gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

松浦寿輝『川の光 外伝』その2

2012-10-11 05:26:00 | ノンジャンル
 たまにおじゃまさせていただく「おフランスかぶれマダムの異常な日常」のブログを久しぶりに覗かせていただいたところ、ブログを書いてらっしゃる“マダムのん”さんが、先週末、東京のブルーノートでミッシェル・ルグラン・トリオのライブにいらっしゃっていました。「今回はほぼ真っ正面から顔の表情を眺めながら」で、「ドラムのフランソワ・レゾー、ベースのピエール・バウサエとのコンビネーションが素晴らしく、終止鳥肌ものでしたが、感動のあまり、3曲目でもう既に涙が溢れて胸がいっぱいああ大変。」と書いてらっしゃいましたが、私も、彼の姿を健在な姿を見ただけで、泣いてしまっていたかもしれません。今年でちょうど80歳になられたとのこと。早世したドゥミの分も長生きしてほしいと、切に願った次第です。

 さて、昨日の続きです。
 『孤独な炎』 公園の奥まった一角にそびえる大木の虚(うろ)で生まれ、そこにずっと棲み続けてきたフクロウのルチアは、昼の間はそのねぐらに閉じこもってうつらうつらと過ごし、黄昏になると飛び立って自分のテリトリーを見て回り、小動物を獲って食べ、朝にねぐらに戻って眠るという静かで波乱のない生活を送っていました。ある日、ルチアは「帰りたいよ‥‥」という子どものか細い声が頭の中に聞こえてきます。自分が誰だか分からないが、両親から遠い星の砂粒を取りに行くように言われたという「彼」を、ルチアは励まします。星で砂粒を取ることに成功したと言う「彼」は、数週間後に帰り道が分かったと伝えてきて、「彼」が宇宙空間を地球目指して飛んでいることをルチアは知り、自分が知らなかった世界があることを教えられます。それからも思わぬときに「彼」の声がルチアに届き、だんだん速度が遅くなり、意識も薄れてきたという「彼」をルチアは励まします。やがて、地球が見えてきたと喜ぶ「彼」は、ルチアと他愛のない話題を話すようになり、それまでほとんど笑ったことのなかった「彼」も「ルチア」も笑うようにもなります。数カ月後、「彼」は自分は地球の周りの空気を通る時、燃え尽きてしまうらしいと言い出し、砂粒のために「彼」を犠牲にしようとしている「彼」の両親に憤慨したルチアは、少しでも彼との距離をつめるために上空へと飛び立ちます。そして60億キロの旅をし、放射線を浴びてものが考えられなくなった「彼」が、燃え尽きる直前に見た素晴らしい地球の姿がルチアにも見え、「ぼくの任務は終わったよ‥‥」と言って「彼」が燃え尽きると、ルチアを始めとする孤独な魂の持ち主である地球上の様々な国の数多くの動物たち、人間たちが「彼」の最期の心を感じ取り、叫びを上げました。ルチアは「彼」から勇気を教えてもらい、自分に残された歳月を勇気をもって生きよう、孤独から救われる必要などない、どこまでも孤独な魂として、あたしはあたしなりの生を全うしよう、と思うのでした。
 『キセキ』 真夜中にアナグマのアントン坊やは悪夢から目覚めると、お母さんがいないことに気づき、相手にしてくれない祖父のフェードルを置いて、お母さんを探しに出かけます。物を見るのに熱中して忘我の状態になる質のアントンは、フェードルから、それはキセキを見ているからだと教わっていました。川に近づくと、水面から水の球体が持ち上がり、アントンはすぐにこれはキセキだと思います。球体はやがてアントンの姿となり、二人は追いかけっこをして遊びます。〈水の子〉はアントンがぶつかって飛び散ってもすぐに元の姿に戻り、自分は生まれることも死ぬことも、増えることも寝ることもない世界そのものだとアントンに言います。やがて〈水の子〉の中に入り込んだアントンは、空を飛び、〈水の子〉とともに川の中に沈み、やがて眠ってしまいます。目が覚めると、お母さんが優しく体をなめてくれていて、1人で出かけたアントンをお母さんとお祖父さんが探し出してくれたのだと教えてくれました。アントンは「この世界それ自体がキセキで、その中にぼくもお母さんもお祖父ちゃんも、何もかもあるんだよ」とお母さんに言うのでした。(またまた明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/