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石井輝男監督『暴走の季節』

2012-10-06 09:35:00 | ノンジャンル
 石井輝男監督・脚本の'76年作品『暴走の季節』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 ウィリーをしながら猛スピードで走るバイクを追う白バイ。バイクは白バイと接触してもひるまず、石油缶を転がし、車を飛び越し、トラックの荷台に渡した板を登ってUターンして飛び降り、左から飛び出してきたトラックをすんでのところでかわし、神社の階段を登り下りし、町中に入るとビルの廊下を走り、電車が交叉して走る線路の間を走り、未舗装の山道から崖を下り、海の堤防の上を走ると、やっと白バイは海に落ちてくれます。メットを脱ぐ水上(岩城滉一)。
 海上のヨットで横たわっていた白いビキニの女(中島ゆたか)に舌舐めずりしたヒロシは、女にヨットから落とされ、溺れかけます。ヨット操作の従業員仲間の水上らに助けられるヒロシ。笑いながらヨットともに去る女。ヒロシはセクシーだった女の様子を再現し、水上を含むヨットハーバーの従業員仲間は面白がらせます。そこにマネージャーの南(志垣太郎)が現れ、さきほどの女である島津家のお嬢さんの夢子が、舵捌きがいい水上を呼んでいると言います。水上を雇うことにした夢子は「変態女って言ったのを取り消して」「あんたもやりすぎじゃねえの?」「気に喰わないことをされると、徹底的にやる質なの。よく覚えておいて」と、水上と話して去ります。「偉そうに!」とひとりごちる水上。
 赤いビキニ姿で横たわる夢子を、足元の方から見ながらヨットを操る水上に、せつない音楽がかぶさります。水上の周りを進む無数のヨット。サーフィンする男たち。浜辺を全裸で走る女たち。岩城滉一の歌が流れ、夜の浜辺でセックスなどするカップルたちの姿に画面が変わると、水上はギターを弾いています。マユミの誘いに乗り、前戯をしていた水上にライトが当てられ、南や夢子と仲間の金持ち連中がマユミとともに、水上をはやしたてます。乱闘をしかけ、逆にボコボコにされる南。
 夢子のボートハウスの女中のアキに手当てを受けた水上は、南が現れると、夢子の仕事を辞める気はないと言い、それを南から聞いた夢子は「面白いじゃない。飼っとくことにするわ」と言います。アキが南のことをかっこいいと言うと、水上はアキをバイクでのドライブに誘い、浜辺で嫌がる彼女を犯す様子が岩場に打ちつける波、浜辺の波との平行モンタージュで描かれます。真っ赤な夕陽の中、「お前がかっこいいと言ってた奴がやってることと同じことをやっただけだよ」と言い捨ててバイクで去る水上と、泣き崩れるアキ‥‥。
 この後、水上の従業員仲間と南、夢子をトップにした金持ち連中の若者たちとの間の抗争となり、水上らはマユミを拉致して輪姦し、それに対して水上の仲間たちは南らに局部をヤケドさせられ、水上はその仕返しとして、2人で海に出た時に夢子を犯して、一旦は夢子と両思いとなりますが、マユミの輪姦に水上も関わっていたことを知った夢子は水上と袂を分かち、南と水上は勝負することになります。その後、水上を「あの野郎、つっぱってるじゃん」という理由だけで追ってきた暴走族は、渋滞の車の中を走り、踏み切りで電車をすんでのところでかわしますが、川を渡った水上を追おうとして、川で溺れます。決闘の前夜、踊る夢子の仲間たちを下から撮り、パンチラを見せる画面。思い直して止めようとする夢子やアキを振りきり、水上との決闘に向かった水上は、南の制止を聞かず、クロスボウを撃つ南の仲間たちのために、バイクをスリップさせてしまいますが、アキに呼ばれた水上の仲間が到着し、乱闘となり、マユミとシン(清水健太郎)を乗せた南の車も、水上のバイクも、崖から転落して皆死にます。それをアキとともに沈痛な面持ちで見下ろしていた夢子は、雑草の花に水上から返されたペンダントを結んで海に放ると、その赤い花は海に沈んでいくのでした。

 追跡の場面では『爆発!暴走遊戯』と同じく、スクリーンプロセスが多用されていてガッカリしましたが、合成画面による列車や横から飛び出す車とのすれ違いは、それなりに楽しめました。アキや夢子とのラブシーンになると、やはりここでも夕陽とせつない音楽が使われ、紋切り型でありながらも、見事な夕陽がいくつか見ることができましたが、バイクを含めた乱闘シーンの凡庸さは、ここでもいかんともしがたいようでした。清水健太郎の不健康さ(ヤクをやってそうな顔色)はこの頃から「健在」だったことを付け加えておきます。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/