12~13日と、『吟醸王国しずおか』の撮影で、「喜久醉」青島酒造を訪ねました。
12日は、今期の造りがひと段落した時点での、杜氏&蔵人の打ち上げ会。ホントはひと月前に予定していたのですが、蔵人の一人が急病で全員揃わず、仕切り直しをしてもらいました。
場所は、蔵のご近所の中華料理屋さん。特別こだわりの店というわけではなく、昔っから蔵のみなさんがフツウにご飯を食べに行っているお店で、ギョーザやスブタに生ビールと、ほんとに普段通りにくつろいでもらっちゃいました。
さすがに「喜久醉」がないとカッコが悪いと、お店の許可をいただいて試飲用に持ち込ませてもらいましたが、造りが終わってホッとくつろぐ素の表情をとらえたのは、やっぱり普段通りにビールをがぶ飲みしているとき。「喜久醉」を呑むと、お仕事モードに戻されちゃうんでしょうね。
・・・試飲の結果が気になりながらも、今日はカタイ話は抜きで呑もうとハッパをかけている青島さんには、工事現場の親方みたいな逞しさがありました。
13日は、機械搾りの酒袋(こちらの過去記事を参照してください)の最後の洗いと天日干し。お天気に恵まれ、真っ白な酒袋が青空のもと、気持ち良さそうに風に揺られてました。
・・・私、日常生活の中でも、洗濯物が青空のもとで清々と干されている光景が何より好きなんですねぇ。洗濯物を干すときは、何をどこの位置にどんな順番で吊るそうか真剣に考える。料理をするときも、どんな手順で作るのが効率よく全品同時に仕上がるか考えるのが、家の中でのささやかなストレス解消です。
我が家の小さなベランダで窮屈そうに吊るされる洗濯物と違って、広々とした干場で、大きくて真っ白な酒袋が5月の薫風にそよぐ姿って、たまらなくイイ! ほぼ1カ月、毎日水だけで洗い絞りを繰り返すなんて、エラく効率の悪い作業のように思えますが、大変な思いをして育てた酒のもろみを、最後の最後、清酒と酒粕に仕分ける大事な袋です。手間を省こうなんて考えたら、酒の神様にしっぺ返しをくらうでしょうね。
長い長い洗い作業からようやく解放された酒袋は、こいのぼりのようにホントに気持ち良く泳いでいました。
『吟醸王国しずおか』の撮影の旅も、ひとまずフィニッシュを迎えますが、映画作りは、撮影のあとの編集加工作業が、真の産みの苦しみです。自主制作で資金繰りが苦しく、撮影はしたものの世に出られない作品が世の中にはごまんとある、と聞いています。
『吟醸王国しずおか』の旅路の果ては、ちゃんと扉が開くのか、その先は晴天か豪雨なのか、どっちに転ぶかわかりませんが、少なくとも、効率を考えて手間を省こうなんて考えたら、被写体になってくれた蔵元に顔向けできない、ということだけは解っています。
丁寧に洗われた酒袋は、今秋の造りが始まる前に、再び長い長い洗い作業を経て、次の搾りのときを待ちます。この酒袋が現場に復帰するとき、映画が世に送り出されているとよいのですが・・・。