また昨日の続きです。
“大正十一年・夏 東京・浅草”の字幕。女郎の化粧をするおとよ。泣き出す同僚に「めそめそしないの!」「子供のこと、思い出しちゃって。息子も亭主もいるのよ。17歳の時に結婚して」「しっかりおし。こんな商売、借金返せば自由になれるんだから。私なんか好きな男がムショに入っちゃってて」。女将「おとよさん、この人、お蝶さん。いろいろ教えてあげえてね」。「よろしくお願いします」とお袖。『文藝日本』を持っていたお袖は、本を落とすと、瓢吉の小説が載っているのが分かる。
女郎街。宮川と連れの男。「ちょっとお兄さん、寄ってらっしゃいよ」。連れの男は女を気に入り、無理やり宮川も店に引きずり込む。「お姉さーん、早く。お客さんよ」。出て来たおとよと宮川、体が固まったように見つめ合う。おとよ「いらっしゃい」。
「随分ひさしぶりね。今日はゆっくりしてって」「観音様を拝みに来ただけだ」。おとよ、宮川の財布から金を抜いて「決まりなの」。上半身裸になった宮川。背中の刺青をなでるおとよ。
帯を解き、明かりを消して服も脱ぐおとよ。真剣な目で宙を見つめる宮川。「ねえ、遊ぼうよ。ここは男と女が遊ぶところよ」。宮川、おとよを抱く。おとよ、全裸になり、宮川に抱かれる。
雨。ムショ。飛車角に面会に来る吉良常。「小金の親分とデカ虎の奴が対立してる。おとよから便りはあるのかい?」「へえ、浅草の深野って店に落ち着いたらしい」「角さん、これ差し入れ」と衣類を渡し、「寒いから体だけは気をつけて」と言う。「ありがとうござんす」と飛車角。
よがるおとよ。刺青にキス。口にキス。
お袖「私のいい人紹介するわ」。いびき(笠智衆)。「これがあんたのいい人?」「私のいい人の中学時代の先生。ああ、そんなところで寝ちゃったら、風邪をひくわよ」と毛布を黒馬先生にかけるお袖。「どうしてんの、あんたのいい人?」「あんたこそ、本気で惚れちゃったんじゃないの?」。
宮川「飛車角が出て来たら、全部言う」男「別れろ」「どうせ売った買ったの女だ」「本気で言ってるのか? やるんならやるぞ!」と男、短刀を出す。吉良常現れ、男を押しとどめる。男「もう言うな。分かったよ。角の女なんかどうでもいい」「短気になるなよ。今日は大晦日だ。飲み直そう」。宮川「一人で考えたい」。
吉良常、おとよに会いに行く。お袖「おとよさん、先客があるの。にくらしいわ、がっかりして。どうすんの」「どうしようか?」「そうする?」「その代わり(ヒソヒソ話)」「馬鹿、スケベ」。
宮川、おとよに「今夜2人で逃げよう」おとよ「私もこんな気持ちで商売できない。覚悟は決めた」「金はなんとでもなる。10時に抜け出して、“たぬき”っておでん屋で会おう」。おとよが部屋から出ると、お袖「悪いけど、今の話聞こえた。あとでゆっくり話そう。女将さんと~。少しうきうきしなさいよ。気どられないように。会いたいってお客、来てるわよ」。
おとよ「お待ちかね」吉良常「角さんから便りはあるのかい?」「あんた、誰?」「ちょっとした知り合いだ。3月前に会って来た。なあ、角さんお前のこと心配してるぞ。一度会いに行ったら? 話によっては後始末をするぜ。体を自由にしてあげようってことよ。角さんには惚れた。何か役に立ちたい。どうせこれは上海で稼いだあぶく銭だ。名乗るほどの者じゃない。(ふさぎこんだおとよを見て)どうしなすった?」「私、そんな資格ないんです。私、あの人に会わす顔がないんです」「まさか他の男に惚れたんでもあるまいし」「それが……」。厳しい顔で酒をあおった吉良常は「とんだお邪魔」と言って去る。泣き出すおとよ。
“たぬき”の看板。瓢吉「シナに行かないかと出版社から言われている」黒馬先生「断固行くべし。文学は度胸だ」。脱出してきたおとよとお袖だったが、お袖は店内に瓢吉がいるのを見つけ、「まだあの人、来てないわ。もう一回りしてこよう」とおとよに言う。おでん屋の片隅でヤクザが「さっきデカ虎の親分が小金を殺った」と話している。それを聞いた宮川は店を飛び出す。
車で急行する宮川。
殴り込みを受けた直後の現場。死屍累々。突っ伏して死んでいた親分をあお向けて抱く宮川。
おでん屋で酒を飲むお袖と、うなだれるおとよ。お袖「このままどっか行っちゃおうか? 2人で逃げるんだから筋書通りじゃない? 落ちるところまで落ちたんだから。行こう。行こうよ」。
雪。お袖「うわー、寒い。走ろっか? 私たち逃げてるのよ」。お袖が笑い、おとよもようやく表情が緩む。
“大正十二年・夏 上海”の字幕。瓢吉、日本人が殺された現場に出くわす。「ここじゃ日本人は目の敵だ」。中国人たちの目、目、目。吉良常、ルーレットをしているが、隣でトランプ賭博をしている白人がイカサマやっているのに気づく。その場を去った白人を襲い、現金を奪う吉良常と出くわす瓢吉。「若旦那じゃありませんか?」「やっぱり常さんだね」。(また明日へ続きます……)
“大正十一年・夏 東京・浅草”の字幕。女郎の化粧をするおとよ。泣き出す同僚に「めそめそしないの!」「子供のこと、思い出しちゃって。息子も亭主もいるのよ。17歳の時に結婚して」「しっかりおし。こんな商売、借金返せば自由になれるんだから。私なんか好きな男がムショに入っちゃってて」。女将「おとよさん、この人、お蝶さん。いろいろ教えてあげえてね」。「よろしくお願いします」とお袖。『文藝日本』を持っていたお袖は、本を落とすと、瓢吉の小説が載っているのが分かる。
女郎街。宮川と連れの男。「ちょっとお兄さん、寄ってらっしゃいよ」。連れの男は女を気に入り、無理やり宮川も店に引きずり込む。「お姉さーん、早く。お客さんよ」。出て来たおとよと宮川、体が固まったように見つめ合う。おとよ「いらっしゃい」。
「随分ひさしぶりね。今日はゆっくりしてって」「観音様を拝みに来ただけだ」。おとよ、宮川の財布から金を抜いて「決まりなの」。上半身裸になった宮川。背中の刺青をなでるおとよ。
帯を解き、明かりを消して服も脱ぐおとよ。真剣な目で宙を見つめる宮川。「ねえ、遊ぼうよ。ここは男と女が遊ぶところよ」。宮川、おとよを抱く。おとよ、全裸になり、宮川に抱かれる。
雨。ムショ。飛車角に面会に来る吉良常。「小金の親分とデカ虎の奴が対立してる。おとよから便りはあるのかい?」「へえ、浅草の深野って店に落ち着いたらしい」「角さん、これ差し入れ」と衣類を渡し、「寒いから体だけは気をつけて」と言う。「ありがとうござんす」と飛車角。
よがるおとよ。刺青にキス。口にキス。
お袖「私のいい人紹介するわ」。いびき(笠智衆)。「これがあんたのいい人?」「私のいい人の中学時代の先生。ああ、そんなところで寝ちゃったら、風邪をひくわよ」と毛布を黒馬先生にかけるお袖。「どうしてんの、あんたのいい人?」「あんたこそ、本気で惚れちゃったんじゃないの?」。
宮川「飛車角が出て来たら、全部言う」男「別れろ」「どうせ売った買ったの女だ」「本気で言ってるのか? やるんならやるぞ!」と男、短刀を出す。吉良常現れ、男を押しとどめる。男「もう言うな。分かったよ。角の女なんかどうでもいい」「短気になるなよ。今日は大晦日だ。飲み直そう」。宮川「一人で考えたい」。
吉良常、おとよに会いに行く。お袖「おとよさん、先客があるの。にくらしいわ、がっかりして。どうすんの」「どうしようか?」「そうする?」「その代わり(ヒソヒソ話)」「馬鹿、スケベ」。
宮川、おとよに「今夜2人で逃げよう」おとよ「私もこんな気持ちで商売できない。覚悟は決めた」「金はなんとでもなる。10時に抜け出して、“たぬき”っておでん屋で会おう」。おとよが部屋から出ると、お袖「悪いけど、今の話聞こえた。あとでゆっくり話そう。女将さんと~。少しうきうきしなさいよ。気どられないように。会いたいってお客、来てるわよ」。
おとよ「お待ちかね」吉良常「角さんから便りはあるのかい?」「あんた、誰?」「ちょっとした知り合いだ。3月前に会って来た。なあ、角さんお前のこと心配してるぞ。一度会いに行ったら? 話によっては後始末をするぜ。体を自由にしてあげようってことよ。角さんには惚れた。何か役に立ちたい。どうせこれは上海で稼いだあぶく銭だ。名乗るほどの者じゃない。(ふさぎこんだおとよを見て)どうしなすった?」「私、そんな資格ないんです。私、あの人に会わす顔がないんです」「まさか他の男に惚れたんでもあるまいし」「それが……」。厳しい顔で酒をあおった吉良常は「とんだお邪魔」と言って去る。泣き出すおとよ。
“たぬき”の看板。瓢吉「シナに行かないかと出版社から言われている」黒馬先生「断固行くべし。文学は度胸だ」。脱出してきたおとよとお袖だったが、お袖は店内に瓢吉がいるのを見つけ、「まだあの人、来てないわ。もう一回りしてこよう」とおとよに言う。おでん屋の片隅でヤクザが「さっきデカ虎の親分が小金を殺った」と話している。それを聞いた宮川は店を飛び出す。
車で急行する宮川。
殴り込みを受けた直後の現場。死屍累々。突っ伏して死んでいた親分をあお向けて抱く宮川。
おでん屋で酒を飲むお袖と、うなだれるおとよ。お袖「このままどっか行っちゃおうか? 2人で逃げるんだから筋書通りじゃない? 落ちるところまで落ちたんだから。行こう。行こうよ」。
雪。お袖「うわー、寒い。走ろっか? 私たち逃げてるのよ」。お袖が笑い、おとよもようやく表情が緩む。
“大正十二年・夏 上海”の字幕。瓢吉、日本人が殺された現場に出くわす。「ここじゃ日本人は目の敵だ」。中国人たちの目、目、目。吉良常、ルーレットをしているが、隣でトランプ賭博をしている白人がイカサマやっているのに気づく。その場を去った白人を襲い、現金を奪う吉良常と出くわす瓢吉。「若旦那じゃありませんか?」「やっぱり常さんだね」。(また明日へ続きます……)