京都の山鉾町には、先祭(17日山鉾巡行)の山鉾、23基が、見事に勢揃いしました。ミモロは、夜、山鉾詣りに出かけました。
山鉾は、言い換えれば、動く神社。それぞれにご祭神がいらっしゃり、八坂神社の神輿巡行の前に、町を清めて回られます。
ミモロが、毎年、楽しみに訪れるのは、東洞院松原通にある「保昌山(ほうしょうやま)。縁結びの御利益の護符や粽で知られます。山に乗られるのは、平安の武将である平井保昌。恋多き平安の歌人、和泉式部との恋を成就させた方です。
「あのーお守りください…」「あれ、クマちゃん…いらっしゃいませ~」
「クマじゃなくて、ネコなんだけど~」と、ミモロは、小さな声で…。
ここの粽やお守りには、保昌が、和泉式部に紫宸殿の紅梅の枝をおくったことに因み、赤い梅の花がおしるしについています。
縁結びのご利益がある山として大人気。会所には、若い女性たちを中心に大勢の参拝者が、次々に…。
お守りも飛ぶように売れています。
保昌山の平井保昌と和泉式部のロマンス…恋の成就のお話しですが、実は、和泉式部は、恋多き女性。999年に和泉守橘道貞の妻となり、和泉国に赴任。その土地の名にちなみ、和泉式部と呼ばれるように。夫道貞との間に、娘を持つも、婚姻は破たん。宮中に戻り、シングルマザーとして働くなか、冷泉天皇の第三皇子、為尊親王との身分違いの熱愛により、親元からも勘当。親王の死後、なんとその弟の敦道親王に求愛され、一子を設けることに。しかしならが、敦道親王も早世。再び、シングルマザーになり、宮中に復帰。その時、現れたのが、武将の平井保昌で、1013年に彼と再婚して、丹後へと赴任します。
和泉式部が生まれたのは、978年といわれますから、最初の結婚は、21歳。当時としてはかなり晩婚です。そして、平井保昌と再婚したのは、35歳になります。つまり中年カップルです。
「でも、和泉式部だって、本当は、恋の遍歴なんかしたくなかったのかも…」とミモロは、貴船神社を思い浮かべます。和泉式部は、夫の心変わりを悲しみ、貴船神社に参拝し、再びラブラブになったといわれていますが…。
「結局ダメだったんじゃないの~貴船神社、ご利益なかったのかな~?」と。
う~きっと一度ダメになった関係…貴船の神様も、一端は修復させ、心を落ち着かせるものの、やっぱりダメな縁はダメ、いくら固執しても…。それをわからせるために、一度は、思いをかなえさせてくれたのかも…。「いくら、復縁しても、やっぱりこの人とはやってけない…」と、すっきり諦めさせて、次の縁へ…。
宮中に勤める和泉式部は、すでに当時としては中年の域。でも、美貌と教養を磨いて、親王たちの心を捉えます。「やっぱり、いくつになっても、美しさへの努力は怠れないね~」とミモロ。
恋多きといわれる和泉式部ですが、それは本人が望んだことではないのかも…。最初の夫は、心変わりが原因で離婚。次の恋の相手は、誰もが憧れるプリンスながら、二人とも早世。そして、やっと生涯を共に過ごせる相手が、ここの平井保昌なのです。でも、和泉式部とは、20歳も歳が違うおじさま、和泉式部と結婚した時は、なんと55歳です。彼自身も、「後拾遺和歌集」に和歌を1首載せる歌人。共通の趣味が、心通じさせることになったのかも…。保昌は、平安時代としては長寿で、80歳近くで他界。
再婚した和泉式部は、1025年に、最初の夫、橘道貞との間に生まれた娘、小式部内侍を亡くします。娘に先立たれた彼女の悲しみはいかほどか…。没年齢は、不明ですが、多くの和歌を載せた「後拾遺和歌集」が、彼女の死後、作られたことからすると、おそらく夫、保昌より、早く世を去ったと思われます。
「う~そう考えると、ここ『保昌山』の御利益は、生涯の伴侶に出会う中年カップルの幸せ、さらに男性にとって、若い奥さんがもらえ、長寿になるってこと…」とミモロ。なかなか斬新な解釈です。ともかく縁結びには、違いありません。
さて、参拝したミモロは、すぐそばにあるお友達のおうちへ。毎年、ここには、次々にお友達が訪れて、みんなで祇園祭の夜を過ごします。「これって、地元ならでは…」ミモロもすっかり京都のネコになった証です。
「はい。これ…」
今年も、お友達の日本絵具の老舗「上羽絵惣」の石田さんが、ミモロのお守りをくださいました。
「お守りは、人にプレゼントするのがいいのよ~。その人の幸せを願うの…」と、昨年、教わってミモロ。それ以来、他の人の幸せを祈って、お守りを贈るようになりました。
「今年もどうもありがとう…ごちそうさま~」
ミモロは、いただいたお守りを大事そうに持ちながら、他の山鉾めぐりに出かけました。
途中、お友達のいる場所にも立ち寄ったミモロ。「わーミモロちゃんだー」。福招きネコのミモロは、ここでも笑顔をみんなに…。
さぁ、また新しい出会いが、ミモロにも訪れることでしょう…。
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お守りや お札があるのも知らなかったー
いろいろな山を巡るのも 楽しいですね。