海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「グリーンスパンとバブル」と題するポール・クルーグマンの論説。

2005年08月30日 | アメリカの政治・経済・社会
彼の退任を祝って行われた先週の理事会でアラン・グリーンスパンが言ったことの多くは、十分理解できる。だが、彼の智恵ある言葉は、出るのが遅すぎた。彼は、家畜小屋の扉を少し開けておいて、馬が出てしまってから、この動物を適切に閉じこめておくことの重要性を講義する人に似ている。
定期的な読者なら、私が今日の財政赤字を作り出した役割に対してFRBの議長を許したことは一度もないことを知っている。クリントン政権の間、頑固な財政監督であったグリーンスパン氏は、2001年に、ブッシュ政府の無責任な減税に対して断固たる支持を与え、ブッシュ政府がその負債を余りに急速に完済しないように、議会に連邦政府の財源を減らすように促した。
それ以来、連邦政府の負債は急増した。だが、私の知る限り、グリーンスパン氏は、自分が議会に間違った忠告をしたということを一度も認めたことはない。しかし、彼は赤字財政の害悪について講義することに戻ったのだ。
現在、彼は住宅バブルについて同じゲームをやっているように見える。
理事会で、グリーンスパン氏は、分かりやすい英語で、住宅価格が適正の範囲外にあるとは言わなかった。だが、彼は分かりやすい英語でものごとを言ったことは一度もない。
高騰する住宅価格の最近の経済的重要性を強調した後で、彼が言ったことは、「資産権利の市場価値におけるこの巨大な増加は、部分的に投資家がリスクに対する低い保証を受け入れることの直接的結果である。市場価値のこのような増大は、市場参加者によって、構造的で恒久的であるとあまりにしばしば見なされる。」そして、彼は、「歴史は、低いリスクのプレミアムの時の結果を親切に扱ったことはない」と警告した。これは要するに「はじけつつあるバブルに気をつけろ」と翻訳される。
だが、去年10月には、グリーンスパンは、住宅バブルについて語ることを拒否して、「地域経済が重大な価格の不均衡を経験するかもしれないが、国家的な価格のねじれは、ありそうには見えない」と言ったのだ。
待ってくれ、事態は悪くなる。最近、グリーンスパン氏は、「利息のみのローンの横行と調節可能な金利の抵当のより風変わりな形態の導入」によって作り出された財政的リスクについての関心を口にしている。だが、昨年、彼は家庭にこれらのリスクを取るように励まし、調節可能な利率の抵当の長所を宣伝し、「貸し手が伝統的な固定金利抵当に対する代替としてより大きな抵当を提供するならば、アメリカの消費者は、利益を得るかもしれない」と断言したのである。
グリーンスパン氏が、2年前に、彼が今言っていることを言ったとすれば、人々は、より少なく借り、もっと賢明に買い物をしただろう。だが、彼は言わなかったし、今では遅すぎる。住宅市場は既にピークを過ぎたか、それとも間もなく過ぎるだろう。バブルの結果をどうするかは、グリーンスパン氏の後継者に懸かっている。
その結果はどれほど悪くなるだろうか?アメリカ経済は、現在、双子の不均衡に罹っている。一方では、国内消費は住宅バブルでふくれあがった。人々が彼らの家庭から純価をひきだすので、それは建築における莫大な増加と高い消費者の消費に導いた。他方、われわれは莫大な貿易赤字を抱えており、それをわれわれは外国人に国債を売ることでカバーしている。最近ではアメリカ人は、お互いに家を売ることで生計を立て、中国から借りた金で支払っているのだ。
何らかの仕方で、経済は、両方の不均衡を消去するだろう。だが、貿易赤字が小さくなる前に住宅バブルがはじけるならば、そのプロセスはそれほどスムースには、行かないだろう。われわれは経済的なスローダウンを持ち、場合によっては景気の後退をもつだろう。事実、増大する数のエコノミストは、2006年に対してRで始まる語(多分resessionを指している)を使っている。
ここにグリーンスパン氏がまだ馬鹿げたことを言う場所がある。彼の結びのコメントで、彼は「住宅ブームの終わりは、個人の貯蓄率のかなりの増大と輸入の減少と、それにともなう現在の財政赤字の改善をもたらすかもしれない」と述べた。私の考えでは、これは、「住宅バブルの終わりは、自動的に貿易赤字も治すだろう」と訳せる。住宅建築がスローダウンすれば、住宅建築とサービス産業における多くの仕事の喪失が導かれるだろうが、貿易赤字には直接影響を及ぼさないだろう。そういうわけで、これらの仕事は、ドル価値の下落のような出来事がアメリカの商品を世界市場で競争可能し、輸出の増大と輸入の低下をもたらすまでは、新しい仕事によって置き換えられないだろう。
そういうわけで、アメリカ経済にとって前にあるのは酷い仕打ちである。そして、それは部分的にグリーンスパン氏の過失である。
[訳者のコメント]連邦準備制度理事会(FRB)の議長であるグリーンスパンに対するものすごい批判だと思います。多分、クルーグマン先生の言っていることが正しいのだろうと思います。グリーンスパンの英語は、本当に意味が理解できない酷いものです。ブッシュ大統領がグリーンスパンの言ったことを正しく理解できたかどうか極めて疑わしいです。
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