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桐野夏生『アイム ソーリー、ママ』

2007-05-10 17:12:34 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が「鬼畜な主人公の殺人が壮快」だと誉めていた桐野夏生氏の「アイム ソーリー、ママ」を読みました。あらすじは以下の通りです。
1、「愛の船に乗った子供たち」児童福祉施設の元保育士・美佐江は25才下の元園児と結婚していますが、久しぶりに会った元園児アイ子に灯油をかけられ、焼死します。
2、「葬式帰りの喫茶店」寝たきりで悪態ばかりついている妻を持ち、女装癖のある隆造は昔美佐江に紹介され里親をしていましたが、美佐江夫婦の葬式の帰り、昔里親をした子たちと話しているうち、盗癖のあったアイ子の話になり、家に帰ってアルバムを出すと、彼女の写っていたはずの写真は全てなくなっていました。
3、「人生のありったけの記憶」アイ子は職場の焼肉店で、ホテルのメイドをしていた時に殺した老婦人のうそ八百の自分の人生をまねて気取って語っていると、警察が美佐江夫妻の火事の件で聞き込みに来ます。アイ子は翌日職場を去ります。
4、「肉と脂と女と男と汗」アイ子は横須賀に住む元娼婦の家を訪ねましたが、知らない男が住んでいたので、睡眠薬で眠らせ絞殺します。
5、「経営巫女のブルース」霊感を持つ社長として知られ、ホテルチェーンを経営する志都子の子供を交通事故から救ったアイ子は、その場で志都子の家のお手伝いさんに採用されます。
6、「死に様は選べない」志都子の腹心・山瀬のところに、アイ子の名前は出さずに、アイ子に注意せよ、という警告文がファックスで送られて来ます。志都子の夫と愛人が心中に見せかけて殺されます。
7、「彼は荒れ狂う」辞めたお手伝いの豊美が帰って来て、アイ子を怪しみます。志都子の夫の葬式が終わってから、アイ子の身元調査が行われることになります。
8、「言葉にできないほどの孤独」家を出たアイ子は、自分のことをファックスで流した人間を殺すため、昔自分が育った娼館を探します。
9、「男に人生を預けてはいけない」娼館は今はクリーニング屋になっていますが、娼婦の一人・静子が土地建物の権利書を不当に手に入れて作ったものでした。
10、「故郷に戻れない者たち」元娼婦の集まりで、静子は自分が娼館を仕切っていた「母さん」の子であり、正式に相続したものだ、と言いますが、他の者は怪しみます。アイ子も「母さん」の子だったかもしれないというので、元娼婦たちはアイ子を探すことにします。
11、「裏切り者は近くにいる」アイ子は再び横須賀の元娼婦の家を訪ね、ここに住む元娼婦が自分を告発していたことを知ります。元娼婦たちがやってきて、静子から元の娼館の土地を取り戻すのに力を貸してほしいとアイ子は頼まれます。そして戻って来たこの家の主人の元娼婦を殺そうとします。
12、「冷たい土の中にある真実」アイ子が土に埋めつつある元娼婦は、アイ子が自分の子で犯罪者たちに輪姦されてできた子だと言って死にます。翌日、アイ子は静子と対決させられますが、志都子に見つかったアイ子は、逃げて川に飛び込みます、という話です。
 アイ子は確かにひどい育てられ方をしているのですが、それにしても人間性のかけらもなく、悪に染まった彼女には、少しも同情できませんでした。ひいては、この小説にも思い入れは生じなかったことになります。本当の悪人の話を読みたい方には、オススメかも?