みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0813「病気」

2020-02-22 18:32:27 | ブログ短編

 患者(かんじゃ)を前にして、医者(いしゃ)は眉間(みけん)に皺(しわ)を寄せて難(むずか)しい顔をしていた。患者は不安(ふあん)な気持ちになって医者に訊(き)いた。
「あの…、そんなに悪(わる)い病気(びょうき)なんですか?」
 医者はちょっと間をおいて答(こた)えた。「いや、大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。ただの風邪(かぜ)でしょう。少し熱(ねつ)があるようなんでお薬(くすり)を出しときますね。すぐに治(なお)りますよ」
「でも…」患者は意(い)を決して言った。「本当(ほんとう)のことを言って下さい。私なら、何を言われても大丈夫(だいじょうぶ)ですから。何なら家族(かぞく)を呼(よ)んでも――」
 医者はまた眉間に皺を寄せて、「いや、その必要(ひつよう)はありません。風邪なんですから…。でも、そうですね…、ちょっと救急車(きゅうきゅうしゃ)を呼んでもらえませんか……」
「えっ…、そんなに悪いんですか? いったい、どんな病気なんですか?」
「違(ちが)うんです…。私が……」
 医者は突然(とつぜん)椅子(いす)から崩(くず)れ落ちて、ウンウン唸(うな)りだした。そばにいた看護師(かんごし)が駆(か)け寄ってきて、倒(たお)れた医者の容態(ようだい)を見ながら言った。
「もう、先生。だから言ったじゃないですか。今日はお休みにしましょうって」
 医者は唸りながら答えた。「しかしね、私がいないと…」
 看護師は呆然(ぼうぜん)と立っていた患者に言った。「ごめんなさいね、心配(しんぱい)ないですから。ちょっとお腹(なか)の具合(ぐあい)が悪いみたいで。食中毒(しょくちゅうどく)じゃないといいんですけど…」
<つぶやき>お医者さんってお忙(いそが)しい仕事(しごと)ですから…。体調管理(たいちょうかんり)には気をつけて下さいね。
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