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ロバート・ケッチャム『隣の家の少女』

2010-05-04 13:53:00 | ノンジャンル
 平山夢明さんと吉野朔実さんの共著『狂気な作家のつくり方』の中で言及されていた、ジャック・ケッチャムの'89年作品「隣の家の少女」を読みました。
 舞台は'58年のアメリカ郊外の町の夏休み。いつものように大岩でザリガニを採っているわたしのところへ、隣のルースの家に越してきた14歳の美しく活発な娘メグが現れ、わたしは一目で彼女の魅力の虜になります。彼女は両親を交通事故で亡くし、その事故で足にひどい傷を負った妹のスーザンと、遠縁のルース一家に引き取られて来たのでした。ルースはほらを吹き、タバコをスパスパ吸い、両親に言わないと約束さえすれば冷蔵庫のビールを気前良く男の子たちにふるまい、、ほかの大人と違って、子供をいつもまとわりつく邪魔者ではなく、一個の人間として認めてくれるさっくばらんな女性で、知恵遅れ気味の長男ウィリー、わたしの親友のドニー、いつも泥まみれで残酷な遊びを好む末っ子のウーファーと暮らしていました。夏祭りの時、たまたまメグと一緒になったわたしは彼女を観覧車に誘い、夢のような時間を過ごします。しかし一方で、父親のDVにさらされて育った共謀なエディが先導する、既に決まっている敗者を皆でいたぶって楽しむ〈ゲーム〉にもわたしやドニーの兄弟は参加し、暗い情熱を注ぎます。ある日、わたしがルースの家に遊びに行くと、ウィリーたちがメグをくすぐって遊んでいましたが、彼女の胸を触ろうとしたウーファーの顔をメグが反射的に平手打ちすると、ルースは彼女の罪をあがなわせるとしてスーザンの裸の尻をベルトで鞭打つ場面に遭遇してしまいます。やがてメグはしばしば罰という名の元に食事を与えられないようになり、わたしは目の前で行われる暴力に対して抵抗を感じなくなっていきます。そして暴力はエスカレートして‥‥。(この後は読んでの「お楽しみ」です。)
 DVとカトリックの倫理観に打ちひしがれた人々の姿を見事に描いた「エンターテイメント」な「青春小説」でした。あとがきにあたる「解説」を書いているスティーヴン・キングの言うように、まさに「素晴らしい」小説なのですが、この本を読もうと公共図書館で予約を入れている人が、行列をなしているという現実があることも一言付け加えておきたいと思います。わたしは以前「報道ステーション」で再現されていた、女子高生を4、5人の少年が監禁した上で輪姦し、それに飽きると際限ない暴行を加えて殺し、遺体をコンクリート詰めにした、いわゆる女子高生コンクリート殺人事件のことが、読んでいて常に頭をよぎりました。そうした世界をリアルに味わってみたい方にはオススメですが、こうした世界を知らないで一生を終えるのも一つの人生かもしれません。なお、最後までの詳しいあらすじは私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Novels」(というもの気が引けますが)の「その他」のところにアップしておきましたので、興味のある方はご覧ください。