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『卒業。』

2007-05-02 16:22:41 | ノンジャンル
 今日紹介する作品で、今まで豊島ミホさんが出された本はすべてご紹介したことになります。最後の作品は、7人の女性作家が「卒業」をめぐる短編を集めたアンソロジーです。トップを豊島さんが飾っています。では、豊島さんの「パルパルと青い実の話」から紹介していきましょう。

 パルパルは小さい体でよく動くかわいい顔をした子で、片手にパンらしきものを持って一人で廊下をビューッと走って行く姿をたまに見ます。私は非常口の外の階段で、パルパルにお弁当を渡しています。本人曰く「かーちゃん居ないし、とーちゃん海だし、だから弁当は女の子に作ってもらう」とのこと。模試があり、私は学年1位、パルパルは95人中89番で、公立最下位校の就職校にも届かない成績。私は同じ学校に行きたいので、その学校に行こうかな、と言うと、パルパルは怒りだし、3年間別の女の子から弁当を作ってもらってたと言い、俺に近づくなと言った後、卵焼きを私の胸の谷間に落とします。結局私は上位の進学校に行き、パルパルもどこかに受かったようです。彼は「ごめんな。あの時、言い過ぎた」と謝ってくれ、「あの時言った事、ウソ?」と聞くと、笑顔で首を横に振りました。高校へ行ったら、パルパルに負けないように、思いきりかわいくして誰かをころっと参らせてやるんだ、と誓います。
 というのが、豊島さんの短編でした。何てこともない短編で、気軽に読める短編ではありました。
 
 では、これ以外に収録されている作品を簡単に紹介しておきます。
 卒業式の後、学校のスターでサッカーの名門校に進学する男の子とたまたま一緒になり、海を見て、お互いSOSの時に知らせ合うために卒業証書を交換するという「卒業証書」(大島真寿美)、中学の楽しい思い出へと現実逃避から1ヶ月かけて、やっと1番の進学校である高校に慣れてきた頃、その高校を落ちた元親友がメチャエネルギッシュになって勉強してるのに圧倒される、という「春の電車」(梨屋アリエ)、小学校では喘息で何のできなかった私は、中学では健康になり、強豪のバトミントン部、演劇部で活躍し、塾での彼氏探しもし、心をコントロールする必要も学び、満足して卒業する、という「神様の祝福」(草野たき)、塾の帰り、模試の結果の悪さに泣きながらバスに乗る私の隣に塾の先生が座り、手を握ってくれます。それは先生が塾を辞めるまで続き、22才になった今もクリスマスになるとそのバスに乗る、という「君と手をつなぐ」(藤堂絆)、中3の夏休み、父から虐待を受け、大学生のボーイフレンドがいて妊娠していた親友が姿を消します。10年後出会った彼女の前で、彼女の過去を知り合いにすべて話してしまい、激しく後悔しますが、40才になったある日、彼女から娘の中学の卒業式に一緒に出てほしい、と手紙が来ます。久しぶりに会った彼女は虐待の話以外は全部嘘で、でもフランス人と結婚したのは本当だと明るく笑う、という「彼女を思い出す」(前川麻子)、不良のユーリとお嬢さんのテンコと私は、ユーリの提案で高校卒業生を送る会で出し物をすることにします。ユーリは蛇を頭からバリバリ食べるという芸人がやっていたことをしたい、と言い、私たちは引きますが、芸人が実はソーセージを蛇に見せ掛けていたことを知り、蛇を作り、飴でゴキブリを作り、天使対悪魔という出し物でそれなりに受け、その後、芸人の死体を発見しますが、マネキンだったことが分かる、という「たぶん、天使は負けない」(若竹七海)の6編です。これに川嶋あいさんの巻末スペシャルメッセージ「いくつかの“卒業”を経て辿りつく本当の自分」が付いてます。
 この中で一番面白かったのは、様々なキャラが楽しめる「春の電車」でしょうか。また、私は豊島さん以外の著者を一人も知りませんでした。皆さん、まだ無名の方なんでしょうか? それとも私が無知なのでしょうか? 疑問が残った一冊でした。