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ジェフリー・ディーヴァー『ソウル・コレクター』

2010-05-16 13:31:00 | ノンジャンル
 昨日、川崎アートセンターで『海の沈黙』と『抵抗』を見て来ました。『海の沈黙』は初めての日本語字幕入りで見たと思いますが、ほとんどの画面がナレーション入りのこの映画では感動の仕方が以前見た時とは全く違い、泣いてしまいました。それにしても先日見た『影の軍隊』もそうでしたが、私の中でブレッソンをメルヴィルが最近凌駕してきている気がします。

 さて、ジェフリー・ディーヴァーの'08年作品『ソウル・コレクター』を読みました。
 マンハッタンで絵画の強盗殺人事件が起き、容疑者としてアーサー・ライムが逮捕されます。ニューヨーク市警の科学捜査課顧問のリンカーン・ライムは従兄が逮捕されたというその知らせを聞かされますが、そのあまりの証拠品の多さに違和感を感じ、アーサー本人もまったく身の覚えのない話だと主張していることから、念のため類似の事件を探してみると、最近起きたコイン強盗殺人事件と強姦殺人事件にも、不自然な証拠品の多さと無実を訴える容疑者、そして匿名の通報という共通点が見つかります。数年前の事故により首から下が麻痺しているリンカーンは優秀な鑑識官ながら刑事ばりの活躍も見せ、またライムの相棒兼恋人でもある赤毛の美女アメリア・サックス、そしていつもの市警の仲間たちと組んで捜査に乗り出します。そこへまた第4の事件、若い女性マイラの強姦殺人事件が起こり、ライムらは証拠品を辿り、やがて個人データを扱う巨大企業SSDに辿り着きます。そしてそこで彼らは、ICタグやクレジットカードなど様々なツールを使って集めた無尽蔵とも言える個人データを扱い、それを使ってビジネスの上で強大な力を得ようとしているSSDのCEOスターリング、そしてその無気味な部下たちに出会い、SSDの持つ人を酔わせるような独特の雰囲気に怯えますが、ライムらはたじろぐことなく捜査を進め、やがて追いつめられた真犯人はサックス、ライム、そして他の捜査メンバーたちに、個人データを悪用することによって容赦ない攻撃を開始し、ついに双方の命をかける戦いの火ぶたが切って落とされるのでした‥‥。
 ライムとサックスを中心とした捜査の進展というメインストーリー以外にも、真犯人である522号の独白や、アーサー・ライムの拘置所でのエピソード、サックスとその娘的存在パムとのエピソード、ライムとアーサーの間でのエピソードなどが語られていきます。2段組で500ページを超える大著ですが、無駄な文は一つとしてなく、エピソードはどれもリアルで迫真性に富み、また会話も明るく生き生きとしていて、読書の喜びを心から堪能させてもらいました。日本で最近人気のある若手ミステリー作家の方々はディーヴァーを前にすれば足元にも及ばない、そもそも比較の対象と成り得ない、もっと言うとディーヴァーの爪の垢を煎じて飲んだ上で出直して来た方がいいとまで思う私はおかしいでしょうか?(いや、この点に関しては絶対に正しいという確信があります!) とにかく素晴らしいの一言です。本の厚さに怯えることなく、一読されることをオススメします。なお、詳しいあらすじをお知りになりたい方は、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Novels」の「ジェフリー・ディーヴァー」の場所にアップしておきましたので、是非ご覧ください。