みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0848「押しかけ」

2020-03-29 18:20:08 | ブログ短編

 昨夜(ゆうべ)は一睡(いっすい)もできなかった。原因(げんいん)は、今、ソファーで寝息(ねいき)をたてている女の子だ。
 ――昨日(きのう)のことだ。僕(ぼく)は行きつけのお店(みせ)で夕食をとり自分のアパートに戻(もど)ってきた。部屋に入りドアを閉めようとしたとき、誰(だれ)かがドアを押(お)さえて思いっ切り引っ張(ぱ)った。僕はあやうく倒(たお)れそうになってしまった。
 ドアの外(そと)にいたのが彼女で、僕のまったく知らない人だ。彼女はにっこり微笑(ほほえ)むと、
「あたし、さっきのお店でたまにあなたを見かけるのよ。あなたって、とっても真面目(まじめ)そうで、優(やさ)しい人って感じがしたから、ついて来ちゃった」
 突然(とつぜん)こんなことを言われて、僕は慌(あわ)ててしまった。しどろもどろになっている僕を押しのけて、彼女は部屋に上がり込んで行く。僕は彼女を止めようと追(お)いかけた。
「ちょっと待ってよ。えっ、誰(だれ)なの? 勝手(かって)に…」
 彼女はソファーにどっかり座(すわ)ると、ホッとしたような小さな溜息(ためいき)をついて、
「いいじゃない、一晩(ひとばん)だけ泊(と)めてよ。朝になったら出て行くから…。あなたって、そういうことしないタイプでしょ。あたし、そういうの分かっちゃうんだ」
「いや、でも…。それは…」僕はどうしたらいいのか、こんなこと初めてで…。
「彼のとこにいたんだけど、喧嘩(けんか)しちゃって…。もうムリだと思うんだ。だから、飛び出して来ちゃったの。あなたに迷惑(めいわく)はかけないから…。ここに寝(ね)かせて――」
<つぶやき>突然(とつぜん)現れた女の子。もしかして、彼女はこのまま居座(いすわ)るかもしれませんよ。
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