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豊島ミホ『底辺女子高生』

2007-05-01 16:08:34 | ノンジャンル
 今日紹介する豊島ミホ作品は第8作目にあたる「底辺女子高生」です。 これは著者の高校生活を回顧したエッセイ(?)です。進学校に通い、方言(「おら」を「あたし」)に直すのに苦労し、学祭は少しも盛り上がらず、下宿内恋愛禁止の下宿から通い、と「青春」という言葉のイメージとは程遠いところで送られた心の生活が活写されます。一こまマンガのような著者作のイラストがなかなか笑えました。

 では、具体的に他にどんな内容があったかというと、
1、クラスになじめず、自分の貯金から10万引き出して家出をし、13日間で25万円を使って自分探しの旅をした話。
2、中学での同級生だった男子が交通事故死し、葬式に出、彼が今の私のように教室の埃(ほこり)のような存在だったことを考え、脱力感に襲われた話。
3、私は高2の2学期から授業に出ないで保健室で過ごす時間が増えました。そして今でも時々、高校生の私が、同級生の皆さんに向かって腹の底から「お前らなんか、だいきらいだああ!」と絶叫する夢を見る話。
4、高2以来卒業まで、男子に話しかけたのは3回だけ。未だに自分から男子に話しかけることができないこと。(もしそれが本当なら、何で「青春チェリー」みたいなエロ小説が書けるのだろう?)
5、保健室で声をかわした小千谷先輩とその彼女のあすみ先輩の話。
6、私が属していたユニット(グループ)は4つあって「卓球ユニット。」(。はモーニング娘。のマネ)、「下宿ユニット」、「部活ユニット」、そして最も気に入っていた保健室でのユニット「不健康三人娘」だ。薬を見せ合ったり、私はマンガ、他の二人は読書家だったので、私もたまに二人から本を借りて読み、読書談義をして、「文学的だよね」というのが3人の間での最上級の褒め言葉だったこと。
7、赤点を45個前後取った私は、一つぐらい1位になりたいと思い、人気のないT部先生の保健の授業でせっせとノートを取り、猛勉強した結果93点を取り学年1位になったこと。
8、屋上の扉に鍵がかかっているわが校で、私にとって屋上は美術室だった。2年の2学期から入った美術部では気のおけない人ばかりに囲まれ、楽しい時間を過ごしたこと。
9、冬は嫌いだった。1つは、寒風吹きすさぶ中、割り込みの連中に何も言えず、じっとバス停で行列しなくてはならなかったこと。2つ目は、遠いスキー場まで吹雪の中歩かされ、ヘトヘトの状態で下手なスキーをさせられ、帰りにまた寒い中を歩かされるスキーの授業のこと。
10、3年になって音楽のラジオ番組にリクエストの投稿をするようになった。ラジオのいいところは、リスナーを「私たち」と言える何かがあった、ということ。
11、先生に「このままだと卒業できない」と言われ、中退だなあ、と思った私は、フリーになった時間に何と授業に出るようになってしまう。2月から補習に出るが、居心地がよかった。そしてふっと「ああ、生きてかなきゃいけないなあ」と思ったこと。
12、正式な卒業式の後、Mちゃんと待ち合わせ。今まで言わなかったプライベイトなことまで語り合う。自分一人の卒業式は笑顔で済ますはずが、母も先生も泣くので、私も大泣きしてしまう。その後、私は世界が広がったのを感じる。これから何をするのも、どうなるのも自由なのだ、と感じた話。

 めでたしめでたし、という話で、読後感もとてもいいです。オススメです。