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アンソニー・マン監督『遠い国』

2010-05-01 15:45:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが本「教養主義」の中で、映画史のベスト50の中に入れたいと書いているアンソニー・マン監督の'54年作品『遠い国』をDVDで見ました。
 テクニカラーによる鮮やかの赤のタイトル。「シアトル 1896年」の字幕。ジェフ(ジェームズ・スチュワート)は、ワイオミングから運んできた牛とともに、シアトルで待っていた相棒のベン(ウォルター・ブレナン)と船でカナダとの国境の町スキャグウェイに向かいますが、その町はギャノン(ジョン・マッキンタイヤ)の牛耳る町で、ジェフは難癖をつけられ、罰金の名目で牛を取り上げられます。銃の腕を見込んで雇ってやるというギャノンの申し出を断ったジェフは、ベンとカナダの山奥の町ドーソンで採れるという金探しに出かけることにしますが、ギャノンは町を出るのに100ポンド以上の食糧を持っていることを条件と課していて、町を出られません。そこに船で既にジェフの窮地を救っていた、町の酒場の女主人リンダが助け舟を出し、やはりスキャングウェイを去りドーソンに新たに店を出す自分と一緒に行くことを条件に、ジェフらに不足分の食糧を買い与えます。最初の野営地で深夜抜け出したジェフとベン、それに船で彼らと相部屋だったループは、秘かにスキャングウェイに戻り、牛を盗み出します。ギャノンはすぐに気付いて彼らを追いかけますが、ジェフらが国境を超えたところで、どうせ冬になればスキャングウェイに戻るしかないとジェフらに言い、戻ってきた時には縛り首にしてやると不敵に笑います。氷河のところまで来たところで、リンダと彼女の雇ったガイドは氷河の脇をすり抜けて近道をすると言いますが、ジェフは安全に谷を回ると言って譲らず、彼らは二手に別れます。ジェフが危惧していた雪崩が起き、リンダらはそれに飲まれますが、ジェフは見ぬふりをして進もうとします。ベンらに説得され彼女らを助けたジェフはドーソンの町に着き、牛を売ろうとしますが、リンダが高値で買い上げ、開いたばかりの店でビーフステーキを住民にふるまい、たちまち人気店になります。ジェフらは砂金を採り、牛の代金も合わせて、夢だったユタに自分たちの牧場を買うために出発しようとしますが、一緒に砂金を採っていた仲間がならず者に殺されます。できたばかりでまともな保安官もいない町の住民たちは、銃の腕を見込んでジェフに保安官になってくれるように熱望しますが、ジェフは興味がないとにべもなく断り、ベンがいい人ばかりのこの町に腰を落ち着けるように説得しますが、聞く耳を持ちません。そこへギャノンが現れ、部下を使って住民たちの土地を強奪していきます。ジェフとベンはインディアンから聞いた情報を元に、川を筏で下ってドーソンから脱出しようとしますが、それに感づいたギャノンの手下に襲われ、ベンは死に、ジェフも右手に深手を負い、荷物もすべて奪われます。スキャングウェイの町からジェフを慕ってついてきていた医者の娘レネーに助けられたジェフは、多くのならず者を従えたギャノンの脅しに屈して住民たちが町を去ろうとしているのを見て、単身でギャノンに立ち向かうことを決意し、リンダの店にいる一味の元へ向かいます。その知らせを聞いたギャノンらは待ち伏せしますが、ジェフはベンの形見の鈴の音を使ってギャノンの手下の中で一番凶暴なマッデンを倒し、ギャノンとはノーガードの撃ち合いとなりますが、身を挺して死んだリンダのおかげでギャノンを倒します。まだ残っていた多くの手下たちが酒場から飛び出しますが、圧倒的多数の住民が立ち上がり、彼らは町から追放されます。住民に見守られる中、ジェフとレネーは見つめあい、カメラはベンの形見の鈴へとクローズアップしていき、映画は終わります。
 カナダのジャスパー国立公園の全面的な協力の元で作られた映画で、その圧倒的な自然の中で、蓮實先生が言うところの「アンソニー・マンの坂・崖」を存分に理解することができました。崖の上に黒々と現れたと思った瞬間、ジェフとベンに銃弾を浴びせるギャノンの手下、ギャノンの手下たちがギャノンの名札を立てているところに坂の上から銃を向けるジェフの姿など、上から下への凶暴な暴力、それに抗する下から上への悲愴な抵抗。見事に映画的な画面がそこに展開されていたように思います。若きジャック・イーラムがギャノンの手下として出演し、またドーソンの住民で最後に保安官になるユーコン役の俳優がフランシス・フォードにそっくりなのも見どころでした。まさに50年代を象徴する「苦い」内容の映画ですが、映画ファンなら必見でしょう。文句無しにオススメです。