9月3日(土)はシェアオフィス・ボタニカで陶芸家日比野ノゾミさんを囲む会『作家の酒器で静岡の地酒を楽しむ夕べ』が開かれました。私は前回ご案内のとおり、地酒のコーディネートを協力させていただきました。
あいにくの悪天候でしたが、主催者のスノドカフェのみなさんが手作りおでんや酒肴をたくさん調達し、お客さんも、「陶芸」「地酒」「アートで街を元気に!」という共通テーマを語り合える同世代を中心に会話の弾む大人の酒宴という感じ。海外の映画やドラマに出てくるような、ホームパーティーみたいでした。
これはひとえに、アートプランナーであるスノドカフェの柚木康裕さんのコーディネート能力と、ボタニカという不思議なアンティークオフィスの雰囲気が融合した成果。陶芸家(ノゾミさん)と酒造り職人(ご主人日比野哲さん)というプロが中心にいたことで、会がグッとひきしまったし、ホンモノ感がUPしたと思います。
日比野哲さんは前日、大村屋酒造場で呑み切りがあったということで、残った全種類の酒を持ってきてくださいました。・・・うう、なんてゼイタク!!
私が用意した酒はこんなラインナップです(酒の給仕で忙しくて写真を撮るのを忘れてました、スミマセン)。
富嶽泉
御殿場・根上酒造店(代表銘柄「金明」)/純米吟醸活性生酒 山田錦50%精米 静岡酵母HD-1 日本酒度+2<o:p></o:p>
第壱峰 daiippoh
沼津・高嶋酒造(代表銘柄「白隠正宗」)/本格米焼酎 静岡県産米・静岡酵母 アルコール度数25度
英君 EXCELLNET KOHAKU Ten Maturity
由比・英君酒造(代表銘柄「英君」/十年古酒(出荷1998年) 米・米麹・醸造アルコール アルコール度数25度<o:p></o:p>
梅香 傳次郎
静岡・満寿一酒造(代表銘柄「満寿一」)/梅酒(日本酒漬け) 静岡酵母 アルコール度数7度<o:p></o:p>
磯自慢 愛山大吟醸
焼津・磯自慢酒造(代表銘柄「磯自慢」)/大吟醸 愛山50%精米 自社培養酵母 アルコール度数17度<o:p></o:p>
喜久醉純米吟醸松下米50
藤枝・青島酒造(代表銘柄「喜久醉」)/純米吟醸 藤枝・松下明弘さんの山田錦50%精米 静岡酵母 日本酒度+6 アルコール度数15度<o:p></o:p>
開運 花の香
掛川・土井酒造場(代表銘柄「開運」)/純米吟醸原酒にごり酒 静岡県産・誉富士55%精米 静岡酵母 アルコール度数17度<o:p></o:p>
傳一郎
袋井・國香酒造(代表銘柄「國香」)/純米吟醸生酒 山田錦60%精米 静岡酵母HD-1 日本酒度+7 <o:p></o:p>
これに、自分で作った冷やし甘酒を、ひやかし半分にお持ちしました。使った酒粕だけはリッパで、磯自慢純米大吟醸中取り35(サミット提供酒と同仕様酒)と、喜久醉純米大吟醸松下米40の熟成酒粕をブレンドしたもの。酒粕の風味を活かそうと、砂糖は極力控えめで、一見、豆乳のようなトロッとした舌触り。飲んだ人は「これが甘酒?」とビックリしてました。・・・たぶん一般的な甘酒というカテゴリーには入らない、新種の飲み物だと思われたでしょう(苦笑)。でもおかげさまで好評で、用意した2リットルはほぼ無くなりました!
『富嶽泉』は金明(御殿場)のブランド。活性生酒という特性からか、温度が変わると味も複雑に変化し、これ1本でいろんな楽しみ方ができると思いました。温度帯で変化するのは『傳一郎』も同様で、國香(袋井)の場合、冷えた状態ではビターでキリッとした鋭さを感じますが、温度が上がるとまる~くなる。この両者は玄人向きって感じがしました。とくに富嶽泉は久しぶりに飲んだけど、こんなに静岡らしかったっけ!?とビックリするほど静岡酵母の特徴がよく出ていました。これから新たなファンが増えるんじゃないかなあ・・・。
『磯自慢』『喜久醉』『開運』は、“らしさ”がちゃんと出ていて、ブレのない王道の味でした。温度帯が変わろうと揺るぎない勁さがあるから、初心者も通も安心して飲める。この3ブランドが全国区の評価を得ているのもうなずけます・・・。ただ、この3ブランドの本当のスゴさというのは1杯2杯口を付けただけでは判らないと思います。偏った個性がなく、バランス良く、きれいで飲みやすいので、いろ~んなタイプの酒を飲みこなした人が最後に行き着くという感じでしょうか・・・。
それはともあれ、今回は利き酒会ではないし、お客さんは日本酒を飲み比べるという体験があまりない一般の方ですから、日本酒に興味を持ってもらう、日本酒ってこんなに多様で奥が深いという実感を持ってもらおうと、あえて、“変化球”をたくさん用意しました。
『梅香・傳次郎』は、満寿一(静岡)が静岡酵母の酒で造った梅酒で、7月の(財)静岡観光コンベンション協会賛助会員の集いで出品したときに、「日本酒は苦手」という人に勧め、「梅酒の概念を変えた」と絶賛され、後日、別の参加者からも購入店の問合せが来たほど。それまで私自身、あんまり梅酒を飲む習慣がなかったのですが、夏の熱帯夜を乗り切るのにナイトキャップ代わりに飲み始めたら、これが美味しくて爽快で実に快適。アルコール度7度なので、ストレートでもロックでも、運動後はサイダー割でゴクゴクと、いろんな飲み方ができるし、酒肴にイワシの梅酢煮を作った時、これを使ったら、実にさっぱり美味しく出来ました。今ではすっかり冷蔵庫の常備品になってます。
今回も、日本酒が苦手という女性には『傳次郎』と『冷やし甘酒』をお勧めし、喜んでもらいました!
いちばんウケたのは、やっぱりというか、『英君エクセレント・コハク』。これ、たぶん今では売っていないと思うけど、1998年に発売された十年古酒(つまり仕込んだのは1988年頃)を自宅で後生大事に常温保存していたものです。
2年前の地震の時、大事にしていた酒器をたくさん壊してしまってから(こちらを見て笑ってやってください・・・)、「いつ災害が起きるかもしれない世の中、保存しておいても飲めずに終わってしまったらあまりにも情けない・・・」と思い始め、今回の主催者柚木さんが私の地酒支援活動に「とてもシンパシーを感じる」と褒めてくださったことに感謝しようと、思い切って開けることに。
事前に開けてチェックしてみたら、上品なシェリー酒みたいになっていて、自信を持って持参したもの。一応、アレンジして飲めるよう、氷、水、炭酸水を用意したんですが、みなさん「ストレートで十分美味しい」と喜んでくれました。
白隠正宗の酒粕焼酎『第壱峰』は、私自身、今回初めてです。蔵元の高嶋さんは、いろ~んな面白い酒造りに挑戦するベンチャーオーナーみたいな蔵元杜氏。私が酒の取材を始めたとき、『開運』も『磯自慢』もすでに完成された蔵、という存在でしたが、彼のように、これから大バケするかもしれない意欲的な蔵元の成長を見るのは、地元ファンとして実に応援のし甲斐がありますよね(・・・なんか上から目線の物言いでスミマセン)。この焼酎も寝かせるとどんな味になるんだろう・・・。
長期熟成酒については、以前、取材したこともあり(こちらを参照)、米と水という淡白な原料ながらも、こんなに味が変化する日本酒の魅力を、きちんと伝えて行く使命がある、と改めて感じました。なにより、造るのに手間暇かかる吟醸酒、出荷するまでに手間暇かかる熟成酒、いずれも蔵元にとってコスト負担の高い酒ですが、そういう酒を主力に頑張っている蔵元をファンも大切にしなければ、と思います。
なんやかんやで自分自身が楽しんでしまった会でしたが、こういう機会を作ってくださった日比野ノゾミさん&哲さん、柚木さん、参加者のみなさま、本当にありがとうございました!
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