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加藤泰監督『宮本武蔵』その4

2017-02-17 04:56:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
沢庵「何で人を殺すのか?」武蔵「関ケ原までは、顔を知らぬ主人のため虫けらのように死んでいた。今では自分なりの生涯を作りたい」「なぜ小次郎との勝負を避けた? お前、小次郎が怖いんだろう? それでよいのじゃ」「私は登ってばかりで、絶壁の途中です。もう一度千年杉に吊るしてください。悟りを得たいのです」「わしも悟りの“さ”の字も分からんというのに、たわけたことを。剣の道に悟りなどない。さっさと小次郎に斬られてしまえ。宮本村ではお通が待っておるぞ」。
“作州・宮本村”の字幕。雨。「お婆様、お通でございます」お杉「わしゃ、もう目が見えんけえ、ここじゃ、ここじゃ」「こんなにやつれてしもうて、いつお戻りに?」「おとといの晩。足を棒にして全国を歩き回り、疲れ果てた」「又八さんは?」「途中で逃げてしもうた。お通、お前は何しに?」「一人で戻られて、ひどく難儀をしていると聞いたので。おかゆでも作りましょう」「その前に水を一杯くれんね。お前もわしを恨んでくれたんだろうな。こうして助けに来てくれて、ありがたや、ゴホ、ゴホ」「このうちは隙間風が。一緒に暮らしましょう。このようになったのは私のせいです。一生かけて償うので一緒に」「武蔵のことは諦めたんか?」「もうこの村に帰らないでしょう。これからは嫁と思ってください」「おのれ、よくも家名に泥を塗ってくれたな! 今ここで仇を取る。覚悟じゃ!」。逃げるお通。戸板が外れ、雨嵐が室内に。外に出て、お通の首を絞めるお杉。お通、意識を失う。笑うお杉。「又八、仇の片割れをこの婆が取ってやった。あとは武蔵じゃ。居場所も分かったぞ。小次郎と決闘じゃ」。
沢庵、又八に、「黙って付いて来い」。橋の下で赤ん坊をあやす朱美。又八「随分変わったのう」「私も今大津の家にいる。武蔵は堺の港へ、小次郎と決闘しに」「では今朝この橋の上を通った訳か? その赤ん坊は?」「この目、この鼻、馬鹿、分かんないのかい?」「俺の子? 和尚、このかわいい顔。知らぬ間に似てて親に。私は今日を限りに還俗します。女房と子のために」「お前は武蔵より先に悟ったな。まぎれもない人間だ。武蔵には分からん。だから馬鹿の馬鹿だ」。
“武蔵、小次郎の対決は、慶長17年(1612)4月13日 辰の刻(午前8時)、関門海峡の船島に於いてと決まった”“小倉”の字幕。「なんで船島でやるんだろう?」。
“船島”の字幕。待つ小次郎。(中略)
 “門司”の字幕。又八「おい、朱美、めし食うか? わざわざ京から武蔵に会いに来たんだ。武蔵とは肝胆相照らす仲だ。生まれた時からの」
 小次郎「鷹をここへ。城へ帰れ」と鷹を放つ。(中略)
 「そろそろお時刻です。お召し物は揃えてあります」。木刀を削る武蔵。「ご主人、そろそろ引き潮か?」「まだです。巳の刻になるかと」「船の用意は?」「とびきり速いのを」(中略)「ここに観音像がある。これを形見代わりに。今晩も世間話ができればいいように祈っていてくれ」。
 「お通さん」「武蔵さん」「こんなところで一人で?」「はい」「村に戻っているのか?」「お婆様が亡くなりました」「又八は知ってるのか?」「はい」。泣く武蔵。「許せ。(お通に)お通、お前、わしの妻じゃと? 言うてはかえって味気ないもの。武士の女房なら出陣の時、笑って送ってくれるものぞ。これきりかもしれん。では」。お通、追う。「武蔵さん」。お辞儀をするお通。
 雨。船の上。武蔵「だいぶ遅れたな」船頭「巳の刻すぎかも」「あれは」「彦島です」。彦島に控える門弟たち。
 荒れる海。小次郎「岸間殿、藩の指南役として、細川家と個人、どちらにしても負ける訳にはいかん。必ず倒す」。「来たー」。「手出しは無用」。武蔵の船頭「どの辺りへ」「まっすぐに」。高いところから見物する者たち。武蔵、浅瀬に入る前に海に飛び込む。見物する者たちの中に又八と朱美。小次郎「待ちかねたぞ。武蔵を斬るのは佐々木小次郎だ」。小次郎は刀を抜くとさやを捨てる。武蔵「勝つならなぜさやを捨てる? 小次郎、負けたり!」。一瞬の間で勝負は決し、武蔵の額から血が流れ、小次郎は口から血を出して倒れる。小次郎にとどめをさした武蔵は、一目散に船に向かう。船頭「なーに、誰も追いつくもんですか」。又八と赤ん坊をあやす朱美。又八「もしもの時、骨を拾うつもりだったが、ついに会えんかったのう。武やん、これからどうなっていくんじゃ?」。歌が流れ始め、真剣な武蔵の表情のアップで映画は終わる。

 この映画も、武蔵の剣の道を描いているようで、本筋は男女の愛を描いた作品でした。シナリオの第一稿には、武蔵とお通のセックスシーンまであったということです。作品の長さ(2時間28分)もテーマも『人生劇場 青春・愛欲・残侠篇』(2時間47分)や『花と龍 青春・愛憎・怒涛篇』(2時間48分)と共通するものがあると思いました。