小林よしのり著作「ゴーマニズム宣言スペシャル 脱原発論」小学館刊行「反論&環境問題」フリージャーナリスト長尾景虎。
まず私が主張したいのは、私は「原子力ムラ」の人間ではなく、「利権」とも無縁であるということ。マンガチックな「原発ブラボー再稼働」でもないということ。
そして小林よしのり氏の本を読んで、「首相官邸の前で、集団ヒステリーでお祭りデモに参加している連中と同じだ」という感想だ。
確かに福島原発事故や乳飲み子の母や赤ん坊が泣いている映像を観たら誰だって「脱原発」になるのが人情だ。
しかし、したり顔で「脱原発」を主張するなど赤ん坊でも出来る事なんだよ。
小林氏は「一時的に電力が足りなくなって企業が出ていく? その程度の企業なら外国にどうぞ」という。現実がわかっていない。
電力不足が「一時的」な訳ないだろう。
企業は漫画家とは違う。1円2円の円高、電力料金で中小零細企業(全体の99%)は採算をとっている。
そんな企業が中国やベトナム、インド、ミャンマーに出ていけば二度と帰って来ない。
深刻な失業率になるだろう。漫画家の替りなど幾らでもいるが、職場の替りはない。
また小林氏は「自分が9歳の頃(1956年代)には原発はおろか火鉢しかなかった。大学生の頃漫画家デビューしたが(1970年代)、九州ではまだ原発はなくても幸せであった」という。
現代エネルギー革命や、産業イノベーションがわかっていない。氏が学生や幼かった頃にはなかったスパコン、コンピュータやハイテク家電、スマートフォン、高品質テレビ、(節電)家電、クーラー…なにより電気がなければ水道の水さえ流れない。
そういう基本的な事がわかっていない。悪戯に原発の危険や人々の恐怖心を煽り「原発は安全じゃない」と断罪する。これでは農家の恐怖心ばかり煽る農協と同じではないか。
絶対に安全なものなどこの世に存在しない。車も飛行機もバスも全部「危険」であろう。
何より太陽光や風力といういわゆる「再生可能エネルギー」が電力の1%であり、原発分はいままで30%であり、その分がすべて火力に特化しているから(電力の約99%)「電力不足」「電力料金値上げ」があるのであって、火力発電のエネルギー源の価格高騰に触れられていない。
だが、石油・ガスの価格高騰は続いている。価格高騰問題に触れられていないのは違和感がある。原発分の30%のキャパシティを太陽光・風力ではカバー出来ないのだ。それが現実だ。
小林氏はあまりに感情に流され、プラグマティズムやコンストラクティブな思考を怠っている。只の「お涙頂戴」の「感情論」に騙されて、したり顔で「脱原発」では救われない。
4号機の核燃料棒プールの危機など、政府も関係者も皆知っている。
プロパガンダで原子力発電とオウム真理教を結び付けて描いているが、原子力を再稼働したり、原発を廃炉にしながら新エネルギー開発(メタンハイドレード、シェールガス、地熱発電、新潟沖の未知の石油)していくのが「ヒトラー」(笑)だとでもいいたいのか?
TPP交渉は「ナチス」(笑)か?
私も政府の「冷温停止状態」「安全宣言」など信じていない。
3・11の事故後すぐ私は「メルトダウン」もしくは「メルトスルー」していると思っていたのだ。
だが「危険だ、危険だ」といっていても仕方ない。
小林氏は「安全だというならお前が福島に住んでみろ!」という。私は福島ではないがすぐ近くの米沢(福島市郡山市のすぐ隣り)に住んでいるが健康だ。
氏のいう「原発の代替案」が太陽光や風力では「お先真っ暗」だ。
むしろ大事なのは「脱原発」と「原発再稼働」を二極化しないことだ。原発を求めている人々すべて賄賂をもらっているとか、右翼と決めつける氏こそ「左翼」になった「元・右翼」である。
どっちみち福島原発事故で「新規原発開発」も「既存の原発再稼働」も殆どムリで、30年後には自然と「脱原発」になる。
原発は全部停まるのだ。私だって将来的には「脱原発」の人間だ。氏の漫画は「感情論」であり「結果論」である。
事故を観て恐怖を感じ、集団ヒステリー集団アレルギー、感情論を「プロパガンダ漫画」で描いているに過ぎない。
こんなものでまともな代替案もなく、したり顔で「脱原発」を叫ぶなど、まさに「団塊の世代の安保闘争」「集団ヒステリーお祭りデモ」だ。
マンガチックであり、主張が「子供」である。本書は一読の価値は確かにある。
だが、氏がオウムテロの時のように脅迫に晒されているのは甚だ不幸ではあるが、こんなひとがジャーナリストの仲間とは、日本も甚だ「呑気な国」である。
また、ここでは環境問題並びに気温上昇の+1.5℃の約束である。
気温上昇は猛暑、豪雨、干ばつ、洪水など異常気象を引き起こす。さらに、生物多様性の喪失、食料不足、健康被害、貧困、強制移住。すでに、1.1℃上昇しているのであと+0.4℃で抑えなくてはならない。そのためには世界のCo2(二酸化炭素)排出を2030年までにほぼ半分に、2050年度までには実質ゼロに抑え込まなくてはならない。
またメタンガスなどの温室効果ガスの削減も待ったなしの状態だ。
世の中には「地球温暖化などしていない」と真面目な顔で主張する学者もいる。が、温暖化はしている。産業革命時から1.1℃上昇しており、熱波や洪水や猛暑・極寒・干ばつなどもすべてではないが温暖化の影響である。
また環境破壊や地球温暖化は先進国のひとびとのせいなのに、〝報い〟を受けている(被害)のは発展途上国の貧民だ。
クライメート・ジャスティス(気候正義)を! 今の若者やこれから生まれてくるであろう子供たちの為に、大人世代の我々が温暖化対策をしっかりやらなければならない。
バングラデシュやパキスタンでは街の三分の一が水浸しになり、南米の大きな湖(アクレオ湖・東京ドーム250個分)はすべて干上がった。フランスのセーヌ川・ドイツのライン川も干上がった。
異常気象の発生リスクを見てみよう。
50年に一度レベルの極端な高温は、(1℃上昇で)4.8倍、(1.5℃上昇で)8.6倍、(2℃上昇で)13.9倍、(4℃以上上昇で)39.2倍。
10年に一度レベルの大雨は、1.3倍、1.5倍、1.7倍、2.7倍。
10年に一度レベルの干ばつは、1.7倍、2.0倍、2.4倍、4.1倍………
となっている。
再生可能エネルギーは太陽光や風力があるが、残念ながら抽出エネルギーの量が少なすぎる。再エネを20%で、2030年には36~38%にするというが。すべては再エネの技術発展次第である。原発も、小型化とか小型原子炉というが、〝トイレのないマンション〟状態で、放射性廃棄物の保管場所がない。海外のオンカロというか。自国なら日本版〝オンカロ〟の設備が必要になる。〝水素エネルギー〟の自動車やEV車(電気自動車)の開発も急がねばならない。東京大学では水素菌で、Co2を〝食べさせる〟実験がある。
温暖化対策は「我慢が必要だ」と誤解されているが、今までの生活水準を抑えるので、どうしてもそういう誤解の思想になる。
これからは温暖化対策をすればするほど得をするシステムを作り上げなければならない。温暖化の見える化(まず基準を知り、+1.5℃の約束をし、減らしていく)。「リユース」「リソース」「リサイクル」……地球温暖化対策を必死になってやっていくしかない。
風力発電、火力発電、太陽光発電、地熱発電……今こそ温暖化対策を徹底するときだ。
我々が変えていくしかない。次の世代にバトンを渡し、未来を託す。そのための温暖化対策である。