海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「われらが不満足の夏」と題するポール・クルーグマンの論説。

2005年08月27日 | アメリカの政治・経済・社会
過去数ヶ月間、アメリカ経済について以下のような論争が行われた。
アメリカの家族:「われわれは余りうまく行っていない。」
ワシントンの役人:「あなたたちは間違っている。あなたたちの業績は素晴らしい。これらの統計を見なさい。」
行政府と何人かの政治解説者は、アメリカ人が経済について不幸であることを示す世論調査を見て頭をひねっている。結局、彼らの指摘によれば、国内総生産(GDP)の成長率のような数字は、かなり良いように見える。そこで、なぜ彼らは喝采しないのかという問いが生まれる。
ある人は、イラク問題の否定的な効果を非難する。他の人は、ニュース・メディアが適切に良い経済ニュースを報道していないと不平を述べる。だが、数字が人々は良い気持ちになるべきだと語っているのに、人々は良い気持ちではない場合、このことが意味しているのは、あなた方は間違った数字を見ているということである。
アメリカ人の家族はGDPについては気にしていない。彼らが気にするのは、仕事が手にはいるか、これらの仕事がいくらになるか、その給与がどの程度生活費に匹敵するかということである。最近のGDPの成長は、雇用に例外的なプラスを産み出すことに失敗し、他方では、大抵の勤労者の給与は、インフレについて行っていない。
雇用について:経済が二年前にやっと仕事を増やし始めたということは本当である。だが、多くの人々が、まるでそれが驚くべき成果であるかのように、「2年間に400万人分の仕事」だと恭しく言うけれども、実際は、それは約5%の増加であり、同じ時期の労働人口の増加より速くはないのだ。最近の仕事の増加は、昔ならば、平均以下と考えられただろう。雇用の増加は、ブッシュ政権の最善の二年間のほうが、クリントン政権中の二年間よりも、ずっとゆっくりしている。
歴史的基準から見て、失業率がかなり低いことも本当である。だが、一週間あたりの平均的労働時間や、失業期間の平均的長さなどの他の尺度は、労働に対する需要が、供給と比べてまだ弱いことを示唆している。
雇用者には、労働者を見つけるのに困難はない。ウオール・マートがカリフォルニア州北部で400職種について、約1万1千人雇用すると発表した。
雇用者は、労働者を見つけるのに賃金を上げる必要はない。賃金は、生活費を下回っている。労働省の統計によれば、平均的非管理職労働者の購買力は、2003年の夏以来、1.5%落ちた。これでも多くの家庭に対する圧力を低く見積もっている。生活費は、その家族の状況が多量のガソリンを買う必要のある人たちにとっては、急激に増加している。
ある解説者がガソリン価格に対する関心を忘れる理由は、これらの価格がまだ以前のピークに達していないからである。だが、それは、論点をつかみ損なっている。ガソリンが1ガロン、165円かそれ以下だったときに、アメリカ人が自動車を買い、どこに住んだらよいかを決めたが、現在、突然、1ガロン、286円かそれ以上払っている。これは突然の衝撃であって、私の概算では、典型的な家族の支出を年額9万9千円増やしている。
経済成長が賃金に反映されないとしたら、経済成長はどこへ行くのかと問われるかもしれない。これに対する答えは簡単だ。それは企業利益になっており、医療費を高騰させ、管理職の給与や補償の増額になっているのだ。『フォーブス』誌の記事によると、アメリカの500社の大企業のCEOの補償は、昨年一年間に、54%増えた。
そうすると、最終結果は、以下のようになる。大抵のアメリカ人は、ワシントンのお好きな統計が何を言おうと、経済に関して不幸だと感じる十分な理由がある。これは少しづつ漏れてきた経済拡大ではない。多くの人々は、一年前より困窮している。人々をもっと幸せだと感じさせるために、刷新された政府のセールス・トーク以上のものが必要になるだろう。
[訳者のコメント]経済成長が大きくても、配分が偏っていれば、多くの国民が幸せだとは感じないというのは、今の日本でも同じだとおもいます。冨の公平な配分が必要でしょう。
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