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斎藤美奈子さんのコラム・その10

2017-02-09 05:05:00 | ノンジャンル
 恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第9弾。
まず、1月11日に掲載された「火に油の外交」と題されたコラム。
「釜山市の日本総領事館前に少女像が設置された件への対抗措置として、9日、駐韓大使と釜山総領事が一時帰国した。
安倍首相は『次は韓国に誠意を示していただかなければ』と、菅官房長官は『国と国として約束したことは実行してほしい』と、岸田外相は『日韓合意の着実な実施を求めたい』と述べた。いずれも2015年末の日韓合意に反する行為だとの認識に基づく。『十億円も払って慰安婦の件は蒸し返さないと約束したのに何だよこれは!』そういいたいのだろう。
ここには二つの誤解が横たわっている。
第一に日韓の認識のちがいである。日本側は慰安婦問題を二国間のトラブルとしか見ていない。金銭の拠出もおわびと反省の表明も『最終的かつ不可逆な解決』のための手段で、だから相手国の約束不履行が許せなかった。が、韓国民にしてみれば、自分たちは被害者だとの意識が強い。加害者に『金も払ったんだからもう黙れ』といわれるのは心外だろう。
第二に少女像を設置したのは市民団体で、韓国政府ではないことだ。政府の責任で像を撤去しろと迫られても、『じゃあ市民の自由な活動を弾圧しろと?』という話である。朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾訴追で揺れる韓国。12年に当時の李明博(イミョンバク)大統領が竹島に上陸したときとは事情が異なる。火に油を注ぐ措置は有効なんだろうか。」
また、2月1日に掲載された「読む機械」と題されたコラム。
「しゃあねえなあ、読んでやっか」と前置きして首相は答弁に立った。『我が国はいま、アメリカ発の金融、えーと、金融キキンによる、あー、ミゾユーの危機にジカメンしており』『一部の業界においては大型倒産がハンザツし、製造業においては、ハヤリ労働者切りの問題が…ワカオキしておりまして』
キキンは危機、ジカメンは直面、ハンザツは頻発、ハヤリは派遣、ワカオキは惹起、ミゾユーはもちろん未曽有だ。
池井戸潤『民主』の一節である。作中の首相が漢字を読めないのは出来の悪い息子と中身が入れ替わったからなのだが、小説の連載がウェブ上でスタートしたのは麻生内閣の退陣(2009年9月)直前。元首相は人気作家に小説まで書かせてしまったのである。
一方、『訂正云々』を『訂正デンデン』と読んだ安倍首相。『歯舞』が読めなかった沖縄北方担当相も、川内(せんだい)原発を『カワウチ原発』と読んだ経産相も過去にはいたわけで、誤読自体は些末な問題かもしれない。
ただ、これは『前言を訂正せよ』という要求への答えである。この程度の答弁すら誰かの原稿を『読んで』いたなら、そっちがむしろ衝撃だ。米大統領の入国規制策について『私はコメントすべき立場にない』と首相は述べた。誤読問題は自分の言葉を持たない大臣問題だ。それは些事なのだろうか。」
また、2月8日に掲載された「早春の沖縄」と題されたコラム。
「沖縄は日本一早く桜が咲く土地である。
世界遺産にも登録されている今帰仁(なきじん)城は桜まつりの真っ最中だった。ソメイヨシノではなく、ここの桜は濃いピンクのヒカンザクラ(別名はカンヒザクラ)だ。
沖縄の桜は本州とちがい、気温の低下とともに開花するので、桜前線も北から南へ南下する。この時期には名護城でも本部八重岳でも桜まつりが開かれて、大勢の人が訪れる。今日あたりは満開かもしれない。
なにをのんきな。辺野古ではコンクリートブロックを海底に入れる海上工事が着工されて大変なことになっているのに。
と思うでしょ? そんなことはわかっているのだ。わかっていてあえていうのだ。そうじゃない方向からの沖縄も知っときませんか、と。
だいたい私は少し前まで沖縄の歴史にまるで無知だった。本州で暮らしていると、いわば『大和朝廷史観』にどっぷり漬かって、飛鳥時代、奈良時代、平安時代、鎌倉時代、室町時代…という歴史区分が当たり前だと思っている。だが沖縄はちがう。北海道もちがう。
そこから学んではじめて現在の沖縄がどれほど理不尽な状態にあるかがわかるんじゃないか。
マリンレジャーがオフの時期の沖縄は歴史探訪にぴったり。座喜味(ざきみ)城、中城(なかぐすく)城、勝連(かつれん)城、そして今帰仁城などのグスクへもぜひ。」

 今回も切れ味鋭い文章で、読んでいてスカッとしました。