みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0847「芋掘り」

2020-03-28 18:16:46 | ブログ短編

 仲(なか)の良い女友だち数人で芋掘(いもほ)りに出かけた。行楽気分(こうらくきぶん)でいたみんなは、その仕事(しごと)のきつさに根(ね)を上げてしまった。これはもう、遊(あそ)びなんかじゃ――。
「ねえ、どういうこと。イチゴ狩(が)りとか、ぶどう狩りとか、そんな感じじゃなかったの?」
「そうよ、これじゃ、肉体労働以外(にくたいろうどういがい)のなにものでもないわ」
「ほら、あれを見て。言い出しっぺの綾乃(あやの)…。何か一人だけ楽(たの)しそうなんですけど」
「ねえ、あの隣(となり)にいる青年(せいねん)って誰(だれ)よ。あの娘(こ)に農家(のうか)の知り合いなんていたの?」
「ほんと、楽しそうよね。まるで恋人同士(こいびとどうし)にしか見えないわ」
 その時、農家のおじいさんから怒鳴(どな)り声が飛んだ。「何しとる! 日が暮(く)れちまうぞ!」
 これを聞いて、綾乃がみんなの方へ駆(か)け寄りながら叫(さけ)んだ。
「ほら、ちゃんとやってよ。手を動かし――」言ってる途中(とちゅう)で、綾乃は土塊(つちくれ)に足をとられて倒(たお)れ込んだ。彼女が顔(かお)を上げると、土まみれになっている。
 この様子(ようす)を見ていた口うるさいおじいさんは、大笑いをして言った。
「何やっとる。そんなんじゃ農家の嫁(よめ)にはなれんぞ。しっかりせんかい」
 これを聞いた友だちは口々(くちぐち)にささやいた。「えっ、嫁?」「嫁って何よ」「どういうこと…」
 みんなの見解(けんかい)はこういうことにまとまった。綾乃は、おじいさんの機嫌(きげん)をとるために自分達を利用(りよう)したのだと。当然(とうぜん)、帰り道で綾乃はみんなに問い詰(つ)められることになった。
<つぶやき>ちゃんと、みんなに事情(じじょう)を説明(せつめい)しないとね。そうじゃないと協力(きょうりょく)なんか…。
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