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高橋秀実『人生はマナーでできている』

2017-02-04 05:47:00 | ノンジャンル
 高橋秀実さんの’16年作品『人生はマナーでできている』を読みました。本書は『小説すばる』2014年5月号~11月号、2015年1月号、2015年3月号~6月号に連載されたものを加筆・修正したものです。
 英語の「マナー」とは「やり方」なので、著者は日常生活の様々な行為をあらためて考えてみることにします。「おじぎする」「挨拶する」「食べる」「匂う」「会議する」「結婚する」「踊る」「笑う」……。取材するうちに、これらはこれら自体がひとつのマナーではないかと気がつきます。それぞれが生きるためのマナー(やり方)ではないかと。そして「ひとりではない」を忘れないことが、きっとマナーの鉄則であると気づきます。
 上記以外で、気になったことを書き写しておくと、
・日本人のマナーの基本は、はやり「おじぎ」だろう。
・(前))巷のマナー本を読んでみると、「おじぎ」は決まって3種類に分類されていた。1、会釈 2、敬礼、3、最敬礼 人とすれ違った時などにするのが「会釈」。「敬礼」は丁寧な挨拶で、感謝や謝罪の気持ちを表わすのが「最敬礼」らしい。
・調べてみると、会釈は15度、敬礼は30度、最敬礼は45度、上体は曲げずに腰を折っておじぎすることになっている。
・時間には「ひまなとき」という意味があること
・電車の運転時刻の計算は「1秒単位」で行われる。しかし駅での停車時間は「ドア1つに乗客が3名多ければ1秒増える」という計算にもなり、結局「列車が遅れる原因はほとんど乗降時間の増加」なのだそうだ。
・実は「時間」そのものが鉄道とともに普及したのである。
・あらためて鉄道各社に「マナー」を問い合わせると、各社とも同じだった。「特にありません」と。特に文章化されていないそうなのである。ある鉄道会社によると「私たちはお客様にお願いする立場にあるわけですから、強制はできません」とのこと。お願いすればよさそうなものだが、なぜかそれもできないそうなのである。
・今にして思えば奇妙なことだが、私が「挨拶」というものを最初に意識したのは中学校の英語の授業だった。
・調べてみると「挨拶」はもともと仏教語。(中略)要するに禅問答のことなのだ。
・つまり「挨拶」とはその場で言当ての問いかけを封じ、何かを教わろうとする「問いごころ」を押しとどめるためのものであって、それ以外でない。
・富山県は「ことばの正倉院」、あるいは「古語の博物館」と呼ばれている。
・午前10時頃、富山市外のスーパーの入口にあるベンチに座っていると、近所の中年女性たちがこんな挨拶を交わしていた。「なーん」「なーん、なん、なん、なん」
・富山では人から何かをいただいた時に「気の毒な」「あれー気の毒な」と言う。(中略)「『気の毒な』は相手の立場に立った言い方です。相手に散財させた、苦労かけたね、相手に対して配慮することで感謝に変えるわけです」
・ちなみにアップル・コンピュータの創業者のひとりであるスティーブ・ジョブズもフルータリアン(卵も乳製品もとらず、さらに葉物野菜も食べないベジタリアン)で「アップル」という名前はそれに由来している。
・「食べ物がよくないと、おしっこの味が違ってきますからね」(中略)「よい時は、どんな味なんでしょうか?」(中略)「高級料亭のすまし汁の味ですね」
・今から1300年以上前、文武(もんむ)天皇が(中略)宮廷の内も外も「臭い」と怒ったのである。
・「実は汗自体は無臭なんです。(中略)ただそれが体の表面に棲んでいる常在菌によって分解されると、匂い物質に変化するんです」
・加齢臭は腋や臍まわり、陰部などに分布する「アポクリン腺」から出る汗が原因で、(中略)耳の裏、襟足などからも出る。
・(昔の日本の)戦場ではまず敵に対して自己紹介、名乗りを上げ、自分の出自を説明し、相手も同じことをすると、そこから「詞たたかひ(言葉戦い)」を始める。何をするかというと「この乞食」「みなし子のくせに」などとお互いに悪口を交わすのである。
・未婚者(18~49歳)に対して意識調査(中略)が行われているのだが、その結果以前にアンケート用紙を読んで私は首を傾げた。例えば「自分の一生を通じて考えた場合、あなたの結婚に対するお考えは、次のうちどちらですか」という問い。回答の選択肢がたったふたつしかないのだ。1. ある程度の年齢までには結婚するつもり 2. 理想的な相手が見つかるまでは結婚しなくてもかまわない
・「(婚活は)とにかく女性からアクションを起こさないとダメなんです。距離を縮めるのは女性」
・シンガポール在住の元大使夫人に具体的な「エスコート」法についてたずねると、彼女は簡潔に教えてくれた。1. 妻が座ってから座る。 2. 妻が立った時は自分も立つ
・大切なのは吉凶自体より吉凶にどう対処するか。対処の仕方こそマナーなのだ。

 今回の本も面白くて、アッと言う間に読んでしまいました。次回作に期待です。