しをり戸

ささやかな庭の山野草と
散歩・旅で出会った草木。 
季語・拙い俳句、
折々の写真などの記録です。

含羞草 ( おじぎそう ) <季> 晩夏

2010-09-05 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 知羞草 (おじぎそう)・眠草 (ねむりぐさ)

含羞草いつも触れゆく看護婦あり ・・・・・ 石田波郷 
含羞草夜は文机にやすまする ・・・・・ 石川桂郎
ねむり草眠らせてゐてやるせなし ・・・・・ 三橋鷹女 [白骨]

夏から秋にかけ、
可愛い淡紅色の美しい花を次々と咲かせます。
刺激に対して敏感に反応し、
葉に触れるとたちまち小葉が閉じ
葉柄がおじぎするように垂れて、
しばらくすると元の姿に戻ります。
また夜になると葉を閉じ眠ったように見えます。

  [ マメ科ミモザ属の多年草、ブラジル原産 ]
    ( 元来は多年草ですが、日本では一年草となります。)

おじぎ草ふざけん坊の子とふたり ・・・・・ みなみ


子供がつい触れてみたくなるような
楽しい草花ですが、茎にとげがあります。

オジギソウ (含羞草)
江戸時代後期に渡来し、観賞用に栽培されています。
草丈は、20~30cm。
茎は褐色の細毛と鋭い刺があり、よく分枝します。
葉は、長い柄を持ち、
柄の先に2対の羽片を掌状に付けて、互生します。
それぞれの羽片に多数の広線形の小葉を対生して並べます。
夜間や刺激を受けたときには速やかに閉じる性質があり、敏感に開閉運動します。
花期は、7~9月。
葉腋から長い柄のある花序を数本出し、
淡紅色の小花を1㎝ほどの球状に密集して付けます。
花弁は4裂し、長い雄しべは4本、雌しべは1本です。
萼はほとんど不明です。
果実は莢果(きょうか)で、表面に毛があります。
名は、葉に触れると葉柄がおじぎするように垂れ、
小葉が閉じるところから付いたそうです。
別名 : ネムリグサ(眠り草)

2010/08/14 撮影…触れられて葉が閉じ、葉柄の垂れたところ





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月下美人 ( げっかびじん ) <季> 晩夏

2010-07-28 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 女王花 (じょおうか)

夜半の雨月下美人に音すなり ・・・・・ 阿波野青畝
月下美人は一夜の雌蕊雄蕊かな ・・・・・ 加藤楸邨
焔(ほ)を吐いて月下美人のひらきそむ ・・・・・ 石原八束

夏の夜、蕾がふくらみはじめ、
香り高い純白の大輪の美しい花を開きます。
数時間後には萎んでしまう儚さがあります。
開花を心待ちにしている時間も得難いものです。

  [サボテン科クジャクサボテン属の温室観賞植物、中南米原産 ]

なにはさて措き月下美人に会ひにゆく ・・・・・ みなみ

ゲッカビジン (月下美人)
日本には、昭和初年に渡来しました。
高さは、通常2~5m。
葉上茎は淡緑色の扁平で刺が無く、
葉縁は波状で、基部は円筒状を呈します。
花期は、6~10月。
花は盃型で花径20~25cm位、
花弁と雄しべの数が多く、
白色の大輪で芳香があります。
夜に開き、普通2~4時間ほどでしぼみます。





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岩煙草 ( いわたばこ ) <季> 晩夏

2010-06-22 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 岩菜 (いわな)・岩萵苣(いわぢしゃ)

はりつける岩萵苣採の命綱 ・・・・・ 杉田久女 [杉田久女句集]
滝川の鳴りこもるあり岩たばこ ・・・・・ 阿波青畝 
水盤に大きな葉なり岩たばこ ・・・・・ 百合山羽公


低山の滝しぶきがかかるような岩場や
谷間などの湿気が多い斜面に群生します。
タバコに似た光沢のある葉と
星形をした可愛い薄紫色の花が、
ひと際目立ちます。
古くから日本人に親しまれ、
山菜として食されたり、
薬草として煎じて使われて来ました。
ヤマチシャ・イワチシャ・イワナ・タキナ・タキチシャ・
ヤマタバコなどの呼び方が多数あります。
万葉集に
「山萵苣(やまじしゃ)の白露重みうらぶるる心も深くわが恋止まず」と
柿本人麿が詠んでいますが、
山萵苣をエゴノキとする説もあります。

  [ イワタバコ科イワタバコ属の多年草 ]

岩煙草と聞けば、即座に北鎌倉を思い出します。
梅雨晴れの東慶寺にそそり立つ崖の二つの壁面に、
張り付くように岩煙草が群生していました。
タバコの葉に似た大きな光沢のある葉に紫の花を付けていて、
見ごたえのある光景でした。
また東慶寺から明月院に向かう川沿いの道や川岸にも、
たくましく花を咲かせ、
明月院から今泉台にぬける坂道の切り立った崖にも、
いくつかの群生がありました。
日陰の湿った岩肌を好むと言われますが、
朝日の当たる岸壁にも群生が見られました。
前日雨だったからでしょうか、緑あふれる谷戸の
あちらこちらの岩肌から滴りが落ちていました。
思いがけず岩煙草の花の盛りと
出会えて幸せな一日でした。

人影のまばらになりて岩煙草 ・・・・・  みなみ

イワタバコ (岩煙草)
日本では、
本州の福島県以南~沖縄にかけて、
山地の谷間など湿った岩場や湿気の多い斜面に自生し、
しばしば群落をつくります。
草丈は、10~30cm。
地下に塊状の根茎があります。
葉は根生葉で、長さ3~10cmの柄を持ち、
つけ根の部分に翼があります。
楕円形で長さ5~20cm、
柔らかく、光沢・皺があり、
縁に粗い鋸歯があって、数枚が垂れ下がります。
冬には枯れ、かたく丸まった葉芽で越冬します。
花期は、6~8月。
長さ6~12cmの花茎を1~2本伸ばし、その頂に散形花序を付け、
径1~1.5cmの星形をした薄紫色の筒花を数輪咲かせます。
花冠は短い筒状で、先が5裂し、裂片の先は反り返ります。
雄しべ5個が、花柱を取り囲みます。
果実は、果、長さ約1cmの広披針形で、
紡錘形の種子が多数入っています。
白花や桃色花などの品種が観賞用に栽培され、
赤花・濃色花・絞り咲きなどもあります。
花茎や萼、葉の裏面脈上に軟毛が生えるものを
ケイワタバコ(毛岩煙草)と呼びます。
低地の岩場に見られ、花期は6~8月です。
古くから山菜として、
若葉を天ぷら・和えもの・おひたし・酢味噌などに利用しています。
葉を天日で乾燥したものを生薬の苦苣苔(くきょたい)として、
健胃に用います。
名は、岩場に自生し、葉がタバコの葉に似ているので付いたそうです。
別名 ; イワヂシャ(岩萵苣)




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柿の花 ( かきのはな ) <夏> 仲夏

2010-06-01 |  夏の草木・その他 の 俳句

                           雌花

…雄花

◉ 柿の薹 (かきのとう)

生れ子もくふ事知や柿の花 ・・・・・ 尚白
柿の花きのう散りしは黄ばみ見ゆ ・・・・・ 蕪村
柿の花土塀の上にこぼれけり ・・・・・ 正岡子規

梅雨のころ新しく伸びた枝の葉腋に、
壺形で淡黄色の雌花と雄花を1株に付けます(雌雄同株)。
雌花は大きながくを持ち、柱頭が4裂し先は更に裂けて単生し、
雄花は雌花よりも小さく数個ずつ集まって付けます。
緑色のがくをもつ壺形で淡黄色の地味な花は、
美しい若葉にまぎれて見過ごされやすく、
地面に散らばっている雄花を見て、
花が咲いているのに気づく事があります。
花のあとすぐに小さな青い実を付けます。
古くから果樹として栽培されています。
* 柿若葉 (初夏)・青柿 (晩夏)・柿 (晩秋)・柿紅葉 (晩秋)・熟柿 (晩秋)・木守 (三冬)・柿落葉 (初冬)

  [ カキノキ科カキノキ属の落葉高木、日本・中国・朝鮮半島原産 ]

雨の日も蜂のきてゐる柿の花 ・・・・・ みなみ


2010/05/20 撮影…雌花

2010/05/31 撮影…雄花

2010/05/31 撮影






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車前草の花 ( おおばこのはな ) <季> 初夏

2010-05-17 |  夏の草木・その他 の 俳句

◉ 車前草の花 ( しゃぜんそうのはな )

湖畔にて車前草の露滂茫たり ・・・・・・ 富安風生
話しつゝおほばこの葉をふんでゆく ・・・・・ 星野立子 [立子句集]
おほばこの花に日暮の母の声 ・・・・・ 大嶽青児 [桐の花]

初夏の川沿いの緑地を歩きながら、
食べられる野草を教えて頂きました。
その中のオオバコについて、
硬い地面のところに多く見られること、
在来のオオバコと見誤られている
帰化のセイヨウオオバコやツボミオオバコなどがあること
などを知りました。
地震などの時
身近で食べられる
植物を知っていることは大切
と思いました。
食べ方は、葉に薄い衣をつけ
油でゆっくり揚げる、など

  [ オオバコ科オオバコ属の多年草 ]

車前草の花や戦後の話など ・・・・・ みなみ


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新樹 ( しんじゅ ) <季> 初夏

2010-05-11 |  夏の草木・その他 の 俳句


◉ 新樹蔭 (しんじゅかげ)

大風に湧き立つてをる新かな ・・・・・ 高浜虚子 [虚子全集]
星屑や鬱然として夜の新樹 ・・・・・ 日野草城
白々と何の新樹か吹かれ立つ ・・・・・ 高木晴子 [晴居]

みずみずしい若葉の初夏の木立を指して言います。
一般に木の姿に中心にした場合に新樹を用います。
語感には新鮮な響きがあります。

聞きなれぬ鳥の声する新樹かな ・・・・・ みなみ

この頃の自然教育園は
コナラ・ムクノキ・エノキなどの落葉樹を初め、
スダジイ・シラカシ・ヒサカキなどの常緑樹も
いっせいに若葉のラッシュです。
目黒通りから足を踏み入れた途端に
新鮮な澄んだ空気に
さぁーと変わるのを感じます。
マイナスイオンに溢れていて
森林浴には持って来いです。



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