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カレル・ゼマン監督『狂気のクロニクル』

2010-05-23 13:24:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが本『教養主義!』の中で映画史ベスト50の中に入れていた、チェコのカレル・ゼマン監督の'64年作品『狂気のクロニクル』をDVDで見ました。
 道化が30年戦争のクロニクル(年代記)を語ります。若い農夫のペテルは皇帝軍の徴兵係の騎兵たちに襲われ、志願兵にされてしまいます。騎兵は軍隊に入れば金も美女も牛も栄光への道も手に入ると甘言を弄しますが、ペテルは隙を見て馬を奪い逃げ出そうとて失敗します。川で洗濯をする女たちを挟んで対岸の国王軍と向き合った皇帝軍は立ったままで銃の撃ち合いを始めますが、屈んで銃を撃っていたペテルと老人のマティを残して皇帝軍は全滅してしまいます。天使が終戦を告げ、マティは部隊が残した財宝を掻き集めて馬車に乗せペテルにも手伝わせて出発しますが、途中でロバを持つ美しい娘のレンカと出会い、ペテルはすぐに彼女と仲良くなり、道端で摘んでいた花を彼女に差し出します。喜んで彼女がそれを受け取ろうとしたところへ4人の兵士が現れペテルは彼らと剣で戦い撃退しますが、やがて騎兵隊に取り囲まれます。マティの機転でペテルは指揮官姿の侯爵、レンカは道化、マティは皇帝軍の兵士の姿となりますが、あいにく騎兵隊は国王軍のもので、彼らは捕虜として捕えられ、王の城に連れて来られ、広い地下牢に入れられます。彼らを捕えた大佐は財宝の中に姫の肖像画があったことを報告し、姫の美しさを讃え、戦果を自慢し、女王から姫の婚約者に抜擢されます。そこへ空にいる戦いの神が息を吹き掛けると、風向きが変わり、戦場からの使者は国王軍の大敗を告げ、王と女王は万が一自分たちが負けた時のために、地下牢に自ら出向き、そこで3人を豪華な晩餐でもてなし始めます。自由になったペテルは姫の美しさに一目で心奪われますが、天使が彼の肖像画に矢を放つと、肖像画の彼は木の鎧戸を閉めて自分に向かってくる矢を防ぎます。王おかかえの肖像画家から自分が姫の3人目の婚約者であることを知ったペテルは、身分にしか興味のない姫に愛想を尽かし、女王に自分は農夫であることを明かしますが、マティはあれは侯爵の趣味なのだとごまかします。大佐に頭巾を剥ぎ取られて女性であることを知られたレンカはペテルに助けを求めて城内をさまよいますが、むごい絵や彫刻を次々に見て怯えます。ペテルは、婚約者の地位を奪われ怒り狂って襲って来た大佐を撃退して、見つけたレンカを抱き上げ、今夜逃げようと言い、窓から外を眺めると、そこにはゆっくりと羽をはばたかせて飛ぶ鳥たちが見え、二人はキスしますが、やがて鳥は大群となり無気味な闇が空に迫ってきます。その夜、縄梯子で降りているところを城外の皇帝軍と城内の大佐両方に見つかってしまい、ペテルらは姫の寝室の窓からまた城の中に戻ります。朝になると戦いの神の息が吹き掛けられ、国王軍の敗退は決定的となり、大佐はペテルを殺してしまおうと部下を焚き付けますが、次々とペテルに彼らがやっつけられるのを見て自分は物見やぐらに退避し、そこから部下を鼓舞します。さすがに多勢に無勢でピンチに陥ったペテルを見たレンカは食事の合図をすると、部下たちは戦いを止め、大佐の激を無視して食事を始めてしまいます。戦いの神の息で風向きが次々と変わり戦いが混乱し始めたのに乗じてペテルらは馬で城を逃げ出し、逃亡は成功したかに見えましたが、崖を落ちそうになっている押し車の老人を助けると、それは皇帝軍の罠で、捕えられたペテルらは絞首刑に付されますが、執行人に逃がしてもらいます。財宝を積んだ馬車とともに城を出たマディはペテルらが捕まったことを知り、後を追います。戦いの神がまた息を吹き、稲妻が光る中ペテルらは逃げ、皇帝軍が二人を追いかけますが、マティは追い付くと自分の財宝をばらまいて皇帝軍を足留めさせ、その間にペテルらは崖の上に渡された丸太橋を渡ります。マティは崖の手前で皇帝軍を待ち受け、丸太橋を落とすと、皇帝軍は彼を射殺しようとしますが、マティは持っていたワインを飲み終わるまで待てとジェスチャーし、皇帝軍は射殺を思い留まろうとします。しかし戦いの神がまた息を吹きかけると皇帝軍は再び銃をマティに向けますが、マティは神に向かってワインの瓶を投げ付けると、ガシャンという音がして、空は晴れ渡り、ペテルとレンカが地平線の果てに仲良く消えていくのが見えるのでした。
 背景を絵や写真やアニメで処理するという、ちょっとモンティパイソンを想起させるような、しかしもっと極めて斬新な方法で、独特の世界を構築している面白い映画でした。60年代のチェコ映画というのも感慨深いものがあったと思います。映画好きの方には文句無しにオススメです。