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杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

しずおか地酒研究会20周年アニバーサリー「喜久醉松下米の20年」

2016-10-10 10:51:32 | しずおか地酒研究会

 しずおか地酒研究会20周年アニバーサリー企画。9月末~10月初にかけて4回立て続けに催行しました。少し落ち着きましたので1本ずつご紹介します。

 

 まずは9月22日(木・祝)に開催した『喜久醉松下米の20年』。藤枝の地酒『喜久醉』の醸造元青島酒造が蔵のコンセプト商品として位置付ける『喜久醉純米大吟醸松下米40』『喜久醉純米吟醸松下米50』も20年のアニバーサリーを迎えるため、“同級生”の当会が勝手に押しかけお祝いしようと企画したものです。

 

 青島酒造の前で記念写真を撮った後、松下圃場に移動し、田んぼの勉強会。その後、参加者のお一人で『そばをもう一枚』著者の山口雅子さんがコーディネートしてくださった手打ち蕎麦処『玄庵』でささやかな酒宴を催しました。松下米を宮田祐二先生(「誉富士」開発者)が解説してくださるという贅沢な会。青島さんが喜久醉全種類をご用意くださり、東京や浜松からも駆けつけた30名は大いに盛り上がりました!

 


 1996年3月1日。しずおか地酒研究会の発足準備会に、青島酒造の青島秀夫社長が連れて来た一人の稲作青年。聞けば前日、蔵に突然やってきて「酒米を作りたい」と切り出したとか。海外青年協力隊でアフリカに農業指導に行った経験があり、アフリカ好きの青島社長とすっかり意気投合したそうな。
 私が発足準備会の席で、会のコンセプトを「造り手・売り手・飲み手の和」と発表したところ、「米の作り手も入れろ」と口を挟んできて、酒米作りのキャリアゼロの分際で生意気なやつ!と憤慨したのが、松下明弘さんとの出会いでした(笑)。

 

 青島社長が「どうせ挑戦するなら山田錦を作ってみろ」「失敗しても俺が全量引き取ってやる」と力強く背を押し、地酒研メンバーも一緒に田植えや雑草取りを手伝いながらの1年目。出穂を迎える8~9月は、台風や豪雨にヒヤヒヤしながら、10月の稲刈りを無事迎えようとした、ちょうどそのころ、青島孝さんがニューヨークから帰ってきました。
 大学卒業後、家業は継がず、国際金融の世界に進み、ウォール街で巨額マネーを操っていた彼は、そういう世界に身を置いたからこそ、「地に足の着いたモノづくり」の価値を実感。帰国早々、実家の近くの田んぼで、得体のしれない連中が米作りで盛り上がっている様子に、最初は面食らったと思いますが、今思えば松下さんと青島さんの出会いは必然だったのでしょう。

 

 今は喜久醉の蔵元杜氏として地元にしかと立脚する青島孝さん。「20年前に帰ってきて、最初の仕事は、しずおか地酒研究会の田んぼ視察でした」とリップサービスしてくれたあと、酒造工程を丁寧に解説。彼の自信に満ちた姿は、今日に至るまで、求道ともいえる酒造の修業を20年間確かに刻み込んできたその証しでした。

 松下さんも「最初の数年は稲刈前のこの時期、ほとんど眠れず生きた心地がしなかった」と当時の苦労を振り返りますが、今は、どんな気象条件だろうとまったく揺るぎない姿に見えます。2人のことは勝手に同志だと思っていますが、同じ20年を刻んできたのに、自分はいったい何をやってきたんだろうと、いつもいつも情けない気持ちにさせられ、喜久醉松下米を呑んで苦いと感じる時は自分が落ち込んでるとき、旨いと感じたら自分の心根が安定しているとき・・・そんなバロメーターにもなっています。

 

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 松下さんはご存知の通り、日本で初めて山田錦の有機無農薬栽培に成功し、静岡県では初めて個人で農水省から品種登録を受けた「カミアカリ」を作り、大きな面積すべてで有機JIS認定を持つ県内唯一の稲作農家。

 2013年に彼が上梓した『ロジカルな田んぼ』(日経プレミアムシリーズ)は、「農作業の一つ一つには、すべて意味がある。その意味を知れば、工夫の余地が生まれ、これまでにない新しい農業が可能になる。農業とはどんな仕事かを、一般的に、ここまで技術ディティールに踏み込んで解説した本は、これまでないはず。」という本。この本の出版祝いに当ブログで紹介した20年前の写真を再掲してみましょう。

 まだ当時はプリント写真。しかも記録用に撮ったものなので画像の粗さ&画角の甘さはご容赦くださいね。

 

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  日付が見当たらなかったのですが、1996年6月、山田錦の田植えです。苗を疎に植える(一株2~3本の苗を間隔を空けて薄く植える)ので、傍目には苗だか雑草だかよくわからない(苦笑)。本当にこれで米が実るのかなあと心配でした。

 

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 1996年6月23日。しずおか地酒研究会で山田錦研究の大家・永谷正治先生を招いて地酒塾『お酒の原点・お米の不思議』を開催。その後の有志による現地見学会で松下さんの田んぼを先生に見ていただきました。

 

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 1996年8月末~9月初め。日付は不明ですが、出穂の頃です。あんなにスカスカだった田んぼがこんなに美しく黄緑色に輝いていました!

 

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  1996年10月5日。再び永谷先生を招いて田んぼ見学会。青島孝さん(右端)がニューヨークから帰国して2~3日後で、彼の最初の仕事?が、この田んぼ見学会でした。

  当時、私(右端)はロン毛。右は20年後。わははーです。

 

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  これは河村傳兵衛先生が、初めて実った松下さんの有機無農薬の山田錦を根っこから持ち上げる貴重なショットです!

 

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  1996年10月27日。青島孝さんが静岡県沼津工業技術センターの試験醸造に研修生として参加しており、松下さん&地酒研有志で陣中見舞いに行きました。

  

 

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  松下さんが気になるのは、やっぱり米を蒸す工程。甑(こしき)の構造をじっくり観察していました。

 

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  1996年12月8日。しずおか地酒研究会の『年忘れお酒菜Party』。農家のお母さんたちの伝承郷土料理と山田錦の玄米ごはんを味わう忘年会で、当時、静岡新聞社で農産物情報誌『旬平くん』を編集していた平野斗紀子さんが司会進行をしてくれました。松下さんは初めて育てたとは思えない堂々とした山田錦を披露。ちなみに玄米で食べたのは永谷正治先生が調達してくれた徳島県産の山田錦です。松下さんの米には手をつけていませんのでご安心を(笑)。

 

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  年明けの1997年1月。いよいよ松下米の初仕込みです。現場で「松下の米は胴割れしない」と真っ先に評価した杜氏の富山初雄さん。「松下米」の命名者でもあります。

 富山さんは、青島久子さん(社長夫人・孝さんのお母様)が青島酒造に嫁いだ昭和38年から青島酒造で酒を醸す南部杜氏。孝さんにとっても家族同様の存在で、ニューヨークから帰国し酒を造りたいと言ったとき、父の秀夫社長は(蔵元が造りに関わるのを)反対したものの、富山さんは手放しで喜んでくれたそうです。

 

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 1997年2月25日。初搾りの日は松下さんも立会い、上槽作業に特別参加しました。

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  洗い場で、タメに残ったもろみの米粒をすくって食べる松下さん。一粒たりともムダにしたくないんですね。なんだか正しい「お百姓さんの姿」を見ました・・・。

 

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  こうして生まれた喜久醉純米大吟醸松下米。最初の96BY酒(1997年発売酒)は、未だに空けられず、MY冷蔵庫の奥底で眠り続けています。

 以下は、1997年10月の発売時に作らせてもらった松下米のしおりです。当時は私が自分のワープロで打ち込んでプリントしたものを、簡易印刷で刷って、青島酒造のみなさんが1枚1枚朱印を手押しした、完全アナログチラシ(苦笑)。ささやかながら、この酒の誕生に関わることが出来て幸せです。

 

 

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 2016年10月6日。21回目の松下米の稲刈りが行われました。「20年で一番雨が多く、日照時間の少ない最悪の年だった」と振り返る松下さんですが、宮田先生が「肥料を余計に与えない稲は、葉の色が薄く透明感がある」「山田錦は茎の節々に一定の間隔があり、しっかり根を張らせて作った山田は、倒れそうに見えて絶対に倒れない」と解説されたまさにその通りの、美しく力強い稲でした。

 21作目の喜久醉松下米が吞めるのは1年後。毎年毎年、愉しみは尽きません。

 

 

 


 


杉錦の生もと造り体験&地酒研20周年記念酒ラベルデザイン募集のご案内&秋企画まとめ

2016-09-04 07:42:54 | しずおか地酒研究会
 しずおか地酒研究会20周年アニバーサリー秋の企画怒涛の第4弾は、杉井酒造の全面協力で、杉錦生もとづくりのもとすり体験という超マニアック!な企画です。


 「生もと」は、酵母の健全な発酵に必要不可欠な「乳酸」を自然培養して造る江戸時代からの伝統製法。中でも手間がかかるのが、もとすり作業(山おろしとも言います)
 半切り桶に山盛りにされた蒸米、米麹、水を、櫂棒ですり潰します。この作業を時間をおいて何回かにわけて行うのですが、これが思った以上に重労働。明治になって水麹が代用できることが解明され、山おろし廃止もと=山廃が登場します。



 時間と労力を要する伝統製法ながら、やわらかさと酸味・深味を併せ持つ生もと酒は、和洋中どんな食ともマッチしやすく、最近ジワジワ人気が高まっています。

 今回は、静岡県内でもいちはやく生もと酒を復活させた杉井酒造の蔵元杜氏・杉井均乃介さん、しずおか地酒研究会会員の後藤英和さん(ときわストア)のご尽力で、もとすり作業を実際に体験させていただけることになりました。もと造り体験させていただく酒は、誉富士100%使用、静岡酵母HD-1にて仕込まれ、「杉錦生もと純米生酒」として年末に発売予定です。

 しずおか地酒研究会の20周年記念ラベルを作っていただきますので、ラベルデザインも併せて募集いたします!


 作業は人数が限られるため、希望者多数の場合は抽選とさせていただきます。


◇日時 10月2日(日) 
 午前の部 9時30分蔵集合・10時より作業開始~
 午後の部 13時30分蔵集合・14時より作業開始~


◇参加費 無料


◇募集人数 午前・午後とも各8名


◇申込受付 9月9日まで(希望者多数の場合は抽選・9月12日にお返事します。定員に満たない場合は追加募集いたします) 
     
◇申込先 mayusuzu1011@gmail.com
上記メールへ希望の時間帯(午前か午後)を添えてお申し込みください。


*しずおか地酒研究会20周年記念ラベルのデザイン(文字、キャッチコピー、イラスト等)を募集します。お酒のラベルをデザインしてみたいという人、年齢・経験不問。ぜひぜひ挑戦してください!上記メールまで併せてご連絡を。



 再三ご案内の20周年アニバーサリー秋の4企画、現状況をおさらいしておきます。
 つい先日、「スズキさんの会はお酒に詳しくないと参加できないでしょ?」と言われてしまいましたが、そんなことはありません。私たちの地元・ふる里で造られる美味しい地酒。生産現場に行って造ってる人に話を聞こうと思えばすぐにできる、この距離の近さを存分に活かし、直接現場の人に会いに行こう、エールを送ろう!という趣旨で活動しています。
 ちょっとした大人の社会科見学だと思って、どうぞ気軽に、ご家族やお仲間を誘ってぜひぜひご参加ください!


9月22日(木・祝) 喜久醉松下米の20年 /会員先行案内にて満席。当ブログでの募集は行いませんでした。申し訳ありません。


9月25日(日) お酒の原点お米の不思議2016秋編(静岡県農林技術研究所三ケ野圃場・誉富士&山田錦圃場見学)/参加受付中。こちらを参照。


10月1日(土) あなたと地酒の素敵なカンケイ~『カンパイ!世界が恋する日本酒』先行上映&トークセッション/参加受付中。こちらを参照。


10月2日(日) 杉錦の生もと造り体験(本ページ参照)


しずおか地酒研究会20周年アニバーサリー「お酒の原点お米の不思議2016」秋編のご案内

2016-08-29 20:02:58 | しずおか地酒研究会

 今回もしずおか地酒研究会20周年アニバーサリー秋の企画のご案内です。

 

 7月に訪問した静岡県農林技術研究所三ケ野圃場を再訪し、稲刈りを控えた「誉富士」「山田錦」「新型誉富士」等の生育状況を宮田祐二さんに解説していただきます。7月の訪問レポートはこちら
 

 
 静岡県産米の育種の原点であり、県内稲作農家の生産活動を支えるベースキャンプである試験圃場。「誉富士」を開発した宮田祐二さんが現場で語るコメの育種の難しさ&面白さは、素人の酒飲みの琴線をも大いに刺激します。
 稲刈り直前の黄金色の穂波がキラキラ輝く、田んぼが最も美しい季節。写真を撮りにくるだけでも価値があると思います。そして「誉富士」と「山田錦」、試験栽培中の雄町系新品種の“原石”をその目で確かめ、地酒が、ふる里の大地に根付いたコメの命を受け継いでいることを、肌で実感してみましょう。



 終了後は浜松に移動し、地酒研でお世話になっている山中恵美子さんのお店「呑み処ぼちぼち」で、宮田さんを囲んで酒米談義に花を咲かせる予定です。三ケ野圃場の見学のみ、または「ぼちぼち」からの参加でもOKです。ふるってご参加ください!




◇日時 9月25日(日) 13時30分~19時30分
 

◇会場 静岡県農林技術研究所三ケ野圃場(磐田市三ケ野)・呑み処ぼちぼち(浜松市中区千歳町)


◇スケジュール 13時30分/JR袋井駅集合 ⇒(タクシー移動) 14時~16時/圃場見学 ⇒ (タクシー&JR) ⇒ JR浜松駅 ⇒(徒歩)17時~/呑み処ぼちぼち 


◇会費 5000円(交流会費)


◇定員 20人 *定員になり次第締め切ります。


◇申込 しずおか地酒研究会(鈴木真弓)へメールにてお申し込みください。
mayusuzu1011@gmail.com




しずおか地酒研究会20周年秋の特別企画「あなたと地酒の素敵なカンケイ」ご案内

2016-08-22 19:44:08 | しずおか地酒研究会

 今日はしずおか地酒研究会20周年アニバーサリー、秋の目玉企画のご案内です。

 20年前の発足年、10月1日の日本酒の日に、浜松で開催された静岡県地酒まつりに合わせ、「女性と地酒の素敵なカンケイ」というパネルディスカッションを開催しました。80名を超える方々にお越しいただき、後日、静岡新聞紙面に記事まで書かせていただきました。当時まだ、女性が日本酒を語るというのはニュースな出来事だったんですね。ちなみにこのとき、当時まだ西武百貨店にお勤めだった松崎晴雄さんに初めてお会いしました。

 

  20年目の今年、10月1日が土曜日ということもあり、ぜひ地酒まつりの前に「女性と地酒の素敵なカンケイ2016」をやろうと、dancyuの里見美香さん、酒食ジャーナリストの山本洋子さんにパネリストの打診もし、駅前の貸会議室も押さえ、開催準備をしていたところ、サールナートホールから話題の映画『カンパイ!世界が恋する日本酒』の公開記念イベントの相談を受けました。

 私自身、8年前から地酒ドキュメンタリーを製作中で道半ばの身。これも何かの天命だろうと話を聞いてみると、10月下旬の公開予定で、できたらその前の10月の週末に先行上映会とキックオフイベントを希望とのこと。「ちなみにうちではこんなのを計画してるんですよ」と10月1日の予定をぶつけてみたら、「ぜひうちの劇場を使ってください」と有難いオファーをいただきました。そんなこんなでテーマを広義の「あなたと地酒」に変更し、『カンパイ!世界が恋する日本酒』にも出演した松崎晴雄さんにも急きょオファーを掛けて、日本を代表する豪華酒類ジャーナリスト3名を迎えての映画鑑賞会&トークセッションを開催することになりました。

 いろんな方々の偶然&必然の出会いやサポートあっての20年だなあと、あらためてしみじみ感激しております。10月1日土曜日、映画を観て、ためになるお話を聞いて、呑み尽くす。地酒ファンのみなさま、ぜひとも静岡駅周辺に集結しましょう!!

 

 

『カンパイ!世界が恋する日本酒』公開記念

先行上映&トークセッション「あなたと地酒の素敵なカンケイ」

 

日時:平成28年10月1日(土)13:30~17:00 

会場:サールナートホール 公式サイトはこちら

料金:2,500円(税込) ※先着200名・全席自由

チケットはサールナートホール窓口で絶賛発売中。

しずおか地酒研究会でも販売いたします。下記へ郵便振替にて代金をお送りください。入金確認後、郵送にてお届けいたします。

00810-4-81568 しずおか地酒研究会 (恐縮ですが振替手数料はご負担ください) 

 

世界と静岡を熱くする日本酒ワールド、映画&トークでお試しあれ!

 ここ数年、日本のみならず世界的にも日本酒がブームです。1970年代前半のピーク時には全酒類の30%近くを占めた日本酒の消費量は、数の上では約7%と激減していますが、これは昔でいう大手の普通酒マーケットが縮小したため。地方の小さな酒蔵がつくる特定名称酒、特に吟醸酒、純米酒の生産量・消費量は右肩上がりです。原料や製法にこだわり、丁寧に醸された蔵独自の味わいが、若者世代、女性、外国人といった新たなユーザーに評価されるようになったのです。

 静岡県の酒蔵にもいち早くその変化が訪れ、酒通の間では「吟醸王国しずおか」と評価されています。酒どころのイメージがなかった静岡ゆえ、地元の飲み手が誰よりも地元の酒を誇りに思えるようになろうと1996年、飲み手主動の地酒愛好会「しずおか地酒研究会」が誕生し、地域密着で活動しています。

『カンパイ!世界が恋する日本酒』は、ここ数年の日本酒のドラスティックな姿を象徴するように、酒蔵に生きる人々のグローバルな活動が紹介されています。しずおか地酒研究会では設立20周年記念事業として、本作品の静岡での先行上映会に合わせ、日本を代表する酒類ジャーナリストの面々をお迎えし、トークセッションを開催します。

 10月1日は日本酒の日。まずは映画館にて視覚と聴覚でたっぷり美酒を味わってみてください。そして当夜に開催される第29回静岡県地酒まつりin静岡2016(注)にもぜひ足をお運びください。

 

 

(注)毎年10月1日に開催される静岡県酒造組合主催の地酒まつり。静岡県内全酒蔵の銘酒が一堂に味わえる。今年はホテルセンチュリー静岡にて18時より開宴。入場料2500円。チケットはイープラスにて発売中。詳細は静岡県酒造組合HP(こちら)へ 。

 

 

プログラム

13:00~開場

【第一部】

13:30~主催者挨拶 鈴木 真弓(しずおか地酒研究会)

13:35~15:15  『カンパイ!世界が恋する日本酒』先行上映 (本編尺95分 + 予告編5分程度)

    

15:10~15:40  映画レビュー「世界と地酒の素敵なカンケイ」

映画に出演した松崎晴雄氏、映画レビュー執筆者の山本洋子氏に作品の魅力をたっぷり伺います!

ゲスト/松崎 晴雄氏(日本酒研究家) 、山本 洋子氏(酒食ジャーナリスト)

聞き手/鈴木 真弓(しずおか地酒研究会)

 

 (10分休憩)

 

【第二部】

15:50~17:00  トークセッション「静岡の酒で広がるカンケイ」

吟醸王国と評される静岡の地酒を、第一線の酒類ジャーナリストが熱く語ります!

登壇/里見 美香氏(dancyu主任編集委員・静岡市出身)

   松崎 晴雄氏(日本酒研究家)

   山本 洋子氏(酒食ジャーナリスト)

   コーディネーター/鈴木 真弓(しずおか地酒研究会)

 

 

 

 

映画『カンパイ!世界が恋する日本酒』

【解説】外国人として史上初めて杜氏となり、新商品を次々と世に送り出しているイギリス人のフィリップ・ハーパー、日本酒伝道師として、日本酒ワークショップや本の執筆などを通して奥深い日本酒の魅力を世界へと発信を続けるアメリカ人ジャーナリストのジョン・ゴントナー、そして、自ら世界中を飛び回り日本酒の魅力を伝えている、震災に揺れる岩手の老舗酒蔵を継ぐ南部美人・五代目蔵元の久慈浩介。まったく異なる背景を持つ3人のアウトサイダーたちの挑戦と葛藤を通し、日本だけにとどまらず、世界で多くの人々を魅了する日本酒の魅力的な世界を紐解いてゆく。

 

●監督:小西未来●出演:フィリップ・ハーパー、ジョン・ゴンドナー、久慈浩介 ほか

●2015年●日本・アメリカ●シンカ配給●95分

10/29()~静岡シネ・ギャラリーでロードショー! 公式サイトはこちら

 

 

 

 

 

◆ゲストプロフィール

 

松崎晴雄氏/酒類ジャーナリスト・日本酒輸出協会会長・『カンパイ!世界が恋する日本酒』出演者

日本酒輸出協会会長として世界に向けて日本酒のイメージ向上、普及啓蒙に努め、各種セミナーや試飲会等の行い、『カンパイ!世界が恋する日本酒』でもその活動ぶりが紹介されている。西武百貨店の酒類バイヤー・売場担当を経て97年に独立し、日本酒を中心とする酒類ジャーナリスト、コンサルタントとして活躍。日本酒に関する著書も多く、連載も数多くこなし、毎月数ヶ所で愛好家向けのセミナー講師も務める。純粋日本酒協会主催のきき酒コンテストでは、通算30回以上名人として認定され、「永久名人」として表彰されている。2001年より静岡県清酒鑑評会審査員を務める。

 

 

山本洋子氏/酒食ジャーナリスト・地域食ブランドアドバイザー

鳥取県境港市・ゲゲゲの妖怪の町生まれ。(株)オレンジページで「素食」「マクロビオティック」「郷土料理」「米の酒」などをテーマにした料理雑誌・編集長を経て独立。身土不二、一物全体を心がける食生活を提案し、「日本の米の価値を最大化するのは上質な純米酒」をモットーに「一日一合純米酒!」を提唱する。地域食ブランドアドバイザー、純米酒&酒肴セミナー講師、ジャーナリストとして全国へ。「感動と勇気を与える地方のお宝さがし」がライフワーク。編集した本に『純米酒BOOK』グラフ社刊、『厳選日本酒手帖』『厳選紅茶手帖』世界文化社刊がある。

 

 

里見美香氏/dancyu 主任編集委員

静岡市七間町生まれ。聖母幼稚園、青葉小学校、城内中学校、静岡高校と18歳まで静岡で過ごし、早稲田大学を経て、暮しの手帖社に入社。NHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモデルで同社創業者の大橋鎮子氏のもと、季刊雑誌『暮しの手帖』編集者として6年半勤務。プレジデント社に移り、食をテーマとする月刊誌『dancyu(ダンチュウ)』に創刊から携わる。99年2月号で初めて第一特集のテーマとして日本酒を取り上げ、以来、毎年冬の定番企画となった。2005年、同誌編集長就任。その後、dancyu別冊編集長として『日本の発酵食』『絶品おかず365レシピ』などを刊行し、築地での食イベント「dancyu祭り」も立ち上げる。

 

 

 

 


しずおか地酒研究会20周年アニバーサリー「藤田千恵子さんと行く奈良京都酒造聖地巡礼」その3

2016-08-20 10:41:01 | しずおか地酒研究会

 奈良京都酒造聖地巡礼の続きです。

 8月1日の午前中は、大神神社参拝の後、門前にある『三諸杉』の醸造元今西酒造をのぞいて土産酒をゲット。次いで清酒発祥の地として知られる菩提山正暦寺を訪ねました。個人的には何度も訪れていますが、『菩提もと』と『諸白酒』が生み出されたこの地に、造り手・売り手・飲み手のみなさんと一緒に参拝するのは長年の夢でした。参加者も同じ思いだったようで、静岡県で唯一、菩提もとの酒を醸す『杉錦』の蔵元杜氏杉井均乃介さんに記念碑の前に建ってもらって撮影タイム。拝観可能な福寿院客殿で、ご住職に清酒発祥の地となった歴史を解説していただきました。

 

 

  正暦寺は992年(正暦3年)に一条天皇の勅命によって創建され、当初は堂塔伽藍を中心に86坊もの塔頭が菩提仙川の渓流を挟んで立ち並ぶ壮大な勅願寺として威勢を誇っていました。その後、平家の焼き討ち、度重なる兵火、徳川幕府の厳しい経済制圧によって江戸中期以降は衰退し、大半の堂塔が失われ、今は江戸期に創建された福寿院客殿と護摩堂、大正時代再建の本堂と鐘楼堂などわずかな建物が残っています。紅葉の名所として知られ、11月のシーズンには多くの観光客でにぎわい、1月には菩提もと清酒祭も行われます。

 

 いただいた資料を復習のつもりで書き出してみます。

 

 奈良市の東南山麓、菩提仙川に沿って、苔むした石垣ともみじの参道を登りつめると菩提山正暦寺がある。現在の清酒造りの原点は、ここ正暦寺で造られた僧坊酒に求めることができる。この僧坊酒は『菩提泉』『山樽』などと呼ばれ、時の将軍足利義政をして天下の名酒と折紙をつけさせたと『蔭涼軒日記』に記されている。時代はくだり、1582年(天正十年)5月、織田信長は安土城に徳川家康を招いて盛大な宴を設けた。この時、奈良から献上された『山樽』は至極上酒であったらしく、『多門院日記』に「比類無シトテ、上一人ヨリ下万人称美」したとある。

 本来、寺院での酒造りは禁止されていたが、神仏習合の形態をとる中で、鎮守や天部の仏へ献上する御酒として自家製造されていた。そのため、宗教教団として位置づけられながらも、荘園領主として君臨していた寺院では、諸国の荘園から納められる大量の米と、酒造りに必要な広大な場所、人手、そして清らかな渓水、湧き水などの好条件に恵まれ、利潤を目的とした酒造りを始めるようになった。中でも正暦寺の僧坊酒は、発酵菌(酒母・もと)を育成し、麹米・掛け米ともに精白米を使う諸白酒を創製したという点で、酒造史の上で高く評価されている。

 清酒造りにおける酒母(もと)の役割とは、雑菌を無くし、もろみのアルコール発酵をつかさどることにある。単に糖液で培養した酵母菌で酒を造るならば、乳酸菌・バクテリアなどの雑菌が殺されることなく、もろみが腐りやすくなる。

 しかし、正暦寺で創製された酒母(もと)、すなわち『菩提もと』は、酸を含んだ糖液で培養するため、その酸によって雑菌が殺され、しかも、アルコールが防腐剤の役割を果たすという巧妙な手法がとられており、これは日本酒造史上の一大技術革新であった。

 こうして、蒸米と米麹と水からまず酒母(もと)を育成し(酒母仕込み)、酒母が熟成すると米麹・蒸米・水を3回に分けて仕込み(掛け仕込み)、いわゆる三段仕込みの原型が出来上がった。この諸白酒は、後に火入れ殺菌法なども取り入れられ、仕込みも三段仕込みから四段・五段仕込みへと発展し、『南都諸白』の名で親しまれ、17世紀の伊丹諸白の台頭まで一世を風靡し、奈良酒の代名詞ともなった。(清酒発祥の地〈菩提山正暦寺〉より)

 

 昼前に正暦寺を出発し、昼食に立ち寄ったのが京田辺にある酬恩庵一休寺。こちらで禅寺の本格的な精進料理をいただいたのです。次の目的地である京都の松尾大社までの道すがら、ランチの店をいろいろ探したんですが、今回のメンバーは酒食のプロばかり。全員が満足するような店を見つけるのは無理だろうし、かといってファミレスやドライブインみたいなところでも味気ない・・・と悩んだ挙句、以前、駿河茶禅の会(こちらを参照)で訪ねた一休寺で精進料理が食べられることを知って決めたのでした。

 平日月曜日。しかも猛暑の昼過ぎ、ほかに拝観客はなく、我々グループは貸し切り状態で方丈や庫裏を丁寧に案内してもらい、待月軒で精進料理を味わいました。全員汗だくで喉もカラカラ。ダメもとで「ビールありますか?」と訪ねたところ瓶ビールをゲット。調子に乗って「日本酒は?」と訊いたらこちらはNGでした(苦笑)。

 

 松尾大社に到着したのは15時頃。ここはさすがに参拝経験のある人がほとんどで、自由にお詣りしてもらいました。酒造資料館がいつの間にかリニューアルされていて、お休み処としてもベストスポット!

 

 予定ではここで解散でしたが、杉井さんが京都駅南口のイオンモールに新規オープンした取引先の酒販店さんに挨拶に行くというので全員便乗することに。お訪ねしたのはオール純米酒&スタンディングバー併設の『浅野日本酒店』さん。大阪で2年前に新規開業し、はやくも京都に2店舗目をオープンというわけです。日本酒しか扱わないという個人専門店でもコンセプトとデザインがしっかりしていれば、ちゃんと成果が出るお手本のような店でした。

 

 居残り組は、私がこのところ上洛のたびに寄せてもらっている高倉御池の『亀甲屋』で慰労会。京の地酒「京生粋」と汲み上げ湯葉で巡礼ツアーを締めくくりました。この店は30年近く前、京町家をリユースした先駆けの店として地元に愛され続け、なかなか予約が取れない人気店に。直前に、ダメもとで予約できるかお尋ねしたら、運よくキャンセルが出て8人でお邪魔することが出来ました。「亀」つながりで、ご主人と女将さんに初亀の橋本社長をご紹介できたのも何よりも嬉しかった! これもそれも、酒の神様がつなげてくれたご縁に違いありません。藤田千恵子さん、参加者のみなさま、本当にお世話になりました&お疲れ様でした。

 素晴らしい酒縁に、あらためて、感謝乾杯!