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しをり戸

ささやかな庭の山野草と
散歩・旅で出会った草木。 
季語・拙い俳句、
折々の写真などの記録です。

薄 ( すすき ) <季> 三秋

2021-11-01 |  秋の草木 の 俳句

◉ 芒 (すすき)・芒野(すすきの)・芒原 (すすきはら)・芒散る (すすきちる)・糸芒 (いとすすき)・鬼芒 (おにすすき)・真赭の芒 (ますおのすすき)・まそほの芒 (まそほのすすき)・真赭の糸 (ますおのいと)・一叢芒 (ひとむらすすき)・一本芒 (ひともとすすき)

をりとりてはらりとおもきすすきかな ・・・・・ 飯田蛇笏 [山廬集]
ひとりゆけば芒のひかり空のひかり ・・・・・ 山口草堂
なにもかも失せて薄の中の路 ・・・・・ 中村草田男 [長子]

近郊の日当たりの良い原野や土手・荒地など、どこにでも見られる大型の草です。
花穂が獣の尾に似ていることから「尾花」とも呼ばれます。
「真赭の芒」とは、穂のつやつやと赤味を帯びた大きな芒で、
「まそほの芒」ともいい、紅糸にたとえて「真赭の糸」とも言いました。
秋の七草の一つに数えられ、
昔から親しまれて歌や俳句に詠まれました。
中空の茎の中に神霊が宿る、とも言われます。
十五夜の飾りに薄の穂は欠かせません。
薄(芒)は「茅(かや)」とも呼ばれ、
茎葉は屋根を葺くのに用います。
他に、炭俵を編んだり
寸莎(すさ)として土壁にまぜるなど利用されました。
また開花直前の穂で木菟(みみずく)を作ったりします。
* 末黒の芒(初春)・青芒(夏)・尾花(晩秋)・枯尾花(三冬)

[ イネ科ススキ属の多年草 ]

一本づつ芒を剪つて下さりぬ ・・・・・ みなみ

ススキ (薄/芒)
日本各地の日当たりの良い山野に自生します。
確りした地下茎を持ち、短く枝分かれして
地上に多数の茎を出します。
叢生(そうせい)する茎(偽茎)は大きな株を作ります。
草丈は、1~2m。
葉は線形、中央に太く硬い葉脈があり、
縁には硬く細かい鋸歯(きょし)があって
不用意に触れると手を切ることがあります。
花期は、7~10月。
茎頂に長さ20~30cmの大きな花穂(かすい)を付け、
中軸から10~20本の枝を出し、
長い柄と短い柄の小穂が対になって付き、
黄褐色を呈します。
小穂の長さは5~7㎜、基部に白い毛があり、
雄しべの葯(やく)は紅紫色です。
花後は白い毛が伸びて穂全体が白くなります。
観賞用の園芸品種もあります。
名は、すくすく立つ木(草)の意から
付いたと言う説もあります。

2021/11/01 撮影

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尾花 ( おばな ) <季> 晩秋

2021-10-01 |  秋の草木 の 俳句

◉ 花芒 (はなすすき)・穂芒 (ほすすき)・芒の穂 (すすきのほ)・初尾花 (はつおばな)・尾花の波 (おばなのなみ)

落暉燃えて男ばかりや尾花照る ・・・・・ 渡辺水巴 [水巴句集]
機関車に助手穂芒を弄ぶ ・・・・・ 山口誓子 [激流]

花薄風のもつれは風が解く ・・・・・ 福田稜蓼汀 

尾花は芒の花穂のことを称する名前で、
それが獣の尾に似ていることが語源と言われています。

秋に入ると茎頂に穂が出て、それが解けて、
つやつやとした黄褐色または紫褐色を帯びた白い花穂を付けます。
だんだん枯れてゆくと白っぽくなり、
最後は真っ白な綿毛のようになって飛び散ります。
秋の七草の一つとして親しまれてきました。
十五夜の飾りには欠かせません。
尾花が秋風に吹かれて、輝いている佇まいは美しく風情があります。
*「季語」の扱いは、歳時記( 編者 )により異る場合があります。
 歳時記には、
 「芒」、「尾花」、「芒散る」を分けずに「芒/薄」として扱っているものもあります。
* 末黒の芒(初春)・青芒(三夏)・芒(三秋)・芒散る(晩秋)・枯尾花(三冬)

[ イネ科ススキ属の多年草 ]

雨音のけふ柔らかく花すすき ・・・・・ みなみ
鎌倉へゆく道みちの花芒 ・・・・・ みなみ

ススキ (薄/芒)
日本各地の日当たりの良い山野に自生します。
確りした地下茎を持ち、短く枝分かれして
地上に多数の茎を出します。
叢生(そうせい)する茎(偽茎)は大きな株を作ります。
草丈は、1~2m。
葉は線形、中央に太く硬い葉脈があり、
縁には硬く細かい鋸歯(きょし)があって
不用意に触れると手を切ることがあります。
花期は、7~10月。
茎頂に長さ20~30cmの大きな花穂(かすい)を付け、
中軸から10~20本の枝を出し、
長い柄と短い柄の小穂が対になって付き、
黄褐色を呈します。
小穂の長さは5~7㎜、基部に白い毛があり、
雄しべの葯(やく)は紅紫色です。
花後は白い毛が伸びて穂全体が白くなります。
観賞用の園芸品種もあります。
名は、すくすく立つ木(草)の意から
付いたと言う説もあります。

2010/11/20 撮影…ほうけた穂

2021/09/19 撮影

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秋草 ( あきくさ ) <季> 三秋

2021-09-02 |  秋の草木 の 俳句

◉ 秋の草 (あきのくさ)・色草 (いろくさ)・八千草 (やちぐさ)・千草 (ちぐさ)・野の草 (ののくさ)

あきくさをごつたにつかね供へけり ・・・・・ 久保田万太郎 
淋しきがゆゑにまた色草といふ ・・・・・ 富安風生 [冬霞]
秋草を活けかへてまた秋草を ・・・・・ 山口青邨 [庭にて]
ひざまづく八千草に露あたらしく ・・・・・ 坂本宮尾 [木馬の螺子]


秋の野や園を彩る種々の草花や雑草をいいます。
萩・桔梗などの秋の七草や
竜胆・吾亦紅・刈萱など姿の美しい名草ももちろん含みます。
色草・千草はいろいろの秋草すべてをいいます。
野辺に目立たずに咲く可憐な名もなき花には、
親しみが持て、優しい印象に心引かれます。

秋草も少し並べて売られをり ・・・・・ みなみ
秋草のむらさき手向け母の墓 ・・・・・ みなみ





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芙蓉 ( ふよう ) <季> 初秋  

2021-08-10 |  秋の草木 の 俳句

◉ 木芙蓉 (ふよう)・白芙蓉 (しろふよう)・紅芙蓉 (べにふよう)・花芙蓉 (はなふよう)・酔芙蓉 (すいふよう)

反橋の小さく見ゆる芙蓉かな ・・・・・ 夏目漱石 [漱石全集]
朝な梳く母の切髪花芙蓉 ・・・・・ 杉田久女 [杉田久女句集]
おもかげのうするゝ芙蓉ひらきけり ・・・・・ 安住敦 [古暦]

古く中国から渡来したと言われる花木で、
観賞用として庭木などに植えられ、秋になるとよく見かける花です。
掌状の大きな葉に、淡い紅色の大きな五弁花を開きます。
楚々として艶やかで美しい花は、しばしば美女にたとえられ、
詩歌や絵画などの題材として親しまれています。
朝に開き夕方には萎んであっ気なく落ちてしまう風情にも、
美人薄命を感じます。
一日花ですが、次々と咲いて花期は長いです。
白い花の「白芙蓉」、
咲き始めは白で次第に紅色に変わる「酔芙蓉」などがあります。
* 芙蓉の実(仲秋)・枯芙蓉(三冬)

    [ アオイ科フヨウ属の落葉低木、中国原産 ]

お手前の始まる前の白芙蓉 ・・・・・ みなみ

フヨウ (芙蓉)
古く渡来した栽培種が野生化し、
自生したものと言われています。
本州関東以西~沖縄の、
暖温帯の川原などにやや稀に野生化しています。
古くから観賞用に栽培され、関東以西では庭木・公園樹として用いられています。
樹高は、1〜4m。
幹は直立し、また分枝し、星状の毛で厚くおおわれています。
葉は、長い柄を持ち、長さ幅とも10〜20cmで掌状に浅く3〜7裂します。
裂片は三角状卵形で先は尖り、基部は心臓状で、縁には鈍い鋸歯があり、互生します。
葉の表面は、星状毛や微毛があってざらつき、
裏面や葉柄は、星状毛や腺毛が多く生えています。
花期は、7〜10月。
枝の上部の葉腋に、径10~14㎝の淡紅色または白色の5弁花を付けます。
花弁は5個で、基部は互いにくっっき、回旋状に巻いて
、縦に脈があります。
多数の雄しべは単体雄しべとなります。1個の子房の上の花柱は長く飛び出し、
柱頭は5つに分かれます。
花の下部に小苞葉が10枚あります。萼は鐘状で5片に裂けます。

果実は、さく果でほぼ球形で毛があり、5片に開裂し、子に毛があります。
白花の品種や八重咲きの品種があります。
名は、芙蓉は漢名の木芙蓉に由来し、芙蓉の音読みとのことです。


2021/08/20 撮影



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曼珠沙華 ( まんじゅしゃげ ) <季> 仲秋

2020-09-22 |  秋の草木 の 俳句

◉ 彼岸花 ( ひがんばな )・死人花 ( しびとばな )・天蓋花 ( てんがいばな )・幽霊花 ( ゆうれいばな )・捨子花 ( すてごばな )・
  狐花 ( きつねばな )・三昧花 ( さんまいばな )・したまがり・まんじゅさげ

まんじゆさげ蘭に類ひて狐啼く ・・・・・ 蕪 村
草川のそよりともせぬ曼珠沙華 ・・・・・ 飯田蛇笏
われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華 ・・・・・ 杉田久女

秋の彼岸が近づくと花茎を伸ばし、
長い蘂の鮮やかな赤い花を開きます。
畦や土堤などに群生して咲く花は、
燃える炎のような美しさです。
曼珠沙華は天上に咲く赤い花をあらわす梵語といわれます。
昔から墓地に植えられ、
葉のある時に花は無く、花のある時には葉は無い不思議な咲き方と、
この花の妖麗なあやしさに、不吉な呼称もあります。
畑や墓地をネズミやイタチなどから守るために植えられ、
人の暮らしに根付いて、自生していますが、
全草にリコリンなどのアルカロイドを含み有毒です。
とくに地下の鱗茎に多いのですが、
昔は飢饉のとき、水によく晒して食用にしました。
吐剤や去痰剤にも用いました。

  [ ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草 : 毒 ]

曼珠沙華些事(さじ)にこだわることなかれ ・・・・・ みなみ

以前はよく、
曼珠沙華の群生地巾着田を訪れました。

高麗川沿いの木々の下は、
曼珠沙華の鮮烈な赤色に染まり見事で、

その頃は比較的人も少なく、ゆっくりと散策できました。
夕景のしずかな巾着田も印象に残っています。

ヒガンバナ (彼岸花)
古く中国から渡来した帰化植物と考えられています。
日本では、
本州~九州にかけて、
畦や堤・路傍など人里の明るい場所に多く群生しています。
草丈は30~50cm。
葉は根生し、長さ30~60㎝、幅6~8㎜の線形で鈍頭、
質はやや厚くやわらかく光沢があって濃緑色です。
中脈沿いに白緑色の筋が入ります。
花後の晩秋に葉が伸びはじめ、冬を越して翌年の春に枯れます。
花期は、9~10月。
地下の鱗茎という球根から花茎を伸ばし、
茎頂に花柄を持つ赤色の花を数個散形状に付けます。
花被片は6枚で長さ4㎝の狭披針形で、外側に強く反り返り、
縁には強いフリルがあります。
雌しべは6本で花被と同色、花の外に長く突き出ます。
結実せず、球根でふえます。
全草にリコリンなどのアルカロイドを含み有毒です。
昔は、澱粉を多く含む鱗茎を水でさらして有毒成分を除き、
救荒植物として食用にしました。
名は、ヒガンバナは秋の彼岸の頃に咲くことから、
マンジュシャゲは天上の紅い花をあらわす梵語から、付いたそうです。
地方の俗名が多くシビトバナ(死人花)や天蓋花(テンガイバナ)・ステゴバナ(捨子花)・
ユウレイバナ(幽霊花)など50余の呼称があります。
別名 : マンジュシャゲ(曼珠沙華)

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蓼の花 ( たでのはな ) <季> 初秋

2019-09-27 |  秋の草木 の 俳句
                            ↑ サクラタデ

◉ 蓼の穂(たでのほ )・穂蓼 ほたで)・ 桜蓼(さくらたで)・柳蓼(やなぎたで)・蓼紅葉(たでもみじ)・ままこのしりぬぐい
 
草の戸を知れや穂蓼に唐辛子 ・・・・・ 芭蕉
醤油くむ小屋の境や蓼の花 ・・・・・ 其角
溝川を埋めて蓼のさかりかな ・・・・・ 正岡子規
 
俳句で蓼の花といった場合は、
蓼属の花全体をさすことがおおく、
種類によって、高さや穂の大きさなどさまざまです。
おおよそは初秋に、
紅の濃淡から白色の小粒の花を穂状につけ、
秋が深まるにつれ葉が紅葉し、
野趣に富んで秋らしい風情があります。
花に見えるものは萼で、桜蓼などの一部をのぞき、花弁がありません。
蓼というと、柳蓼を指すことが多く、本蓼・真蓼ともいいます。
柳蓼は水辺に生え、葉が柳に似た形で、
特有の辛味があって食用として栽培もされ、
蓼酢・刺身のつま・蓼味噌などに用いられます。
桜蓼は蓼としては花が大きめで、
サクラ色の花弁に長い蘂、
垂れた花穂が風に揺れる姿には、
優しい美しさがあります。
* 犬蓼は「赤のまま」として別に題をたてています。

   [ タデ科イヌタデ属の多年草 ]

さくら蓼晩年の友一人増え ・・・・・ みなみ


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薄荷の花 ( はっかのはな ) <季> 初秋

2019-09-21 |  秋の草木 の 俳句

◉ めぐさ・おおあららぎ

肩痛き浴衣の糊や花薄荷 ・・・・・ 森澄雄 [餘白]
白山や薄荷の花のはたと暮れ ・・・・・ 花谷和子 [俳句四季]
少し不幸にて薄荷の花咲けり ・・・・・ 遠山陽子 [弦楽]

初秋になると、
優しい淡紫色の唇形の花を密集して付け、
全草に香気を持っています。
郷愁に近いものを感じさせて、
涼しげな香りが爽やかです。
ハーブの一つで、薄荷油を採るために栽培されています。
茎や葉からとった薄荷油は、香料・清涼剤・薬・菓子などに用いられます。
安政年間に岡山県や広島県で栽培が始まり、
明治初期にかけて主産地が山形県に移ったあと、
北海道で栽培が始まり、盛んに生産されていました。
戦前は世界に輸出されましたが、
今日では合成メントールに押されて生産量が減り、細々と栽培されています。
外来種に対して、こちらを日本薄荷と呼びます。
西洋薄荷をペパーミントと言い、オランダ薄荷をスペアミントといいます。

  [ シソ科ハッカ属の多年草 ]

花薄荷草引く庭に香り満ち ・・・・・ みなみ 

ハッカ (薄荷)
日本では、
北海道~九州にかけて、
原野のやや湿った土地や小川の縁などに自生します。
草丈は、20~60cm。
長い地下茎を四方に伸ばして繁殖します。
茎は、四角形で直立し、上部で分枝します。
茎や葉・ガクには軟毛が生えています。
葉は、柄を持ち、長楕円形で長さ2~8cm、幅1~2.5cm、
先が尖リ、縁には鋸歯があって、対生します。
表面の軟毛はまばらで、裏面には小さい油点があります。
花期は、8~10月。
茎の葉腋に淡紫色の小さな唇形花を多数輪状に付けます。
花冠は長さ4~5mmで4裂し、上唇の先は浅く2裂します。
雄しべは4本、雌しべは1本です。
ガクは5裂し、裂片の先は尖ります。
全草に強い芳香があり、香料植物として栽培されています。
茎・葉からとった薄荷油は、香料・清涼剤・薬・菓子などに用いられます。
安政年間に岡山県や広島県で栽培が始まり、
明治初期にかけて主産地が山形県に移ったあと、
北海道で栽培が始まり、盛んに生産されていました。
戦前は世界に輸出されましたが、
今日では合成メントールに押されて生産量が減り、細々と栽培されています。
名は、漢名の薄荷が転訛。西洋薄荷をペパーミントと言います。
別名 : メグサ(目草)・ニホンハッカ(日本薄荷)・ワシュハッカ(和種薄荷)

  


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秋海棠 ( しゅうかいどう ) <季> 初秋

2014-09-17 |  秋の草木 の 俳句

◉ 断腸花(だんちようか)

手拭に紅のつきてや秋海棠 ・・・・・ 支 考 [東西夜話] 
花伏して柄に朝日さす秋海棠 ・・・・・ 渡辺水巴 [水巴句集] 
病める手の爪美しや秋海棠 ・・・・・ 杉田久女 [杉田久女句集]

強い日ざしの陰にひっそりと咲く花は、
全体が多肉質でみずみずしく、
大きめのハート形をした緑の葉、
淡い赤味を帯びた細く長い花柄に淡紅色の花を下垂して付け、
控え目のなかに艶やかな風情を漂わせています。
俯いて雨に濡れている姿は、
憂いを秘めた美女に譬えられています。
古くから文人にこのまれ、
茶花や庭にも植えて親しまれています。
作家の永井荷風は腸を病んでいた事とこの花が好きだったので、
居宅を断腸亭と名付けたそうです。
江戸時代の初めに観賞用に渡来したと言われますが、
いまでは日陰の湿地に野生化しています。
花の咲く様子を、仏像の首飾りの名に例えて瓔珞草(ようらくそう)、
愛する人を待ち侘び、流した悲しみの涙から生えたという伝説から断腸花(だんちょうか)、
などの別名があります。

  [ シュウカイドウ科シュウカイドウ属の多年草、中国南部原産 ]

雨のやむ気配となりぬ秋海棠 ・・・・・ みなみ

丈夫で、ほとんど手がかからず、よく殖えます。
強い日ざしの陰にひっそりと咲く淡紅色の花は、
可愛い慎ましやかな風情を漂わせています。

シュウカイドウ (秋海棠)
江戸時代初めに渡来したといわれ、
半日陰で湿り気のある所を好みます。
草丈は、約60cm。
耐寒性があり、全体が多肉質でみずみずしく、
塊根から伸びた茎は、赤みを帯び直立してよく分岐します。
葉は、柄を持ち、大きく長卵状の心形で先がとがり、
縁に細かい鋸歯(きょし)があり、互生します。
花期は、8~9月。
茎または分岐した枝から花柄を出し、
淡紅色の2枚の小さい花弁と2枚の広いガク片をもつ 単性花を多数付けます。
花が終わるころ、
葉の付け根に珠芽(むかご)を付け、落下して新しい苗となります。
山野の傾斜地などに半野生化しているのを見かけます。
文人や画人に好まれ、
茶花や庭園の下草などに古くから重用されています。
名は、漢名の音読み。花の色が春に咲く海棠と似ていて、
秋に咲くので付いたそうです。
別名 ; ダンチョウカ(断腸花)・ヨウラクソウ(瓔珞草)


2016/09/10 撮影

0 2006/09/23 撮影


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葛の花 ( くずのはな ) <季> 初秋

2013-09-29 |  秋の草木 の 俳句

◉ 葛 (くず) ・ 真葛 (まくず) ・ 葛かづら ・ 葛の葉 ・ 真葛ヶ原 (まくずがはら) ・ 葛の雨

山路に石段ありて葛の花 ・・・・・ 高浜虚子
花葛の谿より走る筧かな ・・・・・ 杉田久女
あなたなる夜雨の葛のあなたかな ・・・・・ 芝不器男

秋の七草の一つに数えられています。
葉に隠れがちな花に、
控えめな美しさがあります。
一方、繁殖力が強くはびこるので、
厄介な雑草とも見なされています。

  [ マメ科クズ属の蔓性多年草 ]

刈られたる蔓草の中葛の花 ・・・・・ みなみ

クズ (葛)
日本では、
北海道~九州にかけて
山野や道端などに自生します。
蔓の長さは、5~10m。
根は肥大し、
茎の基部は木質化します。
葉は大きく、裏面が白っぽい3出複葉で、
小葉は菱状卵形、長さ幅とも10~15cmです。
花期は、7~9月。
葉腋から花穂を出し、
香りのよい紅紫色の蝶形花を
総状に付けます。
果実は莢果(きょうか)です。
茎の皮から繊維をとって葛布(くずふ)を織り、
蔓で行李を作るなど、広く利用されています。
また根からデンプン(葛粉)をとり、
和菓子の材料として葛切・葛餅・葛湯などに利用します。
根を生薬の葛根(かっこん)として、
発汗・解熱薬などに用います。
名は、奈良県の国栖(くず)が葛粉の産地であったので
付いたそうです。
 
2010/10/29 撮影…莢果(きょうか)


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薄紅葉 ( うすもみじ ) <秋> 仲秋  

2012-10-25 |  秋の草木 の 俳句

◉ …

錦手や伊万里の山の薄紅葉 ・・・・・ 宗因
色付くや豆腐に落ちて薄紅葉 ・・・・・ 芭蕉
真青なる紅葉の端の薄紅葉 ・・・・・ 高浜虚子

まだ緑を残しつつも
紅や黄色にうっすらと染まり始めた頃の
紅葉のことをいいます。
紅葉の先駆けで、
季節の移り変わりを感じさせ、
やがて美しい紅色に染まる紅葉を想像させるような、
やさしく色付いた姿が日本人の美意識に通じ、
味わい深いものがあると言われます。
ふつう紅葉というと楓を指しますが、
その他の木々も含めます。
* 紅葉(晩秋)

三段に滝落ち楓うすもみじ ・・・・・ みなみ

 


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紫苑 ( しおん ) <季> 仲夏

2012-09-16 |  秋の草木 の 俳句

◉ しおに・鬼の醜草 (おにのしこぐさ)

栖(すみか)より四五寸高きしをにかな ・・・・・ 一 茶
夕空や紫苑にかゝる山の影 ・・・・・ 閑 斎
人々に更に紫苑に名残あり ・・・・・ 高浜虚子 

菊に似た爽やかな淡紫色の花を
小枝の先に多数高々と付け、
秋の庭にひときわ目立ちます。
古く平安時代から観賞用や薬用として栽培され、
日本人に親しまれてきました。
古今集では「しをに」の名で詠まれ、
枕草子・今昔物語にも登場しています。
「鬼の醜草(おにのしこぐさ)」・「醜鬼(しおに)」という名や、
花の時期が秋の彼岸・十五夜の頃なので、
「彼岸草」・「十五夜草」などの名もあります。
去った人を思う花、嬉しいことのある人の植える草など、
色々言い伝えられています。

  [ キク科シオン属の多年草 ]

亡き母の紫苑しづかに揺れてをり ・・・・・ みなみ

シオン (紫苑)
日本では、
中国地方と九州地方の山地の湿草原に
まれに自生します。
草丈は、1~2m。
根生葉は大型の長楕円形で、
やがて株の中央から茎が直立し、
花茎の上部でよく分枝します。
根張りが強く、風雨にも耐えます。
茎葉は上部にいくほど細く小さくなります。
茎・葉とも短毛がありざらつきます。
花期は、8~10月。
頭花を散房状に多数付けます。
花径約3cm、舌状花は淡紫色、筒状花は黄色です。 
観賞用として庭に植えられ、また切り花にされます。
根と根茎を天日で乾燥し、
生薬の紫苑(しおん)として
咳止め・去痰・利尿に用います。
名は、花の色から付いたそうです。
別名 : オニノシコグサ(鬼の醜草)・ジュウゴヤソウ(十五夜草)


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団栗 ( どんぐり ) <季> 晩秋

2011-11-04 |  秋の草木 の 俳句

◉ 櫟の実 (くぬぎのみ ・団栗独楽 (どんぐりごま)・団栗餅 (どんぐりもち)
 
団栗の寝ん寝んころりころりかな ・・・・・ 一茶
団栗を掃きこぼし行く箒かな ・・・・・ 高浜虚子
団栗の己が落葉に埋もれけり ・・・・・ 渡辺水巴

櫟・樫・楢・椎・柏など、
ブナ科の木の実を総称して言います。
特に櫟の実をいうことが多いようです。
皮が堅く、お椀のような殻斗(かくと)で
果実の下半分が包まれています。
普通は茶褐色で艶があり、
熟すと殻斗から離れ、地面に落ちます。

ころころ笑ひけりどんぐり拾ひけり ・・・・・ みなみ


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檀の実 ( まゆみのみ ) <季> 晩秋

2011-11-02 |  秋の草木 の 俳句

◉ 山錦木 (やまにしきぎ)・真弓の実 (まゆみのみ)・檀紅葉 ( まゆみもみじ )

しんじつを籠めてくれなゐ真弓の実 ・・・・・ 後藤比奈夫 [初心]
西の山人居てまゆみの実を握る ・・・・・ 金子兜太 [東国抄]
まゆみの実寄りくるものをいとほしむ ・・・・・ きくちつねこ [雪輪]

秋に葉は橙色に美しく紅葉し、
角ばった実は淡紅色で、
熟すと4個の赤い種子が顔を出します。
古くから観賞用に、
庭木や盆栽などに用いられてきました。
* 檀の花(仲夏)

  [ ニシキギ科ニシキギ属の落葉小高木 ]

この径の行き止まりらし檀の実 ・・・・・ みなみ

マユミ (檀)
日本では、
北海道~九州の山野に自生します。
樹高は、3~10m。
若い枝は緑で白い筋があり、
樹皮は灰白色です。
葉は楕円形で先が尖り、
縁に鋸歯があって対生です。
雌雄異株。
花期は、5~6月。
葉腋から出た長い柄の集散花序に、
花径約1cmの緑白色4弁花を付けます。
果期は10~11月。
果実はほぼ四角形で淡紅色に熟し深く4裂、
中から朱色の仮種皮に包まれた種子を出します。
材は細工物などに利用します。
名は、材がよくしなるのでこの木で弓を作ったことから、
真弓と付いたそうです。
別名 : ヤマニシキギ・カワクマツヅラ


2011/07/08 撮影…青い実


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木の実 ( このみ ) <季> 三秋

2011-10-24 |  秋の草木 の 俳句

◉ 木の実独楽 (このみごま)・木の実降る (このみふる)・木の実落つ (このみおつ)・木の実の時雨 (このみのしぐれ)・木の実の雨 (このみのあめ)・木の実拾う (このみひろう)・木の実時 (このみどき)

籠り居て木の実草の実拾はばや ・・・・・ 芭蕉 [後の旅]
猪の庭ふむ音や木の実ふる ・・・・・ 太祗 [太祗句選後篇]
知らぬ人と黙(もだ)し拾へる木の実かな ・・・・・ 杉田久女 [杉田久女句集]

秋に熟して自然に落ちる一つの木の実をさすのではなく、
梨や林檎などの果実以外の、櫟・樫・椎・椋・橡の木・榎など、
木の実の総称です。
木の実落つは、椎・樫・クヌギなどの実が熟して落ちることを言います。

話したきことの山ほど木の実降る ・・・・・ みなみ


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初紅葉 ( はつもみじ ) <季> 仲秋

2011-10-23 |  秋の草木 の 俳句

                              ニシキギの紅葉
◉ …

秋もはや岩にしぐれて初紅葉 ・・・・・ 許六
初紅葉お染といはば竜田山 ・・・・・ 蕪村
初紅葉はだへきよらに人病めり ・・・・・ 日野草城

その年の最初に見た紅葉のこと。
歳時記によっては、
楓に限らず
秋の訪れをいち早く告げる紅葉または黄葉を言う、と述べ、
また、楓類をいう場合が多い
と述べられていることもあります。

初紅葉たれぞ訪ねて来るような ・・・・・ みなみ






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