花は、昨年の葉の腋に1個ずつ下向きに密接して付き、
径2~3cmくらいです。
ロウバイよりもやや大形、
花弁もやや広く、長楕円形です。
花被は多数で、
外層片は鱗片状、
中層片は大形で、上半部のふちが多少内方に巻き
強い光沢のある黄色、
内層片は小形で暗紫色。
雄しべは5個で、葯は外向き、
雌しべは多数で凹形をした花托内にあります。
芳香があり、丸みを帯びふっくらしていて、
園芸品種の元とも言われています。
生薬の蝋梅花として、
鎮咳・解熱・鎮痛薬など風邪や喉の痛みに用います。
漢名はダンコウバイ(檀香梅)、日本名はトウロウバイ(唐蝋梅)です。
別名:ダンコウバイ(檀香梅) 

カカバイ (荷花梅) 
花弁がロウバイよりやや広く、トウロウバイより狭い中間型です。
樹高は1~2m。
繁殖は容易で、香りが薄く臘梅の中では劣ることから台木に用います。
名は、漢名の「荷花梅」から付いたそうです。

主なクロバナロウバイ属
明治中期に渡来しました。
クロバナロウバイ属は、4種からなり、
北アメリカに分布する落葉低木です。
葉と花が同時に出て、
花は前年枝の葉腋から生じる新枝に付き、
ガク片と花弁が同じ色のため
区別がはっきりしません。
交配種です。

クロバナロウバイ (黒花蝋梅) 
ロウバイ科の植物ですが、
ロウバイとは属が異なりクロバナロウバイ属の北アメリカ南東部の原産です。
樹高は2~3m。
葉は広卵形~長楕円形で長さ5~12cm、
裏面に短い軟毛が密生し、対生します。
花期は5~6月。
花は径4~6cm、暗紅紫色で、雄しべが10~30個、
フルーティーな芳香があります。
花木として庭園に栽植され,庭木や茶花にもされます。
ニオイロウバイ・アテネは 
クロバナロウバイの園芸種で、
キバナロウバイとも呼ばれるように、
色が淡黄緑色で芳香のある花を付けます。
別名 : ニオイロウバイ

アメリカロウバイ (アメリカ蝋梅)
クロバナロウバイ属の1種です。
明治時代に渡来しました。
クロバナロウバイと似ており、
樹高は2~3m。
葉は卵状長楕円形、長さ5~12cmで先がとがり、裏面が無毛です。
花期は5〜6月。
花は赤褐色で、芳香がほとんどなく、雄しべ10~30本、
庭園に栽植されたり、花色がしぶく茶花にも利用されます。

ナツロウバイ属
1属1種。
分類の仕方によっては、
ナツロウバイをクロバナロウバイ属に含めることもあります。

ナツロウバイ (夏蝋梅) 
中国原産の落葉低木です。
樹高は1~3m。。
葉は大きな長楕円形で、質は軟らかく、光沢があり、対生します。
開花は5~6月。
外側の花弁は白く縁が淡桃色になり、内側の花弁は黄色で、
径6~7cm、半八重咲きの大きい花がやや下向きに付きます。
中国名はシャラメイ(夏梅)。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬桜 ( ふゆざくら ) <季> 三冬

2013-01-06 |  冬の草木・その他 の 俳句

                               フユザクラ 
     
◉ 寒桜( かんざくら )・寒緋桜 ( かんひざくら )

山の日は鏡のごとし寒桜 ・・・・・ 高浜虚子 [六百五十句]
昼月に垂り枝のゆれて冬桜 ・・・・・ 飯田蛇笏 [春蘭]
今日ありと思ふ余命の冬桜 ・・・・・ 中村苑子 [吟遊]


俳句の上では、品種も風情も異なる
冬桜・十月桜・四季桜・子福桜・寒桜・緋寒桜 など、
冬季に咲いている桜をひとまとめにして「冬桜」と呼びます。
通常、11月から冬に咲く二季咲き性の冬桜・四季桜・十月桜・子福桜などを「冬桜」、
寒中に咲く寒桜・緋寒桜などを「寒桜」と区別して詠まれていますが、
区別せずに用いられることもあります。
* 「冬桜」を「寒桜」の傍題としている歳時記もあります。
* 「冬木の桜(三冬)」は、「枯桜」とも言い、
    葉が落ちつくして裸木となった桜の木のことです。
  
  [ バラ科サクラ属の落葉小高木 ]

きよらなる日表にあり冬桜 ・・・・・ みなみ

品種の特色

フユザクラ (冬桜) 
江戸時代後期から栽培されている二季咲き性の栽培品種で、
オオシマザクラとマメザクラの交雑種と考えられています。
葉は、小型で長さ5~7cm、
縁の線は丸みが強く、先は急にほそくなり、重鋸歯があります。
花期は、11月~12月と4月上旬。
暖地では冬の間も咲き続けます。
花は、白色の一重咲き5花弁で中輪、縁はやや外に反り、
満開を過ぎると花芯が紅色を帯びます。
群馬県鬼石町の桜山公園に植えられ、「三波川の冬桜」として有名です。
別名 : コバザクラ(小葉桜)
2013/01/12 撮影…フユザクラ「小春日」、大宮八幡

〃…フユザクラ「大宮桜」、大宮八幡   

 シキザクラ (四季桜)
マメザクラとエドヒガンの交雑種と考えられる
二季咲き性の栽培品種です。
花は、白色または淡紅色の一重咲き5花弁、
冬桜よりやや小さく花数が多く、縁はやや内側に巻きます。
品種名は四季咲きの意味ですが、
夏は開花しません。
古くから各地で栽培され、
最近は愛知県豊田市が名所として知られています。

ジュウガツザクラ (十月桜) 
マメザクラとコヒガンザクラの交雑種と考えられる
二季咲き性の栽培品種です。
花期は、10月頃~春まで。
花は、常時淡紅色の八重咲き、
花弁が細長く幅6~10cmで長さは幅の1.5倍以上、20枚以下です。
中心部の花弁は内部に巻き込みません。
樹形が小型で、庭木にも向いており、
各地で栽培されています。
2013/01/12 撮影…ジュウガツザクラ、大宮八幡

2013/01/13 撮影…ジュウガツザクラ、新宿御苑       

コブクザクラ (子福桜)
シナミザクラ(^別名;カラミザクラ)とコヒガンザクラの交雑種と考えられる
二季咲き性の栽培品種です。
花期は、10月中旬~12月下旬と4月上旬。
花は、小輪~中輪の八重咲きで、
咲き進むと花芯に淡紅色を帯びます。
丸い花弁の縁に切れ込みがあり、
中心部の花弁は内部に巻き込みます。
樹形は比較的小型、
枝がよく伸びるので切花用としても栽培されています。
2013/01/13 撮影…コブクザクラ、新宿御苑



カンザクラ (寒桜)  
ヤマザクラとカンヒザクラの交雑種と考えられる
早咲きの栽培品種です。
早咲きの中でも最も早く、寒い季節の1月に開花します。
花は、淡紅色の一重咲き、
小型の花弁で長さ幅とも10~13mm、縁は内側に巻きこみます。
静岡県熱海市などに名所があります。
2013/01/13 撮影…カンザクラ、新宿御苑 

カンヒザクラ (寒緋桜)    
台湾、中国南部~東南アジア、沖縄に自生している早咲きの野生種です。
日本では本州以南で栽培され、
早咲き品種の交配親として用いられています。
葉は、卵形で重鋸歯があります。
開花は、沖縄1月〜2月。関東地方3月中旬。
花は、緋紅色の一重咲き、
釣りがね型で半開して下向きに付きます。
花弁は散らずにガクと一緒に落ちます。
沖縄地方ではリュウキュウカンヒザクラが代表的で、
開花は沖縄本島の北部から始まり、観測対象となっています。
東京でも江戸時代後期から栽培が始まり、
花材や庭木・公園樹などに用いられています。
別名 ; ヒカンザクラ(緋寒桜)・ガンタンザクラ(元旦桜)・サツマヒザクラ(薩摩緋桜)
  [ バラ科サクラ属の落葉小高木 ]
2014/03/26 撮影…小金井

桜の開花 
・早咲きとは、
  ソメイヨシノの開花前に満開になる種類。
・同時咲きとは、
  ソメイヨシノの開花から散り終わる期間に満開になる種類。
・遅咲きとは、
  ソメイヨシノがほぼ散り終わってから満開になる種類。
・二季咲き性品種とは、
  毎年、開花が晩秋~春まで続き、
  晩秋と早春の2回開花のピークがある種類。
  春の花は秋や冬の花に比べて大型で小花柄が長いなどの傾向があり、
  かなり趣が違います。
        「サクラハンドブック」大原隆明・文一総合出版
 
桜の開花日と満開日 (気象庁の観測)
 ・ 桜の開花日とは、標本木で5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日。
 ・ 満開日とは、標本木で80%以上の蕾が開いた状態となった最初の日。
   ( 桜が開花してから満開になるまでは、数日から1週間程度かかります。)
 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寒林 ( かんりん ) <季> 三冬

2012-01-28 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 寒木 (かんぼく)

寒林の日すぢ争ふ羽虫かな ・・・・・ 杉田久女
寒林のなかうつうつと幹ばかり ・・・・・ 長谷川素逝
学園の寒林の中教師棲む ・・・・・ 松本たかし

冬木立とほぼ同じ意味ですが、
「寒」の持つ寒々とした語感から、
静まり返った凛冽の寒気と、
奥行きのある景色を感じます。
厳冬期の木立や、
葉を落としてしまって寒々とした冬の落葉樹の群立
などを言います。
寒中の林と言うよりも厳冬期の林と広い意味で用いられます。
寒木は、一本の木の場合です。

遠くより見し寒林の内に今 ・・・・・ みなみ



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紅葉散る ( もみじちる ) <季> 初冬

2011-12-18 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 散紅葉 ( ちりもみじ )

たふとかる涙や染めて散る紅葉 ・・・・・ 芭蕉
磐石を刳(く)りて磴とす散紅葉 ・・・・・ 松本たかし
散るのみの紅葉となりぬ嵐山 ・・・・・ 日野草城 

冬に入って、
紅葉した木の葉が散ってゆくことです。
地面に散り敷くもの、
川や池の水面もに散っていくものなど、
紅葉の行方は様々ですが、
それぞれに美しく、はかなさもあります。
散り落ちた紅葉を「散紅葉」と言います。
* 紅葉且つ散る(秋)

社まで紅葉散り敷くまがり径 ・・・・・ みなみ


2011/12/18 撮影


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

敷松葉 ( しきまつば ) <季> 初冬

2011-11-24 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ …

庭石の裾のしめりや敷松葉 ・・・・・ 高浜虚子 [虚子全集]
北向の庭にさす日や敷松葉 ・・・・・ 永井荷風 [荷風句集]

腰窓の障子灯る敷松葉 ・・・・・ 富安風生 [十三夜]

冬の庭園に枯れた松葉を敷くことです。 
苔が霜でいたむのを守るために敷くのですが、
常盤木の緑と敷松葉の茶色との対比で
庭に雅趣を添えるということもあります。
庭の一部を区切って敷いたり、
一面に敷いたりします。
茶道では、
炉開き(陰暦10月初旬の亥の日)とともに露地に松葉を敷き、
正月から少しずつ拾い取り、
炉塞ぎ(陰暦3月晦日)には全部を取り去ります。

敷松葉敷く指先の昏れゆきぬ ・・・・・ みなみ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

千両 ( せんりょう ) <季> 三冬

2011-11-19 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 仙蓼 (せんりょう)・草珊瑚 (くささんご)・実千両 (みせんりょう)

千両や大墨にぎる指の節 ・・・・・ 長谷川かな女
名は千両といふ明るくて寂しくて ・・・・・ 有働 亨
山より日ほとばしりきぬ実千両 ・・・・・ 永田耕一郎

実の付いた千両のことをいいます。
小さいつぶらな赤い実がかたまって付き、
鮮緑色のつややかな葉の上に美しく輝き、
冬の庭をひきたてます。
縁起物に相応しい風情があり、
正月用の重要な花材(切花)や鉢植えとして栽培れます。
古くは生け花で「仙蓼果・仙蓼花」と記され、
江戸時代初期以降は「千両」という表記がひろまりました。
千両を詠んだ江戸時代の例句は少なく、
麦雨の
「せんれうや猟師わけ入(る)山の口」が秋季として一句載っています。
冬季としての句は明治時代にも見当たりません。
昭和になってから
長谷川かな女の
「千両や大墨にぎる指の節」や
今井つる女の
「千両の実をこぼしたる青畳」
石田破郷の
「いくたび病みいくたび癒えき実千両」などの
句が歳時記に載っています。
変種の黄実の千両は果実が黄色く熟します。

  [ センリョウ科センリョウ属の常緑小低木 ]

千両のみな啄まれ寒にいる ・・・・・ みなみ

センリョウ (千両)
日本では、
本州中部以西~沖縄の
暖地の常緑樹林下に自生します。
高さは、50~100cm。
茎は、緑色でふくれた節があり、
枝は、少し分岐し節が隆起します。
葉は、長楕円形で光沢があり、
先が尖って縁に鋸歯を持ち、対生します。
花期は、7~8月。
茎の先に、黄緑色の細かい花を
短い穂状花序に付けます。
花被がなく、雄しべ・雌しべともに1個。
果期は10~1月、
果実は径6㎜球形の液果で、
10月頃から赤く熟し、翌年2月頃まで見られます。
変種のキミノセンリョウ(黄実の千両)は果実が黄色く熟します。
観賞用として庭園に植えられ、
また名前がめでたいので
正月の縁起物とされ、生花として用いられます。
名はヤブコウジ科の万両に対して付いたそうです。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石蕗の花 ( つわのはな ) <季> 初冬

2011-11-18 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 橐吾の花 (つわのはな)・いしぶき・石蕗の花 (つわぶきのはな)

ちまちまとした海もちぬ石蕗の花 ・・・・・ 一茶
静かなる月日の庭や石蕗の花 ・・・・・ 高浜虚子
茎高くほうけし石蕗にたもとほり ・・・・・ 杉田久女

花の少ない晩秋から初冬にかけ、
暖地の海辺や崖などに黄色い花を咲かせて
周りを明るくします。
濃緑色の厚い葉にはつやつやと光沢があり、
葉よりも高く伸ばした花茎の上部に、
菊に似た鮮黄色の花を多数付けます。
もの静かな趣があり、
庭園や茶庭の下草などにも植えられ、
古くから親しまれて来ました。

  [ キク科ツワブキ属の常緑多年草 ]

石蕗咲くやよく効くといふ鍼灸師 ・・・・・ みなみ

草庭のツワブキは、
例年より遅めの花が
やっと開いてきました。
小春日の石蕗の花には
黄蝶が訪れて羽を休めます。

ツワブキ (石蕗) 
日本では、
本州太平洋岸の福島県以南と日本海岸の石川県以南~沖縄の、
海岸や海辺の山に自生します。
草丈は、30~75cm。
葉は、長い柄を持た、腎心形で厚く光沢があり、根生します。
花期は、10~12月。
30~70cmの花茎を出し、菊に似た黄色の頭花を付けます。
花径5cm、管状花と舌状花からなり、散房状に付きます。
果実は、そう果で密に毛があり、冠毛は長さ1㎝です。
日本では、17世紀後半ごろから観賞用として栽培されるようになり、
多くの園芸品種があります。
美しい葉には斑入りなどもあり、
古くから寺院の庭園や茶庭の下草として重用されています。
若い葉柄は、食用にまた薬用にも用い、
特に魚毒を消すと言われています。
葉は、民間薬として腫物・湿疹などに利用されてきました。
名は、葉が蕗に似ていてつやがあることから付いたそうです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

茶の花 ( ちゃのはな ) <季> 初冬

2011-11-15 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ …

茶の花に人里ちかき山路かな ・・・・・ 芭蕉
茶の花や裏門へ出る豆腐売り ・・・・・ 蕪村
茶の花のひそかに蘂の日をいだく ・・・・・ 長谷川素逝

芳香があり、
ふっくらとした白い花弁に金色の雄しべが輝き、
おだやかな陽光を浴びて下向きに咲く、
しずかな佇まいの花です。

  [ ツバキ科チャノキ属の常緑低木、中国南西部原産 ]

母とゐる刻ゆるやかにお茶の花 ・・・・・ みなみ

チャノキ (茶の木)
日本で栽培されている中国種は、
奈良時代に伝来し、
鎌倉時代以降、各地に広まりました。
樹高は、2~3m。
根は深根性で、主根は深く枝根は浅く広がります。
木質は堅く、樹皮は滑らかで、多数の枝を生じ、
若い枝は褐色、古くなると灰色になります。
春になって枝に芽ばえた新梢に多数の葉を付けます。
葉は、短い葉柄をもち長楕円形、
薄い革質の濃緑色で光沢があり、
縁には細鋸歯があって全体に波打ち、互生します。
花期は、10~12月。
花は、枝の先端および葉腋にそれぞれ2~3個付けます。
花径2~2.5cm、花弁は白色または淡紅色で5~8枚、
芳香のある花を下向きに付けます。
雄しべは多数で、基部が花冠と融合します。
果実は無毛の朔果で、翌年秋に成熟します
直径1.5~2cmの球形、熟すと3裂します。
葉を摘採して加工し、飲料として広く利用します。
製品は、製茶法によって、不醗酵茶(緑茶)・半醗酵茶(ウーロン茶・包種茶)・
醗酵茶(紅茶・紅だん茶)の3種に大別されます。
保健上有効な成分を含み、
古くから薬用として広く用いられてきました。
名は、漢名の茶の音によることから付いたそうです。

品種は、
中国や日本で栽培されている
葉の小さい低木(2~3m)の中国種(中国南西部原産)と、
インド・スリランカなどで栽培されている
葉の大きい高木(8~15m)のアッサム種(インド北東部・ビルマ・ベトナム・中国南部原産)
とに2大別され、
一般に温暖多雨の気候を好みます。






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

万両 ( まんりょう ) <季> 三冬

2011-07-24 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 硃砂根 (まんりょう)

万両は兎の眼もち赤きかな  ・・・・・ 千代女 
万両も手洗鉢も高からず ・・・・・ 阿波野青畝 [万両]
万両や着丈合ひたる借衣裳 ・・・・・ 飯田龍太 [山の木]
     
厚く光沢のある葉の下にたわわに垂れる赤い実は、
冬から春まで付いていて、
どこか寂びて落ち着いた感じがあります。
赤い実が冬でも落ちないことと
呼び名の縁起のよさから愛好され、
庭木のほか正月用の鉢植えなどに利用されています。
江戸時代の例句は少なく、
千代女の一句が載っています。
同様に明治時代も見当たりません。
大正末期以降になってから
富安風生の
「万両や使うことなき上厠」や
阿波野青畝の
「座について庭の万両憑きにけり」
山口青邨の
「万両のひそかに赤し大原陵」、
高浜年尾・石田破郷・飯田龍太などの
万両の句が歳時記に載っています。
変種の白実の万両や黄実の万両は、
果実が白や黄色に熟します。

  [ ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑小低木 ]

万両のよく実りたる年といふ ・・・・・ みなみ

マンリョウ (満了)
日本では、
本州の関東以南~沖縄の樹下に自生します。
樹高は、30~100cm。
葉は長楕円形、厚く光沢のあるやわらかい革質で、
縁に波状の鋸歯(きょし)があり互生します。
花期は、7~8月。
花は葉腋の開花枝に白い小花を下向きの散房状に付け、
花冠は杯形で5深裂します。
果期は、11~12月。
果実は球形の液果で赤熟し、
冬から春まで付いています。
赤い実が冬でも落ちないことと
呼び名の縁起のよさから愛好され、
庭木のほか正月用の鉢植えなどに利用されています。
古典園芸植物の一つで、
江戸時代には、斑入りや縮れた葉など、
多くの品種が作られました。
また赤い実が基本種ですが、
白い実のシロミノマンリョウ(白実の万両)・
黄色い実のキミノマンリョウ(黄実の万両)などの
園芸品種も知られています。
名は、千両に勝るということから付いたそうです。
漢名の朱砂根(しゅさこん)から朱砂根(まんりょう)とも表記されます。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

早梅 ( そうばい ) <季> 晩冬

2011-02-01 |  冬の草木・その他 の 俳句

◉ 早咲の梅 ( はやざきのうめ )・梅早し ( うめはやし )

早梅や御室の里の売屋敷 ・・・・・ 蕪村
早梅や日はありながら風の中 ・・・・・ 原石鼎
早梅に汁粉屋もなし初音町 ・・・・・ 長谷川零余子

気候風土や日当たりの良し悪しなどによって、
近づく春に先立ち早く咲き始めた梅を言います。
梅の種類のことではありません。

  [バラ科サクラ属の落葉小高木・中国原産]

人すこしゐて早梅を見てをりぬ ・・・・・ みなみ  

1月13日に訪れた池上梅園には、
もう早梅のよい香りが漂っていました。
人のまばらな、手入れの行き届いた静かな庭を
ゆっくり楽しみました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする