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秋山則照『私の心残りシュークリーム』

2010-05-18 18:12:00 | ノンジャンル
 私の自宅から目と鼻の先に住まわれている秋山則照さんが'05年に自費出版された『私の心残りシュークリーム』を読みました。秋山さんの自分史、そして今まで書いて来られた文章を集めて作られた本です。この本に出会えたきっかけは、以下の通りです。すなわち、秋山さんはご自分が長期滞在されたことのあるロスとニューヨークで得た知識を紹介する市民講座を定期的に開かれていて、それに今年初めて参加させていただこうと私が申し込んだところ、早々と秋山さんから講座紹介の手紙をいただき、そこに書かれていた秋山さんの著作を図書館で借り、ロスとニューヨークについて書かれた部分だけ拾い読みしようと思っていたところ、冒頭に書かれている鎌倉の和歌江島を最近鎌倉ガイド協会主催のイベントで訪ねたこと、そしてその次に現在私の住む厚木市緑が丘近辺の50年前の様子が書かれていたことから俄然興味が湧き、通読させていただくこととなったのでした。
 私にとってこの本は驚きの連続でした。というのも、秋山さんの体験されたことと、私のこれまでの体験がまったく偶然に、多くの部分で重なりあっていることが分かったからです。例えば、 秋山さんが私の母と同学年であること、結婚されて引越して来られたのが私の両親と同じく庭付きのテラスのある長屋式団地だったこと(正確には私の両親は4階立ての団地だったのですが、庭付きテラスの団地も併設されていました)、病気で亡くなられたお母さまが最後に食べたいと言われていたシュークリームを医者の指示に従わずに食べさせてあげていれば良かったと悔やまれていること(私の母も、やはり食事療法を受けていて2年前に亡くなった夫に最期、思いっきり食べたいものを食べさせてあげたかったと今でも悔やんでいます)、秋山さんが住まわれていた鎌倉材木座の風景の美しさを私も最近味わっていること、秋山さんは湘南高校を出られていて私の先輩であること、50年前(今も?)のアメリカ社会においてはフェアであることが美徳であり、意思表示をはっきりすることが良好な人間関係を築くと考えられていて、秋山さんもそれに深く共感していること(私も常日頃同じことを考えています)、秋山さんが小学生時代、よく袋小路でボールの蹴りっこをして遊んでいたこと(私も4階建て団地の前の狭い芝生や狭い道路でよくドッジボールなどして遊んでいました)、秋山さんが大好きだった叔父さんが西伊豆の松崎に住んでいたこと(私も松崎に泊まったことがあります)、最近体操を意義深く感じてらっしゃること(私もできるだけ毎日ストレッチをするように最近心がけています)、真向法体操に参加されていること(私の母も以前通っていました)、山形の紀行文を書いていらっしゃること(私が以前日参していた小料理屋の女将さんは山形出身、今年の年末まで働いていた職場で一番よくしてくれた同僚の人も山形出身でした)、イタリア(特に映画『旅愁』や『イタリアへの旅』の舞台となったナポリやポンペイ)への思い入れ、キャパへの評価、シカゴ(私にとってはドキュメンタリー映画監督フレデリック・ワイズマン、ピューリッツア賞受賞作家スタッズ・ターケルの地元)への言及、旅の楽しさは風景を愛でることに加えて、そこに住む人の心を知るというのも大きな部分を占めると考えてらっしゃること、ケネディとニクソンの選挙戦を現場で見ていらっしゃること(ケネディ兄弟に関しては私的に資料を集めています)、などです。かなりこじつけた感じのものも含まれていますが、ファン心理の一面と捉えていただければ有り難いと思います。
 また、学ばせていただいたことも多く、例えば、小津安二郎の墓があることで有名な、北鎌倉にある円覚寺は、元冦の来襲時の死者を弔うために時の執権・北条時宗が建立したこと、50年前の本厚木駅周辺の小田急線は手を上げれば止まり、したがって朝の通勤時などはダイヤが乱れるのが当たり前で、毎日駅で遅延証明書を貰って会社に提出していたこと、60年前の鎌倉の源氏山では冬雪合戦ができるほどの雪が降っていたこと、秋山さんの世代の方たちの同窓会は式次第がきちんとあり(皆で歌を歌ったりもされています)、私たちの世代の同窓会よりも「きちん」とされていること、50年前のロスでは若い未婚女性はいい男性と一緒になろうと一方的に攻勢をかけ、男性側はそれにたじたじという状態が普通であったということ、また当時(今も?)のアメリカでは週末を思いきり楽しく過ごすために働く時は真剣に働いていたということ(この点に関しては、私はまったく誤解していました)、大平洋戦争直後はニューヨークのハドソン川に戦役を終えた、おびただしい数のフリゲート艦がつながれていたこと、ウィスキーの語源は「生命の水」であり、体に入れてピリッとさせるというほどの意味で、そう考えればスピリッツという呼び名も理解できるということ、希望という気持ちの張りがあれば、年を取っても若さを維持できるという話、フランスが第二次世界大戦後に植民地だったマダガスカルで婦女子を含めた8万人もの原住民を虐殺していたということ、パリでは夏至の日は音楽の日で、街のあちこちで音楽が演奏されているということ、アメリカのビジネス態度の特性には、1、すべて物事に誠意があり、また真剣であること、2、人のことを気にせず独創性を重んじること、3、勉強をよくすること、の三つを挙げられていることなど、勉強になることが多々ありました。
 地域性ということをこれほど生々しく感じさせていただいた本には今まで出会ったことがなかったような気がします。できれば手許に置いておきたい本です。