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松浦寿輝『川の光 外伝』その1

2012-10-10 04:49:00 | ノンジャンル
 松浦寿輝さんの'12年作品『川の光 外伝』を読みました。同じ著者による『川の光』のキャラクターが登場する5つの短編とそれ以外の2つの短編を収めた本です。
 『月の光』 満月の不思議な光に包まれて、トリアンブルーの雌猫ブルーが冬の最初の気配を感じさせる静かな路上を散歩していると、傷ついた小魚に出会います。死にかけている小魚はブルーの後をついてきて、やがて川で死にたいと言い出し、ブルーは小魚を川に連れていってやることにします。すると、小魚はやがてやはり川を目指す仔ウサギに姿を変え、その後も死にかけている犬、一族の最後として疲れきって死のうとしている首長竜、人間の赤ちゃんへと姿を変えていき、ブルーは自分にずっとついて来ている月がそれらの真の姿なのではないか、と考えます。やっと川に辿り着くと、また魚が現れ、それが川に飛び込むのをビリーは感じます。すると満月の光は普段のありふれた光に変わり、ブルーは家に帰ろうと考えます。すると目の前を2匹の野ネズミをイタチが追いかけているのを見かけ、ブルーは好奇心から、自分の存在に気づいていないイタチの後を追いかけ始めるのでした。
 『犬の木の下で』 庭で居眠りをしていたゴールデン・レトリーバーのタミーは、夢うつつの中、小さな動物たちの話を聞きます。タミーと一緒に暮らしている哲学の先生は、リコン後の寂しさから飲みに出かけ、タミーは秘密の穴を通って夕方1人で散歩に出かけます。久しぶりに向かった川辺で、タミーは天の川に白鳥座が重なっているのを見て、それが先程小動物たちが話していた「川の光に白鳥が浮かぶ」ことだと分かります。そして川の中洲がイヌ島と呼ばれ、そこにしめ縄が巻かれた木があるのを思い出し、小動物らが話していた「犬の木の下」がその木の元だということも分かります。木の元には小動物らが既に集まっていて、彼らがゲストを待っていると話しているのを聞くと、自分がそのゲストだと思い込んだタミーは川に飛び込みます。木の元へ行くと、驚いた小動物らは逃げ出しますが、残った年寄りのアナグマのフェードルは、ゲストはタミーではないと語り、再び集まって来た小動物らの前で、これから〈詩を愛する動物クラブ〉の年次総会を開こうとしていることをタミーに教えます。クラブに入れてほしいと言うタミーに、フクロウのルチアはまず皆の詩を聞くことを提案し、タミーは実際に皆の語る詩を聞きます。ルチアが見事な詩を最後に語った後、タミーも自分の好きなものを羅列する詩を語りますが、その時、真のゲストであるドブネズミのグレンが向こう岸に現れます。水位が上がってしまい、もう中洲には渡れないとグレンとフェードルが言うと、タミーが背中にグレンを乗せて中洲に運びます。タミーとグレンは野ネズミの3匹の親子を共通の友人としていた知り合い同士だったのでした。グレンは流星雨を見上げる皆の前で、見事な詩を語ります。フェードルはグレンを中洲に運んでくれたタミーを〈詩を愛する動物クラブ〉の新会員として推薦し、ルチアもそれに同調して、晴れてタミーは新会員となります。明け方が近づいたことで、タミーは1人家を目指して出発するのでした。
 『グレンはなぜ遅れたか』 明晩、川の下流で開かれる詩の朗読の集いに名誉ゲストとして参加するため、早朝にネズミのグレンは出発しました。グレンはいつもの好奇心から人間の町に寄り道することにすると、小学校で死んだウサギを埋葬する先生と拓也君と美佐子ちゃんの姿を見かけ、その小学校には飼う動物がいなくなったことを知ります。川へ戻る近道を行く途中、グレンは、NASAによって宇宙にまで行ってきたモルモットのゴンベエ、波瀾万丈の旅をして世界中を見てきたハクビシンのユンディー、美を追求する芸術家に愛されていたダッチウサギのエリザベス、そしてとにかく長い長い歳月の記憶をその厚い甲羅の中に封じ込めている陸ガメのテオと出会いますが、もうすぐ建つマンションのため、彼らが今住む打ち捨てられた物置き小屋から彼らが追い出されることを知り、グレンは彼らを小学校に連れていくことを決心します。夜のうちに移動したテオ以外のメンバーは拓也君と美佐子ちゃんに早々と見つけられ、遅れてきたテオもグレンの必死のアピールで子どもたちに発見してもらうことができ、小室先生が動物好きの校長先生の許しを得て、彼らは晴れて学校で飼われることとなります。安心したグレンは、川を目指して出発するのでした。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/