<「長期的視座」付け焼刃の「足りないから入れる」だけでは必ず失敗する <右翼も左翼も関係ない、国を愛し憂うならば世界唯一の「ニッポン移民システム」を作れ>>Ⓒ大前研一氏(経営コンサルタント)「人間力の時代第78回」小学館SAPIO誌2014年6月号。
2050年の日本の人口ピラミッドは、男女とも70代後半が最も多く、低年齢になればなるほど少ない“モスラの幼虫型”になっている。このままだと生産年齢人口は大きく減少し、現在の国力を維持できないのは火を見るより明らかだ。そもそもデモグラフィーや人口ピラミッドが何のためにあるのかと言えば、国家の長期的な政策を決めるためである。いいかえれば人口に関することは教育などと並ぶ国の「基本計画」であり、それを変えるには少なくとも20年かかる。国家が(試行錯誤が必要な)人口問題を解決しようとする際にも20年以上かかるのは当然だろう。逆に言うと、20年かけずにその場しのぎで移民政策を進めたら必ず失敗する。たとえば25~30年前のバブル期、人手不足になった土木建築業や製造業で働くため、南米の日系人をはじめ、パキスタン、インド、イランなどから労働者が続々とやってきた。日本政府は単純労働の受け入れを認めていないため、彼らは観光ビザ、学生ビザなどで来日して不法就労の形で働き、それを政府も事実上、黙認してきた。ところがバブル崩壊で不景気になると、日本の大半の企業は不法就労の外国人労働者を容赦なく解雇して追い出した。なかには不法滞在して働き続ける外国人も少なくなかった。そうした付け焼刃な対応をしたため日本は評判を落とした。あるいは今シンガポールやUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビはハイテクタウンを建設し、破格の待遇で世界中から優秀な研究者を集めている。だが、彼らはおおむね3年間で結果を出せなければ母国に帰国させられてしまう。そういう短期間で成果を求める不自然なやり方は、政策として上手くいかないと思う。永住を前提としてこそ「命がけで」その国の中で活躍し、その国に貢献しようとするのである。安倍晋三首相と政府は人手が不足している建設や高齢者介護、農業、家事サービスなどの分野で外国人労働者の受け入れを拡大する方針を示す一方で、「移民政策と誤解されないように配慮しつつ、検討を進めてほしい」と指示した。しかしそれでは25~30年前と同じ失敗を繰り返すだけである。政策には今年生まれの子供が15年、社会で活躍するのに30年かかる。重ねて言うが今後も日本が国力を維持する方法は移民の受け入れしかないし、今が最後のチャンスなのである。<移民政策3ステージ>ステージ①世界中から野心溢れる優秀な人材を年間1000人くらいずつ呼び込み、付加価値を作って富を創出する「グローバルステージ(舞台)」だ。代表的な例は、インド、イスラエル、台湾、ロシア、東欧などからトップ人材が集まっているアメリカのシリコンバレー(今はサンフランシスコ周辺を含めたベイエリアに地域が拡大している)だが、日本では、たとえば医療や環境など何種類かのステージがあってよい。ただし、それは1か所に集めてクラスター化し、1つの“生態系(エコシステム)”を形成しなければならない。立地場所も東京都圏、関西圏などだ。世界が魅力を感じる大都市の近くでないと優秀な人材が集まって来ない。そこにスタンフォードやMIT大のようなグローバルな大学教育施設をつくる事。筑波研究所や関西文化学術研究所などのような都会から離れた場所は論外だ。ステージ②医師、看護師、弁護士、消防士など「士(サムライ)」ビジネスの担い手だ。今後はそうしたプロフェッショナル領域の人たちが圧倒的に不足するので、世界から年間10万人規模で呼び込む必要がある。サムライビジネスの場合、そのスキルは世界でおおむね共通している。したがって自分の国でそれらの資格を取得して仕事をしていた外国人、あるいは日本で一定期間訓練を受けて技能試験の合格した外国人は、差別なく働けるようにすべきだと思う。インドネシアとフィリピンから看護研修生を招聘して、日本人でもパスするのが難しい日本語の国家試験を2年間以内で合格できなければ強制退去……こういうやり方は搾取であり、外国人でも母国ででも国家試験をパスしたなら、評判が良ければ日本で継続的に就業できるようにするべきだろう。外国人による介護や看護を敬遠する声もあるが、そんな悠長な事を言っていられる状況ではない。日本では65歳以上の高齢者人口は2025年に3657万人に達し、42年に3878万人でピークを迎える。60年には高齢化率は39.9%に達して国民の2・5人にひとりが高齢者になると見込まれている。今後は生産年齢人口である15~64歳が毎年約60万人ずつ減少していく。どう考えても介護や看護は外国人に任せるしかない。ステージ③一般労働者の場合。人口が減ってくると建設業者や漁業者など厳しい仕事の現場は人材確保が難しくなってきていくので、この領域に今後は外国人労働者を年間30万人規模で受け入れなければ立ち行かなくなると思う。とはいえ「人手が足りないからどんどん入れましょう」では、言語や習慣、文化などが理解できないまま日本で働き、生活することによる軋轢や、トラブルを生む懸念がある。となれば母国でしかるべき教育を受けて、日本で働きたい人材に関しては、政府が費用を負担して日本の学校で2年間、我が国の法律や言葉、社会習慣など基礎を学んでもらう。そして卒業試験の結果、問題なく生活できると判定されたら「日本版グリーンカード(国籍がなくとも永住することができる権利およびその資格証明書)」を発行して労働市場に出てもらえばよいと思う。他に例がない、外国人労働者の居住スラム化を防ぐ有効な手段となる。若い保守層に「移民の受け入れ反対」「治安が悪くなる」「スラム化する」「賃金が下がる」「職が奪われる」といささかヒステリーを起こしている人々が大勢いるが、60年代70年代の安保闘争や最近の脱原発デモのような「集団ヒステリー」でしかない。その愛国心・憂国心をもとに、もう少し長期的な視座にたって日本の将来を見ると、この国のためには移民はいずれ何らかの形で受け入れざる得ないという現実を直視できるようになると思う。「愛国者は移民受け入れに反対するべき」「移民政策は反日的」などといった二元論では問題は解決しない。「右翼」「左翼」というレッテルに惑わされることなく、この国の将来を真剣に考えるべき時が来ている。
<SAPIO intelligence database<世界を読むための情報羅針盤>プーチンが発した「中国とは同盟しない」重要シグナル>小学館SAPIO・サピオ誌2014年6月号Ⓒ佐藤優(作家・元外務省主任分析官)
東西冷戦終結の象徴でもあるG8体制が崩壊した。ロシアがウクライナのクリミア自治共和国を編入したことに対して、米国、EU(欧州連合)、日本などが対露経済制裁を発動し、さらにG8(日米英仏独伊加露)からロシアを排除する決定を行った(6月にロシアのソチで行うG8サミットをボイコットし、ベルギーのブリュッセルでG7サミット行った)。仮に今後G8にロシアが復帰する場面があったとしても、G8は米露が自らの政治宣伝(プロパガンダ)を展開する場になり、国際社会の重要問題を建設的に解決することはできない。冷戦には2つの特徴がある。第一は、共産主義対資本主義というイデオロギー対立だ。ロシアも米国、EU、日本も資本主義国で、政治指導部が国民による投票によって形成される。ウクライナ問題を巡っても、ロシアと米・EU・日の間にイデオロギー対立は存在しない。第二の特徴は、ブロック間対立だ。ウクライナ問題をめぐっては、ロシアを全面的に支持し、ブロックを形成する国はない。イデオロギーに基づくブロック間対立という特徴を有していない現下のロシア・米・EU・日の対立を新冷戦と名付けるのは適当ではない。
現在進行しているのは、主要国、国家連合(EUは独仏提携を基本とした広域帝国主義ブロック)の帝国主義的対立だ。主要国間の全面戦争を避ける傾向がある。仮に戦争になっても、それは主要国以外の場所(イラク、アフガニスタン、シリア、リビアなど)で行われる傾向がある。ロシアは戦争を望んでいない。ウクライナで、兄弟民族であるロシア人とウクライナ人が戦争を行えば、両者の民族対立がロシア国内に波及し、ロシアの国家体制を揺るがすことをプーチンが懸念しているからだ。ウクライナ暫定政権と米国は連邦化に激しく反発しているが、ウクライナにおける歴史的経緯、ロシア語常用者、正教信者の分布を考えた場合、連邦化は現実的な選択肢だ。さらには日本ではまったく報道されていないが、ウクライナの西部でスロバキア、ハンガリーと国境を接するザカルパチア地方の人々は「ルシン人」という自己意識を持っており、反ウクライナ、反スロバキア、親チェコ、新ロシアの感情が強い。この地方にもロシアへの編入要求が根強く存在する。ここでも地方政府に広範な自治権を持たないと今後、西ウクライナでも騒擾(そうじょう)が発生する危険がある。ロシアはウクライナ暫定政権の合法性を認めていない。しかし、2014年5月25日に行われたウクライナ大統領選挙の結果には、反対も反発もしていない。
大統領選挙で選ばれたポロシェンコ大統領とその政権の正統性をロシアは認め、事態の安定化に向けた交渉を行う用意があるということだ。ウクライナの暫定前政権は自国民に「テロリスト」というレッテルを貼り、対テロ作戦を仕掛けた。CIA(米国中央情報局)やSIS(英国秘密情報部、いわゆるMI6)など欧米のインテリジェンス機関との協力を深化させた。新大統領のポロシェンコ氏もその政権もそうだろう。危機感を抱くロシアもウクライナ領内にFSB(連邦保安庁)、GRU(軍参謀本部情報総局)に所属する秘密工作員を派遣し、ウクライナ新政権の権力を弱体化させようとしている。このような行動は国際法に違反する内政干渉で、断じて認められない。またプーチンは「中国との軍事政治同盟の形成など問題にしていない」と断言した。中露枢軸の形成を意図していないということだ。プーチンは、ロシアも中国も帝国主義国なので、適宜(てきぎ)取り引きをしながらも、それぞれの国益の極大化を図っていくことを考えているのである。
小学館SAPIO(サピオ)誌2014年6月号Ⓒ小学館SAPIO編集部<SAPIO’S EYE>痛ましい韓国船事故を未来につなげられるか。オバマ大統領「明治神宮参拝」の真意が報じられていない。**3ページまとめ緑川鷲羽2014年5月16日。
韓国「セウォル号」の事故は海難史上に残る惨事となった。犠牲者が300人規模というだけでなく、その多くが未来或る若者だったことに世界はショックを受けた。船長以下、船員のモラルと技術の欠如、船舶会社の改造や整備に呈された疑惑、救助に際して関係部門が縦割りの弊害や責任転嫁を見せたこと__いずれも海運大国、造船大国の恥ずべき汚点と言わざる得ない。この国がまだ経済発展に見合う社会制度や国民意識を醸成できないことが垣間見れる醜態だが、それはどこの国も通る道であり、これから発展する途上国なら他山の石にすべき教訓を含んでいる。日本も1954年に1125人の死者を出した青函連絡船「洞爺丸」の沈没事故の沈没を引き合いに出せば「そんな古い話と同列には語れない」と反発もあるだろう。その悲劇をきっかけに日本では船舶の安全に関する法整備が進み、安全性は飛躍的に高まったが、失敗から学ぶことによって今日が作られたことは紛れもない事実だ。最近でも2005年の福知山線脱線や2011年の東日本大震災による東京電力福島第一原発爆発など、油断や警告無視、組織による管理不行き届きといったヒューマンエラーによる重大事故は起き続けている。韓国が日本の救助の申し出を断ったことが報道され批判されたが同じようなことは大震災で日本もやった(アメリカの原発事故収束への協力提案を拒否したり、台湾の救援隊を足止めしたりした)。これらは政治家と官僚のメンツ優先や打算によって起きた失敗だ。前に「韓国の嘘が、虚像が、世界にバレ始めている」といったが<韓国の嘘がバレる日が近づいてきた今こそ、我々は「ざまあ見ろ」と罵るのではなく、正しい知識と歴史的事実、そして国際社会の常識を共有できる隣人となるべく手を差し伸べる包容力を見せるべきだ>と言ったのに、この文章が本誌ウェブサイトなどに紹介されると、一部の読者から“嘘つきと付き合えるものか”“悪いのは向うなのだからほっておけ”“サピオは頭がおかしくなったのか”といった反論が寄せられた。実に憂うべき病巣が日本にもある。現在でも課題が残る。同じ特集でも指摘した環境問題でも、日本は高度経済成長に大きな犠牲を払ったから今がある。「人種差別」も取り上げたがヘイトスピーチの広がりを見れば、この点では韓国と大差ないと言える。「子供叱るな、いつか来た道」と格言が戒めるように、先に、発展した我々が後に続く国に範を示し、必要なノウハウを提供するのは当然であり、「そんなことも出来ないのか」と馬鹿にするのは驕りである。痛ましい事故で未来を奪われた若者たちの犠牲が、韓国と日韓関係の輝かしい未来の礎になることを切に願う。オバマ大統領が明治神宮に参拝した意味を日本のマスコミは報道しなかった。国家神道に敬意を示したとか、日韓併合を決めた明治天皇を評価したことになる、などと日本に都合のよい解釈をする右派論客やネット右翼が多かったが、実際には全く逆で、これは安倍首相らの靖国参拝に対する強烈な抗議の意思表明である。明治神宮には2002年にブッシュ(Jr)大統領(当時)も参拝している。小泉首相(当時)はブッシュ大統領に靖国神社参拝を打診していたが、戦勝国アメリカの大統領が靖国神社を参拝したのでは中韓が批判の根拠がなくなる恐れがあり、当時の政府は決断できず、日本側から妥協で明治神宮参拝にしてもらったという経緯がある。つまり、米国側から「明治神宮に行きたい」と言ってきたのは「我々は靖国神社には決して行かない」というメッセージなのである。現実を直視するべきだ。
小学館SAPIO(サピオ)誌2014年6月号<INVESTIGATIVE REPORT 政府・自民「年間20万人受け入れ」でどうなる!?移民と在日外国人><移民政策賛成派の意見>から。
*アメリカでは雇用は奪われなかったし、賃金も上がった<人口、GDPはもちろん年金もプラス、世界の実情が「移民は国を救う」と示している>Ⓒ法政大学准教授・小黒一正氏。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、出生率が現在のままだと2012年に1億2752万人だった人口は2060年に約8700万人まで減少する。生産年齢人口(15歳~64歳)も同期間に約8000万人から約4400万人まで減少し、高齢率は約4割に達する。●社会保障費増大。社会保障の最大の問題は世代間格差だ。年月とともに現役世代の負担が増す。内閣府の資料から、生涯における医療・介護・年金などの社会保障や教育など公共サービスを通じて政府部門から受ける受益と、税金や社会保険料として支払う負担の差額である「世代会計」を試算すると、60歳以上は4875万円の受益超過(黒字)。毎年1兆円ずつ膨張する社会保障関連費は若い世代を圧迫し、40代で172万円の支払い超過(赤字)、84年以降に生まれた将来世代は4585万円の支払い超過(赤字)となる。まさに「財政的幼児虐待」(ボストン大学・コトリコフ教授)なのだ。●国と地方の借金はGDPの2倍に達して、1000兆円を超す。人口減少でGDPが縮小すれば返済は大変困難となる。新規国債の発行ができなくなり、財政破綻もありうる。●マーケットの縮小。国連の試算(2004年)によると1950年に世界5位だった日本の人口は2000年に9位となった。それが2050年には15位までランクダウンする。その時点で上位を占めるのはインド、中国、パキスタン、インドネシアなど新興国で、トップ20に入る先進国はアメリカ(3位)と日本のみ。日本の強みは、国内に巨大な市場があったからだ。国内で十分な利益を上げて商品開発できるため、独自の新商品を生み出し、それを海外に輸出できた。マーケットが縮小すれば、新商品の開発もおぼつかなくなる。<移民受け入れのメリットが大きいのに誤解が多いため国民的合意が得られない。誤解の例を見てみよう>誤解①<賃金が下がる>最たるものが<外国人労働者の流入により自国労働者の賃金が低下する>との説だが、アメリカの研究(Ottaviano and peri[2006])はその誤りを明らかにした。研究では、自国労働者を「高校中退」「高卒」「大学中退」「大卒」の4ランクに分け、移民の流入による賃金の変化を1990年から2004年までトレースした。すると「高校中退」の賃金がわずかに低下(マイナス1.1%)したものの、残る3ランクの自国労働者の賃金は0.7%~3.4%上昇していた。4ランク平均で1.8%の賃金アップとなった。誤解②<雇用が奪われる>アメリカを見ていてもわかるように、移民の受け入れによって雇用が奪われることはない。日本の場合、安価労働者を海外に移転した工場の国内回帰が期待できる。法整備の違いなどのカントリーリスクを低減させたい企業にとって国内の移民労働者は大きな魅力になる。薔薇色ではないし当然リスクは伴うが、移民は無理だと言っている場合ではすでにない。誤解③<社会保障コストが増える><外国人が長期滞在すると年金、医療など社会保障のコストが増える>という説はまやかしである。前述したとおり、社会保障問題のポイントは受け手と担い手のバランスであり、高齢化率がどう推移するかだ。移民は大抵は、20~30代の若者だ。多くが数十年は担い手となるため、将来の高齢率は低下し、負担はむしろ軽減される。誤解④<生産性を上げればよい>人口が減る分、Ⅰ人当たりの実質GDPを上げればいいという意見がある。つまり生産性を上げるということだ。だが、2003~2012年の日本の1人当たりの実質GDP生産率の平均値(年率)は0.82%。同じ時期にオーストラリアが1.4%、アメリカが0.9%、イギリスが0.64%、フランスが0.45%、イタリアがマイナスo.67%だ。この中で日本は中位(4場目)の成長率である。メディアなどでたびたび日本の生産性の低さが指摘されるが、実際にはアメリカ並みで、さらに引き上げるのは現実的な目標とは言えない。危機を克服する切り札は、やはり移民政策だ。<主要国の総人口に占める移民の割合>ルクセンブルク32.1%、スイス27.3%、オーストラリア26.7%、イスラエル23.6%、ニュージーランド23.6%,、カナダ20.1%、アイルランド16.8%、オーストリア16.0%、スウェーデン15.1%、スペイン14.6%、ドイツ13.1%、アメリカ13.0%、ノルウェー12.4%、イギリス12.0%、フランス11.6%、オランダ11.4%、イタリア9.0%、ロシア7.9%、日本1.1%(OECD2013年資料より)また次に<移民政策反対派の意見>を述べます。*(緑川鷲羽自身は大前研一先生の移民政策に賛成です。これぞ第三の開国ですね)
<台湾では貧困で出生率が低下し、スウェーデンでは若い移民の40%が失業<生産年齢人口の年間減少幅は総人口の1%未満 国民の生産性を高めれば国力は維持できる>>Ⓒ三橋(みつはし)貴明氏
*前述したように各種データは移民の必要性を示している。ただし、人の営みはデータだけでは測れないし、国柄の違いも大きい。経済評論家の三橋高明氏は「日本経済再生に移民は不要」と断言する。***移民の受け入れには断固、反対だ。内閣府の経済諮問会議ワーキング・グループは「少子高齢化で生産年齢人口が減れば経済成長ができない」などと移民受け入れを提唱するが、それは明らかなまやかしだ。生産年齢人口が減っても経済成長が出来る。彼らが移民受け入れに積極的なのは「100年後の日本」「国家百年の計」ではない。真の狙いは「短期的な外国人労働者の拡充」である。だが、労働力不足を補う目的で安易に移民を受け入れれば、将来的にさばざまな社会問題が噴出するのは諸外国の例を見ても明らかだ。移民受け入れを議論する上で決して無視できないのが、移民の出生率の高さだ。移民第一世代はマイノリティだったとしても、世代を重ねることで勢力が拡充される。EU諸国ではそうした傾向が顕著に表れている。スペインの外国人比率は1980年代までに1%程度だったが、今では15%に迫っている。ドイツやスウェーデンも人口の約15%は外国人だ。スウェーデンでは移民の失業率が16%に上る。若い移民に至っては約40%に上る都市もあり、社会保障制度を蝕んでいる。文化や宗教上の対立など、移民を巡る社会問題も深刻だ。また、EU諸国から移民が急増したスイスでは今年2月、移民流入規制を巡る国民投票が実施され、過半数の50.3%が流入移民規制に賛成票を投じた。日本国政府は毎年20万人の移民受け入れることで100年後も人口1億人を維持できると試算するが、出生率の高い移民ばかりが増えれば、純粋な日本人は5000万人を切り、国民の半数以上が外国人という事態もあり得る。
<職を失った外国人労働者が日本の社会保障に群がる>震災復興や五輪特需などで不足する土木・建設業を中心とした単純労働従事者の確保がある。すでに自民党は外国人労働者の受け入れを拡大すべく、建設現場などで働く外国人技能実習生の在留期間を3年から最大で6年に延長する方針を打ち出している。しかし、彼らは労働者ではなく、あくまで技能実習生という立場のため、自給300円程度で働かされているケースがざらにある。まさに「奴隷労働」といえるが、そうした人々が「6年を過ぎたら解雇」と言われても、すんなり自国に戻るとは限らない。むしろ、どうにかして日本に残ろうとする不法滞在者が増えるだけだ。これは遠い将来の話ではない。五輪後は雇用期間を終えた大量の不法滞在者が街にあふれるだろう。仕事があればよいが、五輪特需が終われば仕事は減り職にあぶれることが予想される。職を失った外国人は生活の為に犯罪に手を染める可能性がある。バブル崩壊後に外国人が違法テレホンカードを売っていたのはその典型だ。外国人を期間限定でなく永住させる社会コストは莫大になる。彼らが失業すれば失業手当や生活保護などを支払わなければならない。「グローバリゼーションに逆らえば日本は衰退する」しかし、外国人頼みのグローバル化を進めれば、全体のGDP(国内総生産)は増えるかも知れないが、賃下げによって一人当たりのGDPは下がる。生産年齢人口が毎年減少するといっても、その数は総人口の1%未満に過ぎない。重要なのは生産性を高めることである。現在、生活保護受給者は216万人いるが、そのなかで就労可能な受給者は30万人に上るといわれている。そうした人たちに一人当たり100万円かけて職業訓練を施す手もある。わずか3000億円で済む話だ。土木・建設はもちろん、農業や医療、介護など人手が不足している業種で働ける人材を増やせば、生産性は向上する筈だ。日本で人手不足で土木・建設を外国人に任せれば、やがて日本人だけではインフラ整備が立ちいかなることも想定される。20~30年後には日本人が高層ビルを建てられなくなるかもしれない。「日本経済は日本国民が成長させる」という気概が必要だ。
<ヘイトスピーチは「日本人の心」に反す <外国人に「日本の価値観」を理解させるために私たち自身も伝統と美徳を取り戻すべきです>>Ⓒ櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)。アメリカは元々WASP(White Anglo-Saxon Protestantの略)と呼ばれる白人でアングロサクソン系のプロテスタントの人たちが政治や経済の中心にいて、彼らの価値観に基づいて作りあげてきた国家だと言えます。歴代大統領44人のうち、現在のオバマ大統領とカトリック教徒だったジョン・F・ケネディ氏を除く全員がWASPと分類される人々です(父親がアイルランド系のレーガン氏もWASPではないという意見があります)。最近、在日韓国人や在日朝鮮人に対するのヘイトスピーチが問題になっています。残念ながら日本人としての誇りや道徳が欠如していることの表れだと思います。根拠もなく日本人に罵詈雑言を浴びせ続ける中国人や韓国人と同じことをするとしたら、彼らと同じレベルに落ちてしまうことを自覚するべきです。地方では、フィリピンなどから来た花嫁が、うまく地域に溶け込んでいるケースが少なくないと聞きます。勿論うまくいかない事例もあるとは思いますが、むしろ地方のほうがしっかりと自分を守りつつ、外国人を受け入れているように感じます。それは言葉、食べ物、風習、そして宗教や教育も、都市より地方の方が濃密に「日本らしさ」を保っているからではないでしょうか。日本人らしさ、日本らしさ、をわすれなければ移民受け入れもうまくいくでしょう。
<「数合わせ」で同化できなければ新たな対立と差別を生む <茶碗の扱い、靴を揃える向き、電車の乗り方、私も苦しんだ文化や生活習慣の違いは大きな壁だ>>Ⓒ呉善花氏(評論家オ・ソンファ氏)「年間20万人」という数字ありきの移民政策はあまりに短絡的に思える。私自身(呉(オ)さん)の経験を踏まえて言えば、来日する移民が日本文化を理解し、社会に溶け込んでいくことは容易ではない。いわゆる「わびさび」や電車に並ぶ、出ていく人が先、モノを親しいひとにももらったら「ありがとう」、「つまらないものですが」「お世話様です」「いらっしゃいませ」敬語、謙譲語、カタカナ英語………慣れるまで何年間かかかる話です。「数」で解決しようとすると、大切なものがこぼれ落ちかねない。
<「建設労働者が足りないから」で安易に決めていないか <自民党国際人材議連・小池百合子会長に「移民受け入れ」と「将来のリスク」で直撃!>>Ⓒ小学館SAPIO編集部
<基本的な移民政策について認識をお聞きしたい>小池「まずお断りしておきますが、国際人材議連は「1000万人構想」を引き継いだ訳ではありません。ゼロベースで、わが国の持続、発展に何が必要かを考えていくのが目的です。ですから議連の名称は「移民」「推進」という言葉は使っていません。「移民」というと国民には強いアレルギーがある。」<安倍政権は目先の建設労働者不足から外国人労働者の受け入れを拡大したのでは?>小池「出稼ぎの労働者で、彼らはプロジェクトが終われば稼いだお金を持って自国に帰っていく。住み着くわけではありません。仕事とカネを求める外国人労働者と、労働不足を補える受け入れ先はウィンウィンの関係です。外国人研修生に多くを頼る農業でも、彼らは懸命に働き、農家の方の評価は高い」<単純労働者の受け入れは治安上の問題が大きいという指摘があるが?>小池「特に、建設など単純労働者は期限付きにして、工事が終われば帰国してもらうことを厳格にやらなければいけません。一方で、日本で研修を受けて医療や介護などの資格を取った能力のある人は働ける期間を長くするなど、日本社会に貢献してもらえるようにする。社会保障の面では相手国との条約を整備し、日本で働くことが不利にならないようにする制度作りも必要です。働く側も働く国を選択しますし」<そんなに都合よくいくのですか?期限付きの労働者では人口減をカバーすることにはならない。「移民」を入れるかどうかの課題は残るが?>小池「「移民」というのは非常に狭い見方です。UAE(アラブ首長国連合)の人口は約920万人ですが、その8割が外国人。しかし、国際人材であっても、私は地方参政権付与には否定的です。参政権を望むなら日本国籍の取得が不可欠です。国籍付与は、日本に必要な人材かどうか、こちらが厳選すればよいわけです」<親日的な国ならまだしも、反日教育をしている国から労働者を受け入れるのはリスクが大きい。受け入れる国を選別するべきと考えますか?>小池「国際人材でも中国人比率は高くなるでしょう。ノーリスクとは言いません。日本が国家として衰退するリスクに向き合う必要があります。世界に通用する人材を日本が確保するという決意で臨む必要があると考えます」
<朴正煕が私に語った欧米諸国になかった日本の先進性 <太古から世界の人材と文化を受け入れてきた日本の寛容を知れ>>Ⓒ石原慎太郎(作家・衆議院議員)<安倍首相が「外国人材の活用の仕組みを検討」するうよう指示した。どう評価するか?>石原「人口は国力と言い換えてもいいものです。このまま人口が減少すれば、国力の低下は必至です。現状がどうにもならんのだから労働力確保のためにも、移民を受け入れるべきだ。私は10年以上前から移民が必要だと説いてきました。一生懸命働いて慣れてきたところで「期限が来たから帰れ」とは酷でしょう。日本の生活に溶け込み、日本を愛しているならば、安住する道があってもよい。私は八丈島に行くことがあるのですが、そこに釣り名人の親子がやっているおいしい寿司屋があります。跡取り息子のところに嫁がこなくて周囲が心配したところ、フィリピン女性と結婚した。当初は反対していた周囲も1年後、子供が生まれ、奥さんが家族に溶け込もうと努力した結果、今では「こんな素晴らしい嫁はいない」と実家からも大変信頼されている。これは理想形のひとつです」<移民反対派には、今でも「日本は単一民族国家」という考えが根強くある>石原「それは間違った認識です。日本人の民族的ルーツは東西南北あちらこちらにある。日本に早くから住んでいたのはアイヌや沖縄人であって、その他はシナ大陸(中国大陸)や朝鮮半島から渡来しました。細かなルーツを辿ると、インドやモンゴル、南方のポリネシアやメラネシアにまで及んでいる。沖縄・八重山列島のアカマタ・クロマタや鹿児島・悪石島に伝わるボゼなどの秘祭は、メラネシアのそれと非常に似ています。私の父はインド系の顔をしていました。母は典型的なシナ人(中国人)の顔つきでした」<移民政策が治安を悪化させるとの声がある。現に在日外国人の犯罪が増えているが>石原「都知事時代、池袋の中国人街を視察したことがあります。中国語で書かれた同胞向けの新聞が何紙も発行されていた。日本語を習っている中国人向けに、「探偵募集」の求人広告がありました。日本語を習っている最中の若者が探偵の手伝いなどできるのかと質すと、実は泥棒の見張りだという。外国人犯罪をいかに防ぐかは大きな課題です。また、不法就労、不法入国がまかり通っているから治安問題が生じていると考える事も出来ます」<受け入れる日本側にも問題はないか?>石原「例えば入国管理の手続きの煩雑さなど、外国人に対する「壁」が多すぎます。元サッカー日本代表のラモス瑠偉さんはかつて「指導者の資格を得るための日本語が難解すぎる」とこぼしていた。川淵三郎さん(元日本サッカー協会会長)にそのことを話したら、早速改善したようで、ラモスさんは今、FC岐阜で監督をしています。彼みたいな優秀な人材が、日本語の壁によって長く監督の道を阻まれていた。日本の閉鎖性を示す象徴的な例です」<一部の日本人の排外主義も問題ではないか。在日韓国人・在日朝鮮人に対してヘイトスピーチを行う者がいる>石原「在日韓国人・在日朝鮮人問題と移民とは別の問題です。歴史的に彼らが差別を受けたこともあったと思います。また韓国側が事実と違う事を言って来たり、要人が日本人を挑発するような発言を繰り返せば、当然、日本人はよくない感情を抱くでしょう。外国人はどうしても母国の評判を背負ってしまう」<教育は重要だと思うが、島国の日本は異文化で育った人々を登用できるだろうか>石原「現在の朴大統領のお父さんの朴正煕元大統領と以前、お酒を酌み交わしたことがあります。その席で彼は「日本の朝鮮統治はそう悪かったとは思わない。欧米諸国とは違う政策を行なった」と言いました。彼は、成績はよかったが、家が貧乏でした。すると日本人教師が「これからは朝鮮人が朝鮮人を教える時代だ」と無償で行ける師範学校を薦めてくれたそうです。そこに行くと「これからは軍人の時代だ」と士官学校を薦められた。満州軍軍官予科に行くと今度は「優秀だから市ヶ谷に行け」という。最終的に彼は市ヶ谷の陸軍士官学校に編入、上位で卒業しました。西洋列強の植民地でこんなに教育を施した例はなかった。その話をするときの彼のうれしそうな顔を今も忘れません。戦前の日本では朝鮮人も士官学校に入れましたし、朝鮮名のまま日本兵を指揮した将軍もいました。官僚や裁判官はもとより、衆議院や貴族院にも朝鮮人は議席をもっていた」<外国人に参政権を与えるのは?>石原「それには反対です。国政でなく地方参政権ならば与えていいという意見がありますが、間違っています。例えば青森県の六ヶ所村に核燃料の再処理工場があります。ある意図をもって移民が集団移住すれば、国策的な施設の稼働や存続が住民投票によって決められてしまう可能性がある。沖縄県の与那国町の自衛隊基地問題も同様です。人口約1500人の町に中国系移民が集団転住したらどうしますか?参政権などなくても日本のすばらしさがわかれば「日本に住みたい」という外国人はたくさんいると思いますね。そういう人は帰化したらいい。
<単純労働者の移民を多く受け入れれば財政にマイナスになる <狭い日本に1億3000万人は定員オーバーだ。高付加価値経済なら「強く美しい小国」ができる>>Ⓒ森永卓郎氏(経済アナリスト)*「ドイツがこんなに苦しんでいるのになぜ日本は同じ轍を踏もうとするのか?」経済企画庁総合計画局で労働政策に携わっていた1980年代半ば、ドイツの政策担当者に言われたその言葉をいまも忘れる事が出来ない。ドイツの経済成長は、トルコなどからの移民による、との見方が短期的にはあった。だが、長期的にみてみると、彼らの為の住宅対策、失業対策、子弟の教育対策など莫大な社会コストが国民に跳ね返ってくる。低賃金の単純労働であれば納税額は小さく、財政にはマイナスだ。医療や年金などの社会保障も同様。外国人労働者は、その瞬間は気分がいいが後で躰全体がボロボロになる麻薬みたいなもの。日本の国益にならない。たとえ人口が減っても昭和初期は現在の人口の半数だった。やはり、移民に盲目的に頼るより三橋氏のいう様に生活保護者の働けるひとを再教育して……というほうが政策的には正しい。すでにヲタク文化は世界的に浸透し、「かわいい」はグローバルで通用する言葉となった。そうした海外での日本ブーム=ジャポネズムは歴史上、何度も起きている。「1億総アーティスト化」を実現できれば頭数をそろえる為の移民政策は必要ない。肝心なのは少子化対策、教育の投資であることは間違いがない。
<イギリスとニュージーランドの関係を日本の在日韓国朝鮮人にあてはめられるか EU型、英連邦型、北欧型………「外国人参政権」を論じるには、まず「国益」を示せ>Ⓒ小学館SAPIO編集部<外国人参政権を認める国には大きくわけて3タイプがある。第一はEUタイプ。「EU内において、地方参政権の相互的保障が各国に義務付けられている各国自国民の権利保障を目的とするもの」第二は英連邦タイプ「イギリスと連邦構成国などの間で相互に地方参政権が認められていることがある。歴史的経緯、文化的・言語的共通性を基礎とするものだ」第三は労働補充のタイプ「70年代から外国人に選挙権を与えていたスウェーデンがその典型。国内労働力の不足を補うため積極的に外国人労働者を受け入れ、彼らをスウェーデンの政治社会に統合することを目的とするものだった」><移民受け入れを拡充しようとすれば、参政権が必ず議論となる。「投票したいならば帰化すべき」という論はシンプルだが、それでは海外から優秀な人材は集められないと考える国も現にあり、幅広い議論が尽くされるべきだろう。>
<ある女子中学生はコリアンタウンで「在日クソチョンコ!虐殺を実行しますよ」と叫んだ。在日コリアン(約53万人)在日中国人(約65万人)との共生をぶち壊す先進国として恥ずかしいヘイトスピーチ>Ⓒ小学館SAPIO編集部<デモ参加の女子中学生が鶴橋大虐殺を宣言><ハーケンクロイツを掲げ、笑いながらデモ行進>移民を受け入れるかどうか以前に、日本を誰も来たがらないような差別国家にしてはならない。
<小林よしのり氏『大東亜論 血風士魂編』上記コメントよりⒸ小林よしのり氏>
<安倍晋三の異常さは度外れしている。が、その異常さが自称保守にはわからない。集団的自衛権の行使を政府解釈だけで容認し、閣議決定してしまう。事実上、憲法9条は改憲されたも同じ><わたしは憲法9条には疑義があるが、安倍のやり方が容認されたら、次に護憲政党が政権をとれば個別的自衛権も政府解釈で違憲とし、閣議決定できることになる。異常だ!><憲法96条の見直しで憲法改正手続きのハードルを下げようとし、それがダメなら閣議決定さけで解釈改憲してしまうと言う。安倍晋三は異常な「立憲主義」の破壊者である><個別的も集団的も国連憲章で認められているが、やはりそこまで変えるというなら、正々堂々と「憲法改正」に打って出るしかないだろう。姑息な道から立憲主義の破壊者というデタラメは許されるものではない><安倍晋三は解釈改憲について「最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙の審判を受ける」と言い放った。異常である。選挙で勝ちさえすれば、時の政権が憲法解釈を自由に決めていいのか?信じられない異常さだ><靖国参拝で米国に「失望」され、河野談話の見直しをしないと誓い、米国に日米韓の会談の仲裁をしてもらい、その負い目から「国賓待遇」でオバマを呼び、集団的自衛権でひたすら米軍に抱きつきたい安倍晋三は、米国の「政奴隷」だな><そもそも尖閣諸島を守るにせよ、米艦への攻撃に反撃するにせよ、個別的自衛権を強化すれば足りるものだ。むしろ個別的自衛権の強化をしないまま、米軍に頼ることを考える方が卑怯だろう>
<「日本語を話せない隣人」とどう付き合うか <すでにゴミ出し、学校、病院で悲鳴 避けて通れない「外国人」の重荷>>Ⓒ小学館SAPIO編集部
在日コリアン(約53万人)在日中国人(約65万人)在日フィリピン人ブラジル人(約20万人)、在日ベトナム人(約6万人)、在日ペルー人(約5万人)などが日本に住んでいる。彼らが数多く集まって暮らすエリアでは残念ながらトラブルが起きているのも事実だ。外国人との共存を目指す取り組みも多いが、歳月の経過とともに課題も生じてもいる。愛知県豊田市保見(ほみ)団地は住民約7100人のうち、日系ブラジル人を中心とした外国人住民が約3200人で外国人比率が最も高い地区のひとつであり、90年代には右翼の街宣車が押し寄せたこともある。厚労省によると、外国人の生活保護受給者は4万3479世帯(11年)。80年代以降に中国、ブラジル、フィリピンなどから来日した「ニューカマー」が中心となり、近年では年5000世帯のペースで急増している。日本生まれの外国人が増加し、「貧困の再生産」が生じていることも看過できない。「日本語のできない親元で育った子供(二世)が中学卒業後、定時制高校などに進学しても勉強についていけず、結局、ドロップアウトして親と同じように工場などで単純労働に就く。彼らは日本語もポルトガル語も十分に読み書きできない『ダブルリミテッド』のため、若くして結婚して子供(三世)をもうけても勉強を教えられない。結果、学校に行かず、自宅に引きこもって鬱気味の三世が増えています」『保見ヶ丘ラテンアメリカセンター』代表・首都大学東京の野元弘幸准教授(多文化教育)はそういう。「このまま貧困問題を放置すると、将来的に住民や警察が手を出せない、無法地帯の『外国人スラム』が生じる可能性すらある」とも。
<不法移民の“合法化”を狙うオバマ政権、中国人が占領するスペイン <移民受け入れ先進国の制度・法律とメリット、デメリットはどうなっているの?>>Ⓒ小学館SAPIO編集部
<米国>米国の移民人口は約458万人で、総人口の13%を占める。移民帰化法(INA)は、米国人の配偶者や未成年の子供がいる場合や、高度な人材を優先的に年間67万5000人まで移民として受け入れることを認めており、2010年度は42万2000人が新たに移住した。移民なしには経済が成り立たないと言われ、人手が足りないサービス業から高度な人材が欲しいIT業者まで移民受け入れには肯定的である。<スペイン>スペイン政府は外国人の移住に積極的だ。しかし、中身は労働者ほしさではなくカネほしさだ。中国人約16万人のうちスペインの風俗店、ビル、アパートを中国系移民が占領している。<フランス>戦後のフランスはムスリム系移民を大量に受け入れ、彼らが経済発展の原動力となった。ここ数年、その二世、三世がアイディンティティクライシス(自己喪失)に陥り、暴動を起こして治安を脅かしている。サルコジ政権時に移民排斥規制が強化された。<ドイツ>EUのエンジンで牽引車のドイツには移民が13年1月から半年間で55万5000人の移民が入国、前年比5万5000人増だった。ドイツは2020年までにさらに170万人の外国人労働者を必要としている。<オーストラリア>オーストラリアは労働力不足を補うために第二次世界大戦後、積極的に移民を受け入れてきた。そのうち移民人口は約650万人、総人口の4人に1人が外国生まれである。年間一万人以上の難民を受け入れ、審査を通過すれば居住を許可される。収容施設のコスト増が批判されている。
<行政のスリム化で予算捻出、子育て世帯に格安住宅を提供する長野県下郷村 <増税してばら撒き公共事業、育休3年は大失策!安倍政権は出生率1・86の「奇跡の村」に学べ>>Ⓒ岸川貴文氏(ジャーナリスト)
移民受け入れの必要性と深く関係するのが少子化対策の成否だが、安倍政権はむしろ対策を後退させている。長野県南部に位置する人口約4000人の下郷村。91年に人口減少が底を打って出生率は高水準を維持し、人口構造では60代と50代の次に10代が多い。少子化を食い止めた「奇跡の村」と呼ばれる。下郷村は人口10万人の飯田市から車で30分。92年に就任した伊藤喜平村長によって大胆な少子化対策が進められた。中でも目玉となったのが97年から建設が始まった村営の「若者定住促進住宅」だ。「子供がいる/結婚の予定がある」などの入居条件を課し、2LDK(20坪)で家賃は3万3000円。飯田市の相場の約半額だ。「集合住宅タイプ124戸を整備し、12年度からは戸建ての建設費の10%を補助する事業(45歳未満が対象。上限100万円)を実施しています」(下郷村総務課)さらに高校卒業までの医療費無料化、村営保育所の保育料引下げ、義務教育の給食費40%補助などを実施。同村での出産・育児を望む入居者が集まった結果、年少人口(0~14歳)の比率16.8%は県トップとなった(10年)。「子供を育てられる環境」があれば、産みたいという若者は少なくないことを証明した。重要なのは財源である。伊藤村長はガソリンスタンド経営などの経験をもとに、職員の意識改革に着手。コスト意識を徹底させて職員数を大幅に削減した。「職員は32人(一般行政職)で、人口1000人あたり7.84人。類似規模団体平均(17.02人、総務省調べ)の半分以下の水準です」(同前)職員の生産性を倍にして、行政のスリム化を行ったのだ。道路現場では村民が自らミキサー車やコンクリート舗装を行う。日本では男性中心の雇用形態であり、女性が出産・育児となると会社を辞めねばならない。フルタイムでは働けず、パートは時給も安い。仕事を辞めても暮らせる男性と巡り会わず独身のままの女性や晩婚化が進んでいる。フランスやスウェーデンでは同一労働同一賃金が浸透し、雇用形態ではなく仕事の内容に応じて収入が決まる。安倍政権が打ち出した「育休3年間」もそうだが、日本では「女性が家で育児に専念できれば出生率が上がる」という考えが幅を利かせている。世界常識からみれば大きな間違いで、安定収入がなければ子育てはできないからだ。
■ ~大前研一ニュースの視点~2014年5月16日大前研一氏談『人口減少問題・外国人受け入れ制度・国内財政~問題解決に必要な目標設定』人口減少問題、中長期国家目標で「50年後に1億人維持」。外国人受け入れ制度、高度人材、及び腰の「歓迎」、国内財政、国と地方の財政の長期試算を公表。▼ 感情論で否定せず、移民を受け入れる体制を整えるべき政府が「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」との中長期の国家目標を設けることが3日明らかになりました。日本の人口はこのままでは2060年に約8600万人まで減る見通しのため、2020年ごろまでに集中的に対策を進め、人口減少に歯止めをかける狙いとのことです。相変わらず、政治家や役人はずるい表現をするものです。「50年後」には誰も生きていないでしょうし、責任を問われることもないでしょう。ただし、政府にこのような態度を取らせてしまう責任は国民にもあります。日本が人口を維持するとなれば、計画的に移民を受け入れる以外に方法はないと私は思います。しかし日本人は移民の受け入れに、異常なほどマイナス感情を持っています。本来ならば、50年後といわず「数年後」と言いたいところなのでしょうが、国民感情を考えて50年後と言っているのだと思います。50年後と言いながら、徐々に国民に危機感を抱かせ、理解してもらうという手順を想定しているのでしょう。しかし私に言わせれば、逆にそれでは「危機感」は生まれてきません。50年後ではなく「5年後」と言うことで、強烈な危機感を抱かせるほうが良いと私は思います。そして、遅々として移民対策は進んでいません。政府は2012年5月から外国人受け入れの優遇制度を始めましたが、結局機能していません。これまで単純労働者は認めない一方、高度人材は歓迎すると説明してきましたが、実際の受け入れペースは鈍く、高度人材の認定数は今年1月までの20ヶ月間でおよそ900人、月50人程度のペースで法務省が見込んだ認定ペースの3分の1以下に留まるとのことです。世界の外国人労働力人口の割合を見れば、米国15%、ドイツ10%程度です。英国も最近大きく割合が上がってきています。そんな中、日本はほとんどゼロに等しい状況です。最近では、建設業界で人手不足のため一時的に外国人労働者を受け入れていますが、需要がなくなったら、再び本国に返してしまいます。これではダメなのです。人口減少、高齢化社会、労働人口不足は「構造的な」問題だからです。「外国人=犯罪」というイメージなどが強く、日本は異常なほど外国人アレルギーを持っています。それでも移民を受け入れ、2年間の教育制度を整備して、グリーンカードを配布するなどの施策を私は20年以上前から提唱しています。こんなことを言えば、周りから叩かれるので誰も言いたくないのでしょうが、本当の意味で日本の将来を考えれば、やらなければいけないことです。年間30万人以上の移民を受け入れなければ
間に合わないのだという事実を認識し、すぐに動き出してもらいたいと思います。