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アラゴン選集 ?

2010-11-20 05:51:00 | ノンジャンル
 ジャン=リュック・ゴダールが映画の中でよく引用しているルイ・アラゴンの詩集を実際に手にしてみたくなり、'79年に飯塚書店から出版された『アラゴン選集 ?』を読んでみました。第二次世界大戦中にフランスをナチスが占領していた時期から、戦後まもなくの時期までに書かれた、詩や文章、講演記録が集められた本です。
 あとがきによると、アラゴンは第二次世界大戦の勃発とともにフランスに徴兵され、'40年5月のダンケルクの大敗で九死に一生を得、その後イギリスに一旦戻されて勲章を授与された後、再びフランスに向かわされたのだそうです。そして'40年6月には、以前に一度会っていて、後に一生の伴侶となるエルザと再会し、7月には動員を解除され、その後、レジスタンスの詩を書き始め、「全国作家委員会」などの組織活動を繰り広げ、やがてパリ解放の時を迎えます。アラゴンのレジスタンスの詩は、フランスの敗北、占領下のナチによる圧制とそれによる塗炭の苦しみ、ナチに対する抵抗、蜂起といった政治・社会状況の中で、フランス国民の要請に答える形で書かれていて、それは大きく三つに分かれ、第一は、敗北し、為すことを知らぬ、惨めなフランスに対する嘆きの詩、第二は、ナチス・ドイツ軍の血なまぐさい圧制と虐殺にたいする怒りの詩、第三は、勝利を予告する戦いの詩となっていて、形式的にはほとんどの詩が、伝統的な韻律、脚韻をもった詩形のものでした。では実際にどんな詩だったのかというと、例えば、フランスの勝利を歌った詩を例に挙げてみると、
「勝利したわが人民の あの歓呼の声のほどに 
 わたしの心をうったものは かつてなかった 
 かくもわたしを歓ばせ 泣かせたものはなかった 
 経帷子(きょうかたびら)をひき裂くほどに 偉大なことはない 
 パリ パリ みずからを解き放ったパリよ」(『フランスの起床ラッパ』より)
といった感じです。
 ナチスへの激烈な呪いの言葉によって書かれた詩などは迫力満点で、かっこよく、この詩集を常に近くに置いておきたいと思わせるほど素晴らしいものでした。時間がある時に、もう一回じっくりと読んでみたい詩集です。ということで、美しい定型詩が好きな方には特にオススメです。