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ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄(下)』

2010-05-09 13:59:00 | ノンジャンル
 ジャレド・ダイアモンドさんの'97年作品『銃・病原菌・鉄』の下巻を読みました。
 先ず文字を早くから持った人々と、文字を遅くなってから持った人々の差がどこから生じたのかが説明されます。文字を早くから持った社会は、複雑で集権化された社会であり、階層的な分化の進んだ社会でした。納税の記録を示したり、国王の布告を表した初期の文字は、そうした社会体系のもとで必要とされ、これらの文字を読み書きしていたのは、余剰食料によって支えられた官吏でした。つまり、文字が誕生するには、数千年にわたる食料生産の歴史が必要だったのです。それが最初の文字が、肥沃三日月地帯、メキシコ、中国で登場した理由です。
 次に技術の発展に寄与した数々の発明に関して語られます。技術は非凡な天才がいたおかげで突如出現するものではなく、累積的に進歩し完成するものであり、発明者の好奇心から作られた技術や自然発生的に誕生した技術が、発明された後に用途が見い出されるものが多く、そうした新しい技術はオリジナルに発見されるには多大な時間がかかるため、伝播によって広がることの方がずっと多いということが指摘されます。そしてまた、定住生活のはじまりは、持ち運べない所有物を溜め込むことを可能にしたので、新しい技術によって作られた道具を失わずに身近に置いておくことも可能にし、余剰生産物によって専門の技術者を養えることにもなりました。そして新しい技術は気候の似ている東西方向に早いスピードで伝播していきました。
 次に平等な社会から集権的な社会への移行について。狩猟採集民では階級が未分化ですが、食料生産を開始して余剰生産物を抱えるようになった定住者社会では、やがて人口密度が増え、次第に大きい集団で生活するようになり、「顔見知り」でない人々が増えて当事者同士では解決できない紛争が増え、それを抑えるために権力を首長や王に集中し、警察や官僚を使って治安を維持するに至りました。そして労働内容が分化し、首長や王が労働生産物を収奪して自らの元に蓄積、あるいは再分配するシステムができあがっていきます。そして収奪によって平民より上等な生活をしたエリート階級は4つの方法を使って平民の不人気を買わないように工夫していると述べます。そして権威の象徴として宗教を導入することにより、血縁に基づかない共通の絆を平民の間に持たせることをも可能にし、国家の場合、それを対外戦争に利用することも可能になりました。また特権階級が生まれたことにより文字の使用も広まり、それにより情報伝達という点で対外戦争もより有利となっていったのです。そして集約的な食料生産と複雑な社会の出現は、灌漑施設の建設などを通して、相互に影響しあってより高度化していきました。そして人口増によってなぜ社会構造が複雑化していったのか、4つの理由が語られます。そして人口密度が高い集団が低い集団に併合されやすい理由も語られます。
 そしてこの後の章では、オーストラリアとニューギニア、そして中国の社会・言語などの特異性の原因、南北アメリカ大陸が旧世界に征服された理由とその理由を生じさせた原因、アフリカが現状に至った原因の数々、などが語られていきます。

 本書ではもっと具体的で詳しく例が挙げられて説得力のある文章になっているのですが、それらをすべてこの限られたスペースで述べることは不可能ですので、上記の文章で物足りなさを感じた方は実際に本を手に取ってみられることをお勧めします。とにかくその博学ぶりに圧倒され、様々な学問的に認められた事実を列挙することによって説得力もって読者をねじ伏せるような「論理」の力に打ちのめされました。確かに「真実」が多く語られている本だと思います。人間社会の成り立ちに興味のある方には無条件にオススメです。