突然(とつぜん)、彼の前に見知(みし)らぬ女が現(あらわ)れた。女は彼に詰(つ)め寄(よ)って言った。
「あたしは、あなたの妻(つま)になるはずでした。どうしてあなたは、いつもの道を通らなかったんですか? あたし、ずっと待ってたのに…」
彼は訳(わけ)が分からず、「何なんですか…? 僕(ぼく)は、君(きみ)のことなんか――」
女は、彼を逃(に)がさないように腕(うで)をつかむと、「一週間前です。あたしは、あなたと出会(であ)うはずだったんです。そして、あたしたち、恋(こい)に落(お)ちることになってたのよ」
「何を言ってるんですか? 僕には付き合ってる彼女がいるんだ。君はいったい…」
「今からでも遅(おそ)くないわ。二人で、未来(みらい)を元(もと)に戻(もど)しましょう。そしたら、あたしたち幸(しあわ)せになれるはずよ。あたしと、結婚(けっこん)しましょう」
「バカなこと言わないでくれ。僕には好(す)きな人がいるんだ。変(へん)なこと言わないでくれ」
「あの女は、あなたの妻にはなれないわ。あたししか、いないのよ。あなたの妻は…」
彼は、女の異常(いじょう)なほどの執念(しゅうねん)を感(かん)じて恐(おそ)ろしくなった。女を押(お)しのけると、彼は逃げ出した。走りながら後ろを振(ふ)り返ると、女が追(お)いかけて来る。それも、ものすごい早(はや)さで…。彼も必死(ひっし)に走った。だが、彼は足がもつれて転(ころ)んでしまった。
追いついた女は、彼の上に股(また)がると、彼の胸(むな)ぐらをつかんで言った。
「あたしからは逃げられないわよ。これは運命(うんめい)なの。運命に逆(さか)らうことなんかムリよ」
<つぶやき>これは新手(あらて)の彼氏狩(かれしが)りなの? それとも、結(むす)ばれる運命だったのでしょうか。
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