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エドモン・ジャベス『問いの書』

2010-05-26 16:28:00 | ノンジャンル
 ポール・オースターの本『空腹の技法』の中で言及されていた、エドモン・ジャベスの'63年作品『問いの書』を読みました。
 独特の形式で書かれた数々の散文詩からなっていますが、それはロラン・バルトの言葉を借りれば、「言葉がまさに生成する現場に立ち合う試み」、「エクリチュールとの戯れの中から、異化された『生身の』言葉を原生させる試み」と言えるものでした。それは謎めいた言葉の連なりであり、私は2番目の詩を読んだところで、その面白さに満足してしまい、もうお腹いっぱいになってしまいました。
 その詩を少し引用してみます。
「『この扉のうしろでは、いったい何が起っているのだろう?』
 『一冊の書物がむしり取られているのだ。』
 『この書物の物語は何なのか?』
 『ひとつの叫びを自覚することだ。』
 (中略)
 『書物はどこに位置しているのだろう?』
 『書物のなかだ。』
 『おまえは誰だ?』
 『この家の番人だ。』
 『おまえはどこから来たのか?』
 『私は彷徨った。』
 (中略)
 『われわれはひとつの物語に直面しているのだろうか?』
 『私の身の上は何度も何度も物語られた。』
 『おまえの身の上はいかなるものだ?』
 『それが不在である限りにおいてわれわれの来歴だ。』
 『私にはおまえがよくわからない。』
 『言葉が私を引き裂くのだ。』
 『おまえはどこにいる?』
 『言葉のなかだ。』
 『おまえの真理とはいかなるものだ?』
 『私の胸を引き裂く真理だ。』
 (後略)」
 問答の形式を取っていますが、問いに対し微妙に答えになっていない答えがあったりして、謎めいた味わい深い詩となっていて、いかにもオースター好みの詩だとも思いました。オースターファンの方にはオススメです。