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誉田哲也『ソウルケイジ』

2009-04-16 14:05:00 | ノンジャンル
 誉田哲也さんの'07年作品「ソウルケイジ」を読みました。
 左官屋の三島耕介から、親方の高岡賢一のガレージが血の海だという通報が、警察に寄せられ、その後、多摩川土手付近に放置されていた高岡の車から高岡の左手首が発見されます。警視庁の姫川玲子は、捜査を続けるうちに、三島の父親が多額の借金を抱えたまま、建築現場で転落して死亡し、会社に出入りしていた元暴力団員の戸部真樹夫が彼に掛けていた保険金で借金が返されていたこと、高岡には事故で寝たきりになっている息子がいて、その入院費を都合するため、やはり戸部の手配で、自殺した別人に成り変わり、自分は死んだことにして、保険金を受け取っていたことなどが明らかになります。そして、三島の父と同じように戸部によって父が自殺に追い込まれ、その後も戸部に脅迫されて体を弄ばれていた若い女性の存在を知った高岡は、戸部を衝動的に殺害し、その後死体を切断し、それを自分の死体と警察に思わせるために、自分の左手首を切断し、車に遺棄していたことが判明しますが、その時には既に高岡は隠れ家で死んでいました。玲子は高岡の父性を思うとともに、反発し続けていた年上の同僚に対しても、彼を人の親として見ることによって、距離を少し縮められたような気がするのでした。
 三島の父が建築現場で転落する冒頭のシーンから、ぐいぐいと読む者を引き込んでいきます。姫川とその部下の井岡とのコミカルなやりとりが、「武士道シックスティーン」の磯山と西荻の会話を彷佛とさせ、ここにその起源を辿ることができました。繰り返されるどんでん返しと言い、平易な文体と言い、楽しめる一編です。誉田哲也さんの作品としても最良のものの一つなのではないでしょうか。残酷なシーンにも耐えられる方にはオススメです。