昨日の続きです。
昼間。チンドン屋。奈良平の家。奈良平の妻「あーら、角さん」「兄貴は?」「もう帰ってくる頃よ。おとよさんが来てたのよ。昨夜は私と一緒に寝たわ。おとよさん、泣いてた。うちの人が横浜に送っていったわ」奈良平「おーい、けえったぞ。何だ。おめえ、来てたのか」飛車角「話したいことが山ほどある」「こっちもよ」「今晩は御馳走ね。じゃあお刺身でも」と奈良平の妻は電話をかける。奈良平「落ち着いて話そう。何か誤解してるんじゃねえか?」「横浜に連れ戻したな?」「もうここもやばい」「何で俺に相談しない?」「暇がなかった。今頃知らない客に抱っこされてるだろう」。飛車角、奈良平を斬る。飛車角「大した傷じゃない」奈良平の妻「今日のところはお引き取りを」「お騒がせしやした」「あんた!」。奈良平の妻、泣く。
虫が鳴く音。人力車から降りる照代(任田順好)。瓢吉、吉良常に照代を紹介する。「同人誌の仲間だ。借金取りから逃れるために、今晩はホテルに泊まる」。吉良常、帰る。照代「どういうお知り合い?」「切っても切れない仲だ」。
吉良常、飛車角に「ちょっと。やってきやすったね。まあ上がんな」「水を一杯だけ」「喧嘩ならいいんですが」「会っておきたい女が横浜に」「球磨焼酎がありますよ」「それはいい」「落ち着いてる。大したもんだ。私、吉良の二吉と申します。おじきに紹介されました。2人ともいい名前だ。いっそ自首したら?」「人を殺すと5,6年はムショ暮らし。一生日陰者だ」「女って待っててくれるもんですかね?」。
横浜に向かう飛車角。人力車から飛び降りるおとよ。「私のために人まで殺して」「どうしてここに?」「逃げてきたの。横浜に帰るとこ」「逃げよう。駅まで行って待ってろ」。刑事に捕まる2人。
瓢吉、照代とキス。雨。“鳴戸館”の看板。「困ったわ。朝まで起きてるって言ったの」。瓢吉に押し倒されて「ダメ、ダメ!」。
雨止む。朝。
瓢吉、起きている。照代「もう起きてたの? 私眠ってなんかいない。どうしたの? 急に変なこと考えて。私たち、このままじゃ滅びるわ。急に寂しくなってきた。きっとあなたのことばかり考えて、小説のことを考えられなくなったからよ」「一緒にやって行こう」「誰かの代わりに私を抱いただけでしょう? 自分にも嘘をついてる」。
吉良常、浪曲をうなってる。巡査(坂上二郎)が現れ、「君はどんな仕事をしている?」「渡世。侠客だよ」。そこへ瓢吉が現れ、吉良常「若旦那、お達者です」「常さんも」巡査「戸籍調べで寄らせてもらいまいした。失敬」と去る。ヒグラシの声。瓢吉「小説を書いて立派な人間になるつもりだ」吉良常「どうせなら大説で」。
お袖が瓢吉の許へ。「お久しぶり」「何しに来た?」「会いたくなったから。いけない?」。同人誌の仲間の石上「青成、ちょっと」。2人になると、「君はお袖を知ってるのか?」「カフェで会って知ってる」「彼女からゆすられてる。たった3回で妊娠し、始末に500円払えって。頼む。100円なら出すから、そう言ってくれ」。
瓢吉、ベッドで寝ているお袖に「もう起きろよ」「あたし酔った。今晩泊めて」「石上をゆすったんだって?」「当然の権利よ。どうしてそんな目で見るの? まだ一人だって聞いたから。以前のように私が稼いで、あなたを助けてあげたっていいのよ」「よせ。今は大事な時だ」「昔と同じことを言って」「仕事にならない」「ねえ、不思議だと思わない? 石上があたしとくっつき、あたしがあなたとくっつき、これはきっと因縁ね。あなたのこと、随分ひどい人だと思ってる。時々殺してやろうかとも。悲しくって」「もういいよ。今夜はそこで寝てろ。俺のねぐらはどっかで探す」「あーあ、またあいつと寝ちゃおっかなあ」。にらみつける瓢吉に「殴りなさいよ」。電話かかって来て、お袖が出る。瓢吉「どこから?」「照代って人から」。瓢吉、お袖を殴って出て行く。泣き出すお袖。
おでん屋で、浪曲をうなる吉良常。「俺はヤクザのなれの果てだ」と言うと、カウンターの隅に座る男(笠智衆)も「わしも中学教師のなれの果てだ」と言う。やがてその男・黒馬先生は、瓢吉の先生だったことが分かる。黒馬先生「瓢吉に会いに行こう。ところで君、金あるのか?」「いいえ」「こうなれば落ち着こう。あんたが寝る。わしが先に出る。30分して起こしに来たら、君は『初めてあった男で、あの男の奢りで飲んでた』と言えばいい。うまくやれなければ無銭飲食になる。ムショは波の音、三味の音が聞こえて、なかなかいいものだぞ。じゃあ必ず迎えに来る」と黒馬先生は去る。女中、横になる吉良常に「ちょっと。ずうずうしいわね。起きてよ」「まだ30分も経ってないぞ」。向こうで警官に捕まっている黒馬先生「2人でホテルに泊まることになったぞ」。
“休憩”の字幕。(また明日へ続きます……)
昼間。チンドン屋。奈良平の家。奈良平の妻「あーら、角さん」「兄貴は?」「もう帰ってくる頃よ。おとよさんが来てたのよ。昨夜は私と一緒に寝たわ。おとよさん、泣いてた。うちの人が横浜に送っていったわ」奈良平「おーい、けえったぞ。何だ。おめえ、来てたのか」飛車角「話したいことが山ほどある」「こっちもよ」「今晩は御馳走ね。じゃあお刺身でも」と奈良平の妻は電話をかける。奈良平「落ち着いて話そう。何か誤解してるんじゃねえか?」「横浜に連れ戻したな?」「もうここもやばい」「何で俺に相談しない?」「暇がなかった。今頃知らない客に抱っこされてるだろう」。飛車角、奈良平を斬る。飛車角「大した傷じゃない」奈良平の妻「今日のところはお引き取りを」「お騒がせしやした」「あんた!」。奈良平の妻、泣く。
虫が鳴く音。人力車から降りる照代(任田順好)。瓢吉、吉良常に照代を紹介する。「同人誌の仲間だ。借金取りから逃れるために、今晩はホテルに泊まる」。吉良常、帰る。照代「どういうお知り合い?」「切っても切れない仲だ」。
吉良常、飛車角に「ちょっと。やってきやすったね。まあ上がんな」「水を一杯だけ」「喧嘩ならいいんですが」「会っておきたい女が横浜に」「球磨焼酎がありますよ」「それはいい」「落ち着いてる。大したもんだ。私、吉良の二吉と申します。おじきに紹介されました。2人ともいい名前だ。いっそ自首したら?」「人を殺すと5,6年はムショ暮らし。一生日陰者だ」「女って待っててくれるもんですかね?」。
横浜に向かう飛車角。人力車から飛び降りるおとよ。「私のために人まで殺して」「どうしてここに?」「逃げてきたの。横浜に帰るとこ」「逃げよう。駅まで行って待ってろ」。刑事に捕まる2人。
瓢吉、照代とキス。雨。“鳴戸館”の看板。「困ったわ。朝まで起きてるって言ったの」。瓢吉に押し倒されて「ダメ、ダメ!」。
雨止む。朝。
瓢吉、起きている。照代「もう起きてたの? 私眠ってなんかいない。どうしたの? 急に変なこと考えて。私たち、このままじゃ滅びるわ。急に寂しくなってきた。きっとあなたのことばかり考えて、小説のことを考えられなくなったからよ」「一緒にやって行こう」「誰かの代わりに私を抱いただけでしょう? 自分にも嘘をついてる」。
吉良常、浪曲をうなってる。巡査(坂上二郎)が現れ、「君はどんな仕事をしている?」「渡世。侠客だよ」。そこへ瓢吉が現れ、吉良常「若旦那、お達者です」「常さんも」巡査「戸籍調べで寄らせてもらいまいした。失敬」と去る。ヒグラシの声。瓢吉「小説を書いて立派な人間になるつもりだ」吉良常「どうせなら大説で」。
お袖が瓢吉の許へ。「お久しぶり」「何しに来た?」「会いたくなったから。いけない?」。同人誌の仲間の石上「青成、ちょっと」。2人になると、「君はお袖を知ってるのか?」「カフェで会って知ってる」「彼女からゆすられてる。たった3回で妊娠し、始末に500円払えって。頼む。100円なら出すから、そう言ってくれ」。
瓢吉、ベッドで寝ているお袖に「もう起きろよ」「あたし酔った。今晩泊めて」「石上をゆすったんだって?」「当然の権利よ。どうしてそんな目で見るの? まだ一人だって聞いたから。以前のように私が稼いで、あなたを助けてあげたっていいのよ」「よせ。今は大事な時だ」「昔と同じことを言って」「仕事にならない」「ねえ、不思議だと思わない? 石上があたしとくっつき、あたしがあなたとくっつき、これはきっと因縁ね。あなたのこと、随分ひどい人だと思ってる。時々殺してやろうかとも。悲しくって」「もういいよ。今夜はそこで寝てろ。俺のねぐらはどっかで探す」「あーあ、またあいつと寝ちゃおっかなあ」。にらみつける瓢吉に「殴りなさいよ」。電話かかって来て、お袖が出る。瓢吉「どこから?」「照代って人から」。瓢吉、お袖を殴って出て行く。泣き出すお袖。
おでん屋で、浪曲をうなる吉良常。「俺はヤクザのなれの果てだ」と言うと、カウンターの隅に座る男(笠智衆)も「わしも中学教師のなれの果てだ」と言う。やがてその男・黒馬先生は、瓢吉の先生だったことが分かる。黒馬先生「瓢吉に会いに行こう。ところで君、金あるのか?」「いいえ」「こうなれば落ち着こう。あんたが寝る。わしが先に出る。30分して起こしに来たら、君は『初めてあった男で、あの男の奢りで飲んでた』と言えばいい。うまくやれなければ無銭飲食になる。ムショは波の音、三味の音が聞こえて、なかなかいいものだぞ。じゃあ必ず迎えに来る」と黒馬先生は去る。女中、横になる吉良常に「ちょっと。ずうずうしいわね。起きてよ」「まだ30分も経ってないぞ」。向こうで警官に捕まっている黒馬先生「2人でホテルに泊まることになったぞ」。
“休憩”の字幕。(また明日へ続きます……)