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アキ・カウリスマキ監督『過去のない男』

2007-05-21 15:51:43 | ノンジャンル
 WOWOWでアキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」を見ました。
 夜ベンチに中年の男が座っていたところ、後頭部をバットで殴られ、搬送された病院で死にますが、すぐ生き返り、病院を抜け出して川べりで寝ていると、靴を盗まれます。双児のいる夫婦に助けられますが、彼は記憶喪失になっています。夫と共に救世軍で食事をもらい、ビールに誘われ、励まされて別れます。港には海を見て佇む男と野宿する人々。行きずりの男に住居としてコンテナを借り、掃除をし、ブルースの流れる中で食事をする男。畑を作ってると雨になり、救世軍の女性・イルマに心機一転するように言われ、洗濯をします。ゴミ箱の中に住む男に聞き、職安に行きますが、相手にされず、食堂で残り物を恵んでもらいます。イルマに服を都合してもらい、服屋で働くことになり、イルマと夕食を共にし、音楽をかけて彼女にキスします。店で演奏する4人組を自宅に呼んで、男はロックのレコードを掛け、こういう音楽をやれ、とアドバイスします。男は土曜に車で外出して、きのこを採り、彼がプロデュースした救世軍バンドのロックコンサートに行きます。工事現場で溶接をさせてもらうと、腕を見込まれ雇われます。銀行で口座を作ろうとすると、ライフルを持った男が凍結された口座から大金を引き出します。銀行員は、銀行が北朝鮮に買収され、今日が最後の仕事だと言い、スプリンクラーを壊し、逮捕されます。彼も警察に拘束されますが、救世軍が送ってくれた弁護士により釈放されます。銀行から大金を奪った男に話しかけられ、自分は機械工場の社長だったが、作った機械の値段が暴落し、社員に給料を払えなくなっていたが、さっきの強盗で金ができたので、社員に給料を配って来てほしいと頼まれます。一通り配ってくると、警官が来て、先日の銀行強盗の件で新聞に写真が出た結果、妻が名乗り出た、と言われます。イルマに奥さんのところへ帰るように言われますが、男は帰りたくありません。結局妻のもとに帰ると、記憶喪失の寸前に離婚することになっていて、原因は男のギャンブル好きだったのだと言われます。妻に別れを告げ、演歌の流れる列車で日本食を食べながら港町に戻ると、自分を襲った若者たちに出会い、また襲われそうになりますが、彼らに恨みを持つホームレスたちが大勢で逆襲します。そして男はイルマとの新しい生活を始める、という話です。
 台詞が極端にすくなく、寂れた雰囲気がフィンランドの冬を感じさせます。この監督はいつもそうですが、イルマも特に美人ということもなく、そういった点では地味な映画ですが、救世軍バンドのとぼけたおかしさもあり、結構楽しめました。まだ、見ていない方、オススメです。

ポール・L・ムーアクラフト『独房の修道女』

2007-05-20 16:01:35 | ノンジャンル
 昨日の深夜1時からNHK・BS2で放映された「コンバット」に、ジョン・カサエヴェテス監督作品の常連シーモア・カッセルが医者の役で1カット映っていました。とりあえず、ご報告です。

 さて、吾妻ひでお氏が「少女がひどいことをされるサイコサスペンス」と評し誉めていたポール・L・ムーアクラフトの「独房の修道女」を読みました。
 14世紀のこと、婚約していた16才のクリスティーンは、領主にアナルを犯され床に伏せますが、神の幻想を見て、独房で一生を送る修道女になる決心をします。妹も領主に犯され妊娠し追放されたのを聞き、彼女は独房を抜け出し、妹に会いに行きますが、妹は難産の末死んでしまいます。その後、領主の不正は裁かれ、処刑され、クリスティーンはまた教皇の許しを得て隠修女になります。
 若い女性マーダ・スチュアートは、この小説を書いているデュヴァル神父にさらわれ、地下の闇の部屋へ閉じ込められます。過去に別の部屋に閉じ込められた5人は皆餓死していました。表面上は神父に忠実に振舞い、宗教の勉強をし、生活環境の改善を勝ち取りますが、クリスマスの夜、1階に行くのを許された彼女は全裸になって神父を誘惑したことが彼の怒りを買い、また酷い状態に逆戻りします。マーダの兄は妹の居所をつきとめ、神父を不意打ちしますが、逆に捕らわれ、領主の処刑の再現を彼を使って行おうとしますが、マーダの邪魔に合います。アメリカの学者からクリスティーンは強いられて隠修女になったことを証明され、神父は頭にきてその論文を食べ、のどをつまらせて、苦し紛れに中庭に女の遺体を埋めるために掘った穴に転落します。神父が開けっ放しにしていた水道の水が地下室に流れ込み、マーダと兄が溺死しそうになるところをアメリカの学者が助けてくれます。自宅に戻った神父はクリスティーンの原稿を探しますが、マーダが持ち出していたため見つからず、警官の顔が血の固まりになるまで金づちで殴って殺し、十字架に打ち付けて自分に見せかけ、パトカーを奪い、逃げます。それぞれの人が日常を取り戻す中、アメリカからマーダへ神父から手紙が届きます。そしてマーダはその後、修道院に入り、一生を終えるのでした、という話です。
 ヘクター博士もどきの悪魔のような神父と、善良なる市民の戦い。マーダと神父の駆け引きも楽しめました。ラストの終わり方も「羊たちの沈黙」に似てますよね。ヘクター博士ファンは必読かも?

ジム・ジャームッシュ監督『ブロークン・フラワーズ』

2007-05-19 15:32:09 | ノンジャンル
 WOWOWで、ジム・ジャームッシュ監督の'05年作品「ブロークン・フラワーズ」を見ました。ジャン・ユスターシュに捧げられた映画です。
 ピンクの封筒が投函され、収集され、郵便局の中で仕分けされ、飛行機で飛んで行き、熟年の男ドンのところに投函されます。そこには、以前の恋人が別れた後に妊娠に気付き、その子は19才になり父親探しの旅に出たと書いてありますが、差出人の名前はありません。手紙を読み終わると、同居していたシェリーが家を出て行ってしまいます。隣人のコナは当時の恋人をドンにリストアップさせ、それぞれの現住所を調べ上げ、旅に出ろと言います。絶対に行かない、というドン。次のシーンでは飛行機に乗って旅に出ています。1人目はローラ。夫はレーサーで死に、娘と二人暮し。一夜を共にし別れます。2人目はドーラ。夫婦で不動産業をしてると言います。夫の勧めで夕食を共にしますが、気詰まりで、すぐに別れ、コナにはもう帰ると電話します。次のシーンで3人目のカルメンを訪ねるドン。動物と会話できると言う獣医。16才の娘がスウェーデンにいると言います。すぐに別れ、翌日4人目のカルメンのもとへ。道に迷った挙げ句辿り着いたのは、バイク野郎がたむろする村で、息子がいるか、と聞くと彼女は激昂し、ドンは彼女の仲間に殴られます。庭には手紙を書いたかもしれないタイプライター。5人目の事故死したペペの墓に花を捧げ、帰りの飛行機の中で、出会った女性たちの夢を見ます。自宅に帰ると、ピンクの手紙がまた届いていました。シェリーからでした。コナに旅の報告をし、外に出ると、空港にいた19才ぐらいの青年がいます。ドンは食事を与え、お袋がつけてくれたというピンクのリボンに気付きます。青年に哲学的な助言を求められ、将来はどうにでもなるのだから、大事なのは現在だ、とドンは言い、俺が父親だと思ってるんだろう、と言うと、青年は「バカなこと言うな」と逃げ出します。ドンは追いかけますが、途中であきらめ、呆然と立ち尽くすのでした、という話です。
 「舞踏会の手帳」形式の話(「舞踏会の手帳」というのは、昔舞踏会で出会った男たちを訪ね歩く女性を描いた戦前のフランス映画で、このような形式の映画をこう呼んでいました)で、無口な主人公がピンクの花を持っている姿が滑稽で、また次の女性はどんな女性なのか期待させてくれる映画です。調査に積極的なコナにドンは抵抗しますが、結局コナのいいなりになるところも笑います。ただ、ラストシーンで主人公の心境が伺われ、ずっしり来るものもありました。一見の価値はある映画だと思います。

中島らも『しりとりえっせい』

2007-05-18 15:37:24 | ノンジャンル
 中島らも氏の『しりとりえっせい』を読みました。
 エッセイのお題をしりとりでつなげて行くというもので、「しりとり」というエッセイの次は、「リトマス試験紙」というエッセイ、その次は「白雪姫」というえっせい、というように続いて行きます。
 読んでまず驚くのは、著者の博学ぶりです。よくぞこんなことまで、というほど次々に知識が披露されます。その度に調べているのかもしれませんが、それにしてもすごい。勉強になります。
 題名の付け方が「しりとり」といういい加減なやり方なので、話は方々へ飛び、カッパの由来から、世界の人狼伝説、プサルテリウムの話、化石の歴史、ヌタウナギ、カーネロという生物の話、人間原理宇宙論、イヌイットの現在、アイスクリームの歴史、カツレツの語源、みその歴史、ミイラの知識など、とにかく雑学の宝庫です。
 たまに話の流れがシュールになったりもして楽しめますし、常に社会批判をするという基本的な立場が見えます。
 それからついでに驚いたのが、ひさうちみちお氏の挿絵で、タモリ倶楽部で見た本人の姿が、線の細い気弱な感じの人物というイメージだったので、わりに雑な絵を描くのかな、と思っていたら、とても端正な大正ロマンを思わせる絵を描かれていたので、意外でした。
 本屋さんではもう売って無いかもしれませんが、アマゾンで中古本なら買えると思います。興味のある方には、オススメです。

鈴木清順監督『花と怒濤』

2007-05-17 15:54:56 | ノンジャンル
 もう何度目になるか分かりませんが、WOWOWで鈴木清順監督の'64年作品「花と怒濤」を見ました。
 恋人のお重(松原智恵子)の花嫁行列に斬り込み、花嫁を強奪した緒方(小林明)。1年後、浅草で人足をして身を隠す緒方を、娘を強奪された組長の命令で黒マントの男(川地民夫)が付け狙います。刑事(玉川伊佐男)は黒マントの男に、今度こそ逮捕してやる、とすごみます。人足を虫けらあつかいする飯場の人間に刃向かったことで、組の者たちに呼び出された緒方は、料亭の女・万竜(久保菜緒子)から拳銃を投げてもらい、助かります。緒方は組合長だと知らず、現場で無礼な振舞をしていた老人を殴りますが、かえって気に入られます。村田組に敵対する玉井組の親分は万竜にぞっこんですが、万竜は緒方に惚れています。飲み屋で働いているお重に、いつになったら二人で暮らせるの、と聞かれても、緒方は何も言えません。村田組の工事を妨害して嫌がらせをする玉井組に単身の乗り込んだ緒方は、万竜に助けられます。2つの組のケンカを見かねた組合長は、自分が中に立って手打ちの儀式をし、今後は仕事は半々でやっていくことにしますが、その後の花会で緒方が破門状が出ている男であることがばれ、また自分をつけ狙う男のサイコロに因縁を付け、サイコロに仕掛けがなかったことから、村田組の組長は恥をかかされたと激怒し、玉井組の組長を殺せば許してやる、と言います。万竜は自分の身を売って玉井から、村田と玉井組の組長が通じて緒方を殺そうとしているという情報を得て、それを知った緒方は村井を殺します。組合長から満州に行くことを勧められ、お重に新潟で会おうと手紙で知らせますが、どうしても心配になり祭りの人込みに混じってお重に会いに行きます。警官や緒方を狙う男たちが行き交う中、お面で顔を隠してお重に会った緒方は「一人で逃げて」という妊娠中のお重を説得し、必ず新潟に来るように言います。そして雪積もる新潟港に着いた緒方にお金を渡そうと追って来た万竜は、緒方をつけ狙う男によって殺され、死闘の末、緒方は男を倒します。そこへ駆け付けたお重は、刑事に捕まり、「生まれて来る赤ちゃんに、お父さんのいるところは刑務所じゃなく、満州だと言わせて」というお重の言葉に、刑事は緒方を見逃し、緒方は満州へ渡るのだった、という話です。
 江角英明、野呂圭介(人足)、高品格(お重の働く飲み屋の主人)ら、この時期の清順作品の常連も顔を揃え、場面転換もすばらしく、ラストの雪のセットも清順映画でしか見られない見事な造型を見せていました。祭りの夜の緊迫したシーンも見ごたえたっぷりで、移動撮影が見事で、マキノ雅弘監督や加藤泰監督の任侠物とはまた違った魅力にあふれていました。何度見てもあきないこの映画、
また見てない方にはオススメです。