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奥田英朗『どちらとも言えません』

2014-12-25 18:54:00 | ノンジャンル
 奥田英朗さんの’11年作品『どちらとも言えません』を再読しました。スポーツ月刊誌『Number』723号~775号のうち奇数号、サッカー2010年W杯臨時増刊1~4号に収められた文章を集めて作られた本です。
 主な内容は以下の通りです。
・悪名は無名に勝るーー。大相撲初場所の朝青龍を見ていてつくづく思った。相撲人気はいつになく活気づいた。わたしが個人的に興味を抱くのは、角界一の仏頂面、北の湖理事である。理事長時代は朝青龍を叱る立場だったお方がこの盛り上がりにどのような反応を見せたのでありましょうか。北の湖も現役時代は大の悪役で、「強すぎて憎らしい」などという、やくざでもつけない言いがかりを世間から浴びせられた口なのである。また江川卓氏も昭和史に残る悪役だった。江川の登場でいちばん得をしたのはスポーツ紙だった。例年プロ野球のシーズンオフは部数も下がり、記者はネタ探しに四苦八苦していたが、江川を追いかければ売れたのである。冷静に考えると、スポーツの悪役というのは、大衆を不快にしても損はさせないのである。むしろ関心を呼ぶことによる経済効果のほうが大きい。だからスポーツ界でも陰で悪役を工作するプロジェクトがあってもいい。例えば、中日の落合監督に金を払って横浜の悪口を言わせ、遺恨試合を演出するとかどうだろうか。
・3月6日、金曜の夜、新橋で酒の入ったサラリーマン百人に、「明日のスポーツイヴェントは?」と聞いたら、きっと九十人ぐらいが「WBC日韓戦!」と答え、Jリーグの開幕戦と答えるおとうさんは、ほとんどいないだろう。そこでJリーグ開幕戦に行ってきた。川崎フロンターレVS柏レイソル。行ってみて驚いた。二万五千人収容のスタジアムがほぼ満員。年齢男女満遍なく揃っている。93年のスタート時、Jリーグはバブルとも言えるブームに沸いていた。ちなみにわたしは、サッカーは大好きである。W杯はNHKが最初に放映に踏み切ったアルゼンチン大会から欠かさずに観ていた。それだけにJリーグ開幕時のはしゃぎ過ぎの風潮には、反感を覚えた。Jリーグは地方自治体も色めき立たせた。地元チームを有することは実に効果的な「町おこし」だったのである。しかしブームというのは当然過ぎ去る。W杯初出場の頃には、すっかりJリーグは忘れ去られていた。わたしの考えでは、おとうさんたちの間でJリーグがプロ野球の地位に及ばなかったのは、サッカー文化が会社組織になぞらえにくかったことが要因として挙げられると思う。また地域密着を謳うため巨人・阪神のような全国区人気のチームが生まれず、キー局の放映権料が望めなくなっていることもあるだろう。でも、等々力競技場でわたしはしみじみ思った。Jリーグ、いい感じなのである。サポーターの応援は熱く、それに応えるべく選手たちもピッチで躍動している。実態に合わなかった人気が冷め、一度底を打ったところからじわじわ成長し、今に至っているのである。
・WBC二連覇だって。はっきり言って敵は韓国だけでしたな。それにしても、野球の母国の二大会続けての精彩のなさ。おそらくアメリカの大雑把さはアメリカの豊かさに起因している。天然資源も人的資源も、涸れるということを知らないから、節約の美学がないのである。ちなみに、やりくりの「や」の字もなかったのはドミニカやベネズエラであった。中南米諸国はショートがスター・ポジションだから、招集をかけると遊撃手だらけ。何を考えているのかわからない……。 

 ここまでで30章のうちの3章です。前回読んだ時、この文章をなぜ楽しめなかったのか、さっぱり分かりません。なお、このあとの主な内容に関しては、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「奥田英朗」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/