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花より団子という諺

2023-03-25 06:35:53 | 年中行事・節気・暦
前回の「花見の三要素」に続き、今回は「花より団子」という諺について。
 白幡洋三郎著『花見と桜』というPHP新書に、「いろはかるた」に「花より団子」が登場するのは嘉永末年(1850年代)のことだというが、安永元年(1772)の『誹風柳多留』十篇に、「花に背を向けて団子を食っている」という川柳があることから、「句が先にできて諺がうまれた」と記されていました。
 ただしこれは誤りです。十六世紀半ばころにできた『新撰犬筑波集』という俳諧連歌集に、「花よりもだんごとたれか岩躑躅(いわつつじ)」(花より団子なんて、いったい誰が言ったのだろうか)という句があるからです。躑躅の花は古歌では必ずと言ってよい程「岩つつじ」と詠まれます。それで「岩」と「言はない」とか「言ふ」を懸けて詠むことが、平安時代からありました。それでこのような句が詠まれたわけです。ですから室町時代には既に「花より団子」という諺があったことを確認できます。ただしこれはたまたま私が『犬菟玖波集』を読んだことがあったのでわかったことであり、著者がたたまたま読んだことがなかっただけのこと。著者の責任として、わざわざあげつらうことではありません。私も上記のいろはかるたの件は知りませんでしたし・・・・。ただ根拠となる史料名を明示していないことは少々残念です。それは第三者が再検証できないからです。それはともかく、もともと全ての文献史料を一人で読むことなど、できるはずはないのですから、お互いに指摘されながら進歩すればよいだけの話です。ただ指摘はしておかないと、誤ったことが歴史事実と思い込まれてもいけません。面白い本を書いて下さった著者には申し訳なく、少々気が咎めるのですが、書いてみたわけです。


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