しをり戸

ささやかな庭の山野草と
散歩・旅で出会った草木。 
季語・拙い俳句、
折々の写真などの記録です。

宝鐸草の花 (ほうちゃくそうのはな )  <季> 初夏

2022-05-14 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 宝鐸の花 (ほうちゃくのはな)・宝鐸草 (ほうちゃくそう)・狐の提燈 (きつねのちょうちん) 

木をめぐり宝鐸草へ蝶降りる ・・・・・ 井橋照々
狐の提灯古みち失せて咲きにけり ・・・・・ 水原秋桜子
山役人となり宝鐸の花を知る ・・・・・ 鳥羽山人 

五月ごろ、枝分かれした枝の先に、
白色で先端が淡緑色の
細長い筒状の花を1~3個下向きに付けます。
花被片は互いに接してわずかに先が開き、基部まで裂けます。
宝鐸草も狐の提灯も花の形から命名されたと言われています。
宝鐸は堂塔の四隅などに吊るして飾りとする大形の大鈴(風鐸)のことです。
また俗名の狐の提灯の名で親しまれています。
地味ですが、静かな趣のある花です。

  [ イヌサフラン科ホウチャクソウ属の多年草 ]  

宝鐸草雨よく降れば鮮やかに ・・・・・ みなみ

お茶花に母が用いていたことを思い出します。
何度も移動していますが、丈夫で毎年花を咲かせています。

ホウチャクソウ (宝鐸草)
北海道~九州にかけて、
山地や丘陵の林内に自生します。
草丈は、30~60cm。
根茎は小形で匍匐枝を出し、
茎は直立して、上部で分枝します。
葉は、柄が無く、長楕円形で長さ5~15㎝、幅1.5~4㎝、
先は尖り、基部は円く、表面には光沢があって、互生します。
花期は、4~5月。
枝先に短い花柄を持ち、長さ2.5~3㎝の筒状花を1~3個垂れ下がって付きます。
花披片は倒披針形で外花被片3枚と内花被片3枚、互いに接して筒状に集まり、先がわずかに開きます。
基部は白色でふくらみ、先は緑色を帯びます。
雄しべは6本、葯は淡黄色、
花柱は無毛で先端が3裂して花被片とほぼ同じ長さです。
果実は、液果で径約1㎝の球形、黒く熟します。
有毒と言われています。
名は、花の形を寺院の軒下に下がっている宝鐸に見立てて付いたそうです。


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月見草 ( つきみそう ) <季> 晩夏

2021-06-10 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 月見草 (つきみぐさ)・待宵草 (まつよいぐさ)・大待宵草 (おおまつよいぐさ)

乳色の空気の中の月見草 ・・・・・ 高浜虚子 「句日記」
月見草ランプのごとし夜明け前 ・・・・・ 川端茅舎 「川端茅舎句集」
月見草夕月より濃くひらく ・・・・・ 安住敦

本来の月見草は、清楚な白色の優しい花です
江戸時代末期に渡来し、観賞用に栽培されましたが、
今ではごく一部だけで栽培されています。
夕方に白い4弁の花を開き、明け方には淡紅色に変わり、
日中にしぼむと紅色になります。
一般に、夕方に大形の黄い4弁の花をふんわりと開く待宵草・大待宵草が、
誤称で月見草と呼ばれ親しまれています。
月見草と宵待草は植物学上では別のものとされていますが、
長く混同され、成り行きとして仕方がないので、
違いが分かるように心得て詠むようにします。

  [ アカバナ科マツヨイグサ属の二年草、北米テキサス~メキシコ原産 ]

月見草白し月蝕ぼんやりと ・・・・・ みなみ

我が家の月見草は、
毎年5月中旬頃から咲き始め、
秋に入っても咲き継いでいます。

ツキミソウ (月見草)
江戸時代末期に渡来し、観賞用に栽培されましたが、
今ではごく一部だけで栽培されています。
草丈は、約60cm。
全体は細かい毛で覆われます。 
茎は直立し、まばらに分枝します。
葉は、柄が短いかあるいは無し、披針形で柔らかく、
縁には不整の羽状鋸歯があり、互生します。
花期は、6~9月。
葉腋に柄のある花径3~4cmの白い花を1つずつ夕方に開きます。
花は明け方には淡紅色に変わり、日中にしぼむと紅色になります。
花弁は4個で大形の広い倒心臓形、先端はやや凹みます。
雄しべは8本で、花の開口部より出ます。花糸も葯も淡黄色です。
花柱は高く花の上に突き出し、柱頭は4本に分かれて十字形になります。
萼片は緑色で2個あり、開花のとき外側に曲がり、縁は内側に巻きます。
果実はさく果で倒卵形、粗い毛があります。
名は、月見草の意味で、花弁が白く、夕方に開花するので、
これを夕月にたとえて呼んだことから付いたそうです。
一般に、黄色い花を付ける待宵草・大待宵草のことをを月見草と呼ぶのは誤りです。
別名 : ツキミグサ(月見草)


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釣忍 ( つりしのぶ ) <季> 三夏

2020-07-30 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 吊忍 (つりしのぶ)・簷忍 (のきしのぶ)

自ら其頃となる釣忍 ・・・・・ 高浜虚子 [五百句]
すぐ前に塀がふさがる釣忍 ・・・・・ 松本たかし
人知れず暮るる軒端の釣忍 ・・・・・ 日野草城 [花氷]

山地の岩や樹木などに着生する
シノブ科の夏緑性のシダで、
古くから栽培されています。
竹や針金を芯にして山ゴケを巻いたものの上に、
忍の長い根茎を巻き付けて、
舟の形や井桁・毬の形などさまざな形に作り、
軒端などに吊るします。
風鈴を下げたものもあり、すずやかな音色を発し、
青々とした光沢のある繊細な緑の葉は涼感を呼びます。
江戸時代中期ごろに
庭師たちが作り始めたと言われ、
夏の風物の一つです。
  
   [シノブ科シノブ属の夏緑性多年草、シダ植物]

釣忍        ・・・ みなみ
釣忍とどく朝の宅急便 
釣忍届きて夫にまづ見せて 
木洩れ日にしばし華やぐ釣忍 
まらうどに褒められてゐるしのぶ玉 

シノブ (忍)
日本では、

北海道~沖縄にかけて、
深い山の岩や樹幹に着生します。
根茎は太く径3~5㎜、長く横に這い、まばらに分枝し、
淡褐色または暗褐色の線状披針形の鱗片で密に覆われていて、
まばらに根を出します。
葉は間隔をおいて出ます。
細い針金状の葉柄はかたく、長さ5~10㎝、落ちやすい鱗片をまばらに付けます。
葉身は、長さ10~30㎝、幅8~15㎝の三角形または長五角形で、4回羽状に深く分裂します。
羽片は柄があり、最下のものは最大でやや三角形、
他のものは長卵状三角形で光沢があり、質はやや厚い草質です。
小羽軸には裂片が流れて翼状となります。
裂片は線状頂楕円形で幅1~2㎜、鋭頭、縁は全縁、1本の小脈を持ちます。
小脈の末端に長さ1.5㎜内外の長楕円形で壺形の包膜を持った胞子嚢群を生じます。
胞子嚢群が熟すると長い柄をもった胞子嚢は包膜の入り口から抜け出してきて褐色に見えます。
根茎や根を束ねて球形または船形・井形などさまざまな形に作ったものを釣り忍として、
観賞用に軒下などに吊るし、涼しさを添えました。
名は、土がなくても生育するため、土の無いのに堪え忍ぶということから付いたそうです。


2020/07/22 撮影…しのぶ玉 (店名:萬園)

2020/11/04 撮影

 

 

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額の花 ( がくのはな ) <季> 仲夏

2018-06-16 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 額紫陽花 (がくあじさい)・額草 (がくそう)・額花 (がくばな)

会のたび花剪る今日は額を剪る ・・・・・ 高浜虚子
夏の日を淡しと思ふ額の花 ・・・・・ 野村泊月 (第二同人句集)
かなしみのはづれより咲く額の花 ・・・・・ 平井照敏

額の花は額紫陽花を略したものです。
暖地の山峡や渓流のほとりなどに自生し、
公園や庭などにも植えられ、
古くから園芸化されています。
淡青紫色の小さな両性花が中心に多数集まり、
周りを白から変化して青紫色を帯びる大型の装飾花が
額縁のように縁取ります。
梅雨空の下でみずみずしく咲く姿には、
しっとりとした素朴な趣があります。

   [ ユキノシタ科アジサイ属の落葉低木 ]

父の忌の日照雨あがりし額の花 ・・・・・ みなみ

ガクアジサイ (額紫陽花)
関東南部・伊豆半島・紀伊半島・四国南部の、
海岸に近い山地渓流沿いなどに自生します。
樹高は、約2m。
枝を叢生して大きな株になり、半円状の樹形を整えます。
葉は柄を持ち、倒卵円形で先が尖り、基部がくさび形で、
質が厚く無毛、縁に鋭い鋸歯があって対生します。
花期は、6~7月。
枝先に大きな散房花序を付け、
花序の中心には淡青紫色のガク片・花弁とも5枚の小さな両性花が集まり、
その周りに紫色を帯びたガク片4枚の装飾花(中性花)が少数付きます。
雄しべは約10本、花柱は3~4個です。
果実はさく果です。
紫陽花の母種とされ、庭木としても用いられています。
有毒植物で、過呼吸・興奮・ふらつき歩行・痙攣・麻痺などの
中毒症状を起こすことがあります。
名は、装飾花が両性花を額縁のように囲むのを見立てて「額」、
藍色の小花が集まって咲くことから「あづさあい(集真藍)」が変化して付いたそうです。
別名 : ガク(額)


2011/06/10 撮影…新宿御苑

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青山椒 ( あおざんしょう ) <季> 晩夏

2016-08-28 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ …

なのりして摘むにたが子ぞ青山椒 ・・・・・ 大江丸 [はいかい袋] 
己が荷の車ひく日や青山椒 ・・・・・ 中村草田男  
夕立の山亘りをり青山椒 ・・・・・ 森澄雄 

山椒は、春に咲いた黄色の小花が、
夏になるとまだ未熟な球形の青い実となります。
その青い実を青山椒と言います。簷
爽やかな香が高く、
ぴりっとした辛味を持っているので、
焼き魚などに添えたり、佃煮や吸い口などにも用います。
山地に自生しますが、
香辛料になるので古くから庭や垣根に植えられています。
葉陰にのぞく青々とした実は涼しさを誘います。
*  山椒の芽(仲春) ・ 山椒の花(晩春・初夏) ・ 山椒の実(秋)       
*  木の芽味噌(三春):山椒の芽に味噌や砂糖などを加えたもの、   
   木の芽和え(三春):木の芽味噌で烏賊・蛸・筍など旬のものを和えたもの、   
   木の芽田楽(三春):木の芽味噌を豆腐に塗って火で炙ったもの、  
   切山椒(新年):山椒の粉で香りと味を生かした餅菓子、  
   なども「生活の部」に載っています。   
  
  [ ミカン科サンショウ属の低木 ]

青山椒この齢にして解ること ・・・・・ みなみ

 サンショウ (山椒)
日本では、
北海道から九州にかけて、
山地に自生し、人家にも植えられています。
樹高は、1~3m。
枝は多く分枝し、葉の付け根に1対の棘があります。
葉は、奇数羽状複葉です。
小葉は5〜9対、小形の長卵形あるいは長楕円形で、
縁に鈍い鋸歯があり、互生します。
雌雄異株で、共に強い芳香があります。
花期は、4〜5月。
新枝の先に、葉腋から短い複総状花序を出し、
緑黄色の小花を多数付けます。
花被片は5個、雄花には雄しべが5本です。 
果実は、球形で径5mmの緑色、9月頃に赤黒く熟し、
裂開して黒色の種子を出します。
変種でほとんど棘のないものを
アサクラザンショウ(朝倉山椒)といい、
栽培されます。
春の若芽・若葉や果実には、
さわやかな香り・辛味があり、香辛料として利用されます。
若芽は「木の芽」と呼ばれ、吸い口・木の芽味噌・木の芽和え・
佃煮・筍の煮物などの香りつけに用いられます。
雄花を「花山椒」と言い、房ごと摘み取り、漬けた花山椒を料理の彩りに、
また佃煮などに用います。
夏の「青山椒」と呼ばれる青い実を佃煮に用い、
秋になって熟した実の果皮(種を除いたもの)を粉末にした
「粉山椒」を蒲焼などに使います。
赤く色付く頃の果皮を天日で乾燥させ、
生薬の蜀椒(しょくしょう)として、健胃・整腸剤・回虫駆除などに用います。
材が堅く芳香があるので、擂粉木(すりこぎ)に用います。
名は、「椒(はじかみ)」の字に芳しいの意があり、
山の香り高い実であることから付いたそうです。
古名 ; ハジカミ(椒)


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青歯朶 ( あおしだ ) <季> 初夏

2016-07-30 |  夏の草木・その他 の 俳句

                                ↑ クジャクシダ
◉ 歯朶若葉 (しだわかば)


晴れあがる雨あし見えて歯朶明り ・・・・・ 室生犀星 [遠野集]
青歯朶の底まで晴るるダム工事 ・・・・・ 中村千絵 (浮野)
山鳥の首立ててゆく羊歯若葉 ・・・・・ 渡辺立男

歯朶は種類が多く、常緑のものと、冬に葉が枯れるものがありますが、
いずれも初夏になると、青々とした葉を展げます。
この頃の歯朶を「青歯朶」といい、美しく涼しげです。
山野の林下や崖など湿ったところに自生し、群生または点在しますが、
庭園などにも植えられています。
シダ植物は、植物分類群の一門で、胞子により繁殖する植物です。
特に無性世代の胞子体をさして言います。
植物体の形は種々ですが葉は大きく、葉・茎・根の区分があります。
* 新年の季語としての「歯朶」は、ウラジロ(裏白)を指します。
* 歯朶萌ゆる(仲春)・歯朶(新年)・歯朶刈(仲冬)

  [ シダ植物の総称:特に胞子体、大型の葉をつける類の総称,多年草 ]

青歯朶の雨に目覚めて雨に寝て ・・・・・ みなみ

シダ植物とは
種子ではなく胞子で繁殖し、
胞子体と配偶体がそれぞれ独立している維管束植物の総称です。
維管束とは、根が吸収した水分を運ぶための導管(シダ植物の場合は仮導管)と、
光合成でできた栄養分を運ぶための篩管が束になったものです。
シダ植物は、大きく小葉類と大葉類の二つの系統に分かれて進化してきました。
                   「くらべてわかるシダ」より

一般の植物と同じように、シダも環境に合わせて生育する種類がかわります。
シダにも常緑性や夏緑性の種類も多く、なかには冬緑性の種類もあり、
生育する時期が異なっています。
常緑性は、春に葉を出し、翌年春に新しい葉が出るまで葉が枯れないもので、
 ホウライシダ・イノモトソウ・ベニシダ・イノデなどです。
夏緑性は、春に葉を出し、秋に葉が枯れてしまうもので、
 シノブ・ゼンマイ・イヌワラビ・クジャクシダなどです。 
冬緑性は、晩夏に葉を出し、翌年の初夏近くに葉が枯れてしまうもので、
 フユノハナワラビ・アオネカズラ・オオハナワラビなどです。

 


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紫陽花 ( あじさい ) <季> 仲夏

2016-07-14 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ あずさい・かたしろぐさ・四葩 (よひら)・七変化 (しちへんげ)・刺繍花 (ししゅうばな)・瓊花 (たまばな)

紫陽花やはなだにかはるきのふけふ ・・・・・ 正岡子規 [子規全集]
紫陽花や白よりいでし浅みどり ・・・・・ 渡辺水巴 [水巴句集]
紫陽花に秋冷いたる信濃かな ・・・・・ 杉田久女 [杉田久女句集]

梅雨の頃、
大きい毬のような藍色の花が雨に濡れた姿には、
しっとりとした趣があります。
若枝の先に、花のように見える装飾花(4片の萼)が多数集まって
毬状に咲きます。
本来の花はそれぞれの装飾花の中心部にあり、小さく目立たちません。
有毒植物で、葉などを食すると、過呼吸・興奮・ふらつき歩行・痙攣・麻痺などの
中毒症状を起こすことがあります。
古くは、『万葉集』に「安治佐為」・「味狭藍」の名で載っています。
藍色の小花が集まって咲くことから、古名を「あづさあい(集真藍)」、
それが変化して「紫陽花」になったということです。
花の色が緑白色から段々に淡青を増し、
のち淡紅色を帯びてくるなど変化するので「七変化」、
花びらの見える4枚の蕚片から「四葩」
とも呼ばれます。
紫陽花(本紫陽花)は額紫陽花を母種とする改良種と言われ、
鎌倉時代には園芸種として栽培されていました。
日本を原産地とし欧米で品種改良されたものは、
セイヨウアジサイ(西洋紫陽花)またはハイドランジアと呼ばれています。
西洋紫陽花は、観賞用として鉢植えなどに栽培され、多くの園芸品種があります。
樹高が低く、花色が青・薄紅・紫・白など豊富で豪華な花を付けます。
今では、本紫陽花より西洋紫陽花の方が広く普及しています。 
長い間、あまり人気がなかった紫陽花は、
戦後、梅雨を彩る花として公園・寺院・庭などに植えられ、
紫陽花の名所も各地にあり、賑わいをみせています。

  [ ユキノシタ科アジサイ属の落葉低木 ]

夫見舞ふ白紫陽花の雨の中 ・・・・・ みなみ
水の香の残る四葩を投入れに ・・・・・ みなみ

広義には、
 アジサイ属(ガクアジサイ・ヤマアジサイ・タマアジサイ・ノリウツギ・
 ツルアジサイ・ガクウツギ・コガクウツギなど)の、一部の総称です。
 狭義には品種の一つ、アジサイ(別名ホンアジサイ)を指します。

アジサイ (紫陽花)は、
本州中部太平洋岸に自生するガクアジサイを母種とする改良種と言われ、
鎌倉時代には園芸種として栽培されていました。
有機質に富む肥沃で湿潤な地を好みます。
北海道~沖縄まで、
各地の公園・寺院・庭などに植栽されています。
樹高は、1~2m。
枝を叢生して大きな株になります。
葉は、葉脈のはっきりした広卵形で長さ10~15cm、
光沢のある淡緑色、全体に無毛、
縁に鋭い鋸歯があって、対生します。 
花期は、6~7月。
がく片4枚が発達して花のように見える装飾花(中性花)が集散花序をなし、
大きい球状を形成する「手毬咲き」です。
すべてが装飾花です。
咲き始めは白く、次第に青紫に変化します。
装飾花は雄しべや雌しべは退化し、小さく目立ちません
実を結ばないので、挿し木や株分けで増やします。
有毒植物で、過呼吸・興奮・ふらつき歩行・痙攣・麻痺などの
中毒症状を起こすことがあります。
江戸後期に、
シーボルトはアジサイにハイドランジア・オタクサという学名を付け、
『日本植物誌』で西洋に紹介しました。
日本原産のアジサイがヨーロッパに渡り、
そこで品種改良されました。
日本を原産地とし欧米で品種改良されたものは、
セイヨウアジサイ(別名ハイドランジア)と呼ばれ、
観賞用に広く栽培されて多くの園芸品種があります。
装飾花だけの品種もあれば、両方の花を咲かせる品種もあります。 
ほとんど「手毬咲き」で、
花色が青・薄紅・紫・白など豊富で鮮やかです。
草丈が低く豪華な花をつける多くの種類があります
主に鉢植えとして利用されますが、公園・寺院・庭などにも植えられています。 
今では、本紫陽花より西洋紫陽花の方が広く普及しています。
名は、藍色の小花が集まって咲くことから、
「あづさあい(集真藍)」が変化して付いたそうです。
また、白色から青紫色に変化することから「七変化」とも呼ばれます。
別名 : ホンアジサイ(本紫陽花)・シチヘンゲ(七変化)

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京鹿子 ( きょうがのこ ) <季> 仲夏

2014-06-27 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ …

野草園に漂ひごころ京鹿の子 ・・・・・ 山口素子
京鹿の子咲きて遠流の行在所 ・・・・・ 中西克喜
京鹿の子母の忌来れば花こぼす ・・・・・ 吉田清

6月に紅紫色の小枝を分枝し、
美しく優しい淡紅紫色の小花を密集して咲かせます。
細かい花びらが、
掌の形をした鮮緑色の葉の上にこぼれている様子にも
趣があります。
古くから観賞用として庭園の下草に植えられ、
また茶花にも用いられるなど、親しまれて来ました。
原産地は日本ですが自生地は不明と言われています。
歳時記によっては
載せているものといないものがあります。

  [ バラ科シモツケソウ属の多年草 ]
   
京鹿の子ひねもす雨のこまかなる ・・・・・ みなみ

キョウガノコ (京鹿子)
原産地は日本ですが自生地は不明と言われます。

新潟県~福島県にかけて自生するコシジシモツケソウの改良種、
またはシモツケソウとの雑種、という説もあります。
古くから観賞用として庭園などに植えられてきました。
草丈は、60~100cm。
全株無毛です。
太く短い根茎から出た茎は、
直立して紅紫色を帯びた緑色、
茎に付く数枚の葉は互生します。
葉は長い柄を持ち、羽状複葉で、
側小葉はないか、まれにあってもごく小さく、
頂小葉だけが目立ちます。
頂小葉は掌状に深く5~7裂し、
裂片は狭い長卵形で先が鋭く尖り、縁に鋸歯があります。
花期は、6~7月。
茎頂に小枝を分枝して、
径6~7mmの5弁薄紅紫色の小花を
集散状散房花序に密集して付けます。
花弁は卵状長楕円形または卵状円形、
雄しべは多数で花弁より長く、
雌しべは3~5本、独立して立ち、
短い薄紅紫色の花柱があります。
果実は、瘦果で楕円形、粗い縁毛があります。
白花を付ける1品種をナツユキソウ(夏雪草)と呼びます。
名は、京都で染めた鹿の子絞り(京鹿の子)に、
咲いている花が似ているので付いたそうです。


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若楓 ( わかかえで ) <季> 初夏

2013-06-26 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 若葉の楓 (わかばのかえで) ・楓若葉 (かえでわかば) ・青楓 (あおかえで)

雨重き葉の重なりや若かえで ・・・・・ 大祗 [独喰]
三井寺や日は午にせまる若楓 ・・・・・ 蕪村 [新花摘]
四阿に日の影動く若楓 ・・・・・ 正岡子規

初夏の頃、若葉した楓のことです。
鮮やかで繊細な若葉青葉の輝き・明るさ、
風にやさしく揺れ、雨にしっとり濡れた風情にも、
清らかな趣があります。
紅葉の美しさと共に、若葉の美しさについても古くから、
『万葉集』や『源氏物語』などに「若楓」の美称で詠まれています。
『徒然草』にも
「卯月ばかりの若楓、すべてよろづの花紅葉にもまさりて、めでたきものなり」と、
兼好法師がその美しさを称えており、
夏の襲(かさね)の色目にもなっています(表は薄青、裏は紅または薄紅)。
カエデ類は、
古来風致樹として各地に植栽され、
庭園などに植えられ
奈良時代にはすでに観賞されて、
江戸時代に入ると品種改良が盛んになり、
多くの園芸品種が作られました。
過度の乾燥を嫌うことから、
多くは谷間のような所に繁茂しますので、
モミジの名所には流水が伴っています。
名は、葉の形がカエルの手に似ていることから、
カエルデ(蛙手)と呼ばれ、それがカエデになったと言われます。
* 楓の芽 (仲春) ・ 楓の花 (晩春) ・ 楓 (晩秋)

  [ カエデ科カエデ属の落葉高木の総称 ]

バスを待つ風かすかなり若楓 ・・・・・ みなみ

カエデ属 
落葉またはまれに常緑で、
高木あるいは低木です。
葉は、複葉または単葉で、
単葉の多くは掌状に裂けます。
葉柄を持ち、托葉はありません。
雌雄同株または異株です。
春、総状から散房状の小花を付けます。
花弁は目立たず小さく、
花柱は2本、
雄しべは4~10本ですが多くは8本です。
果実は翼果で2枚の翅があり、
熟すと風によって飛散します。
約100種ほどが北半球の温帯に分布し、
日本には約20数種があります。
このうち
葉が蛙の手と似ているものに、
イロハモミジ・オオモミジ・ヤマモミジ・
イタヤカエデ(板屋楓)・ハウチワカエデ(羽団扇楓)・ミネカエデ(峰楓)など、
似ていないものに、
ヒトツバカエデ(一葉楓)・ミツデカエデ(三手楓)・メグスリノキ(目薬の木)などがあり、
またハナノキ(花の木)のように浅く3裂するものとしない葉のものもあります。
秋には、
葉の色を美しく変えるものが多く、
若葉の頃の緑色から秋になると黄色や赤に黄葉・紅葉するものや、
若葉の暗紫色から夏には緑色を帯び、
秋になると紫紅色に変わる園芸品種のノムラカエデ(野村楓)などもあります。
モミジとは、紅葉するものの総称でしたが、
カエデ類、特に普通に植えられているイロハモミジの紅葉が美しいため、
単にモミジと言えば、おもにカエデ類を指すようになりました。
   [ カエデ科カエデ属の落葉高木の総称 ]


 いろは紅葉 (いろはもみじ) 
2013/05/30 撮影…イロハモミジ

日本では、
本州~九州にかけて、
主に太平洋側の低山や川岸など適湿の地に自生します。
樹高は、 15~30m。
若葉のころの枝先には赤みがあります。
葉は、小型で径が3~6cm、掌状に5~7深裂し、
裂片の先が尖り、縁にはやや粗く不揃いの重鋸歯があって、
対生します。
成葉には毛がありません。
秋~初冬に、通常は黄褐色から鮮やかな紅色に紅葉します。
花期は、4~5月。
若枝の先に複散房花序を出し、暗赤色の小花が垂れ下がって付きます。
萼片・花弁とも5枚で、雄花と両性花が混在しています。
果実は翼果で、翼の長さ約1.5cm、斜開または平開します。
花後に大きくなり、葉の上に出て付き、夏から初秋にかけて熟し、
風で飛ばされます。
園芸品種も多く、
庭園・公園などにも植えられ、
各地にモミジの名所があります。
名は、裂片を「いろはにほへと」と数えたことから付いたそうです。
別名 ; タカオカエデ( 高尾楓 )・イロハカエデ( いろは楓 )
 
2014/04/19 撮影

 2013/05/30 撮影

 

大紅葉 (おおもみじ) 
2013/05/30 撮影…オオモミジ

北海道~九州にかけて、
太平洋側のブナ帯に多く自生します。
樹高は、10~13m。
若葉のころの枝先は先端まで黄緑がかっています。
葉は、やや大形で、掌状に7~9裂し、
縁には細かく揃った細鋸歯があり、対生します。
秋には黄色や赤色に美しく紅葉します。
花期は、4~5月。
花は紅色で雄花と両性花がある
果実は翼果で、ほぼ平開し、
葉の下からぶら下がるように付き、
若い時は薄紅色で美しく、
イロハモミジやヤマモミジよりやや大きくなります。
観賞用として植栽されているものも多く、
園芸品種には、一行寺・大盃・野村・七変化などあります。
自然林の中で巨木となります。
庭木や公園樹、材が硬いので建築・器具材などにも利用されます。
名は、イロハモミジより葉が大きいために付いたそうです。

 2013/05/30 撮影…オオモミジの花

 

 山紅葉 (やまもみじ) 
2013/05/30 撮影…ヤマモミジ

北海道~本州島根県以東にかけて
日本海側の雪深い山地に自生します。
樹高は、5~10m。
イロハモミジの変種、 またはオオモミジの変種と言われ、
細い枝が多数分枝します。
若葉のころの枝先は先端まで黄緑がかっています。
葉は、一般にイロハモミジより大きく、
長い葉柄(ようへい)があり、
形は、掌状7~9中裂し、裂片は幅広く、
葉の基部は心形で、対生に付きます。
縁に不揃いの重鋸歯があり、
対生に付きます。
秋には美しく紅葉します。
花期は、4~6月。
黄緑色、紫色の小花を円錐花序に付け、
枝の先からやや垂れ下がります。
果実は翼果を結び、やや鈍角またはやや直角に開き、
葉の下から垂れ下がって付きます。
観賞用としても栽培され、種々の園芸品種があります。

2014/04/19 撮影
  
 2013/05/30 撮影


 


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蛍 ( ほたる ) <季> 仲夏

2013-06-09 |  夏の草木・その他 の 俳句

                        久我山ホタル祭り(玉川上水)

◉ 蛍火(ほたるび) ・ 源氏蛍(げんじぼたる) ・ 平家蛍(へいけぼたる) ・ 姫蛍(ひめぼたる) ・ 蛍合戦(ほたるがっせん)・大蛍(おおぼたる) ・ 初蛍(はつぼたる) ・ 飛ぶ蛍(とぶほたる) ・ 蛍籠(ほたるかご) ・ ほうたる ・ 朝の蛍(あさのほたる) ・ 昼の蛍(ひるのほたる) ・ 夕蛍(ゆうぼたる) ・ 宵蛍 (よいぼたる) ・ 雨の蛍(あめのほたる) ・ 草蛍(くさぼたる)

草の葉を落つるより飛ぶ蛍かな ・・・・・ 芭蕉 [いつを昔]
大蛍ゆらりゆらりと通りけり ・・・・・ 一茶 [おらが春] 
ほたるかごまくらべにしてしんのやみ ・・・・・ 飯田蛇笏 (雲母)
一の橋二の橋ほたるふぶきけり ・・・・・ 黒田杏子 [一木一草]


夏の宵、美しい光を明滅させながら
水辺の闇を飛び交う昆虫です。
昔は、草がむれて腐り蛍となる、と信じられていました。
代表的なものは、
大形の源氏蛍と小形の平家蛍で、
また山地には姫蛍がいます。
古来より蛍狩りの対象として親しまれ、
いろいろな伝説などとも関連し、詩歌にも詠まれてきました。
蛍の名所の名を冠して「宇治蛍・石山蛍・守山蛍」などとも呼ばれます。
*  秋の蛍 (初秋)
* 「蛍合戦」とは、多くの蛍が集まって雄雌が呼び交わす光の乱舞をいいます。
* 「蛍狩り(仲夏)」は、夏の夜に蛍を捕えたり飛ぶのを見物したりすることで、
  「生活」の項目として取り扱っている歳時記もあり、
   蛍の傍題として扱っている歳時記も見られます。

  [ 甲虫目ホタル科の甲虫の総称 ]

草ぼたる光を水にかへしけり ・・・・・ みなみ

ゲンジボタル 
九州~本州にかけて、
山間部の渓流などきれいな流水域の、
草や木が茂るところに生息し、
水際の柔らかなコケに産卵します。
幼虫の餌はカワニナで、
水際の湿った土中にマユをつくります。
成虫は他の蛍に比べて大形で、
短い期間に集中的に発生します。
群飛しながら一斉に発する冷光は
雄雌の合図で、
その光景は華やかです。

ヘイケボタル 
九州~北海道にかけて、
湿原や里山の流れの穏やかな小川・水田・池などの
水の少し汚れた止水域に生息し、
水際のコケや草の根本に産卵します。
幼虫の餌はカワニナやタニシ・モノアラガイ・サカマキガイなどで、
畦や流れの縁の湿った土中にマユをつくります。
成虫はゲンジボタルに比べて小形で、
発生は通常長期にわたり密度は高くありません。
普通に見られる身近な蛍として親しまれてきました。

ヒメボタル 
日本固有のホタルで、
幼虫は陸地に生活する陸生ホタルです。
平地~高い山地の暗く湿った自然林に分布し、
大型種は九州~本州まで、
小型種は神奈川以西の山地に近い林などに生息します。
土の上に産卵し、その卵は雨により土の間へと流れ込みます。
幼虫の餌はベッコウマイマイやオカチョウジガイなどで、
土の中に潜り「土繭」をつくりまが、
落ち葉の下の土の表面などでそのまま蛹になるものもいます。
成虫はヘイケボタルよりも一回り小さく、
黄金色に発光します。

ホタル 
世界にいるホタルは約2000種が知られ、
日本には約50種弱が生息しているとのことですが、
ほとんどが一生を通じ陸地で生活する陸生です。
幼虫が水中で過ごすホタルは、
ゲンジボタル・ヘイケボタル・クメジマボタルの3種類のみで、
半水生はスジグロボタルの1種です。
ホタル科の幼虫は全種で発光しますが、
成虫になるとほとんど発光しないものが多くいます。

玉川上水・神田川に、
地元の商店街や学校で人工飼育したホタル約2000匹を
放流するそうです。
自然を守り、
自然環境を取り戻した形のホタルの自然発生を
考えているそうです。
今後に期待し、楽しみです。


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水芭蕉 ( みずばしょう ) <夏> 初夏

2013-05-15 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ …

石狩の雨おほつぶに水芭蕉 ・・・・・ 飯田蛇笏 [雪峡]
花と影ひとつに霧の水芭蕉 ・・・・・ 水原秋櫻子 [晩華]
水芭蕉どこかに青き痣をもつ ・・・・・ 山田みづえ 

水のきれいな湿地や水辺に群生します。
花序を包む純白の仏炎苞は
花弁のように見え美しく、
小さな葉が寄り添うように生えています。
雪解けの頃、一面に白い清楚な花(仏炎苞)が咲いる光景は人々を魅了します。
群生地は各所にあり、
低地では3月下旬~4月上旬に開花し、
春の訪れを告げます。
尾瀬のような高地では、
5月下旬に花苞をのぞかせ6月上旬が花の盛りとなり、
唱歌「夏の思い出」にも歌われているように
夏の花として考えられています。
「季語」の扱いとしては、歳時記(編者)により異る場合があり、
或る歳時記では「晩春」とし、
他の歳時記では「初夏」」としています。

   [ サトイモ科ミズバショウ属の多年草 ]
   
奥社詣でてもう一度水芭蕉 ・・・・・ みなみ

ミズバショウ (水芭蕉)
日本では、
本州の兵庫県・中部以北~北海道、
(および千島~東シベリア)にかけて、
高地や山間の低地の湿原・疎林の湿原などに自生し、
しばしば大きな群落をつくります。
草丈は、葉の長さ約1m。
地下茎(根茎)は、太く独特の匂いがあり、
雪解けと共に、葉に先立って地下茎から花茎を伸ばします。
葉は、淡緑色、無毛で花茎より少し後れて生え、
花の後長い楕円形に大きく成長し、1mにも達します。
花期は、4~7月。
花は、葉が開くより前か同じころに生じ、肉穂花序で、
黄緑色棒状の穂の軸の外側に
多数の黄緑~黄色の小花を密に付けます。
両性花で、花被片4枚、雄しべ4本、雌しべ1本。
仏炎苞(ぶつえんほう)は、純白の先が尖った卵状楕円形で、
花序を包むように抱きかかえます。
果実は液果で、熟すと穂の軸は地上に倒れます。
地下茎(根茎)と全草に毒があります。
名は、水湿地に生え、葉が大きくなり、
芭蕉の葉を思わせるので付いたそうです。


2011/05/17 撮影…戸隠森林植物園のミズバショウの群生
〃 


 


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枇杷 ( びわ ) <季> 仲夏

2011-06-20 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 枇杷の実 (びわのみ)・枇杷の種 (びわのたね)・枇杷たわわ (びわたわわ)・青枇杷 (あおびわ)

枇杷黄なり空はあやめの花曇り ・・・・・ 素堂 [知足斎日々記] 
マリア観音面輪愁ひて枇杷青し ・・・・・ 水原秋櫻子 [残鐘]

やはらかな紙につつまれ枇杷のあり ・・・・・  篠原梵 [皿]

梅雨時に、
産毛で覆われた果実が黄橙色に熟すと、
庭に燈が点ったように明るくなります。
皮は薄く、果肉は多汁で甘く、
3個から5個の大粒の種子は
黒褐色で光沢があります。
果樹として植えられ、冬に芳香のある花が咲き、
翌年の夏に実が熟します。
* 枇杷の花 (初冬)

  [ バラ科ビワ属の常緑高木、中国・日本原産 ]

父の忌や日照雨に濡るる枇杷青し ・・・・・ みなみ

ビワ (枇杷)
日本南部に自生(野生種)していたものは
果実が小さく食用価値が低いので、
現在果樹として栽培されているものは、
天保のころ長崎に渡来した唐枇杷の実生種「茂木枇杷」に始まり、
はとんど偶然に実生から得られた栽培品種、
と言われます。
明治12年に、茂木枇杷の実生から「田中枇杷」が発見され、
大果で優良な品種が、長崎県・千葉県(房総)・鹿児島県などの
温暖な地方で栽培されるようになりました。
樹高は、5~10m。
幹は灰褐色で、若枝は淡褐色の綿毛を密生します。
葉は、短い葉柄を持ち、大型の長楕円形または倒披針形状長楕円形で長さ15~20㎝、
鈍頭、基部は狭いくさび形、質は厚く硬く、縁に低い波状の鋸歯があって、互生します。
表面は光沢があり、初め有毛、あとに無毛となります。
裏面は淡褐色の綿毛が密生します。
花期は、11~翌年3月。
枝先に、円錐花序を付け、白色または帯黄白色の5弁の小花を多数咲かせ、
よい香りを放ちます。
雄しべは約20本、雌しべは子房下位で2~5心室に分かれます。
萼は5裂し、淡褐色の綿毛につつまれています。

果期は、 5~6月。
果実は、黄橙色の円倒卵形で、表面に短い綿毛があります。
葉はアミグダリンやクエン酸などを多く含み、
乾燥した葉をビワ茶とする他、
生薬の枇杷葉(びわよう)として
咳止め・暑気あたり・胃腸病などに用います。
果実も咳・嘔吐・喉の渇きなどに
効果があると言われています。
果肉は生食されるほか、
缶詰やゼリーなどの菓子・ジャム・果実酒などにも
加工されます。
材は堅く、木刀・杖・装飾用などに利用されます。
名は、果実(または葉)の形が楽器のビワに似ていることから
付いたそうです。漢名枇杷の音読みです。
* 枇杷の花 (冬)
  
  


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泰山木の花 ( たいさんぼくのはな ) <季> 初夏

2011-06-19 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 大山木の花 (たいざんぼくのはな)・大盞木の花 (たいさんぼくのはな)

壺に咲いて奉書の白さ泰山木 ・・・・・ 渡辺水巴 [水巴句集]
なが雨や泰山木は花堕ちず ・・・・・ 杉田久女 [杉田久女句集]
ロダンの首泰山木は花得たり ・・・・・ 角川源義 [ロダンの首]

初夏に、盃状の白い大きな清楚な花を、
濃緑色の光沢のある大きな葉の上に上向きに開き、
高貴な芳香をただよわせます。
高木で高い位置に咲く花は、
葉にさえぎられて、下からは気付きにくいの
ですが、
東洋的な趣のある花です。

  [ モクレン科モクレン属の常緑高木、北アメリカ南東部原産 ]

あをあをと泰山木の香の降りぬ  ・・・・・ みなみ

タイザンボク (泰山木)
日本には明治初年に渡来し、
公園や庭などに観賞用として植えられています。
樹高は、10~20m。
葉は大きく長楕円形で革質、
表面は光沢があり
裏面には褐色の毛が密生しています。
花期は、5~6月。
芳香のある白色の大輪花を枝先に付けます。
花は、直径15~20cmで花被片は普通9枚、
そのうち内側の3枚位はやや小さめです。
果期は、9~10月。
楕円形の集合果は熟すと裂けて赤い種子を出します。
変種に
葉のやや狭いホソバタイサンボク、
落葉性で全体に小型のヒメタイサンボク
ほか多くの園芸品種があります。
別名;ハクレンボク(白蓮木)


2011/06/15 撮影・新宿御苑





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杜鵑花 ( さつき ) <季> 仲夏

2011-06-08 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 皐月躑躅 (さつきつつじ)

庭石を抱てさつきの盛りかな ・・・・・ 嘯山 [葎亭句集]
満開のさつき水面に照るごとし ・・・・・ 杉田久女 [杉田久女句集]
さつき咲くしゅんしゅんしゅんと湯が沸いて ・・・・・ 大井雅人

江戸時代から栽培されてきた日本原産の花木で、
1000種以上の園芸品種があるそうです。
庭木としては、樹姿に優れ単植・群植によく、
丈夫で刈り込みに強く扱いやすいので、
公園などにも広く利用されています。
また花色や形が変化に富み、
盆栽に仕立てられた見事な皐月には
大勢の愛好家がいます。
杜鵑 (ほととぎす) の鳴く頃に咲くので
杜鵑花(さつき)と書くそうです。

  [ ツツジ科ツツジ属の常緑低木 ]

上野不忍池畔「さつきフェスティバル」では
銘花・銘木などが多数展示され、
とても賑わっていました。

父の忌や色とりどりのさつき咲き ・・・・・・ みなみ

サツキツツジ ( 皐月躑躅 )

サツキツツジは日本固有の花木です。
本州福島県以西~九州にかけて、
山地の渓流に沿った岩上などに自生します。
樹高は、15~100cm。
葉は、枝の先に集まって付き、
線状披針型で両端が尖り、質は厚く固く、小さくて全縁、
褐色の伏毛があり、互生します。
花期は、5~6月。
枝先に紅紫色の花を付け、
花の下部には早落性の広い鱗片があります。
花冠は大きく、広い漏斗形で5裂し、
上面に濃い紅紫色の斑点があります。
雄しべは5本、雌しべ1本、葯は暗紫色です。
果実は、さく果で毛があります。
江戸時代から栽培されて品種が多く、
園芸品種には、花色が深紅~白・咲き分け・絞りなどがあり、
八重咲き種もあります。
刈り込みに強いので盆栽や生け垣に使われます。
庭木や生け垣・道路の植え込みなどには、
通常、原種に近い「高砂」「大盃」等の品種が多く用いられます。
名は、旧暦の5月(皐月)の頃、
一斉に咲き揃うところから付いたそうです。

近縁種のマルバサツキ(丸葉皐月)は、
九州南部の島々の岩地に自生します。
樹高は、50~100cm。
葉は広楕円形または倒卵形でサツキより幅広く丸みがあり、
両面に伏毛があります。
花期は、5~6月。
枝先に、径4~5cm、広い漏斗形で5裂、
普通紅紫色の花を1~2個付けます。
雄しべは6~10本でサツキより多く、
葯はサツキより薄い色をしています。
また白色・淡紅色・咲き分けなどの
多くの園芸品種があります。



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余花 ( よか ) <季> 初夏

2011-05-19 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 若葉の花 (わかばのはな)・青葉の花 (あおばのはな)・夏桜 (なつざくら)

余花に逢ふ再び逢ひし人のごと ・・・・・  高浜虚子
行き行きて余花くもりなき山の昼 ・・・・・ 飯田蛇笏

余花の雨八十路の老のかんばせに ・・・・・ 富安風生

やや寒いところや高い山などで、
初夏になっても咲いている桜の花のことを余花と言います。
青葉若葉の中に淡々しく咲いている花は、
どこか淋しくしみじみとしたものがあります。
古来から歌書などで春の季題の残花との区別は論じられていましたが、
俳句では「残花」は春、「余花」は夏と決めています。

   [ バラ科サクラ属のサクラ亜属の樹木の中で一般に花が美しく、鑑賞されるもの ]

戸隠神社奥社に近い杉並木の参道を少し外れたところに
高く伸びた桜の木があり、
梢に向けて花が咲いていました。
杉に負けないで日の恵みをいただけるようにと
あんなに高くなったのでしょうか …
山桜より赤みが強いので
大山桜(別名ベニヤマザクラ)ではないかと思いました。

余花ぐもり絶えず水音奥社まで ・・・・・ みなみ
おむすびを分けていただく余花の風 ・・・・・ みなみ

 


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