長尾景虎 上杉奇兵隊記「草莽崛起」<彼を知り己を知れば百戦して殆うからず>

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大前研一氏先生談2014年1月17日「2013年国内市場・日本の現状と問題点」

2014年01月17日 11時38分57秒 | 日記
『防衛計画・税制改正・公的年金運用~類似した組織に目を向ける』防衛計画大綱 中期防衛力整備計画固め。税制改正 2014年度税制改正大綱を決定。公的年金運用 海外インフラ投資を開始。2013年12月20日大前研一氏メール記事参照。▼ あれだけ反対していたオスプレイを自衛隊に。政府は13日、中長期の安全保障政策の指針となる防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画での自衛隊の装備目標を固めました。2014年度から5年間の目標を示す中期防では、米軍が開発した垂直離着陸輸送機オスプレイを17機、水陸両用車を52両購入する方針を明記。軍事力を高める中国を念頭に離島防衛や機動力を重視した装備を整えるとのことです。米国としては、嬉しくてしょうがない状況でしょう。中国と日本がもめることで、日本が米国から武器を購入する流れになっています。グローバルホークなどの無人機に加え、かつて米軍が日本国内で使用するのを反対していたオスプレイまで、 自衛隊で保有することになりそうです。日本は戦闘機が離発着できる空母を保有していないので、ヘリコプターとして離発着できるオスプレイは非常に使い勝手が良いと思います。 尖閣領域から石垣島までカバーすることができるでしょう。あれだけ米軍のオスプレイに国中で大騒ぎをしていたのに、自衛隊が保有するという手のひら返しには少々呆れてしまいます。▼ 交際費を拒否する英国の潔癖性とカナダの年金運用ノウハウ。自民、公明両党は2013年12月12日、2014年度税制改正大綱を決めました。生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率については「消費税率10%時に導入する」とし、一方、自動車の購入時にかかる取得税の引き下げなど、来年4月の消費増税をにらみ景気に配慮した措置も盛り込むとのことです。細かい項目を見ていくと、例えば交際費を50%まで非課税にするというものがあります。私はいまだにこのような項目を追加しようとすることが、残念でなりません。交際費が認められるから、飲みに行くというのは筋が違うでしょう。またそもそも最近では、飲み会や会食の数も減り、2次会・3次会と遅くまで飲み歩く人はかなり減ったと思います。ゆえに、交際費を非課税にできます、と言われてもどれほど効果があるのかは疑問です。以前、英国の労働党の議員の大阪での接待に同席したことがあります。食事を終え、会計のときになって、彼らは金額を確認させてくれ、と言いました。日本側の役人は渋りましたが、結局金額を確認した彼らは、こんな高額の食事をご馳走になったら賄賂になるので自分たちの分は自分で支払うと言いました。英国の議員が自腹で払っているので、自分たちも支払わざるを得なくなり、日本の役人は非常に困っていました。今、日本でも飲み会や会食が減り、社会が英国化しつつあるのかも知れません。英国人が持つ潔癖性を日本人も身につけてほしいと思います。交際費が認められるから飲みに行くという、みっともない行為はやめてほしいと思います。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はカナダで最大規模の公的年金基金・オンタリオ州公務員年金基金(OMERS)と組み、海外のインフラ投資を始めます。これは非常に良いことだと思います。日本のGPIFには経験がありませんから、学べることは多いはずです。オンタリオ州公務員年金基金は運用もスマートですし、結果も出しています。さらに日本にとって有益だと思うのは、米国のそれと違って「普通のサラリーマン」が世界のことをよく勉強し、公共投資を行って、リターンを得る仕組みを作り上げていることです。米国の場合、一部のスーパースター的な存在の人が、日本のサラリーマンでは考えられない報酬を得ていることもありますが、カナダの場合にはそういうことがありません。日本に近い環境だと思います。カナダに目を向けたことも良いですし、その中でもオンタリオ州公務員年金基金を選んだのも慧眼だと言えるでしょう。ぜひ、多くのことを学んでほしいと思います。

 靖国参拝、首相談話の疑問 歴史認識・内政・外交。2013年12月27日05時00分。 安倍晋三首相は26日、靖国参拝後に「恒久平和への誓い」と題した談話を発表した。中国や韓国の反発を見越し、あらかじめ用意した談話だ。だが、過去の経緯や首相のこれまでの言動と比べると、矛盾が多い。この日の首相発言とともに疑問点を指摘する。《歴史認識》参拝したのは政権1年の歩みをお伝えするためです。■政教分離の問題を素通り。     靖国神社には先の戦争を指導し、東京裁判で責任を問われた東条英機元首相らA級戦犯14人が合祀(ごうし)されている。靖国参拝は過去の侵略と植民地支配を日本の政治指導者がどう捉えるか、という歴史認識の問題に直結する。こうした意味をもつ靖国神社に政権1年を伝える必要があったのか。首相は昨年の就任後、歴史認識をめぐってたびたび国内外から不信を招いてきた。閣僚らの靖国参拝に中国や韓国が反発すると「どんな脅かしにも屈しない」と反発した。植民地支配と侵略へのおわびと反省を示した村山談話を「そのまま継承しているわけではない」と発言。批判を受けると一転、「歴代内閣の立場を引き継ぐ」と修正した。首相の靖国参拝は、憲法の政教分離原則に照らしても、問題点を指摘されてきた。先の大戦まで国家神道は戦争動員の精神的支柱となった。その中心的施設だったのが靖国だ。談話はその点も素通りしている。安倍首相はこの日、記者団に対し、「戦場で散った英霊のご冥福をお祈りし、リーダーとして手を合わせる。世界共通のリーダーの姿勢だ」とも強調した。しかし、米国のケリー国務長官が10月、戦没者の慰霊のために献花したのは、靖国ではなく千鳥ケ淵戦没者墓苑だった。米国務省当局者は朝日新聞の取材に「宗教や政治的な含意のない場所だからだ」と答えている。オバマ政権が「失望している」との声明を出した背景にはそうした事情があるとみられる。(池尻和生)*《内政》平和の道を邁進(まいしん)してきました。この姿勢を貫きます。■過去の平和主義とは隔絶。首相の言う「平和」と、これまでの平和国家の歩みに断絶はないか。首相がことあるごとに繰り返す「国際協調主義に基づく積極的平和主義」は、今までは「消極的」だったとの不満の裏返しにほかならない。武器輸出三原則を見直し、集団的自衛権の行使容認をめざし、憲法改正までも視野に入れる。にもかかわらず、継続性を唱える談話には違和感がある。首相は談話で、「今後とも不戦の誓いを堅持していく決意を新たにした」とも語った。ただ、今年の終戦の日に行われた全国戦没者追悼式の式辞に「不戦の誓い」の表現はない。歴代首相は式辞でアジア諸国への加害責任に言及してきたが、首相が「誰のため、何のため開く式なのか、抜本的に考え直してほしい」と官邸スタッフに指示。「深い反省」「哀悼の意」とともに「不戦の誓い」は消えた。首相は単に発言の場を選んだだけ、というかも知れない。だが、これまでの経緯からすると、この日の「誓い」は唐突だった。参拝後、首相は記者団にこう語った。自分は昨年の自民党総裁選でも衆院選でも、第1次政権で参拝できなかったことを「痛恨の極み」と述べ、そのうえで党総裁・首相に選出された――。まるで自らの参拝は国民の信任を得ていると言わんばかりだ。だが、首相は「政治・外交問題に発展していく」として、参拝するかどうか明言してこなかった。論理のすり替えはここにもある。(野上祐)*《外交》中国、韓国の人々を傷つけるつもりはありません。■戦犯合祀の理解得られぬ。首相は参拝した後、記者団に「靖国神社の参拝は、いわゆる戦犯を崇拝する行為と、誤解に基づく批判がある」とも述べた。しかし、「誤解」と言って切り捨てるのは、無理があるのではないか。仮に首相本人に「戦犯を崇拝する」というつもりがなかったとしても、A級戦犯もまつられている靖国を参拝したという事実は変わらない。特に中国にとってみれば、日中国交正常化の際、日本の戦争指導者と一般の日本国民は別という理屈で自国民に説明した経緯がある。そもそも侵略された中国や、植民地支配を受けた韓国の人々には、靖国神社への嫌悪感が根強い。靖国神社の境内にある施設「遊就館」では、戦前の歴史を正当化したとも受け止められる展示をしている。「傷つけるつもりはない」と言っても理解されるだろうか。首相は就任してからの1年間で、中韓の首脳と一度も会談していない。だからこそ、「対話のドアは常にオープン」と述べていたのではなかったか。靖国神社を参拝すれば、首脳会談はいっそう遠のく。両国間のビジネスや観光などにも悪影響を与えかねない。こんなことは首相自身も予測していたはずだ。 それにもかかわらず参拝を強行した。首相は談話で「中国、韓国に対して敬意を持って友好関係を築いていきたいと願っています」と記したが、相手国を怒らせておいて、友好を唱えるのは無理がある。(東岡徹)(2013年12月27日朝日新聞記事参照)

靖国参拝、米中韓が怒るわけ 識者に聞く。2013年12月28日05時00分。安倍晋三首相が強行した靖国神社参拝に国際社会が厳しい目を向けている。参拝は日本に何をもたらすのか。米中韓の識者に聞いた。■もう日本の擁護難しい 米外交問題評議会上級研究員、シーラ・スミスさん。――安倍首相の靖国参拝に、米政府は「失望した」と異例の批判をしました。「私もショックを受けました。安倍氏は、参拝の日本にとってのコストを理解し、代わりに中国や韓国に対する外交的な努力に取り組むと考えていましたが、私は間違っていました」「もし安倍氏が、単に自分の支持層に応えるためではなく、中韓が対話に応じないからと、あえて緊張を高め譲歩を迫る外交カードとして参拝したとしたら、地域の国々だけでなく、米国の考えも読み違えています」「オバマ政権の政策担当者の多くは、安倍氏が経済を優先課題に据え、中韓に対話を提案することを好意的にとらえていました。安倍氏によって、日本の戦略的な展望に関するオバマ政権の見方は、より前向きなものになっていたのです。しかし、そうした矢先の参拝は、日本を傷つけることになりました」――米国は従来は公式には首相の靖国参拝を批判することは避けてきました。なぜ今回は異なる対応になったのでしょう。「中国との関係では、小泉政権時代の日本は少なくとも対話をしようとしていたし、かたくなな態度を取っているのは中国側と見られていましたが、いまは違う見方があります。それに、現在は尖閣諸島の問題もあります。この問題で日本の対応に非はありませんが、参拝で、予測不能な状況に拍車がかかるかもしれません」「二つ目はもちろん、韓国との関係です。ワシントンでは、歴史や安全保障の問題で、朴槿恵(パククネ)政権が少し過剰反応なのではという見方もありました。米政府も関係改善を手助けしようとしていましたが、安倍氏の参拝によって難しくなりました」――日米関係への影響も出てくると思いますか。「当然あるでしょう。日米防衛協力のための指針見直しなど多くの安全保障上の課題に取り組もうとしているときに、安倍氏は泥をかき混ぜて水を濁らせるようなことをしました」「オバマ政権の当局者たちは、国内や韓国など外国の懸念に対して、『安倍首相は現実的な見方をする人物で、心配する必要はない』と、安倍氏と日本を擁護する側に立っていたのです。しかし、こうした取り組みは難しくなるでしょう。安倍氏の行動は合理的な政策目標の追求よりも、イデオロギー的な動機に基づくという見方が増えるかもしれません。いわゆる『国家主義的な目標』を追求しようとしているのかと、疑問を抱く人も出てくるでしょう」「安倍氏がなぜ参拝したのか、理由は複雑かもしれませんが、結果は明白です。日本の政治的な選択肢を狭めることにつながり、新しい安全保障環境への戦略的な適応が極めて重要な時期に、日米の同盟関係を複雑なものにします」(ワシントン=大島隆)*米外交問題評議会・上級研究員。専門は日本政治・外交政策。コロンビア大学で博士号(政治学)を取得し、ボストン大、東西センターなどを経て現職。■傷つける気ない?偽善 中国社会科学院日本研究所副所長・楊伯江(ヤンポーチアン)さん。――安倍首相の靖国参拝がもたらす日中関係への影響をどう見ますか。「今年に入り、貿易や環境保護といった共通の利益への考慮や、日本側の民間の理性的な声を通じて緩やかに改善されつつあったが、参拝はこうした努力を白紙に戻してしまいました」――首相は参拝後、「中韓の人々を傷つけるつもりはない」と表明しました。「偽善です。首相は『参拝は政治、外交問題化している』とも言っています。首相就任後に1年間、参拝を我慢したのは、その悪影響を認識していたからにほかならない。首相を支持する保守層は、首相の参拝を、日本の国際社会での地位向上や政治力の回復と結びつけているようですが、全く逆です。参拝は日本のイメージだけでなく、安倍首相の政治的、外交的な信用をも傷つけてしまいました」――首相の唱える「積極的平和主義」は周辺国に受け入れられますか。 「日本が国際的に平和維持活動をする権利は尊重されるべきだし、侵略の歴史について過去には謝罪もしました。しかし、謝罪をひっくり返す政治家がしばしば現れ、周辺国を心配させている。こうした心配を解かずに、積極的平和主義を唱えても、日本が守ってきた戦後の平和主義とは異なる『侵攻的』な概念ではないかと、不安を感じざるを得ないのです」――北朝鮮問題の解決にも影響が生じるのでは。「北朝鮮やアジアの多くの問題は中日韓の協力が必要ですが、参拝により、協力の余地が狭められています」――昨年の      反日デモなどを受け、日本では中国への警戒が広がりました。中国の過剰な反応が参拝に影響したのでは。「首相は今回、自身の願望に加え、国内保守派の圧力を受けて参拝したのだと考えています。歴史問題で中国は、1980年代の教科書問題から昨年の『島購入』(尖閣諸島の国有化)まで、実はおおむね受け身の対応でした。積極的に問題は起こしていない。領土問題と歴史問題は質が異なります。領土で譲歩できないのは理解できますが、歴史は『譲歩』の対象ではなく、『是か非か』の問題。日本の侵略が間違いだったことを否定できる余地はないでしょう」――中国人は今回、どう反応するでしょうか。首相と日本国民を分けて考えられますか。「多くの中国人は、日本人は勤勉で善良な民族で、党利党略で行動する日本の一部政治家が問題なのだと思っています。また、戦略上も日本人全員を敵に回す批判の仕方はよくないと考えています。中国人は成長し、国際政治の背景を徐々に理解し始めている。今回の参拝後、昨年のデモであったような暴力的な行為は起きていません」(北京=石田耕一郎)*政府系シンクタンク「中国社会科学院」の日本研究所副所長。中華日本学会の常務理事を務め、日本に知己も多い。日本や北朝鮮など東アジア問題が専門。■関係改善水の泡、悔しい 韓国・世宗研究所日本研究センター長、陳昌洙(チンチャンス)さん。――安倍首相は靖国神社参拝が「残念ながら政治問題、外交問題化している」と述べ、暗に中韓の対応を批判しました。「境内にある『遊就館』を見れば、靖国神社が日本の帝国主義を美化していることは明らかで、戦犯もまつられている。そこに首相が参拝すれば、韓国では日本が植民地支配を反省していないことの象徴と映る。その怒りを、よく分かっていないのではないでしょうか」――「戦犯を崇拝する行為との誤解に基づく批判がある」とし、参拝で「不戦の誓い」をしたとも述べています。「安倍首相は、東京裁判は戦勝国が裁いたという意味で、正当ではないと考えている。日本のために命を捧げた人たちなのだから、参拝しても何ら問題ないという発想です。でも、国際社会でその論理が通じるでしょうか。ケリー米国務長官らが10月の訪日の際に、靖国ではなく千鳥ケ淵戦没者墓苑に献花したのがその証拠です。不戦の誓いをするなら、国際社会に認められる形でするべきです」――「中国、韓国の人々の気持ちを傷つける考えはない」とも述べ、中韓との関係の重要性を強調していますが。「そういう気持ちがあるのなら、行動で見せてほしい。河野談話や村山談話など日本政府が積み重ねてきた方針を貫き、さらに上積みしてほしい。慰安婦問題などで、誠意ある具体的な措置をとってほしい」――韓国では、首脳会談をかたくなに拒み続ける朴槿恵大統領への疑問も出始めていました。日韓関係に改善の動きはなかったのですか。「双方の政府内でも、互いに妥協して改善していこうという動きが芽生え始めていた。それが水の泡になりました。悔しくてなりません」――首相は真意を直接、中韓に説明したいとしています。「韓国では再び、朴大統領の姿勢が正しかったという論調が支配的になるでしょう。安倍首相の在任中の首脳会談は難しいかもしれません」――なぜこの時期に参拝に踏み切ったと思いますか。「早いうちに右派の要求を満たし、その支持に基づいて消費税などの懸案を乗り越えようと思ったのでは。一方で、韓中との関係はどうせ改善はしないだろうと。国内でのプラスが、国際社会でのマイナスより大きいと考えたのでは」――東アジア情勢に与える影響はどうでしょう。「韓日、中日関係の悪化に加え、防空識別圏問題で韓国の中国への警戒心も強まり、互いに信頼が蓄積できない。参拝により、日米韓の協力関係はぎくしゃくするでしょう。その中で中国が新たなルール作りを仕掛けてくれば、全体が不安定化しかねない。参拝の影響は、それほど大きいと思います」(ソウル=貝瀬秋彦)*1961年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2002年から韓国のシンクタンク・世宗研究所日本研究センター長。日韓関係で多くの提言をしている。
 
(検証アベノミクス 2013:3)大胆緩和、深める自信。2013年12月28日05時00分。株式市場が約6年2カ月ぶりの高値をつけた26日昼、その最大の「功労者」が首相官邸に現れた。安倍晋三首相との会談のために訪れた日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁だった。「日本経済は、(4月に)量的・質的緩和を導入後、予期した通りに進んでいる。2%の物価安定目標の達成に向かって着実に道筋をたどっている、と説明した」。会談後、記者団に囲まれた黒田総裁は胸を張った。自信に満ちた表情は、総裁に就任した9カ月前から変わらない。4月、いきなり過去最大の金融緩和を発表した会見もそうだった。「2年で物価上昇率2%を達成する」「マネタリーベース(市場に流すお金の量)を2年で2倍にする」。2014年末には市場に270兆円ものお金があふれかえる。これまでの日銀の政策とは一線を画す、まさに異次元の政策で、アベノミクスの「第1の矢」を強烈に放った。 就任前から緩和に積極的な姿勢は知られていたが、「ここまでやるのか」というのが正直な印象だった。記者会見では、「2年」「2%」「2倍」と、数字の「2」を並べたボードを掲げて明快に説明した。その姿は、日銀での経験がない「落下傘」総裁とは思えないほど自信に満ちあふれていた。学者肌で、「金融緩和だけでデフレ脱却はできない」と慎重だった白川方明(まさあき)・前総裁とは対照的だ。「日銀は変わった」と思わせるには十分だった。市場はすぐに反応した。昨年末からの円安・株高がさらに勢いを増した。「金融緩和で物価は上がり、デフレから抜け出せる。そう期待させるために同じことを言い続ける」。日銀幹部は、黒田総裁の姿勢をこう解説する。確かに記者会見では「生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働いている」と決まり文句のように繰り返している。物価は上がり、景気も上向く――。人々にそう信じてもらうために、日銀は市場に流すお金の量を増やし続ける。「リフレ」とよばれる黒田総裁の政策はいまのところ、ほぼ想定通りの結果を出している。この1年で円相場はドルに対して21%も下がり、日経平均株価は56%も上がった。いずれも30~40年ぶりという記録的な相場になる見込みだ。■見通せない増税後。しかし、すべて日銀の思い通りに市場を動かすことはできない。象徴的だったのは、東京債券市場で決まる長期金利の乱高下だった。国債を買う人が増えて値上がりすれば、その分、金利は下がる。日銀が4月の緩和後、大量の国債を買い始めたため、金利は下がるとみられていた。ところが予想とは逆に急騰した。日銀が新規発行額の7割もの国債を買い占めることになり、日銀以外の投資家同士の売買が急減した。「日銀に買ってもらうタイミングを逃すと国債が売れなくなる」と不安で売り急ぐ投資家も出て、市場は混乱した。「想定外だった」と日銀幹部は振り返る。その後、日銀が緩和を続けるうちに投資家も落ち着き、金利は下がった。いまはほぼ想定通りの年0・7%台に下がっている。 だが、この長期金利の乱高下は、投資家の不安がひとたび高まれば、市場が制御不能に陥りかねない怖さを改めて示した。新たな不安の種は、来年早々に控えている。消費増税という大きな崖だ。「円安効果が薄れる来年半ば以降、物価上昇のペースが止まり、消費増税で景気も失速する」と、ある日銀OBは心配する。市場ではすでに、日銀が来年4月の消費増税前後に、景気の腰折れを防ぐための「追加緩和」に踏み切る、との見方が出ている。黒田総裁も、不測の事態が起きれば追加緩和を検討する方針を示している。ただ、追加緩和でさらにお金の量を増やしたところで、今年4月の大規模緩和ほどのインパクトはなく、効果は限られている。しかし黒田総裁は「消費増税後も、想定通り景気回復は続く」と強気の姿勢を崩さない。不安を見せれば、人々の期待をそぎ、円安・株高の流れを止めてしまいかねない。「日銀総裁は、目を閉じたままお客を乗せて車を運転するドライバーのようなものだ」と、歴代総裁に仕えた日銀の元幹部は話す。経済は生き物だ。どんな政策を打っても、結果が出るまで成否は見えない。強気な発言を繰り返す黒田総裁も、実は同じ心境のはずだ。「物価上昇率2%を2年で実現する」という約束は守れるのか。来年半ばにはその答えが見えてくる。(橋本幸雄)
 
「家庭内野党」か「応援団」か 発信続ける安倍首相夫人。2014年1月7日21時10分。 安倍晋三首相(59)夫人の昭恵さん(51)が独自色の強い発信を続けている。第2次安倍政権発足に伴いファーストレディーとして再登板し、脱原発や日韓友好、防潮堤見直しに取り組み、政権の政策に異論も唱える。昭恵さんの言葉で首相の方針が変わることはなかなかないが、政権2年目も発信し続けていきそうだ。インタビュー詳報。昭恵さんは昨年12月、自民党本部で東日本大震災の被災地の巨大防潮堤計画に関する会合に出席した。首相夫人が党会合で発言するのは異例。「景観が崩れ、環境も破壊される。もう一度考えてほしい」と計画見直しを主張し、帰宅した首相に「何とかならないの」と迫ったが、首相は「一度決まったものは変えるのが難しい」と答えたという。昭恵さんは2006~07年の第1次政権では「自分らしさがなかった」と振り返る。その後、地元・山口で稲作に挑戦したり、都内に居酒屋をオープンしたりといった試みを始めた。政権は原発再稼働に前向きだが、昭恵さんは「事故が起きると影響が大きい」と否定的で、再生可能エネルギーの新技術を研究する施設を新設するよう首相に提案した。講演では「私は家庭内野党」と語り、政権の原発輸出に苦言を呈す。首相が首脳会談の糸口をつかめない韓国との交流にも力を入れる。在日韓国大使館でキムチを作り、韓流ミュージカルをフェイスブック(FB)で絶賛。FBで「韓国との交流、ありえない」などと批判されたが、昭恵さんは「隣国ですので仲良くしていきたい」と書き込んだ。昭恵さんによると、韓国側から「来てほしい」と要請されたという。ただ、昨年末に首相が靖国神社参拝に踏み切り、実現は遠のきそうだ。最近では鳩山由紀夫元首相夫人や菅直人元首相夫人が「首相の言動や政策に意見を言っていた」(民主党関係者)。野田佳彦前首相夫人のようにあまり人前に出ない夫人も少なくない。周囲はどう見るか。脱原発で連携する環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「自民党の古さが、昭恵さんが表に出ることでソフトかのように錯覚させてしまう」。首相は扱いかねているかもしれないが、図らずも政権のイメージアップにつながっているというわけだ。首相は昨年5月、テレビ番組で「(彼女は)我が道を行っているが、ここ一番困ったときには力を合わせる」と評している。首相周辺は「家庭内野党というよりは自民党の部会みたいなもの。違う意見を持っていても、最後は選ばれた意見を尊重する」と解説する。昭恵さんは「主人に反発する人たちの意見もわかる」と説明する。首相に大きく方針転換させるまではいかないが、幅広い意見に耳を傾けるよう「つなぎ役」を自任しているようだ。(松井望美)
(ニュースQ3)独仏の影薄く、中国も陰り…… いえ、第二外国語の話。2014年1月8日05時00分。大学の第二外国語で、かつては主流だったドイツ語やフランス語の影が薄くなっている。中国語を学ぶ学生が増え、“二外”を必修としない大学も増えた。だが、中国語人気にも陰りが見えてきたという。■不人気の理由「投資不適格」。「第二外国語の代表選手だったドイツ語やフランス語は『生活に必要』と言い難く、将来の職業生活への投資にならない」。西山教行・京都大教授(言語政策)は昨年末に京大であった研究会でそう指摘した。ドイツ語の場合、旧制高校時代から長く、文科系の学生だけでなく理科系の学生の多くにも「必要」とされ、学ばれてきた。京大では2000年代になっても履修する1年生は1千人台を維持し、英語以外の外国語で最も多かった。それが09年度になって千人を割った。10年度には初めて中国語(1048人)に抜かれた。西山教授は「多くの大学では90年代後半から中国語がトップになっていったのではないか」。■「役立ちそう」期待を背負う。文部科学省は全国の大学の外国語別の履修者数は把握していないが、各言語をいくつの大学が教えているかは調べていて、英語以外では中国語が03年度にドイツ語を抜いてからずっと首位。日本独文学会の12年の全国調査では、ドイツ語履修者数は中国語の3分の2にとどまっていた。米井巌・日本大教授(ドイツ語教授法)は、91年の大学設置基準の緩和で第二外国語を必修にしない大学が増え、ドイツ語の履修者は半減した、とみている。「ドイツ語教員はそれまで思想や哲学に重点を置きがちで、中国の経済成長に後押しされ『経済言語』として台頭してきた中国語とは勝負にならなかった」 各言語の研究者が集まって12年に英語以外の6言語を学ぶ学生にアンケートし約1万7千人の回答を分析したところ、中国語は「役に立ちそう」という期待がもっとも強かった。 ただ、NHK外国語講座(テレビ)のテキストの売れ行きをみると、英語以外では韓国語が一番人気だ。13年度でこれまでに中国語が最も売れた月でも14万部だが、韓国語は24万部。早稲田大教育学部では、07年度に中国語を学んだ1年生は541人とドイツ語やフランス語の倍近くいたが、09年度は400人を割った。中国語教育を担ってきた村上公一・同学部長は「冷凍ギョーザ事件やチベット暴動の影響で、尋常じゃない減り方にショックを受けた」と振り返る。■日中関係悪化、履修者が減少。10年度に500人台に戻ったが、13年度は400人台。村上学部長は日中関係の悪化が原因だとみており、「中国語の履修者数は政治・経済情勢に影響を受けやすい。離れた学生はスペイン語に流れている」。13年度にスペイン語を学んだ1年生は前年度比4割増の342人で、ドイツ語やフランス語を上回った。京大でも12年度に中国語の履修者が減りドイツ語に抜き返された一方、スペイン語は右肩上がり。13年度に履修した1年生は10年前の3・7倍にふくらんだ。京大の西山教授は言う。「学生はそのときの気分や実利面で第二外国語を選ぶ傾向が強くなったが、多様な文化や人びとと接する窓口として第二外国語を学ぶのだと考えてはどうか」(河村克兵)
『道州制・大阪府政~冷静に現象を捉える視点を鍛える』道州制 同床異夢の道州制、大阪府政 泉北高速鉄道 三セク売却議案が否決。▼ 道州制の実現に向けて、各論レベルでの議論が重要。日経新聞は2013年12月20日、「同床異夢の道州制」と題する記事を掲載しました。これは19日に開催された全国知事会議で、先の臨時国会において道州制推進基本法案の提出を見送った自民党に抗議文が提出されたと紹介。日本維新の会との連携を探る政策として道州制を重視した自民党も、日本維新の会が橋下共同代表の慰安婦発言などで勢いを失うと、熱気が急速にしぼんだと指摘しています。これは本当に残念なことです。もし橋下氏が、道州制のみに集中してやっていれば、こんな事態にならず、実現に向けて動いていたと思います。また日経新聞がいう「同床異夢」というのは的を射た表現です。地方に権限を持ってくるということで、全国各地の知事も道州制に「総論」としては賛成しています。しかし「各論」になってくると、反対する立場をとる人もいます。例えば、福島県は東北ではなく関東と一緒になることを望んでいたり、四国と中国で一緒になることはお互いに望んでいないなど、それぞれ意見が異なります。道州制の実現にあたり、地域によっては経済的に独立できるのか不安視されているところもありますが、私に言わせれば「四国だけでもデンマーク並みの経済がある」のだから、大丈夫です。実現しようと思えば、やれるはずです。私は今後も道州制の実現に向けて尽力していきたいと思っていますが、返す返すも橋下氏の勢いが削がれてしまったのが残念です。もし橋下氏があのままの勢いで道州制を推し進めていれば、自民党も民主党も従うしかなかったと思います。▼ 大阪府政の根本的な問題は、橋下氏の政治的な力が衰えたこと。大阪府が泉北高速鉄道を運営する第三セクターの株式を米投資会社に売却するための関連議案が12月16日の府議会本会議で否決されました。大阪維新の会は会派として賛成方針を決めていましたが、所属4議員が反対。大阪維新は市議会に加え、府議会でも単独過半数の勢力を維持できなくなり、看板政策「大阪都構想」への影響は必至の様相です。地下鉄の民営化も計画倒れに終わり、この案件も非常に面白い試みでしたが否決されてしまいました。すでに、大阪維新の会はガタガタの状態になっています。地元大阪でも決定事項を通すことができず、府議会、市議会でも過半数を割り込んでいます。かつて橋下氏と維新の会に勢いがあった頃は、下手に反対すると「橋下氏が怖い」という感覚があったはずです。郵政選挙で刺客を送り込んだ小泉元首相のように、何かあれば橋下氏が対立候補を送り込んできて痛い目にあうかもしれない、という怖さです。ところが前回の堺市長選挙で、すでに橋下氏と維新の会には、その力がないことが露呈してしまいました。だから、今は誰も怖れる人はいないでしょう。橋下氏の影響力が低下し、今回の三セク売却議案だけでなく、すべてが巻き戻されてしまうと思います。当然、大阪都構想も白紙になるでしょう。非常にもったいないことです。外資系ファンドへの恐怖が原因という人もいますが、より根本的には橋下氏や松井氏の力がなくなってしまったことだと私は思います。そして、そもそも外資系ファンドだからと言って敬遠すること自体、私には理解できません。外資系ファンドであっても法律には従うわけですから、何か法に抵触することがあれば訴えればいいだけです。外資系というだけで「黒船」を例に出して、恐怖心を煽る人がいますが、黒船にしても日本の開国のきっかけを作ってくれたのですから、感謝すべきです。戦後の財閥解体なども、より日本の財閥系企業を強くする結果になっていますから、私は良かったと思っています。外資というだけで盲目的に怖いと考えるのではなく、冷静に客観的に見るべきでしょう。大阪府政の根本的な問題は、橋下氏の政治的な力が衰えたことです。今回の件も、それが表面化した一例に過ぎないと思います。(2014年1月10日大前研一メール記事参照)

『2013年国内市場・日本の現状と問題点~問題解決力で日本の先を見通す』2013国内市場 日経平均株価6年ぶりに1万6000円台。外国人投資家 2013年の日本株買越額。自社株買い 2013年初から自社株買い。1人当たりGDP 日本の1人当たりGDP4万6537ドル。中小企業支援 個人保証制度改正で経営者以外も容認へ。▼ 年明けから、日本経済の勢いに対する潮目が変わりつつある。2013年末の日経平均株価は1万6291円と前年末から56.7%上昇しました。年間の上昇率は1972年(91.9%)以来、41年ぶりの上昇率。安倍首相は先月30日、東京証券取引所の大納会に出席し「来年もアベノミクスは買いだ」とあいさつしたそうです。昨年末の大納会の時点での日経平均株価を見ると、確かにある種の勢いを感じられたのですが、年が明けて少々様相が変わってきていると私は感じています。アベノミクスや金融緩和である程度の成果が見られた一方で、その後遺症があるのも事実です。実態を超えて株価が上がり続けることはありませんし、世界経済の動きから見ても風向きが変わりつつあると感じます。円安になっているのに実際の輸出量は増えていないですし、円安についても欧州では一部の企業から悲鳴が上がり始めていて、円に対する歯止めがかかり始めています。エコノミストや証券会社に言わせると、株価は2万円を突破するとか、円は130円を突破するとか、昨年の勢いのままに好き放題に言うと思いますが、私は年明けから「潮目」が変わり始めていると思っています。日本の株価を支えている1つの大きな要因と言われる外国人投資家による日本株売買についても、手放しで安心していられる状況ではないでしょう。東京証券取引所がまとめたところによると、2013年12月第3週の海外投資家の売買高は8803億円の買い越しでした。買い越しは8週連続で、買い越した金額はこれまでの過去最高を上回る約14兆円超を記録しているとのことですが、これもいつムードが一変するかわかりません。過去の外国人投資家の日本株売買状況を見ると、入っては出ての繰り返しであり、ぬかりなく便乗している姿勢が伺えます。もちろん長期的なスタンスで投資している場合も多いですが、ヘッジファンドなども確実に入り込んできています。新興国でも実際に起こっているように、こうした外国人投資家はムードが変われば、さっと手を引いていきます。現時点において外国人投資家による買い越しが大きいのは事実ですが、これから先はわかりません。先日、日本の1人あたりGDPが3年連続で過去最高になったと発表されましたが、こうしたニュースも、安倍首相は「見せ方」が上手なので、しっかりと事実を知ることが大切でしょう。発表された数字は2012年のGDPですが、これは為替実効レートが79円だったことが大きく影響しています。つまり、為替の影響を無視できません。もし他の条件を一切除外し、単純に2013年の為替レートで換算すれば、日本の1人あたりGDPはオーストラリアや米国を下回り、ニュージーランドやイタリア並みに落ち込む計算になります。▼ 金余り状態、モラルハザードに見る日本経済の問題点。金融情報会社のアイ・エヌ情報センターによると、2013年初からの自社株買いは合計約2兆1000億円。昨年1年間の実績を4割近く上回りました。一般に株高局面では進みにくいのに、2013年は企業業績の回復を追い風に取得額が膨らんだとの見解ですが、私は少し違う感想を持ちました。というのは、日本経済は「カネ余り」状態になっていて、企業は余った資金を持て余しているからです。日本企業の内部留保は総額で約230兆円と言われています。自社株買いが増えていると言われますが、投資先も見つけられず、行き先のない資金になっています。経営者は、資金を使うアイデアを出せずに困っているという状況です。そして銀行も同じくらいの金額の資金を持っていますが、貸出先がなく、持て余しています。それにも関わらず、日銀がさらにカネ余り状態を助長している状況です。積極的に自社株買いが進んでいるというよりも、このカネ余りという状況をしっかりと認識することが重要だと思います。先日、銀行などが中小企業へ融資する際の個人保証の制度改正を巡り、引き受け側の自発的な意思が確認できれば、経営者以外にも保証を認める方向となりました。今、日本の銀行はカネ余り状態ですから、とにかく「お金を借りてほしい」と思っています。ですから、貸出をするとなれば、金利をゼロでも貸し出します。ところが、そんな状況にあっても経営的に不安がある場合には、保証(担保)を取らなければ貸さない、ということです。本来、銀行は経営者や経営戦略から融資判断をすべきですが、結局、担保でしか判断しないのであれば、本来の機能を失っていると言わざるをえないでしょう。さらに今おかしい状況になっているのは、中小企業金融円滑化法が終了しているにも関わらず、金融庁の指導によって、本来の処理をしていないことです。本当なら「破綻懸念先」に分類し、引当金を計上しなければならないものでも、金融庁の許可を得て、「健全先」として分類したままにしています。あってはならないモラルハザードだと思います。亀井氏が推し進めた悪法(中小企業金融円滑化法)は、30万社を巻き込んだまま、未だに問題を先送りにしています。それでも、超カネ余り状態ゆえ誰も痛痒を感じていないのが恐ろしいと私は思っています。(2014年1月17日大前研一メール参照)


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